当社は多拠点展開ビジネスを対象にサービス提供を行っています。このたび、同じように多拠点・多店舗展開企業の課題に向き合い支援を行っているIT企業と合同で「多店舗×ITの最適解を考える」オンラインセミナーを開催しましたのでご紹介します。
登壇社紹介
ラクスル株式会社
小暮:ラクスル株式会社でマーケティングを担当している小暮と申します。オフラインの集客・マーケティング活動に使われるチラシやポスティングなどの施策について、効果検証や管理の部分を「ラクにする」サービスを提供しております。ありがたいことに導入企業社数が1500社を突破したところです。
jinjer株式会社
土井:jinjer株式会社の土井と申します。300~1000名様くらいの従業員規模のお客様に対してバックオフィスのシステムの提供のご提案をさせていただいています。バックオフィスの業務効率化から生まれる店舗の業務効率化に結びつけていろいろな角度でお話できればと思っています。
株式会社ネクスウェイ
覚前:株式会社ネクスウェイの覚前と申します。弊社の店舗maticというサービスでは、本部と店舗をつなぐコミュニケーションツールを提供しておりまして、収益性向上でお役立ちできるように日々活動しています。よろしくお願いします。
SO Technologies株式会社
光山:SO Technologiesの光山と申します。デジタル集客のご支援を行っています。その中でもGoogleや無料で使える店舗集客のサービスを多店舗展開している企業様がうまく使いこなしていくためのご支援をさせていただいています。よろしくお願いします。
ClipLine株式会社
東:ClipLineの東と申します。これまで提供してきた「ClipLine」というサービスを改め、9月から「ABILI」という新ブランドを立ち上げています。動画型マネジメントシステム「ClipLine」が「ABILI Clip」になり、他にいろいろなソリューションを出して、「ABILI」という形で提供しています。よろしくお願いします。
1.多店舗×「人が集まる店舗」の作り方
共通する課題は個別最適化
東:まず、多店舗の集客やマーケティングについて、ラクスル小暮さん、SO Technologies光山さんとお話できればと思います。共通する課題は「個別最適化」。本部と店舗の関係性に加えて、個店の良さをどう打ち出すかというところでしょうか?
光山:チェーンストアはいかに均一化していくかがテーマになっていると思うんですけど、ユーザーからすると店舗特有の詳しい情報が伝わってこないという声があり、均一化とユニークさの両立というのはよくお伺いする課題ではあります。
Googleの店舗情報を上手く使って集客につなげていくためには、「ユーザーの検索体験を高める」必要があります。ユーザーが能動的に情報を見に来たタイミングでリアルな情報を伝えていけば選ばれやすくなるんです。
ある補聴器店さんの例をあげると、エレベータが映っている駐車場のエントランス写真を店舗画像に設定されていたりします。補聴器店を利用される方は、高齢だったり付き添いの方がいたりするので、バリアフリーな店舗であることをしっかりアピールしているんです。こういったリアルな情報をちゃんとお届けしていくということが、今の集客には求められていると思います。
東:このレベルの情報だと本部の方々が管理していくのは難しいですね。
光山:そうですよね。営業時間やロゴなどの共通のサービスは掲載していくべきだとは思うんですけれど、一方で「攻め」と書いているように、店舗のローカルな情報は、店舗の協力も得ながら発信していけるとより集客に寄与していく面が大きいと思っています。
均一すべき情報は本部、ローカルな情報はその店舗の強みとなるため、
本部がサポートしながら店舗が主体となって更新するのがよい
東:忙しい現場に協力してもらうには工夫が要りそうですね。
光山:そうなんですよ。数値をちゃんとフィードバックするとか、どういう仕組みでどういうユーザーが見ているかを伝えてあげるとか、研修とか、そういうことも必要になってきますね。
東:ありがとうございました。ラクスルの小暮さんからは具体的な店舗対応の改善の事例を持ってきていただいていますがいかがですか?
