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先日、第4回目となる「WARC Career Night」を開催いたしました。
今回のイベントでは、投資銀行で働いていた中その環境を飛び出し、急成長中のベンチャー企業にジョインして、現在CFOを務めている方々にご登壇いただきました。そして、彼らのキャリア・想いにモデレーターの当社取締役の石倉が迫りました。登壇者は株式会社じげん 取締役 執行役員 CFO 寺田修輔氏、READYFOR株式会社 CFO 元田 宇亮氏、ウォンテッドリー 株式会社 取締役 CFO 吉田 祐輔氏のお三方です(以下敬称略)。
■ 登壇者
・株式会社じげん 取締役 執行役員 CFO 寺田修輔
東京大学経済学部卒業後、2009年シティグループ証券入社。不動産、REIT、住宅、建設、住宅設備業界の株式調査業務、財務アドバイザリー業務に従事し、14年より不動産チームヘッド。16年、経営戦略部部長としてじげん入社。現在は取締役執行役員CFOとして経営戦略部、経営管理部、情報システム室を管掌。
2016 Thomson Reuters Analyst Awards Japan 1位(家庭用耐久財収益部門)。Chartered Financial Analyst(CFA協会認定証券アナリスト)。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。
・READYFOR株式会社 CFO 元田 宇亮
2013年、三菱UFJモルガン・スタンレー証券投資銀行本部に入社。エクイティ・キャピタル・マーケット部にて事業会社と不動産投資法人(J-REIT)の株式・投資口引受業務、コーポレート・ファイナンス部にてM&Aを含めた資本戦略提案業務に従事。 その後クラウドファンディングサービスを運営するREADYFOR に取締役CFOとして入社。10人規模から100人規模までの成長過程で、経理、財務、法務、労務、採用、人事制度設計、事業開発など幅広く経験。現在は主に経営管理(経理・財務・労務・総務)と一部事業開発を担当。
・ウォンテッドリー株式会社 取締役CFO 吉田 祐輔
外資系投資銀行のモルガン・スタンレーで株式アナリストとして約6年勤務。その後、外資系PRエージェンシーを経て、ビジョンに共感してtrippieceに入社。ビジネスサイド、カスタマーサポート、コーポレートやメディアの内部オペレーションと様々な業務を担当。2016年6月より新たなチャレンジを求め、Wantedlyにジョイン。コーポレートチームにて経営企画を担当し、その後執行役員に就任。2017年11月に取締役CFOに就任し、予算管理、経理財務、IR、広報、法務等を統括。
■ モデレーター
株式会社WARC 取締役 石倉 壱彦
2005年よりKPMG 有限責任 あずさ監査法人国際部にて会計監査業務やアドバイザリー業務等に従事。その後独立し、複数のスタートアップを支援。2013年より株式会社アカツキの経営管理部長として、大型ファイナンスやIP業務に従事後、2014年監査役に就任。東証マザーズや東証1部への上場に貢献。2015年より株式会社3Minuteの取締役CFO兼経営管理部長に就任し、コーポレート部門統括の他、事業立上げ・組織設計に従事。2017年にグリー株式会社との大型M&Aディールを成功させ、2018年6月に同社を退任。2018年11月より、株式会社WARC取締役就任。
投資銀行から事業会社へ飛び出した理由
ー石倉
早速ですが、みなさんが投資銀行から事業会社へ転職したきっかけについて、寺田さんから教えてください。
ー寺田
前職の時は20代後半で日本の不動産リサーチチームのヘッドを任せていただいていました。セルサイドアナリストとして20代の若造が、上場企業の経営者の方々と対等なフリをして話をする必要がありました。若くて人生の経験も乏しい上に、事業もやったことがなくて、それなのに偉そうに企業経営者に外野として意見しているのが恥ずかしいという思いがあった一方で、自分だったらもっとうまくやれるのにという気持ちも浮かんだりして、事業会社にチャレンジしようかな、と考え始めるきっかけとなりました。
当時29歳で、そのまま投資銀行にいるか、事業会社にとびだすか。これを考えるにあたって、どちらの方が不可逆的な選択かということを意識しました。前者は専属の秘書や部下もいて、自分の個室も与えられていて、給料も高くて、居心地が良く快適です。このままここに居続けたら、もう抜け出せないと感じていたんです。それはそれで良い人生ですが、戻ろうとすればいつでも(投資銀行に)戻れると思っていたので、不可逆的ではない方を選びました。決死の覚悟を決めて出ていくというよりか、割とぬるっと事業会社に転職しました。
ー石倉
投資銀行から事業会社に転職すると環境や働き方など色々変わると思うんですけど、給料は大幅に変わりましたか?
