8月23日と24日はこの地域の地蔵盆です。錢屋本舗東館(浜学園)の角には「石ヶ辻東延命地蔵尊」が祀られていて、地蔵講と呼ばれる世話人の集まりによって地域の信仰が守られています。由来書によると昭和31年に石ヶ辻東地区の住民の延命長寿、家内安全、諸願成就の願いを込めて地域の有志が発起人となり四天王寺より勧請して鎮座願ったとあります。錢屋本舗創業者の正木繫吉も発起人の一人であったことが縁で、元は今の場所よりは西寄りの場所に鎮座され、錢屋本舗東館の建築時に現在の場所に遷座されました。地蔵菩薩はこの桃丘地域では町会ごとに祀られるほどなじみの深い存在ですが、どのような仏様かご存知でしょうか?厳密には菩薩は仏になる前の修行者のお姿なのですが約2千5百年前にお釈迦様が入滅されてから弥勒菩薩が成仏するまでの億7千万年の間、釈迦に成り代わって六道すべての世界に現れて衆生を救う役割を果たすとされています。
サンスクリット語では「クシティガルバ」と呼ばれ、その意味は大地が全ての命を育む力を蔵するように、人々を愛しむ無限の心(大慈悲)で包み込んで救う存在とされています。私達は「お地蔵さん」と言ったりもしますが、生國魂神社を「いくたまさん」というのと同じで親しみの表れだと思います。子供の守り神としても信じられており、地蔵盆では子供が喜ぶ菓子などが供えられ、そのお下がりをお参りしてくれた子供達に配ります。また、地域の子供達の名前が書かれた提灯を飾って、その健やかな成長を祈るのですが飾れる数には限りがあるので、古くなった提灯は誰かが「あそこのお兄ちゃんは、もうとっくに大学やで」等と言って省いたりもします。名前を確認しながら地域の子供のことを「産まれたらしい」「もう小学校や」「よぉ(勉強が)できるらしい」「スカウトが見に来る(くらい野球が上手い)らしい」「福娘に選ばれた...」「えー、もうそんな大きぃなったん」等と話しながら吊っていくのです。新調された提灯はお地蔵様の正面に飾り特別扱いをするわけですが、それは新生児が地域に生まれたことを意味します。
そもそも、石ヶ辻町の地名の由来をご存じでしょうか?かつてこの地にあった野中地蔵堂の門前に立像の石仏が祀られており、そのご利益を求めて人が集まったようです。この「石仏の辻」から石ヶ辻の字名が成立したとされています。地名の由来となるほど、古くから地蔵信仰とは縁が深い地域だと言えます。(文・正木)