「廃菌床って、堆肥にすればいいんじゃないの」
過去の記事でも少し話したかもしれませんが、最初、私もそう思っていました。
実際、その通りではあるんです。
ただ、それだけで全部が片づくなら、全国で年間何十万トンも処分され続けているはずがない。調べていくと、既にある再利用の方法それぞれに、ちゃんと壁がありました。
まず堆肥。
これは相性がいい方法です。菌床の材料は、おが粉、米ぬか、ふすまなど、堆肥にするには揃いすぎているくらいの構成になっています。
宮城県の実績報告書によると、水分を調整して二週間に一回ほど切り返せば、九十日程度で腐葉土状の堆肥になるとされています。
ただ、この九十日という時間が壁になります。
毎日出てくる廃菌床を、九十日分ずっと置いておける場所がいる。切り返す人手もいる。発酵の初期にはきのこ特有の臭いも出る。
土地と手間と時間、この三つが揃わないと回りません。
規模が大きくなるほど、置き場所の問題は重くなります。
次に飼料・敷料
畜産農家への飼料・敷料としての提供。
これは実際に動いている事例があって、無料で畜産農家まで運んでいるケースもあるそうです。ただここには距離という条件がつきます。
廃菌床はおが粉より水分が多いので、重い。
近くに受け入れてくれる畜産農家がいるかどうかで、成立するかどうかが決まってしまう。
バイオマス
三つ目が、バイオマス燃料化。
環境省の事業報告を見ると、これはかなり本格的に技術開発が進んでいました。
乾燥機の開発、粒度を五ミリ以下に揃える工程、石突の粉砕。
一時間に四百キロ以上を連続処理できるシステムまで確立されています。
ただ、裏を返せばそれだけの設備がいるということです。乾燥にはエネルギーがかかる。装置も必要になる。
個々の農家が自前で持てるものではありません。
再利用
四つ目が、また菌床の材料として使い直す方法。
おが粉の代わりに廃菌床を混ぜられれば、材料費が下がる。
ある経営指標では、培地の材料費のうち六割以上を広葉樹おが粉が占めているそうなので、効果は大きい。
ただ、これも生産者ごとに含水率やpHがバラつくため、安定して使えるかどうかの研究が今も続いている段階です。
こうやって並べてみると、どの方法にも「うまくいく条件」が付いていることが分かります。
場所がある、近くに引き取り手がいる、設備がある、品質が揃っている。
ひとつでも欠けると、また産業廃棄物に戻る。
しかも、そのどれもが自社だけで完結しません。
堆肥なら土地、敷料なら畜産農家との関係、燃料なら設備投資、菌床再利用なら他の生産者との品質のすり合わせ。外との接点が必ず必要になる。
技術書を読み込めば答えが出る種類の問題ではないと感じています。
だから「答えがない」のではなくて、「答えの候補はあるのに、全部に条件がついている」というのが正確なところだと思います。
これは技術の話であると同時に、仕組みをどう組み立てるかという話でもあります。
誰と組むのか、どこに置くのか、どういう順番で回すのか。
その設計が決まらないと、いい技術があっても現場では動かない。
逆に言えば、椎茸の栽培経験がなくても入っていける領域だと思っています。
必要なのは、条件がバラバラに散らばっている状態から、組み合わせを見つけて形にしていく力の方に近い。
前職が農業と無関係でも、そこは関係ないんじゃないかと感じています。
私たちも、ここをまだ探してはいるものの、現在すでに取り組みを加速し実施直前のところまで要件の定義は終えています。
課題は大きいですが、0→1が出来上がりさえすれば椎茸農家全体が活性化できる一つの起爆剤にもなると思います。
正解が決まっていない領域なので、外から来た人の発想がそのまま効いてくる可能性もある場所だとも思っていますので、もしここまで読んでいただけたのならまずはカジュアル面談だけでもやってみませんか?