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大手メーカーの主任を辞めてDELIPICKSの取締役へ。食品業界の課題と経営の立場で経験したハードシングス。

<菅洋平>
東京大学大学院 生命科学専攻卒業。新卒で日清フーズにて冷凍パスタの商品開発・新工場立ち上げを経験後、農林水産省に入省し生鮮野菜の輸出入に従事。日清食品にて生産管理部の主任、OEM工場のマネジメントを経験。2022年にDELIPICKSに入社し、現在は取締役に就任。

2022年の8月に生産管理・商品開発部のメンバーとして入社した菅さんは、持ち前のマネジメントスキルとビジネス経験、経営視点での課題解決能力が評価され、入社から半年後に執行役員に就任。その1年後には取締役に就任し、サプライチェーン部門全体の統括から未経験のCFO業務(資金調達対応、決算対応など)を担当しました。どのようなハードシングスや気づきがあったのか、赤裸々な実体験を伺いました。

大学院から大手食品メーカー、農水省を経験して見えた業界課題

――大学院では何を研究していたのですか?

大学では空芯菜のポリフェノールを抽出してガン細胞への効果を検証する研究をしていました。当時からライフスタイルに寄り添った仕事に興味があり、食に関心がありました。大学4年間ではバイオ系の研究をしていたので自然と遺伝子に興味を持つようになり、大学院では微生物の遺伝子と形の相関性を研究していました。僕の根幹の思想として「社会に貢献したい」という気持ちが強く、長期的な課題解決につながると信じた分野を研究していました。

――1社目で日清フーズ、2社目で農水省に転職した理由は?

改めて人々のライフスタイルをより良いものにするという意味で食に興味を持ち、日清フーズに新卒入社しました。そこでは約5年間、冷凍工場の立ち上げや冷凍パスタ・冷凍たこ焼きなどの商品開発を経験していました。仕事は大変やりがいがありましたが、テスト検証の工程で大量のフードロスが生まれることに疑問を抱き、例えば仕入れすぎてしまった原料を複数社でシェアするような「仕組み」があれば課題解決できるのではないかと考えて、行政機関に関心を持ちました。

そう思い始めていた矢先に農林水産省で中途採用の募集をしていたので、そのアイデアを持って面接を受けたところ合格しました。フードロスや業界慣習を根元から良くしていくぞという気持ちで入所したのですが、なんと配属された部署は国産成果物の輸出戦略を策定する部署でした(笑)。希望していた部署とは違いましたが、そこで得られた学びは多かったです。国と行政と政治の繋がり、政策が作られる過程を知れたことは業界構造を俯瞰して見ることにも繋がり、今にも活きています。

――民間と行政機関を両方経験して、どのように課題意識が変化しましたか?

農水省では戦略を構築する仕事をしていたので、いわゆる「ルール」をつくる立場を経験しました。その上で分かったことは、優れたルールがあってもその上で事業を行う民間企業が変わらないと業界課題は解決しづらいということです。ライドシェアはその一例だと思いますが、事業主体が画期的なサービスを提供しイノベーションを起こし続けないと、本質的な変化は生まれないのだと。

だから民間に戻る決意をし、3社目は日清食品に入社しました。工場の生産管理とOEM工場のマネジメントを担当し、工場の経営課題や財務構造・利益構造について詳しく知ることができました。同時に、減価償却する約20年間もの間利益が全く出ないという「自社工場モデル」の課題にも気づくことができ⁨⁩ました。

スタートアップに飛び込み、生きるか死ぬかのハードシングスを経験

――そこからなぜスタートアップであるDELIPICKSに入社したのですか?

1つ目の理由はミッションへの共感です。当時のDELIPICKSはまだまだ小規模でしたが、描いているミッションが壮大で衝撃を受けました。「地域の工場さんの遊休設備を活用する(バリューチェーンを変革する)」という発想は、自社工場モデルの課題やフードロスの課題をよく知る自分からするとしっくり来るものがありました。日本全国の食品工場の中には埋もれている技術がたくさんあります。そこにDELIPICKSはECという販売機能を提供することで、消費者にとっても工場にとってもメリットのある仕組みを作っていけると感じました。

2つ目の理由がヒトです。選考の過程で様々な職種の方とお話ししましたが、各分野のトップレベルの人材が集まっているという印象を受けました。こんな環境で働けることはなかなかないだろうという直感を得ました。

――ぶっちゃけ色んな企業からオファーがあったのでは?

スカウトは結構いただきましたが、実はDELIPICKSしか受けてなかったんですよね。信念は強い方なので、何社も見比べて悩むタイプではなく、軸を決めて一致する会社に絞り込む決断力はあると思います。

同時期に有名メガベンチャーからも良いポストでオファーをいただきましたが、迷いはなかったです。ミッションに共感したこと、人が優秀であること、そして自分の経験とスキルをフルに活用できること、その全てが当てはまるのがDELIPICKSでした。また、成功が見えているメガベンチャーに入社するよりも、アーリーフェーズのスタートアップに入社する方が自分の裁量で生み出せる変化量も大きいと感じました。

――奥様とCEOの逆面談もあったとか?

はい、僕は家族を何よりも大切にしているので、家族が応援してくれない転職はしないと決めています。そのため、CEOの谷澤に妻との逆面接を依頼しました(笑)。

そこで谷澤の口からDELIPICKSの目指すミッションや経営課題について赤裸々に語ってもらい、妻が自信を持って応援してくれることになったので、転職する最終決断ができました。

スタートアップに入社する不安や怖さは全く無かったです。もちろんまだまだアーリーフェーズなので倒産リスクはあると思っていましたが、自分がなんとかすれば良いだけだと思っていました。

――入社してからの怒涛の2年間、どんなハードシングスがありましたか?

