「20 代なのに裁量が大きすぎる!」
サイボウズの営業戦略部(アライアンスグループ)で働く岩越崇史さんは、転職後の感想をそう打ち明けます。中途入社2 年目にして、企業の経営層を相手に「協業」の交渉をする日々。 kintone をはじめとしたサイボウズ製品の可能性を最大限に高めるため、連携できるサービスを探し続けています。
SaaS 企業のカオスマップを見渡し、関連するプレスリリースには隈なく目を通して、必要とあらばサイボウズの社長や役員を引っ張り出して交渉の場へ。
そんな岩越さんの前職が異業種の損保業界だと知ったら、驚く人も多いかもしれません。異業種からの転職なのに、なぜ自身でも驚くほどの裁量を得て大きな仕事を動かせるようになったのでしょうか。ギラギラとした野望に燃える岩越さんの思いを聞きました。
(話を聞いた人)
岩越 崇史(いわごい・たかし)さん
大阪大学経済学部卒業後、2018 年4 月に新卒で国内大手損害保険会社に入社。2019 年10 月にサイボウズへ転職し、パートナー営業を経て2020 年10 月に営業戦略部 アライアンスグループに異動。他社ソフトウェアメーカーとの協業を進めている。
悩み抜いた転職、「ここで必死にやっていこう」と決意するまで
――岩越さんが新卒で損保業界へ進んだ理由は?
熊本県にある僕の実家が、2016 (平成28) 年の熊本地震で被災したんです。大変な状況の中で損害保険に助けられ、その事業意義に惹かれて、大手損保会社へ入社しました。
――当時はどんな仕事を担当していたのでしょうか。
自動車保険の保険金支払いを行う部門に配属され、事故にあった契約者をサポートする仕事を担当していました。事故の相手方との示談交渉を代理することも多く、修理代金や慰謝料を巡るタフなやり取りも経験しました。
世の中になくてはならない役割である一方、大きなプレッシャーにさらされる仕事であるのも事実です。周囲にはストレスフルな状況で体調を崩してしまっている人もいました。「こういった同僚たちの働きを何とか変えることができないだろうか」と思って上司と話したこともあるのですが、「メンバーの働き方までアプローチするのはそもそもマネージャーのミッションではない」ということで改善できませんでした。
そんなモヤモヤを抱えているときに、青野さん(サイボウズ代表取締役社長:青野慶久)の著書を読んだんです。そこには、僕がそれまで知らなかった組織のあり方、理想的な会社が書かれていました。「そんな会社が本当にあるんだろうか?」と興味がふくらんで、選考を受けてみることにしました。
――異業種からIT業界へ進むことに抵抗はありませんでしたか?
特にありませんでした。スキル面は何とかなると思っていたんです。もし転職するとしたら、1 社目を1 年半で辞めることになるので、次は全力で新しい知識やスキルをキャッチアップしなきゃいけないという思いもありました。
家族や親戚は僕が転職することに猛反対。そんな経緯もあったので、異業種だろうと何だろうと、とにかく必死でやろうと考えていましたね。
――確かにせっかく新卒で入社した大企業を辞めるとなると、周囲は反対するかもしれませんね。岩越さん自身は迷わなかったんですか?
正直に言うと、かなり迷いました。「せっかく大企業に入れたのに」という思いもありましたが、それ以上に、新卒のときの自分の決断を否定することになるのがつらかったんです。
サイボウズの選考が進む中でも迷い続けていました。それでも、選考過程でサイボウズの現場で働く人たちと会い、仕事への考え方や働き方、会社の文化などについて聞かせてもらう中で、「ここで必死にやっていこう」と決意しました。
納得いくまで食らいつく、その先の新たなチャレンジ
――サイボウズ入社後はどんな仕事を担当したのでしょうか。
サイボウズのパートナー企業さんを担当し、ともにサイボウズ製品を広げていく「パートナー営業」です。僕は当初、最大規模のパートナー企業さんを担当するチームに入りました。
いきなり大手クライアントの情報システム部門の方々と会話することになり、知識が豊富な関係者の中に入って、最初は焦ってばかり。チームの勉強会には積極的に参加し、分からないことがあれば先輩を捕まえて質問攻めにしていましたね。
自分で勉強したり調べたりして、納得のいかない部分があれば何回も質問していたので、当時の先輩たちには苦労をさせてしまったと思います。
――どうしてそこまで食らいつけたんですか?