ー寺田
給料でいうと、年収は●分の1になりましたね。
ー石倉
●分の1…!? そんな決断を、ぬるっと決めたとは…!
※編集注:編集上の都合で具体的な数字は伏せております。
ー寺田
もとがちょっと高すぎたというのもありますし、未経験の分野に飛び込むことも考えれば妥当かなと思いました。もちろん、入社当時と比べると今は管掌範囲や職責も変わっていますし、水準はまただいぶ戻っています。特にプロフェッショナルファームで活躍している方々であれば望めば高給取りに戻れる確率は高いはずなので、事業会社に転職する際にあまりにも収入に執着してしまうと、一歩踏み出せなくなってもったいないなと感じますね。
ー元田
きっかけはFacebookのフィードにたまたま募集が流れてきたから、という巡り合わせが大きいのですが、事業会社、とりわけ小さなベンチャーに転職した理由は2つです。
1つは、生存戦略的に自分の価値を高めるためです。
当時2015年でジュニアバンカーだったのですが、この先5年後10年後の金融業界にはコモディティ化や自動化の波が押し寄せてくることは自明と考えていました。セカンダリーはもちろん、労働集約型のプライマリーの世界にも遠からずメスが入るはずだと。
また、2008年に日本でiPhoneが発売されて以降、10年もしないうちに新しいビジネスや仕事が生まれ、世界が変わってきた事から考えても、これからテクノロジー進化のサイクルがより速まる中で、ここにキャッチアップできなければ、自分の価値は下がり続け将来の選択肢が狭まる、という危機感を強く感じていました。
加えて、エクイティファイナンスやM&Aという経営の本質に関わる課題のディスカッションやソリューション提供をする立場にあって、自分自身が経営に深く携わっていきたいという思いも芽生えていました。
2つ目は「毎日明日にワクワクしながら寝る(笑)」というものを人生を通して目指していく軸にしようと考えた時に、READYFORでならそれが実現できる、と確信したことです。
当時プライベートでカンボジアに1週間ほど滞在し、現地の経営者の方々を訪問する機会があったのですが、そこには「明日が今日よりももっと良くなる」ことに何の疑いもなくエネルギー高く働く人達がいて、その空気感に圧倒されました。
日本にいて成長を実感できていない世代という認識もあり、そういった環境に身を置きたいと思っていました。
そこで偶然にもREADYFORに参画する機会を得て「応援したい代表がいて、広げていきたいと思える事業がある」、「初期のスタートアップでゼロから様々なことに挑戦していく経験値が詰める」、そして何より「ワクワク出来る未来を想像できた」ことが決め手になりました。
当時投資銀行からベンチャーに移る方はかなり少なかった、というかほぼいなかったと思うのですが、ロールモデルのお一人でもある青柳さん(元グリー株式会社、現株式会社メルペイ)がドイツ証券からグリーに移られたのが27.8歳・社員番号20番位で、「経理も法務も机の組み立ても自分でやってた」という記事を見て、「青柳さんでさえそこから始まったのであれば」、と覚悟が決まったのも大きかったです。
ー吉田
私の場合、1つ目は環境です。当時セルサイドアナリストで、日本株の動向をずっと追っていたのですが、世界的な規模で見ると日本の株式市場が世界で占める比率はシュリンクしていくか、どれだけ良くても現状維持が限界だという構造を感じました。そして当時、アジアのアナリストが日本に入ってくるケースも増えていて、言語の壁で守られているものの、それもいつまで続くか疑問でした。もちろん仕事はなくなるわけではないし、「アナリストとして突き抜けるんだ」という気概があれば続けられる仕事だとは思いますが、自分がこれから30年この仕事をやり続けたいかと考えた時に違うなと感じました。