小暮:はい。こちらはワタミ様の事例で、複数店舗で同じチラシをまいて、どれくらいQRコードの読み込み率の差があるのか検証したんです。エリアによってすごく差が出ました。
まず、エリアによって好まれるコンテンツに差があったんですね。例えば、駅前の店舗だとデリバリーやUberEATSが好まれるとか、関東はUberEATSの読み込み率が高くて関西は出前館の方が高いとか、結構面白いデータが取れました。
もう一つは、たとえば都心では一般的にはサラリーマンが多いですが、数百メートル行っただけでマンションが多くなってファミリータイプになったり、同じようなエリアでもセグメントが変わってくるので、当然訴求すべきコンテンツも変わってきます。
やはりエリアに特化した情報提供やマーケティング活動を行わなければいけないということが改めてわかったという事例ですね。
東:なるほど。さっきの話と一緒でそこまでの粒度でやろうと思うと本部だと把握しきれないでしょうか?
小暮:そうですね。本部だけでも現場だけでも難しいですね。企画を考えたり、取り組みのノウハウは本部がしっかり現場に提供してあげるべきだと思います。実行強度を高めるために、本部から現場に情報を共有することがキーになってくると考えています。
光山:現場施策について、私はデジタルで小暮さんの方は実際の販促物なわけですが、本部と現場が協力して進めないといけない点は共通していますし、そこは我々が向き合っていろいろなやり方を考えたいと思っています。
東:店舗がやるものとデジタル化するものを分けるかも大事なんだろうなと。
光山:たくさん店舗があると、手を挙げる店長さんとかもいらっしゃるんですね。そこの数字の実績を作って横並びにしてという進め方はあると思っています。
小暮:おおむね光山さんと同じでして、いきなり全拠点ってなるとすごく労力がかかりますので、まず少ない店舗で試してみるのは重要だと思います。加えてもう一つあげるとすれば、社内の中でもこれは店舗に任せるべきなのか、本部なのか、どちらでも解決できそうにないのであれば外部の力も頼ろうなど、そういう視点も重要かと思います。
2.多店舗×店舗運営・マネジメントの在り方
チェーンストアの構造に適した情報共有が必須
東:次に、多店舗×店舗運営・マネジメントの在り方について、ClipLineとNEXWAYさんでお話します。大まかに言うと、多店舗ならではの構造課題をどう乗り越えるかがテーマということになりますね。
覚前:チェーンストアは、本部と店舗の物理的な距離が離れていたり、本部の複数の関係部署が複数の店舗とN:Nの関係になっていて、コミュニケーションがとりづらい構造になっています。店舗の中に目を向けると、シフト勤務で全員が一同に集まることもないですし、ITリテラシーが高い方ばかりでもありません。
その状況で複数の部署、複数の人からばらばらと大量の情報が届くので見落としが起こりやすく本部がフォローをする必要が出てきます。我々はこのような見落としや余計な手間をなくし、収益性を高めるための施策に時間を使っていただくのが理想だと考えています。提供する情報量を適切にしたり、発信の質を高める工夫などをしていく必要がありますが、先ほどの話と同じでツールを用意するだけでは不十分ですので、運用のご支援まで行っています。
東:チェーンストアの構造問題について、僕らの表現では「伝言ゲーム化」と「ボトルネック化」としています。多拠点展開でピラミッド構造だと現場スタッフまでちゃんと情報が伝わらず、サービス品質がバラつきます。本来揃っていなくてはいけないような基本オペレーションのバラツキを整え、平準化した上で個別店舗の良さや個性を出すべきだと考えています。
また、拠点ごとに情報やノウハウが蛸壺化しがちという課題があります。サービス業では暗黙知が非常に多いんですが、ナレッジシェアされる機会が少ない。そこでデジタルの使いどころになるんですが、情報を当事者同士でやりとりできるようにすると伝言ゲームも砂時計ボトルネックも解消されます。