僕は決めたことは徹底的にやりたいし、自分が納得いくまで落とし込みたいタイプなんです。それに根幹には「この転職を絶対に成功させてやる」という思いがありました。
そんな僕にとことん付き合ってくれた先輩や上司には、本当に感謝しています。サイボウズには「質問責任」「説明責任」という言葉があります。この言葉を体現するように、社内の人たちは質問してくる相手に超真剣に向き合ってくれました。
若手の質問だからといって、軽くかわすようなことを絶対にしないんですよ。2 時間でも3 時間でも時間を取って、僕の疑問について一緒に考えてくれました。
――そして入社1 年後、現在のアライアンスグループに移っています。
パートナーさんと一緒にクライアントの課題解決を進めていく中で、サイボウズ製品は「サイボウズ製品だけで成り立っているわけではない」と知りました。
そもそもクライアントは、 kintone ありきで何かを考えるわけではありません。
たとえば自社の経理業務について、「紙の資料が多いからデジタル化したい」と考えたとします。そうなるとkintoneだけではなく、オンラインで請求書をやり取りできるシステムや、オンラインで帳票管理できるシステムとの連携も必要になります。
kintoneはさまざまな強みを持っていますが、決して万能ではありません。他のサービスと組み合わせることでさらに価値を発揮します。僕はここに、ビジネスが広がっていく大きな可能性を感じました。
そんなときに営業本部長から「他社とのアライアンスを強化したいので、営業戦略部のポジションに来てくれないか」と打診され、すぐに引き受けました。
先方の経営層と対峙する「大きな意思決定」の場へ
――改めて、アライアンスグループとはどんなチームなのかを教えてください。
他社のソフトウェアメーカーと協業し、チームワークあふれる社会を作ることをミッションとしているチームです。
サイボウズのソフトウェアだけでは実現できないことについて、連携することでともに価値を高められる企業やソフトウェアを新規開拓しています。アライアンスに向けた交渉を進め、実現した後には、マーケティングや営業の協業体制を固めていく役割も担っています。
――協業する相手はどのようにして見つけるのでしょうか。
まずはビジネス視点で「サービスを組み合わせることで解決できる課題」を考えます。
SaaS企業のカオスマップを見れば、50 以上の領域に、800 社以上の企業が存在しています。それぞれの領域にどんなプレイヤーがいて、どのような価値を発揮しているのかをインプットすることが欠かせません。連携の可能性がある企業やサービスについては、プレスリリースにも隈なく目を通しています。
――アライアンスに向けた交渉実務も担当するんですか?
はい。アライアンスは企業にとって大きな意思決定となるので、先方の事業部長クラスや役員クラス、ときには社長が直々に対応してくださることもあります。とても大きな責任を伴う仕事なのだと自覚しています。
必要があればサイボウズの役員陣にも同行してもらい、詰めの交渉を進めていきます。青野さんに同行をお願いしたこともありますよ。
――この大きな役割を、中途入社2 年目で担っているというのが率直に驚きです。
そもそも他の企業では、こうした仕事を営業部門に任せていないかもしれません。実際に他社と交渉する際は経営企画部門の役員の方と話すことが多いです。そんな仕事を、まだまだ若手の僕に任せてもらえるのは、とてもありがたいことだと思っています。
「他の人には負けたくない!」僕は僕の価値観で、サイボウズの理想を追いかける
――サイボウズで働き始めて丸2年が過ぎました。前職との文化の違いをどのように感じていますか?
サイボウズって、戸惑ってしまうくらい20 代の裁量が大きすぎる会社なんですよね。現場で感じた課題を解決するために自分の意志で動けるんです。
実際に僕は20代にしてアライアンスという大役を任され、実務面はもちろん、アライアンスの全体戦略を考える仕事も担当させてもらっています。もし前職で働き続けていたとしたら、30 代後半になってようやく見えてくる世界だったんじゃないでしょうか。
最近では「事業戦略室」の仕事も兼務しています。事業戦略室は kintone 全体の事業戦略について営業本部長やプロダクトマネージャーと議論する部署で、僕は最年少メンバーとして参加しています。
――岩越さんはなぜ、こうした機会をつかむことができるのでしょうか。
「とにかくやってみるスタンス」で動いているからかもしれません。事業戦略室との兼務についても営業本部長から打診され、間髪を入れずに「やります!」と返事しました。
それに、誰よりも覚悟を持って最新情報をインプットし、任された場所で活躍できるように全力で走っているという自負があります。他の人には絶対に負けたくないと思っています。
この「負けたくない」という言葉、サイボウズ社内ではあまり聞かないんですけどね(笑)。
僕のようにギラギラしている人は少ないかもしれません。でも、「いろいろな価値観があっていい」と考えるのがサイボウズ。僕は僕の価値観で、サイボウズの理想を追いかけていきたいです。
――今後に向けた野望も聞かせてください。
製品連携だけにとどまらず、サイボウズと他社との協業の選択肢をさらに広げていきたいと考えています。
アイデアはいろいろあります。たとえば kintone を基盤にして SIer さんと協業したり、 kintone ユーザーへダイレクトにリーチできるプラットフォームを作ったり。そうした可能性を実現できれば、大げさではなく、SaaS 業界を変えられると思うんですよね。
――そうしたプランを実現していくために、アライアンスグループにはどんな仲間がほしいと思いますか?
徹底的に情報収集したり、失敗を恐れずに誰もやったことのない企画を提案したりできる人です。前職までの経験はどうでもいいと思っています。
変化の多い世の中にあって、SaaS 業界はひときわ激しく進化を続けています。アライアンスも、これまでの方法にとらわれることなく、どんどん新しい可能性を考えていく必要があります。
最新情報をたくさんインプットして、新しいことに挑戦していきたい。そう考える人にとって、ここまでやりがいのある場所はなかなかないと思います。
企画 :サイボウズ営業人材開発部
取材 / 執筆:多田慎介
撮影 :小林 陸