2つ目は実力です。私は調査対象の業界や経営を俯瞰して、それを分析するような立場だったのですが、実は表面的なことしか分かっておらず、ビジネスへの理解が不足していると感じました。なので、自分がいざ事業会社に転職したとしても現状のままでは何も出来ないと思っていましたし、実際に最初の転職の時は「自力があります」といったような胆力のことしかアピール出来ませんでしたね。このまま30〜40代になった時に、潰しが効かないのは危険だと思って、行動しました。
給料に関していうと、投資銀行にいた時の1/3まで沈みましたが、それが死活問題とまでは考えていませんでした。投資銀行に入る際に「1度生活水準をあげたら下げられないから気をつけろ」という教えを受けていて本当に良かったです。そのため、1/3になっても暮らしにそこまで大きな変化はありませんでした。ただ自分だけで完結すれば何も問題はないのですが、転職しようと考えていた時に私は既に家族を持っていました。世間的にはリスキーな選択肢と捉えられて、止められてもおかしくないところを了承してもらえたのは有り難かったですね。当時1歳になる子どももいて、正直妻には迷惑をかけたと思いますが、相談した時に快諾してくれて、その時の後押しには今でも本当に感謝しています。
投資銀行と事業会社の違い
ー石倉
投資銀行で働いてきた経験が、事業会社に転職してどのように活きたのかと、事業会社と投資銀行の違いについて教えてください。
ー元田
活きた点は、マルチタスクへの慣れ、キャッチアップの仕方、そしてモデリングのスキルです。モデリングはPL/BS/CFの粒度ではなく、更に下層のKPIや個別項目の積み上げなどが必要になってくる点が一番の違いかと思います。
専門的な知見が生きてきたのは事業フェーズ的に最近やっとという感じで、ベーススキルの部分が大きいです。
投資銀行と事業会社が違うなという一番の部分は、当事者意識ですね。投資銀行はファイナンスやM&Aという特定の「商品」を売ってそのエグゼキューションをすることが仕事です。一方事業会社、特に経営の仕事は、実現したいことに向けて様々な選択肢の中で「意思決定」していくことです。意思決定のために必要となる知識の範囲や深さ、観点の違いは、一つの商品を売ったりエグゼキューションするために必要なもののそれとはまったく違います。良し悪しではなく違いです。そして、士業の方や業務委託先、金融機関など、自分たちのことを考えてくれるといっても、あくまで多くのクライアントの中の一つでしかなく、あくまでアドバイザーであり、決めるのは自分達なので、1つ1つの物事に対する当事者意識が強くなりましたね。特に自分は投資銀行でジュニアバンカーだったので、「意思決定」のスキルはREADYFORにきてから学んだ部分が大きいです。
あとは、仕事の守備範囲とチームでの動き方も変わってきました。投資銀行に限らずプロフェッショナルファームは、仕事の内容や幅が限定的で、安定した環境で自分の専門性を高めていくような働き方になります。しかし事業会社では、特に人数の少ないフェーズだと、自分の得意分野の仕事のみならず、様々な業務を兼任する必要があります。僕も入社した当初は、月次の決算から社員の給与計算、業務委託の契約、採用管理、サービスの決済システムリニューアルに至るまで守備範囲を広げて業務に取り組んでいました。また、チームもプロフェッショナルファームのそれと違い、得意分野もバラバラ、スキルレベルもバラバラ、時に仕事に対する価値観すらも大きく異なるメンバーと「会社一丸となってこなす」というスタンスに変わったので、マネジメント能力も必要になりかなり働く姿勢が変わりましたね。そして何といっても半年もすれば会社の規模も自分の役割も様変わりする環境下で適応が求められることが、特にスタートアップの特殊なところだと思います。
ー寺田
投資銀行時代に培ったものが、事業会社で活きたことは2つあります。
