九条ねぎを専門とする「こと京都」では5月から、販売先店舗に向けて発注に必要な量を自動計算して届ける、自社で開発した自動納品サービス【KOS】(Kotonegi Order System)が開始されました。普通の発注システムと思うなかれ。なんとこれ、お客さまとなる店舗側だけでなく、こと京都の事務担当の仕事も劇的に改善されたんだそう。
どんな変化があったかというと、
①毎朝5~6人でしていた事務作業が2人でも可能になった
②転記ミスがなくなった
③1日100件以上もあった電話が半分以下になった
ということで、事務作業の時間が短縮化。担当の方は常に鳴りやむことのなかった電話が減り、自分の仕事に集中したり、短縮できた時間を別の仕事に活用できるようになったんだそう。
とはいえ、実際に事務仕事をされている現場の方はどのように感じているのでしょうか?今回はシステム導入を担当された総務課の大石さんに詳しく話を聞いてみました。
自動納品サービス【KOS】とは?
自動納品サービス「Kotonegi Order System」、略して「KOS」(私たちは「コス」と称しています)。このシステムを簡単に説明すると、過去の発注データのアルゴリズム解析により必要量を予測し、自動的に発注数を決めてくれるというサービスです。
お店側にとって毎日の発注管理はなかなか大変な作業。特に日持ちがしない食材を扱うとなると、在庫や賞味期限などの管理で何かと頭を使います。忙しくてついつい発注を忘れたり、数量を間違えたりして青ざめる...なんていう経験をした方もおられるのではないでしょうか。ですが、この発注システムを利用すれば、それを防止することができます。
また、24時間いつでもどこでもパソコンやスマホの画面から数量の確認や修正ができるので、発注作業の軽減と時間短縮が実現。生産者主導でシステムが開発されたのは日本初とのことで、自前の発注管理システムを持たない、個店や数十店舗のチェーン店で、人手不足の問題を軽減してくれるのではと期待されています。
ふーん、ただの発注システム?と思うなかれ。
実はこれ、社内の事務作業も劇的に減ったんだそう。
鳴り続ける電話の日々とはおさらば!
ここからは【KOS】導入を担当された総務課の大石航平さんに話を伺いました。
総務課の大石航平さん。主に経理や労務の業務、商品の出荷及び受注業務をおこなう部署で、その中でも出荷関連の業務や、社内勉強会のセッティングなどを担当されています。丁寧な話し方で優しい印象の大石さん。そんな彼の特技はExcel。関数を組み立てる楽しさをなかなか周りに分かってもらえないのが切ない、と話していただきました(笑)
ーサービスが始まって、仕事場にどんな変化がありましたか?
一番大きな変化は、発注の事務作業の時間が劇的に減ったことですね。毎朝注文の締め時間になると、発注数をまとめ確認する作業をおこないます。【KOS】導入前だと、これを5~6人で1時間半ぐらいかけて作業していました。イレギュラーがあると2時間かかることもあり、正直全然人手が足りていない状況が続いていました。それが、今は2人で30~40分で終わるスピード。かなりの時間短縮になっています。
また、以前はFAXいただいた何十枚もの発注書をパソコンに入力する作業がありました。慣れているメンバーしかいませんが、それでも月に数回は転記ミスが発生してしまい、お客さまにご迷惑をかけてしまうことも。でも、【KOS】のおかげでその心配をする必要がなくなりました。
ー1日の電話の数も減ったと伺いました。どのくらい減ったのですか?
そうですね。以前は1日に100件以上電話がありました。1つの電話が終わっても数分後に別の電話がかかってきて、自分の仕事が全く進まない状態でした。ですが、今回お客様自身がいつでもどこでもパソコンやスマホから数量確認ができるように。そのため、発注に関する問い合わせはほとんどなくなり、今ではそれ以外の電話(商品の問い合わせや営業課への電話)が1日40件ほど、と半分以下になりました。
ーシステムが開始されて約2ヶ月経ちましたが、実際のところどうですか?
【KOS】が開始されるまで、チーム内からはうまくいくだろうかとか、どうなるんだろうといった不安の声がありました。でも実際始まってみると、事務作業が減ったおかげで皆さんかなり楽になったようです。
パソコンやExcel慣れしていない方もいるので少々戸惑いもありますが、じきに慣れていくんじゃないかなと思っています。
ー大石さん自身はどう感じてますか?
私自身も時間短縮できて嬉しく思います。
特に繁忙期はありがたいです。例えば、お盆。パートさんも休みの方が多いので、去年は少人数で事務作業をしました。でもなかなかしんどくて、「今日はなんとか乗り切った。明日はどうなるんだろう」と夜も眠れぬ状態でした(笑)
今では少人数でも仕事が回せる状態になったので、ホッとしています。
でも、【KOS】はまだまだ修正の余地があると思っています。お客さまや事務のメンバーからももっとこうしてほしいといった声があります。既存のものではなく独自開発のシステムなので、こうやって改善ができることも強みです。今後、システム会社の方と相談し、みんながストレスなく快適に使えるようにさらに良いシステムにしていきたいと思います。
農業は他業界に比べて仕組化が進んでいない部分があります。仕事がスムーズになるもの、チームワークが良くなるものはどんどん取り入れていく。そして、うまくいかないことも改善を重ねるうちに、お客さまにとっても働く方にとっても嬉しい環境になっていく。
今回取材させていただき、導入前の現場にあった変化に対する不安も、今ではポジティブな方へ変わっていっていることが分かりました。担当の大石さんも「みんなにより役立つものを」という前向きな姿勢でお仕事をされていて、私自身も勉強させていただきました。
今回の【KOS】導入の裏には営業課メンバーの活躍もあったそうです。
実際は、外回りの彼らが取引先などのお客さまに【KOS】の営業をしていました。
今後、【KOS】がどうなっていくのか気になるところ。
また、何か変わったことがあればお伝えしていきます!