今回は、宿泊事業本部 営業部 部長の西村さんのこれまでの歩みを振り返りながら、一休の営業として求められる資質、そして成果を出すための本質について深掘りしていきます。
「営業志望」から一転、経理として奮闘した新卒時代
インタビュアー:まずは、西村さんのキャリアについてお伺いします。新卒では、どのような会社に入社されたのでしょうか?
西村さん:新卒ではガラスと化成品のメーカーに入社しました。鳥取出身で実家が農家ということもあり、農作物の肥料に興味があったんです。その会社が、肥料の開発においてトップシェアを誇っていたこともあり、志望しました。
インタビュアー:そうだったんですね!てっきり営業として入社されたのかと思っていました。
西村さん:そうなんですよ。営業志望で入社したんですが、配属されたのは経理部でした。商学部出身だったこともあり、「経験を活かしてほしい」という会社の意図があったようです。
インタビュアー:経理部では、どのような仕事をされていましたか?
西村さん:主に決算業務に携わっていました。連結会計と、親会社の単体決算など、幅広い業務を経験しましたね。実は、当初は東京本社勤務を希望していたのですが、震災をきっかけに本社機能を地方に移すという会社のBCP(事業継続計画)の一環で、山口県の工場に配属されることになりました。
見慣れない土地で、慣れない業務にひたすら向き合う日々でした。退職給付会計やデリバティブ取引といった難解な会計処理も、周囲に頼れる人がいない環境だったからこそ、一つひとつ徹底的に調べてやり遂げることができました。この経験は、どんな課題にも臆することなく向き合う土台を築いてくれた、非常に貴重なものだったと感じています。
インタビュアー:素晴らしい経験ですね。逆境をチャンスに変えて、経理としての専門性を高められたのですね。そこから転職を考えたきっかけは何だったのでしょうか?
西村さん:経理の仕事も一通り理解し、成長を感じられなくなったことが大きな理由です。これまでの会計経験を活かして、縦割組織からジャンルの垣根を超えたところへチャレンジしたいと考えるようになり、一休へ転職をしました。
事業を動かす側へ。度重なる挫折から学んだ「現場力」
インタビュアー:入社後は経理としてご活躍され、その後、2021年10月に宿泊事業本部に異動されましたよね。この異動は、ご自身から希望されたのですか?
西村さん:入社して3年ほど経った頃、事業部の会議室から出てくる事業部長たちの姿を見て、事業が動く様子をガラス越しに見ている感覚があり、「いつか自分も事業を動かす側に行きたい」という気持ちが芽生えていきました。「ガラスの向こう側に行きたい」という思いを当時の管理本部長に相談をしたところ、「宿泊事業本部へいってみない?」と提案をしていただきました。
インタビュアー:宿泊事業本部への異動直後は、どんな役割だったんですか?
西村さん:当初は、営業とマーケティングの兼務でした。しかし、これが大きな挫折の始まりでした。当時の私は、宿泊業界の知識もなければ、ユーザーとしての予約経験もほとんどありませんでした。会議に出ても、何を話しているのか分からず、何も発言できない日々が続いたんです。自分の無力さを痛感し、一度会議から外してもらい、まずは現場の営業に集中することにしました。
インタビュアー:その頃のエピソードで、特に印象的なものはありますか?
西村さん:宿泊施設の方々との会話が、最初はどうにも噛み合わなかったんです。当時の私は、一休のデータばかりを根拠に話をしていました。しかし、宿泊施設の担当者からすれば、私よりも業界知識も経験も豊富です。一休のデータという「紙芝居」だけでは、何の説得力もありませんでした。
インタビュアー:それはすごくよく分かります。宿泊施設の方々はマーケット知識も理解が深い方々ばかりですよね。その課題を、どのように乗り越えられたのですか?
西村さん:もう「考えるより感じろ」だと思いました。当時の事業本部長だった平さんに相談したところ、「とにかく先に大量のアポイントを入れろ」と言われたんです。とにかく施設に足を運び、ひたすら対話しました。最初の3ヶ月は、火曜日から金曜日まで毎日5件の商談をこなす日々でしたね。
インタビュアー:それはすごいですね…!その経験が、今の西村さんの土台になっているのですね。
西村さん:はい。その時は無我夢中で、成長している実感はなかったのですが、ある日、GM(ホテル総支配人)との商談で大きな変化を感じました。それまでは上司に手取り足取り教えてもらっていましたが、その時は自分の力で、施設の経営課題に踏み込んだ提案ができたんです。施設の担当者が見えていなかった課題を、一休のデータという切り口で紐解き、提案内容を実現していただくことができました。
「新しい習慣」が、営業の可能性を広げる
インタビュアー:プレイヤーもされながら、2023年の4月に営業推進の部長を兼務されたんですよね。特にどのような取り組みに注力されましたか?
西村さん:営業担当者として、自分自身が動いて課題を解決することにやりがいを感じてきましたが、組織全体で大きなインパクトを出すには、自分以外のメンバーにも動いてもらう必要がありました。そこで、メンバーが目指すべきゴールを明確にし、そのためにどう動くべきかを分かりやすく伝えることに注力しましたね。
インタビュアー:具体的に、どのような工夫をされたのでしょうか?