1つ目は、ジュニア時代の「仕事をやりきる」という姿勢です。投資銀行に入って間もない頃に、自分の仕事は自分でやらなければ誰も助けてくれず、土日だろうと何が何でもやりきる姿勢が身につきました。2つ目は、シニア時代に意思決定をし続けた経験です。不動産セクターのヘッドを任せていただいて、幸いにもチームに関して自ら意思決定ができるポジションに数年いたのですが、この経験が非常に活きていると思います。例えば、どの会社にカバレッジをつけて、どんなレーディングをするのか。どの投資家に会いに行って、どうプレゼンするのかなど。CFOの仕事は意思決定の連続なので、そこの頭の使い方は投資銀行、特にシニア時代と似ていると感じます。
プロフェッショナルファームから事業会社に行って苦戦している人を見ると、意思決定の経験が少ないということがよく見受けられます。こういうパターンは元監査法人や元投資銀行部門の人にも多くて、降ってきたプロジェクトをただこなすだけの仕事をしていると、意思決定する感覚が培われず苦労している印象があります。
ー吉田
投資銀行時代に活きたことは3つあって、1つ目は「プロとしての仕事のスタンダード」です。入社して2ヶ月くらいの時に、上司に頼まれていたクイックレポートの提出が半日ほど遅れてしまったことがあったのですが、その時上司に「見る価値がない」と檄を飛ばされて一切見てもらえませんでした。そんな経験もあり、自分が出すべき価値は何なのか、ということを突き詰め続けていたので、その考え方が今にも生きていると思います。
2つ目は、アナリストに限定されるかもしれないのですが、「事業を俯瞰して見る力」は役立ちました。業界や個別企業の動向を追いながら海外市場にも視野を広げられたので、広い視野でビジネスを捉らえるのに役立っています。
そして3つ目は、「自分の立ち位置の作り方」です。アナリストって全て同じように見えるかもしれませんが、実は1人1人個性を持って尖っていないと生き残れません。この大事さを上司から学び、自分なりに強みや特色をどのように見せて、どうポジショニングするかを常に考えるようになりました。その姿勢は今も生きています。
そして投資銀行と事業会社の違いについてですが、事業会社とそれ以外といった明確な区分けはなくて、本質的には同じことをしていると思います。ですが、エージェンシーや投資銀行だと、クライアントへのサービス提供者という感覚がしみついており、顧客がいるのが当たり前という考えになりがちです。特にリサーチのポジションだと、クライアントとのメインの接点を営業が持っていて、そこに結構頼れてしまうので、尚更だと思います。これは事業会社に限った話ではないのですが、自らが枠にとらわれずに常に思考してビジネスを切り開いていく、という当事者意識を持つことが重要だと思います。
じげんが事業計画にこだわる理由とM&Aで大切にしていること
ー石倉
個人的に、じげんについて寺田さんにお聞きしたいことがあるのですが、事業計画の策定にすごく時間をかけているというお話を伺いました。500ページくらいのパワポの資料をひたすら見て、様々な角度から議論しているそうですが‥。
ー寺田
そうですね。12月中旬に、年末年始で中期計画書を作るよう社内に宿題を出しています。それが1月にあがってきて、まず最初に事業管掌の役員や経営戦略部が一次的にチェックします。そこからブラッシュアップして、2月くらいにCEOの平尾との面談が始まります。全社をあげて注力して取り組んでいます。
というのも、弊社は事業の数が多いので、1つ1つの事業の解像度を上げる必要があります。毎週行っている経営会議ではそれぞれの事業の進捗を共有するのですが、お互いに前提を理解していないと横のシナジーが生まれません。なので社内外で共通して見られるような資料を作成する必要があります。バックグラウンドが異なる人が統一した拠り所がないと、ふわっとした決断になってしまうので、それを避けるためにかなり工数をかけてやっています。
