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プロフィール
廣政愁一(ひろまさしゅういち):東進ハイスクール・河合塾の予備校講師としてキャリアを積み、30代で日本初の学校内予備校「RGBサリヴァン」を立ち上げ。2015年5月に映像授業の配信サービスを提供する「株式会社学びエイド」を設立。現在は、代表取締役社長を務めながら、社会構想大学院大学にて「教育ビジネス」「教育コンテンツ」を専門領域に教授を務めている。著書は『勉強がしたくてたまらなくなる本』や『進撃の英語』(双方ともに講談社)など多数。
“わからない部分”にフォーカスできるよう、1コマはすべて5分以内
──予備校講師としてキャリアを継続する選択肢もあったと思います。なぜ起業の道を選び、「学びエイド」を立ち上げたのでしょうか?
起業したきっかけは、予備校には割と「職人肌」の先生方が多いのですが、自分は先生方のそうした力をどうやって多くの生徒に届けるか、仕組みを考えるほうが得意だとわかっていたからです。
それゆえに、学びエイド設立の前には、日本初の「学校内予備校」を立ち上げました。
学校の教室を使用するため、場所代や広告費が必要ない。その分、高い人件費を先生方に回せるので、一流の予備校教師を集められます。質の高い学びを、多くの生徒に届ける仕組みをつくりました。
その後、今までの経験から、我々は違うかたちで、教育の意欲を生徒に提供できるのではないかと考えたのが、学びエイドを設立するに至った経緯です。
私自身、東進ハイスクールで映像授業の予備校講師からスタートしたキャリアから、他社のオンライン映像授業がもつ強み・弱みを十分に把握していましたし、そこに対する違和感や課題感がありました。
こうした考えのなかで、とんでもなく良い映像授業を、安く、より多くの人に届けられる仕組みができないかと考え、誕生したのが今の学びエイドです。
1講師として、1教室から1つの学校へと、そしてインターネットへと広げていきました。
──学びエイドの動画が、1コマ5分なのはなぜですか?
情報を端的に伝えたかったからです。
一般的な予備校の授業は約90分。講師が黒板に書いている時間や繰り返し解説している部分を省くと、1講座は約23分に短縮できます。
ただ、それでもまだ長いと考えていました。きっと、もっと凝縮できるぞ、と。
たとえば、英語の関係詞の授業を受けたとしましょう。「関係詞」という括りのなかでも、”関係副詞”がわからない生徒もいれば、”非制限用法”がわからない生徒もいますよね。
つまり、関係詞をさらに細かく分類し、それぞれの項目ごと5分単位に区切ることで、より簡潔に・早く生徒にとって必要な情報を伝えられると考えたのです。
インターネットが当たり前にある環境で育った生徒たちは、「わからないことがあれば、すぐに調べる」習慣が身に付いています。
「関係代名詞の基本」「関係詞 非制限用法」「関係副詞」「関係副詞 非制限用法」と細かく区切れば、情報が網羅”されるため、検索した際にもヒットしやすくなります。
一般的な予備校は、講師の人間性を全面に出し、「その講師が好きだから授業も受ける」というビジネスモデルです。
しかし、学びエイドはその対局にいて、「すでに理解している部分は聞かなくて良い」という考えで、“効率良さ”を極限まで追求しました。
自由を手に入れるための基盤は学ぶ“意欲”
──MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に込めた思いを聞かせてください。
学びエイドの企業理念は『Be a player.』です。「どんなことも楽しめる人になりましょう」という意味を込めています。
私は“自由”が好きです。反対に言うと、行動や考え方を人に縛られることが嫌い。
たとえば、マスクの着用についても、“誰かに言われたから”ではなく、自ら考えて着用するか否かを決めることが、大切だと思っています。まさしく、それが“自由”ですよね。
“自由”であるためには、常に勉強していなければなりません。それはなぜか。
“自由”とは、「自分自身で判断を下すこと」だからです。要するに、自分自身の判断を信じられるということですね。
