冬休みを使って読書をしよう。ということでrootでは、年末にメンバー全員で本屋に足を運び、メンバー各々が一年を振り返りつつ思い思いに本を一冊選び、冬休みを使って読書をしました。
普段の仕事やデザインの文脈に限らず、興味関心がある事柄や私生活の悩みごとなど様々な種類の本が集まりました。
今回はその中でもとくに興味深く、オススメしたい本を5冊ご紹介します。
前回のオススメ本紹介記事はこちら
rootメンバーが選ぶ、経営者やビジネスを理解するためのヒントとなる本6選
私たちは子どもに何ができるのか 非認知能力を育み、格差に挑む
私たちは子どもに何ができるのか 非認知能力を育み、格差に挑む
著者:ポール・タフ
近年、世界の教育者から「非認知能力の育成」に大きな注目が集まっています。 ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマンは、 貧困や虐待など逆境にある子どものなかでも、IQや読み書きのような「認知能力」ではなく、 やり抜く力・好奇心・自制心のような「非認知能力」がある子どもの方が 将来挫折することなく成功する可能性が高いことを発見し、大きな話題となりました。 本書の著者ポール・タフは、ヘックマンの研究をはじめ、 世界中の研究者によるさまざまな科学的知見と先進事例を統合し、 特に貧困家庭に育つ子どもにとって、非認知能力の育成が 「その後の人生」に大きな影響力をもつことを示してます。
この本を手に取ったのは、父として子供がはじめての体験を通じてどのような学習や観察を行い意思を持つようになるのか、気になったことがきっかけでした。非認知能力の育成がその後の人生いおける様々な問題を突破するための基礎能力であることがわかり、子供への接し方やコミュニケーションの重要性を再考させられる一冊でした。子供が学習を行うプロセスはデザインプロセスと似た観点があり学びとは模倣から始まるものであることを改めて実感しました。ただ模倣から始まる能力の習得は認知能力に寄っており、根本にある非認知能力(好奇心や自制心)を養うには人対人の対話が非常に重要な要素であることを理解しました。
これは仕事におけるチームビルディングや相手を理解するというデザインアプローチにも通づるものではないかと思います。
SPECULATIONS 人間中心主義のデザインをこえて
SPECULATIONS 人間中心主義のデザインをこえて
監修:川崎和也ほか
世界中のデザインリサーチプロジェクトの事例集。世界各地の様々な社会的な課題にデザインアプローチで取り組む事例が詳しく紹介されています。我々が直面する3つのパラダイスシフトをもとにパートに分かれています。比較的近い未来から人類以降の遥か遠い未来まで、様々なスコープで社会や環境とのあり方を探索し試行し、我々に問いかけてくる99のプロジェクトが掲載されています。
この本で紹介されるのはデザインリサーチ、つまりデザインのやり方を活用した研究活動です。研究活動にデザインを取り入れることによって新しい関係性を発見することや複雑で困難な問題を解くことなどを共通の目的としています。また、研究活動というと堅く聞こえますが、ただ研究成果を求めるだけでなく実利を生み出し事業として継続していくことも目的にするプロジェクトが多いのが特徴です。社会や環境の問題の中から新しい価値や利益を生み出すプロジェクトから、これからの市場をつくる事業アイディアの種もみつかりそうです。
私たちデザイン会社が遂行するプロジェクトの中でも、複雑な問題を解く新しいやり方や人々にとっての新しい価値を発見することがあります。デザイナーの仕事にはそうして得られた発見を一般化し、他のプロジェクトへ応用するための知恵としてためていく側面もあります。探索し試行し問いかけ、応えられたことをもとにまた探索するというデザインのアプローチによって、世界はもっとアップデートされていくことを想像させる一冊です。
得する、徳。
得する、徳。
著者:栗下 直也
「徳を積む」という言葉をよく聞きますが、徳を積むとは具体的にどういうことなのか、それがなぜ自分に返ってくるのかが疑問に思っていたのでこの本を読むことにしました。