事業を理解するという意味でも非常に役立っていますが、中期計画を突き詰めることで、メンバーのレベルが上がってきます。新卒や入りたてのメンバーに事業戦略を作るようオーダーしても、最初のうちは目先のアクションプランしか提案できないことが多いです。しかし、これを何往復も続けていると、戦略を策定するということの概念を少しずつ掴み始めます。短期的な数字を見るだけでなく、組織をどう巻き込むかや、失敗した時のリカバリプランを複数設けるなど、今まで考えてこなかった部分が見え始めて、事業を成長させる上での視座が一段高まります。
ー石倉
じげんは、攻めのM&Aをしていてそれがすごく上手だと思うのですが、その際に気を付けていることがあれば教えて下さい。
ー寺田
じげんは、5年間で12件のM&Aをしています。トラックレコードが出ていない3件を除く9件のベースで、77億円を株式や事業の取得に投じました。それら9事業で、2019年3月期単年度で28億円のEBITDAが見込まれています。対象事業のキャッシュフローの数年分の資金を投じて株式や事業を取得する意思決定なので、確固たる軸をもって企業を選定しています。それは、「なくなりにくい資産を持っている企業や事業」という観点です。特に、法人顧客ですね。法人のアカウントは開拓に時間とお金がかかりますが、一度商流に組み込まれるとスイッチングコストもあり持続性の高い資産となるので、顧客社数が何社かということは特に注視しています。今まで一番上手くいったM&Aがリジョブという企業なのですが、19.8億円で100%株式を取得して、当時の売り上げが9億円でした。そこからPMIを実行して、19.8億円の投資額はEBITDAベースで2年強で回収しています。法人顧客というなくなりにくい資産と、我々が得意なコアな資産、マッチングテクノロジーをかけあわせて広げていくということを基本にやっています。
ー石倉
PMIはどのように行なっていますか?
ー寺田
PMIを考える上で、カルチャーの話が出てくると思うのですが、迎え入れる企業にカルチャーを押し付けるようなことはしていません。M&Aでグループ入りして頂く企業は顧客基盤をはじめとするしっかりとした資産をお持ちの会社が中心なので、我々より社歴が長いところもざらにあります。働いている人のマインドや組織の成り立ちが異なる中で、長い時間をかけて形成されたカルチャーを無理やり変えようとしても、不和が生じてしまう可能性が高いので、もともとの風土を尊重するようにしています。
社長との連携のとり方
ー石倉
CEOは尖っていて優秀な方が多い印象がありますが、そういった方々とどのように連携をとって仕事をしているか教えてください。
ー寺田
CEOの平尾とは、毎週2人で1時間くらい話す機会を設けているのと、毎週事業責任者を集めた経営会議をやっていて、そこで数時間はしっかり話をしています。弊社は業務執行取締役が平尾と私だけなので、いろいろなバランスも見ながらベストな意思決定ができるように心がけています。
ー吉田
私も寺田さんと同じように、代表と僕では得意領域が異なるのでバランスを見ながら連携をしています。主に予算や事業計画、IRなどは僕が引き受けています。また、代表と私の間で毎週1on1をして擦り合わせも行っています。
事業計画の方針として、以前複数プロダクトを立ち上げた際に散逸して上手くいかなかったという経験があるので、あまり手広くやりすぎず、集中して取り組むことを意識しています。まだ100人程度の規模ということもありますが、当社でいうとそちらの方が伸びしろを感じています。
ー石倉
吉田さんは上場前にジョインされてIPOを経験していると思いますが、その前後で大きく変わったことはありましたか?