その時の決断が、たとえ未来から見ると間違っていたとしても、現段階で精一杯に考えた結果なら後悔はしないはずです。
そして、ここでいう“勉強”とは、国語や数学だけを指しているわけではありません。
「人として成長できているか」「今を一生懸命に生きているか」と自らを振り返り、成長に必要だと思うものを学ぶこと。行動指針にある『いつでも、どこでも、なんどでも学ぶ。そして、「あそぶ」。』を体現することです。
常にいろんな角度から、「もっと学びたい、さらに向上したい」と思って勉強することで、“自由”が手に入り、人生を楽しめる人になると考えています。
──なるほど。それゆえに、経営目標が『教育の「意欲」の機会均等をあまねく達成し、前向きなひとをたくさん作る。』なのですね。
そうですね。
教育“機会”の均等は、すでに一定達成されていると考えています。義務教育や図書館の存在、参考書などにより、教育の機会は浸透しているからです。
しかし、教育“意欲”の均等には、まだまだ課題が残されています。
たとえば、進学率の低い地域を見てみると、そもそも勉強する以前に、「周りが大学に行かないから」「親が望んでいないから」という理由で、進学を簡単に諦めてしまう人が多い。これは、「教わりたい」という教育の“意欲”が均等に与えられていないことが、大きな原因だと考えています。
また、教育意欲の均等とは、決して“教わりたい人”のためだけに実現するものではありません。教える人の“教えたい”という気持ちも尊重するべきです。「教えたい」という熱意を持った人が、「教わりたい」という気持ちを掻き立てる。そして、新たな「教えたい」という情熱を生み出し、循環させていきます。これがまさに、教育“意欲”の均等だと考えています。
歌手や画家も、「聞いてくれる人がいるから歌手になりたい」「見てくれる人がいるから画家になりたい」と思う前に、「歌いたい」「描きたい」といった情熱が先にあるから、ファンを生み出したはずですよね。
学びエイドに参加されている先生方にも、「最高の講義を届けたい」という強い思いや、「教えたい」熱量と講義力を持った志の高い人が集まっていると自負しています。
私たちはこうした思いから、『「教えたい人」と「教わりたい」をていねいに紡ぐ。』をミッションに掲げています。
求めるは能力が高い人ではなく、楽しめる人
──教育業界において、今後何が求められると考えていますか?
サービスの核に“教育の専門家”がいることは必須になるでしょう。
教育は、非常に専門性が高い業界です。ここ最近で、教育に対する知見がない他業種がEdTech(※)に挑戦し、失敗するケースをたくさん見てきました。
※EdTech(エドテック):Education(教育)とTechnology(技術)を組み合わせた造語。教育分野にテクノロジー技術を取り入れて支援する仕組みやサービス。
教育業界は閉鎖的なので、業界内で起こっていることは外部からは見えません。
他業種が「教育もデジタル化できるんじゃないか」と参入しても、その閉鎖的な環境をどう突破して良いのかわからない。資金調達を行っても、伸び悩んでいるのが現状なのです。
ですので、今後はDX化の時代に突入していきますが、その中心に「教育の専門家がいるかどうか」が、サービス継続の大きな鍵となるはずです。
──最後に、求める人物像について教えてください。
まず、当社の理念に賛同していただける方でしょうか。弊社と合わない方は、自分の能力やスキルを掲げて働く「意識の高い方」かもしれません。
今の能力の高さではなく、「伸びしろ」であったり、どのくらい「過去の自分から成長できたか」を大事に考えています。それは、学びエイドが「教育の会社」だからです。
一般的な予備校では“偏差値の高さ”に着目するため、いわゆる「できる子」が評価される。しかし、学びエイドでは最初の偏差値がたとえ35であったとしても、努力を重ねて40に上がったとすれば、大きく評価します。
成長とは、「できたか」ではなく、「どれだけできるようになったか」であると考えます。理念にも通ずるこの価値観を理解し、誠実にたくましく、そして楽しくキャリアを積んでいける方とご一緒したいですね。