本書では実際に徳を積むとは?から史上の人物で実際に得する徳を積んだ内容、世界での徳を積む社会と多角的に徳を紹介されています。
本書でのただ助けるだけが徳を積むことではなく、自己犠牲になってしまう助けは徳につながらないという話は自分に新しい発見をくれました。自分のことで精一杯なのに徳を積むのなんて難しい!と思っていた自分でもこの本を読んだことで徳を詰めそうと思える一冊でした。
結果を出す人がやっている「思考整理」の習慣
結果を出す人がやっている「思考整理」の習慣 スピードと質を上げる考え方・段取りのポイント
著者:生方 正也
日常で直面するあらゆるタスクをより生産的かつ効率的にこなすために必要な能力「思考整理」の方法について書かれています。「思考整理」の基本中の基本から、より抽象度の高い問題解決への取り組み方やアイディエーション方法までが◯✕の具体例とともに書かれていて、読んだ後すぐに業務で活かせるものが多いです。デザイナーに限らず社会人一年目の方全般にぜひ読んでいただきたい一冊です。
本書では、思考整理についての具体例が挙げられていますが、正直本書を読んだからといってどんな場面でも応用・実践できるかと言われると答えはNoかと思います。重要なのは常に思考を働かせ、整理していく習慣を身につけることだと感じました。
良質なアウトプットを生み出すには、手を動かす前にゴールまでの筋道を明確にして、あらゆるパターンを考慮する必要があります。そのためには常日頃から自身の思考を整理することは必要不可欠です。
私自身もまだまだ思考の整理が上手にできていませんが、本書を読んで改めて思考を働かせることを絶やしては行けないのだと強く感じることができました。考えることや伝えることに苦手意識がある方にはぜひ読んでいただきたいです。
アウトプットのスイッチ
アウトプットのスイッチ
著者:水野 学
「人はアウトプットしかみない」という主張からはじまる本書は、日本を代表するクリエイティブ・ディレクター水野学さんの仕事術がこと細かに記された「実用書」です。
実用書のカテゴリに属するとはいえ、本来ならば実用書から抜け落ちてしまうような細かな軌跡や選ばなかった選択肢も含めて、アウトプットした本人の頭の中を高解像度で追体験できる贅沢な一冊です。
デザイナーはよく右脳と左脳どちらも必要な職業だと言われることが多いですが、水野さんの仕事へのスタンスを眺めていると言わんとする事がよくわかります。言葉が持つ曖昧さを徹底的に排除し「なぜそうあるべきなのか」本質を探し求める一方で、直感や好き嫌いの感覚も同時に使い分けています。くまもんや中川政七商店など、自分と接点のあるアウトプットを題材に、最終表現に至るまでの思考術を学べることができます。
人は非常にあいまいな生き物です。「いいもの」とは根拠のない感覚と他者が納得できるロジックのどちらも満たしている必要がある、と気づけたことが最大の学びでした。
「客観的であること」はある意味では誰もが思い浮かぶアイデアであり、考えを止めてしまう落とし穴にもなる。動物としての直感と知性がつくりだす論理を、つねに天秤にかけながらアウトプットしていくことの大変さと楽しさを教えられたような感覚をもちました。
個人的には、後半に掲載されている生物学者の福岡さんと水野さんの対談が非常に面白いのでそれだけでも読む価値があると思います。
「自然界」と「デザイン行為」の親子のような関係性を探っていくと、つくるとはどういうことなんだっけ?という原点回帰に繋がり、対談を読み進めながらハッとさせられました。
いかがでしたでしょうか?今月は、メンバーが普段どんなことに興味関心を持ち、どんな悩みや課題を抱えているのかを書籍紹介を通じて読み取ることができました。
それに加え、教育や思考、徳についてなど、今回ご紹介したようなデザインの文脈以外の本からでも業務に活用できるヒントや気づきは十分に得られることがわかったと思います。
みなさんもぜひデザインの可能性を広げていくためにも、様々な分野や業界の知識を積極的にインプットし、業務に活用してみてはいかがでしょうか。