ー吉田
実は、意外と変わりませんでしたね。社内でも常々通過点でしかないよね、という話をしていたので、一つのマイルストーンとして強く意識はしていませんでした。ただ、上場前後で世間からの見られ方は変化したと感じました。良い意味でも悪い意味でも注目を浴びたことがあり、管理側の人間だけでなく経営陣ひいては会社全体で世の中に見られている感覚ができて、そういうステージに上がったんだなという自覚が強まりました。
ー元田
READYFORの場合は、前期(2017年7月)からCEOとCOOの二人が代表取締役という体制なので、私は主に全体のバランスを取ったり補完する役目と自覚しています。例えばCEOの米良が大きな構想を描き一歩目の足掛かりを作っていく一方で、私が具体的な数値面やスキームを構築したりします。また、COOが既存事業の成長や社内のことに責任を持ってもらっている一方で、自分は外に出て社外のネットワークを広げたり、既存の延長ではない飛び地の事業機会を持ち帰ることを通常業務とは別で意識的に行っています。
一般的に「トップに社長(CEO)がいて、それを他の役員が支えていく」というよりも、経営する上で重要な仕事を経営メンバー間で「分担」しているという感覚を強く持っています。
特に最近CLOとして弁護士の草原が、CTOとしてスマートニュースの立ち上げメンバーでもあった町野が参画してくれたことで、バランスよく領域を分担して背中を預け合えるようになってきたと感じています。
CFOに求められること
ー石倉
本日登壇してくださっているお三方は、事業会社のCFOを任されていると思いますが、CFOにとって必要なスキルについてどのようにお考えでしょうか。
ー吉田
CFOに最終的に求められることは、「非連続の成長を作ること」だと思います。プロダクトのオーガニックな成長は限界や寿命があるので、それに対してアラートをかけて、異なる形でどう成長を作るか等、解決策を提案するのもCFOの役目だと思っています。それをやりにいくんだっていう意思がないと、会社が上場したとしてもパフォーマンスが上がらないと思っていて、M&Aを含めた戦略を作っていくことが重要だと考えています。そのためには、ファイナンスが分かっているだけではダメで、圧倒的なビジネスへの理解が必要だと思います。
ー元田
会計やファイナンスの知識よりも、実は「ITリテラシー」が重要だと思います。業務ソフトウェアがクラウド化していく中で、内部統制を構築していくためには確実にITリテラシーの素養が重要になります。最低限アレルギーがないことですね。業種にもよりますが例えばSQLやデータベースの構造が全く分からないとエンジニアやデータアナリストとまともに会話も出来ないし、ERPって何?APIって何?という状況だと、適切にクラウドサービスを結び付けて自分に情報が集まってくる状態を構築することが出来ません。だから、例えば「昨今のキャッシュレス決済系のサービスをひとつも使ったことがありません」というような、端からITやWEBサービスに関心がない人は厳しいというのは感じますね。
ー寺田
観点がお二方とは少し異なるかもしれないのですが、私は「目利き力」が重要だと思います。周りの方から「CFOとして活躍しているね」なんて言っていただけることもありますが、その成功要因の半分くらいは、じげんを目利きできたことだと思っています。冷めた見方ですが、経営陣とは言え一人だけでできることには限界があるわけで、働くフィールドによって成長の幅や出来ることがある程度決まってくると思うので、会社選びの際は調べ尽くした方が良いです。M&Aをはじめとする投資業務も、結局は「目利き力」が重要なので。
未経験の業務について、どのように情報をキャッチアップしているか
ーイベント参加者からの質問
事業会社のCFOをやる上で、今まで経験がない業務も担当しなくてはいけないことがあると思いますが、そういった時にどのように情報をキャッチアップしていますか?
