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日本発のSaaSプロダクトでPLGは機能するのか——COOとセールス責任者が語る今後の組織戦略

SaaSサービスの普及によって、昨今日本でも「PLG」という言葉を耳にすることが増えてきました。PLGとは「Product-Led Growth(プロダクトレッドグロース)」の略で、プロダクト主導でプロダクトを売り、成長させる営業モデルを指します。一方、従来通りマーケティングやカスタマーサクセスによってプロダクトを売るモデルは、SLG「Sales Led Growth(セールスレッドグロース)」と呼ばれています。

※文中の図は「【解説】PLG戦略実行におけるフレームワークと成功のカギ」から引用しております。

営業モデルが違うということは、適したマーケティングのあり方、市場選定の仕方、アプローチすべきユーザーの選び方も変わってきます。それらの違いを理解した上で、PLG・SLGどちらか適した手法を選択することが企業には求められています。

そこで、今回は2022年9月27日にoViceが開催したイベント「oViceの今後の成長を作るPLG・SLG型組織戦略」の内容をもとに、PLGとSLGの違い導入する上で意識すべきポイントoViceの目指す営業組織の形をまとめてお届けします。

登壇者


PLGを導入しやすい条件とは

福原:自分たちのビジネスがPLGに向いているかどうかを判断するためのフレームワークに「MOATフレームワーク」があります。「M:Marketing Strategy(市場戦略)」「O:Ocean Condition(競走環境)」「A:Audience(意思決定者)」「T:Time-to-value(プロダクト理解までの時間)」の頭文字をとっています。

MOATで整理すると、PLGに向いているプロダクトの特性は「安価で気軽に試せる」「市場に多くの競合がいる」「導入の意思決定を現場担当者ができる」「プロダクト理解が容易」の4つです。

競合が多いとは、つまりエンドユーザー(現場担当者)が多いということ。そうした人たちに、価値や操作方法が理解しやすく、かつ安価で気軽に試せるプロダクトを体験してもらう。その上で、有料化やエクスパンション(顧客が利用範囲を拡大すること)をしていくのが、PLGの基本戦略になります。

田村さん、具体的な事例を教えていただけますか?

田村:例えば、私が過去に従事していたERP(基幹システム)は典型的なSLGです。機能や導入することによるメリットデメリットをきちんと理解しないといけないし、金額の規模も大きい。勝手にお客様が買ってくれることはありません。

一方、PLGの典型例はスマホゲームです。いちユーザーが簡単に無料版で遊べて、もっと楽しみたかったら課金します。誰かが営業するわけでもなく、ユーザーが自動的に購買する導線が設計されています。

福原:プロダクトによって適した売り方があるんですね。

田村PLGとSLGの使い分けのポイントは、オーディエンス(意思決定者)によって提供すべき価値が違うということです。経営者層はプロダクトの具体的な仕様よりも、ビジネスパフォーマンスへの影響を知りたいもの。「それをPLGで届けきるのは難しいから、SLG的なモーションが必要」といった議論して決めていきます。

また、PLGとSLGを企業規模によって分ける企業も多いと思いますが、これは間違った認識です。実際は、エクスパンジョン(顧客の利用範囲が広がること)のフェーズによって分かれてきます。導入初期のランディングではPLG、ある段階から上になったらSLGなど、訴求する相手や訴求したい価値によって手法を変えるのが大切です。

日本発のoViceはPLGを導入できるのか

福原:「フェーズによる使い分け」は新しい観点でした。田村さんは海外のSaaS企業で長らく働かれていましたが、日本企業との違いをどう感じますか?

田村海外のSaaSではPLGによるランディングが当たり前になっています。国土や物理的な販売範囲が広いため、お客様のところに出向くコストが大きく、対面ではない売り方をする文化が根付いているんです。「出向かないと失礼」といった価値観がまだ残っている日本と比べると、PLGの導入のしやすさが全然違います。

また、IT職の多くがSaaS企業に所属していることも大きな違いです。IT人口の8割程度は事業会社側にいます。一方、日本の場合は2割程度しか事業会社におらず、残りはベンダーやサービスプロバイダー、Slerなど外部に所属しています。

海外では外部の人に頼らず、自分でいろんなサービスを比較し、ビジネスケースを描き、稟議を通して成果をあげていくのがスタンダードです。そうした文化とPLGは相性がいいのだと思います。

福原:日本の商習慣にPLGはマッチしづらいのでしょうか?

田村:日本のPLG比率は大体20%くらいで海外と比べると低いのですが、可能性がないわけではありません。前職Asanaでは、日本の売り上げの50%はPLG経由でした。PLGで買ってもらうために必要な要素を集めて、お客様のバイヤージャーニーに沿って組み立てることができれば十分戦えます。

それには先入観を捨てて、日本の商習慣のスタンダードを疑うことが必要です。従来通りに考えていては、人手が増えていきます。どのようにバイヤージャーニーを演出するか。日本発プロダクトのoViceをPLGで売る方法を見つけるのが、私たちのチャレンジです。

福原:もうひとつ質問したいのですが、ハイブリッドワークやバーチャルオフィスの市場が成熟していない中、PLGを増やすことは可能でしょうか?

田村:市場が成熟していないのは事実です。oViceの目指すハイブリッドワークには今のところ競合がいません。しかし、お客様の体験はわかりづらいものではないので、きちんと設計すればPLGもできると思います。

福原:気軽に触ってくださる現場の方にはPLGが向いていそう。今後の課題は企業内でどう定着させるか、どう利用範囲を広げてもらうか、ですね。

目指すはPLG・SLGハイブリッド型の組織

福原:まさに今、oViceは転換期を迎えています。もともとPLGを目指してはいたけれど、バーチャルオフィスの認知が広がっていなかったこともあり、カスタマーサクセスによる商談などでカバーする部分が多くありました。そこで、PLGとSLGの組織をしっかりと分け、それぞれの収益を狙うように体制を変えることにしました。

田村:oViceはPLG的なジャーニーを持ちながら、SLG的なモーションをしてきました。まずはPLGとSLGを意図的に分け、接点の持ち方や価値訴求の仕方など、それぞれの専門性を高めるところから始めるのが大切だと思います。

福原:現在は会社規模によってPLGとSLGを使い分けています。しかし、ハイブリッドな体制にすることが理想なのかもしれないと、先程の田村さんのお話を聞いて思いました。

田村:PLGとSLGのグラフはつなげることができるんです。ランディングはPLGで一部署など小規模の範囲で導入していただき、エクスパンションのタイミングでSLGに切り替える。2つの営業モデルを一連の流れと捉え、組織を作ることが大事だと思います。

福原:そのためにも、セールス職の採用には力を入れていかなければいけませんね。今回の話を聞いて、oViceのビジネスに興味を持って下さった方は、ぜひご応募いただけたらと思います。oViceは日本発で世界に通用するようなサービスを目指す、かなり特異な存在です。一緒に私たちの挑戦をドライブしてくれる仲間を求めています。

oViceでは現在、セールス職を中心とした様々なポジションの採用を行っております。エントリーをお待ちしております。

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