魚釣りはやはり、釣れてこそ楽しい。そして釣るためには用意がいる。むしろ事前の用意こそが9割ではなかろうか。
妊活がよくニュースで話題になる。妊娠はそもそも確率が低い。晩婚化が進む現代において、子どもを望む世帯が、その確率を少しでも高めようと必死になるのは当然だろう。
とりとめもなく、まったく関係のない話をしたようだが、成功の確率を高めるという点では共通している。それは、当事者意識を持って考え、行動することだ。
この観点から、新規事業の成否と、それを担える人の基礎原理について論じたい。
事業をつくる仕事は、そもそも確率が低い
事業をつくること、案件をとることは、そもそも確率が低い。
学校のお勉強や、完全にマニュアル化された仕事は、決められた作業を進めれば結果が出るように設計されている。それゆえ、成立させるためにどんな条件が必要なのか、ゼロから考える必要はない。
しかし、事業をつくること、案件をとることは、設計され尽くした仕事でもなければ、学校のお勉強でもない。ただがむしゃらにやれば、うまくいくというものではない。
何が成立要件なのか。嗅覚を働かせ、ときには理論的に、仮説と行動計画を組み立てる必要がある。
事業を統括する立場にいると、プロジェクトの進め方から個々のタスクの進め方まで、うまくいかないものは瞬時にわかることがある。
なぜなら、初めて取り組むことについて「これならうまくいく」と言えるものは、初めてであるがゆえに、概して仮説の域を出ない。一方で、うまくいかないものは理論的に説明しやすく、その大半は抜け漏れによるものだからだ。
言い換えれば、成立に必要不可欠な要素が抜け落ちていたり、前提が誤っていたりすれば、うまくいきようがない。それは想像に難くない。
当然ながら、成立要件が見えただけでも不十分である。その要件を満たすための準備をし、実行して、初めて勝負の場に立てる。
成果を分けるのは、予習と復習である
確率を高めるうえで、学校のお勉強やマニュアル化された仕事と共通することもある。それは、予習・復習である。
古くは孫子が「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」と説いた。必要な前提知識や背景を仕入れ、脳内シミュレーションを繰り返し、起こりうる展開を組み立てるということだ。
予習・復習をせずに、試験で高得点をとるのは難しい。それと同じで、結果を出せない人に共通しているのは、いつまでたっても予習・復習をしてこないことである。やるのと、やらないのとでは、雲泥の差がある。
今のご時世、ChatGPTのような生成AIを活用すれば、やろうと思えば、いくらでも簡単に、短時間でできる。
そもそも予習・復習は、人から言われてやるものではない。結果を出そうとする意識や主体性があれば、自然と最初に思いつき、取り組む営みである。
何もせずにテストで高得点をとろうというのは、考え方として甘すぎる。ないしは、愚かな妄想であることは説明するまでもないだろう。
そもそも高得点をとろうという気概がないのであれば、事業開発の仕事はやめたほうがよい。厳しい言い方に聞こえるかもしれないが、これは才能の話ではなく、仕事に向き合う姿勢の話である。
天才でなくても、成果は出せる
スティーブ・ジョブズのように、プレゼンテーションの神と呼ばれ、圧倒的な努力とセンスによって、常人離れしたアートともいえる仕事をする人がいる。
到底その域にたどり着くことが並大抵ではないのは、容易に想像できる。
ただし、事業をつくること、案件をとることは、その域までいかなくても十分にできる。
先に述べたように、成立要件を言語化し、実行し、予習・復習を重ねる。よほど前代未聞で常識外れのテーマでなければ、これらを着実に行うことで、一定以上の成果は収められるだろう。
よくあるキャリアの話として、「営業でトップの成績を出した」「MVPになった」といったものがある。もちろん、誰もがトップ3に入れるわけではない。それでも、かなり良いところまではいけると思う。
これまで出会ってきた、感じが良く、成果も出している事業開発の人には、概してこの姿勢と行動があった。また、私自身も、もともと事業開発の経験があったわけではない。それでも、会社を成長させる程度の成果は生み出せている。
必要なのは、言わば、仕事に取り組む当事者意識である。成果を出したいと切望する意欲であり、基礎的な努力である。根性論でもテクニックでも飛び抜けた才能でもない。
内的要因を整え、外的要因に働きかける
ここまで述べたことは、事業を成立させるための内的要因にすぎない。
実際の現場では、顧客側の組織体制、タイミング、担当者の関心や姿勢、予算状況、すでに競合が入り込んでいるかどうかなど、さまざまな外的要因が重くのしかかる。しかも、それらはわかりやすく可視化されているわけではない。
だからこそ、事業をつくり、案件をとることは、そもそも確率が低い。
内的要因を整えるのはもちろんのこと、出会う量を増やすなど、外的要因に働きかける行動も必要になる。考え抜いて準備したうえで、打席に立ち続けなければならない。
私たちが一緒に働きたい人
私たちの仕事には、最初から正解が用意されているわけではない。成立要件を考え、仮説を立て、準備し、行動し、結果から学ぶ。その繰り返しによって、まだ存在しない事業や価値を形にしていく。
だから私たちは、華々しい経歴や天才的なセンスだけを求めているのではない。
自分の仕事を他人事にしない人。成果を出すために、頼まれなくても予習・復習ができる人。うまくいかない理由を環境のせいだけにせず、自分にできる打ち手を考え続けられる人。そして、地道な準備と試行錯誤を積み重ねられる人。
そういう人と、一緒に事業をつくりたいと思っている。
AIではなく、人間である以上、このプロセスは避けて通れない。そして今のところ、これはAIに淘汰されないコアスキルでもあるだろう。