ー元田
ゴールと期限を決めて集中して取り組むことを意識していました。コーポレート分野は専門性が高く、勉強しようとすると終わりがありません。なのでゴールを「関わるメンバーと最低限の共通言語を持ち自分が意思決定できる状態」と設定して1か月間必要なことに絞って勉強していました。おすすめは対象領域の本を5~6冊まとめ買いして共通部分をまとめる方法で、あとは実際にやりながら覚えていくような形で進めていました。大切なのはいつまでにどこまでやるのか、ゴールを明確にし、デッドラインをひいて、集中して勉強することだと思います。
ー吉田
1つ目は手を動かすしかないです。とにかく実践して体に覚えさせていました。また、元田さんのお話と近いですが、アウトプットの形を決めるのは大事だと思います。目指すアウトプットを決めないと終わりが見えないし、手を動かしにくいので。
2つ目は早めに聞く。自分が何時間もかけて調べていることでも、実は知ってる人に聞けばすぐに分かることが多いです。直接接点がない人でも、プライドを捨ててどんどん聞くことが一番の近道だと思います。
組織の成長痛をどのように乗り越えたか
ーイベント参加者からの質問
組織が大きくなった時に、少なからず成長痛を経験すると思いますが、みなさんはどのようにそれを乗り越えてこられましたか?
ー吉田
コーポレートに関してで言うと、実際はあんまり乗り切れなかったです(笑)。企業の成長に反してコーポレートでなかなか人を採用できず、業務は少ない人数で乗り越えざるを得なくなり、コーポレートは1年中120%稼働しているような状況になってしまいました。直近はようやく採用ができて、落ち着きつつあります。
全社的には、そこまで大きな成長痛は感じませんでした。早くからシャッフルランチや1on1などを通して、コミュニケーションをとる頻度を高めて、できるだけミスコミュニケーションを減らすような仕組みができていたのが良かったと思います。
ー石倉
自分も会社が大きくなるにつれ、成長痛を感じたことがあります。会社が大きくなると、設立間もない時からジョインしていてカルチャーが浸透している人と、実力はあるものの、カルチャーはまだ浸透していない人が一緒に働くことになりますが、経営していく上でそこが難しいと感じました。経験値と実力値は別物なのですが、規模が大きくなる時にそこは避けては通れない道なので、そういうものだと割り切るしかないと思います。しかしながら、知ってる上で成長痛が起きるのと、知らないで起きるのとでは全然違うので、そういった企業のフェーズを経験しているような人に話を聞くのが一番良いと思います。
登壇者からイベント参加者に伝えたいこと
ー寺田
じげんでは、一緒に働く仲間を積極採用中です(笑)!
ブログを書いていまして、「成長企業でコーポレート人材は成長できるか?」という記事でも同じことを書いているのですが、管理部門の方って成長企業で働いていても、その中で場所を選ばないと成長してるようで成長してない事例って結構多いと思います。じげんコーポレートでは、東証1部上場企業ならではの高度なミッションと急成長ベンチャー企業ならではのスピード感、裁量範囲を共に経験できると思いますので、まずは話だけでもという方も含めて、是非コミュニケーションとらせて頂ければ幸いです。
ー元田
自分達の作っているサービスや会社が成長していく中で、社会に良い影響を与えていることを、毎日確信しながら過ごせています。それが本当に楽しくて、幸せを噛み締めています。それはまさに寺田さんが仰っていた目利きの部分で、自分が心からワクワクできるところに出会えたからですので、ぜひ皆さんもそういった会社に出会えるよう積極的に外に出ていって欲しいと思います。READYFORで一緒に働ければ一番嬉しいですが、そうでなくとも横の繋がりを持って情報交換できればなと思っていますので、よろしくお願いいたします。
ー吉田
もし事業会社に転身したら、投資銀行で培ってきたことで直接的にすぐ役に立つことは最初は出てこない可能性が高いので、それまでやってきたことを一旦忘れて新たに学びながら取り組む必要があると思います。でも、必ず今の経験が後々役に立つことがあるので、頑張って欲しいと思います。
また、これから成長していく事業会社にはプロフェッショナルがもっと必要だというのは強く思っていて、どの企業から話を聞いていてもコーポレート人材が不足しています。事業会社にいくことはリスクもあるけれど、そこに前のめりで取り組めたら楽しいと思います。
海外だと事業会社の人材の流動性が高くて、知が循環している印象があります。反して日本は流動性がまだまだ低いので、もっと人の行き来が増えれば未来が明るくなっていく。そんな時はWantedly Visitを使っていただければと思います(笑)。