株式会社Codence代表の西野です。
4月1日の朝。スマートフォンのアラームで目が覚めて、カレンダーを見た瞬間、「ああ、今日からか」と声に出していました。
何が「今日から」なのか。新年度です。去年までは、平然として迎えていた4月。今年は、自分の会社の営業をしながら迎える4月。同じ4月1日でも、見える景色がまるで違います。
そして、4月。率直に言うと、1年で一番落ち着かない季節が始まりました。
エンジニアが動く季節
IT業界、とりわけSESという業界にいると、4月の人の動きは肌で感じます。
なぜ4月に人が動くのか。理由はシンプルで、多くの企業の予算が4月に切り替わるからです。新しい予算がつけば、新しいプロジェクトが始まる。プロジェクトが始まれば、エンジニアが必要になる。だから4月は「エンジニアを探しています」という声が、一気に増えます。
その逆もあります。年度末の3月で予算が締まるプロジェクトは、3月末でエンジニアの契約も終わる。つまり、3月末に現場を離れるエンジニアと、4月から新しい現場に入るエンジニアが、同時に大量に発生します。
これがSES業界の4月です。
経営者としては、この波を読み、うまく乗りこなす必要があります。メンバーの案件が3月末で終わるなら、1月から2月の段階で次の案件を探し始める。4月から始まる新しいプロジェクトの情報が入ってきたら、すぐに内容を精査して、うちのエンジニアに合うかどうかを判断する。
「この案件はJavaを使う」「このプロジェクトはリモートOK」「このクライアントは金融系で品質に厳しい」。そういった情報を一つ一つ確認しながら、メンバーにとって良い案件を探していきます。
SESの営業というと、「とにかく人を送り込めばいい」と思われることがあります。でも、少なくとも私はそうしたくない。案件とエンジニアの相性が悪ければ、エンジニアは不幸になるし、クライアントにも迷惑をかける。誰も得をしません。
だから、案件選びには時間をかけます。その分、4月前後は特に負荷が大きくなるのですが。
営業の電話が鳴り止まない、わけではない
「4月は案件が増える」と書きましたが、営業の電話がひっきりなしに鳴るような状況を想像されたかもしれません。残念ながら、そんなドラマチックな話ではありません。
うちはまだ創業1年のSES企業です。社員数は、私を含めて3人。大手のように専属の営業チームがいて、案件情報が次々と流れてくるような体制ではありません。
営業活動は、基本的に私が一人でやっています。取引先とのやりとりも、見積書の作成も、契約書の確認も。「社長業」と「営業」と「管理業務」を一人でこなしている状態です。
4月が特に大変なのは、「攻め」と「守り」を同時にやらなければならないからです。
「攻め」とは、新しい案件の情報を集めて、取引先を開拓すること。4月は新しいプロジェクトが多く立ち上がるので、チャンスも多い。でもチャンスをつかむには、自分から動かなければなりません。
「守り」とは、今現場で働いているメンバーのフォローです。「新しい現場に慣れたか」「困っていることはないか」「契約更新のタイミングはいつか」。こうしたことを一つ一つ確認して回ります。
大きな会社なら、営業部門とフォロー部門が分かれているでしょう。うちの規模では、全部を一人でやります。正確に言えば、一人でやるしかない。
正直に言えば、大変です。時間が足りないと感じることもよくあります。
ただ、全部を自分の手でやっているからこそ分かることがあるのも事実です。
たとえば、営業の打ち合わせで「こういうエンジニアがほしい」と言われた時。そのプロジェクトの空気感を、直接自分の耳で聞いている。だから、メンバーに案件を紹介する時に「この現場はこういう雰囲気だったよ」と具体的に伝えられます。
営業担当とフォロー担当が別々だと、どうしても伝言ゲームになる。ニュアンスが抜け落ちる。その結果、「聞いていた話と違った」というミスマッチが生まれることがある。
小さい会社だと、その心配は少ない。全部見えているから、ミスマッチを防ぎやすい。4月の忙しさの中で、「小さいからこその強み」を実感する場面は意外と多いのです。
この落ち着かなさの正体
案件の調整、新メンバーの受け入れ、決算、来期の計画。4月にやるべきことをリストアップすると、なかなかの量になります。
ただ、私が感じている「落ち着かなさ」は、単純な忙しさとは少し違うような気がしています。
変化のスピードに、自分自身が追いついていないのかもしれません。
やるべきことが増えた分、考えるべきことも増えました。「今の方向性は合っているのか」「メンバーに対して十分なサポートができているか」「もっといい案件を探せるのではないか」「受託開発の準備は進んでいるのか」。
こういう問いが、頭の中でぐるぐる回ります。答えが出ないまま、次のタスクに手をつける。少し経って、また同じことを考える。その繰り返し。
この「答えの出ない問い」が常に頭の中にある状態。それが、4月の落ち着かなさの正体なのだと思います。
でも、これは悪いことではないのかもしれません。「考えることがある」というのは、「動いている」ということの裏返しです。何も動いていなければ、悩むことすらない。落ち着かないということは、前に進んでいるということ。そう捉えるようにしています。
それでも、4月は好きだ
ここまで、4月の大変さについて書いてきました。でも、誤解のないように言っておくと、私は4月が好きです。
新しい案件の話を聞くと、素直にワクワクします。「こんなプロジェクトがあるんだ」「うちのメンバーならこの案件で力を発揮できそうだ」。そういうことを考える時間は、経営者としてのやりがいそのものです。
新しいメンバーと一緒に仕事を始める瞬間も、やっぱり嬉しい。お互いに少し緊張しながら、でも「いい仕事をしよう」という気持ちは同じ。その空気が好きです。
街を歩いていると、真新しいスーツを着た新社会人らしき人たちを見かけます。心の中で「頑張れ」とエールを送りながら、自分ももう少し頑張ろうと思う。
4月はいろいろなことが同時に動く季節です。忙しくて、落ち着かなくて、時々不安にもなる。でも、その慌ただしさの中に、確かに前に進んでいるという手応えがある。
もし今、新しい環境を探しているなら。エンジニアとして次の一歩を踏み出そうとしているなら。
小さな会社の、落ち着かない4月を一緒に過ごしてみませんか。きっと、大きな会社では味わえないものが、ここにはあります。