実は僕が入社した少し前に谷澤が重い病気で入院していたので、オペレーションに纏わる様々なトラブルが発生しており、一言で言うと「カオス」でした。例えばお弁当の蓋が開かないという、大企業ではありえない商品エラーが起きて解約が増加していました。誰から依頼されたわけでもありませんが、真っ先に解決すべきと判断して工場に出張し、根本原因を解決しました。

そして入社から半年後に執行役員になってからは、未経験かつ全く想定してなかった資金調達業務をCEOと二人三脚で進めることになったので、だいぶ苦労しました。スタートアップ経営の初歩的なことも分かっていなかったので、まずはコーポレート業務をやる上で必要な書籍を10冊くらい高速でインプットして、ランウェイに追われながら強制的にアウトプットしていくことで学びました。あと数ヶ月で資金ショートするという極限的な状況で結果を出さなきゃいけない、まさに「生きるか死ぬか」を経験しました。

――生きるか死ぬかの経験をしたとのことですが、なぜ辞めなかったのですか?

辞めるという選択肢はありませんでした。僕の中で決まっていたことは、「ここでやり切らないと後悔する」ということです。結果はコントロールできなかったとしても、やり切ったかどうかは自分次第でコントロールできます。

またその時点ですでに執行役員という重要なポストにいたので、ここで自分が先に辞めたら信じて入社してくれたメンバーを裏切ることになります。弊社のサービスを生活インフラとして頼ってくださっているユーザーさんの声も聞いていたので、この事業の社会的意義と責任も強く感じていました。加えて、ご協力くださっている取引先の工場さん、信じて出資してくださった株主の皆様にも迷惑をかけることになりますので、絶対にこのサービスを止めてはいけないという使命感がありました。

――2024年に取締役に就任し、どのように仕事観に変化がありましたか?

財務諸表や事業計画は網羅的に理解できるようになったので、「ヒト・モノ・カネ」に対する意識が劇的に変化しました。

「カネ」という観点でいうと、DELIPICKSは在庫型ビジネスなので、僕の得意とする生産管理業務とキャッシュの関係性がクリアに理解でき、キャッシュフローに対する危機感と意識が変わりました。僕が入る前はCEOがPL/BS/CFの管理をしていたので予実のギャップが生まれやすい状況でしたが、現段階ではそこそこ精度高くキャッシュコントロールができる体制になったと思います(まだまだ足りていませんが)。

直近では「ヒト」に意識を向けていて、マネジメントシステムを早急に機能させなければいけないという課題感があります。ヒトは経営に直結する部分なので、今期の自身のミッションは組織改革だと思っています。

――CEOの信頼しているところ、逆に信頼されていると感じるところは何ですか?

谷澤の信頼しているところは、自分のスタンスをブラさない点です。社内はもちろん、社外の方に対しても対立を恐れず誠実にコミュニケーションする姿勢を尊敬しています。例えば上述の「生きるか死ぬか」のタイミングでは非常に難しい決断をいくつも下す必要があったのですが、谷澤は迷いなく決断しました。あのタイミング・スピード感での意思決定は、常人ではできなかったと思います(執筆者の谷澤、照れる)。

逆に信頼されていると感じるところは、困難な状況でも前向きに課題解決に向き合う姿勢だと思います。スタートアップ経営にはトラブルやハードシングスがつきものですが、2人の間に強い信頼関係があるからこそ、上下関係ではなくフラットな立場で相談してくれていると感じます。

――今後DELIPICKSで実現したい未来を教えてください。

まずは中間目標として、お世話になった方々への恩返しがしたいと思っています。しっかりと良いサービスを作ってユーザーさんや工場さんに恩返しをすること、そしてちゃんと値がつくIPOをしてこれまで支えてくださった株主の皆様にリターンをお返ししたいと考えています。

その先にミッションの達成があると考えています。「食事をもっと自由に」というミッションを達成するにあたり、やりたくても現状できていないことがたくさんあるので、それら全て実現したいと思います。一例として、弊社には業界最多級の商品数がありますが、お弁当だけではなく様々な冷凍グルメが最適にマッチングされるAIの開発により、本当に一人ひとりに最適な商品が届く世界を作っていきたいです。

――DELIPICKSで好きなVALUEは何ですか?

Be Braveです。不確実性の高いスタートアップで一番求められるのはBe Braveなスタンスだと思っています。スタートアップに入社するというだけでリスクを背負った状態だと思いますが、目標を達成するためにはリスクを取り続ける覚悟が必要です。

例えば僕がBe Braveで意識していることは「未経験でも挑戦してみる」ということです。それこそコーポレート業務は全くの未経験でしたが、躊躇せずに挑戦することで新しい価値を生み出せると感じています。

――今後、どんな方に入社していただきたいですか?

一言で言うと、「DELIPICKSのミッションとバリューに共感し、一緒に新しい価値やサービスを生み出していきたい」と心から思ってくださる方とご一緒したいです。スタートアップは外から見るとキラキラして見えるかもしれませんが、泥臭くてハードな局面も多いので、ここが一致しないと続かないと思います。

現在は僕がコーポレート業務を担当しているのですが、今後コーポレート業務をお任せする方においても、同じ目線感と熱量でお仕事できる方に入社していただきたいと思っています。


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