西村さん:当時、一休では施設側が自由に料金を設定できる新しいツールが誕生したばかりでした。これは、お客様の細かいニーズにも、宿泊日単位で柔軟に対応できる画期的なツールです。
これまでの営業スタイルでは、プラン作成の手間がかかるため、特定の宿泊日の集客に困っている施設があっても、なかなかタイムリーな提案ができませんでした。しかし新しいツールがあれば、画面上で簡単に設定できるので、すぐに集客に繋げられます。
私たちは、「集客に困っている施設」を事前データから見つけ出し、すぐに電話をして「この部屋、この日だけは今からでも売らないと損ですよ」と提案する、新しい営業スタイルを推進しました。
インタビュアー:それは、まさに「一休らしい」寄り添った提案ですね。
西村さん:はい。ただ、この新しい営業スタイルを浸透させるには、営業メンバーに「事前データを毎日チェックする」という、新しい習慣を身につけてもらう必要がありました。習慣を変えることは簡単ではありません。だからこそ、私自身が率先してメンバーと一緒に電話をかけたり、口を酸っぱくして「施設の細かいニーズに応えられるのは一休だけだ」と伝え続けました。
特に若手メンバーが多い組織では、リーダーが言うだけでなく、共に汗をかく姿勢が欠かせません。この地道な取り組みが、組織全体の現場力を底上げすることに繋がったと感じています。
「打ち手に悩むほど、本質から遠ざかる」
営業活動で悩む方々に西村さんが伝えたいこと
インタビュアー:メンバーから営業推進、旅館リゾートチームやシティホテルチームなどの様々なチームのリーダーや、そして営業本部長へとキャリアを歩んでこられた西村さんですが、今、一休の営業に最も必要なことは何だとお考えですか?
西村さん:営業には、「会社のアンテナ」と「施設の課題解決を担うフロントサイド」の2つの役割があると思っています。
まず「会社のアンテナ」としては、現場で何が起こっているかを正確に捉え、会社全体にフィードバックする力が重要です。自社の成績だけでなく、競合の動向、マーケットの変化など、あらゆる情報を高解像度で捉える必要があります。
そして「施設の課題解決を担うフロントサイド」としては、「一休らしく」お客様の課題解決に寄り添うことが大切です。たとえば、短期的な利益のために、施設のブランドイメージに合わない提案ばかりをしていては、施設の信頼を失ってしまいます。私たちは、施設の状況を深く理解した上で、一休だからこそできる本質的な提案をしなければなりません。
インタビュアー:最後に、今、壁にぶつかっている全国の若手ビジネスパーソンに、西村さんからメッセージをお願いします。
西村さん:営業として悩んでいる方々は、過去の私自身も含めて、提案する「打ち手」ばかりに悩んでいるように見えます。しかし、本当に重要なのは「マーケットやクライアントを正しく理解する」ことです。
ステップ1: 営業先の担当者と話す。信頼関係を築き、いつでも話せる関係になること。
ステップ2: 信頼関係の上で、データや、他社の成功事例といった、顧客が知り得ない有益な情報を提供すること。
ステップ3: 困ったときに最初に相談される「ファーストコール」の存在になること。
「打ち手」は、このプロセスをちゃんと踏んでいけば、自ずと見えてくるものです。パソコンの画面とにらめっこするのではなく、まずは行動を起こし、相手を知ることにリソースを割いてほしい。
多くの人は、「何を提案するか」を一番最初に考えてしまいがちですが、それは一番最後に考えることなんです。本当に重要なのは、顧客が抱える本質的な課題をクリアにすること。
たとえば、一休が推奨するツールがあったとしても、それが必ずしも顧客の最善の解決策とは限りません。プロモーションでもいいし、その他の手段でもいい。有効な手段はたくさんあります。まずは原点に立ち返って、「どういう相手が何に困っているのか」を徹底的に考え抜くこと。その先にこそ、最適な打ち手は見えてくるはずです。
「挫折」と「成長」を繰り返しながら、一休の営業組織を牽引する西村さん。彼の言葉からは、営業の本質である「相手を深く知る」ことの重要性がひしひしと伝わってきました。
「手法」や「ツール」といった表面的なものに囚われるのではなく、顧客と真摯に向き合うこと。そして、自らが会社の「アンテナ」となり、現場の声を経営に届けること。
これは、一休の営業メンバーだけでなく、すべてのビジネスパーソンに通じる普遍的なメッセージではないでしょうか。
西村さんの歩みは、今後、一休の営業として活躍を夢見る方々にとって、大きな道標となるでしょう。
この想いに共感し、共にレストランや宿泊業界の未来を創っていく仲間を心待ちにしています!
プロフィール
宿泊事業本部 営業部 部長
西村 達雄
鳥取県出身。明治大学 商学部 出身。
2013年 セントラル硝子株式会社 入社
2018年 株式会社一休 財務経理部 入社
2021年 株式会社一休 宿泊事業本部 異動
2025年 株式会社一休 宿泊事業本部 営業部 部長(現在)