覚前:多くの企業で店長さんやミドル層に負担が集中していると思います。さらに最近はエリアマネージャーの業務内容も多様化してきていて、属人化しているのを日々感じてます。
東:現場を楽にするために新しいツールが導入されるわけですが、その使い方を教える人が必ずいて、その負担と工数の削減も考えなくちゃいけないですね。つきっきりで教えると工数がマイナス1になってしまうわけで、そこもある程度自動的に学べる仕組みを用意したり、真に現場を楽にするためにどうするのかは見極めないといけないですね。
3.多店舗×人材活用 人事労務課題への向き合い方人がすべき業務とデジタルに置き換える業務を分別する
東:次に人材活用とデジタルについてです。僕らはデジタルの活用には大きく2種類あると思っていて、人の仕事の置き換えをするデジタルと、付加価値を強化するデジタルがあると考えています。
覚前:現場ではお客様と直接接するので、その付加価値を高めることが非常に重要です。管理や事務作業はデジタルに任せて、人がやらなきゃいけないことにフォーカスすべきですね。
小暮:マーケティングの話に限ってでも業務課題が非常にたくさんあります。本部としてはブランドを大事にしたいが、個店の販促物を全部本部が作るわけにはいかないし、店舗がチラシを作るというのも本質的ではないと思います。外注すればコストがかかります。
そうなってくると、どれを人で行い、どれを置き換えるのか、やるなら店舗なのか本部なのか、そこの認識を合わせていくことが大切ですね。本質的に必要な業務がちゃんと評価制度に結び付いているとか、そういう一貫性というのも大事だと思います。
東:ありがとうございます。バックオフィスのところはいかがでしょうか。
土井:バックオフィス業務って、本当にそれ店長さんがやらなきゃいけないのとか、紙でやる必要あるのとか、そういう課題が多いと思っています。例えば採用関係ひとつとってもアナログでやると書類を送ったり電話でやりとりしたり煩雑な手続きが必要ですから、システムで効率化して、店長さんの時間は売上に繋がるとことに使っていただくのがいいとお話しています。
バックオフィスの効率化は売上を上げるなどの施策と違って到達すべき結果が決まっているので、プロセスを減らせるだけ減らしたほうがいい。後回しになりがちな分野ですが、逆にそこから始めていくと店舗での時間を生み出すことにつながります。
ツール導入のために稟議を上げたり効果試算をする場合も、現状の業務にどれくらい時間がかかっているかを算出すると、年間で数百時間削減できることがわかったり、実際効果としても出てくることがあります。
4.多店舗×データ活用・経営への活かし方
未来のありたい姿から逆算して最適なツール選定をしていく
東:最後にデータ活用についてです。我々の方で実施した調査では、工数やスキル不足に加えて、個別の部署にデータがとどまっていて一元化できていないという課題があるようでした。かつ、誰に共有しているのかというと現場まで届いていないとか、他部門に展開されていないという回答が一定程度あります。
スプレッドシートでデータ分析を実施しているという回答が多数。人手やスキル不足との回答も目立つ
現場に近い人材がデータを利用できていない(左)
光山:私からはGoogleMapの口コミについて紹介します。このデータはアンケートと違って、来店予定者に対して情報を知らせるので、結構本音が出やすかったりします。活用方法が2つありまして、一つは、店舗展開しているのであれば横の比較をしてみるということです。全店の傾向と違う特徴がわかれば、それがポジティブなものであれば全店展開ですし、ネガティブなものであれば修正していくわけです。
ポジティブ、ネガティブそれぞれに紐づくキーワードはテキストマイニングのツールを使うと簡単に抽出できますので、それである程度共通する項目を見て、その中での特異値を見つけていくことが可能です。これは本部の方が取り組まれるといいと思います。
もう一つは現場向けで、これから来店される方に見られてるところにこういうこと書かれているよとフィードバックすることによって、店舗の方の意識があがって、結果的に顧客体験があがり、口コミも増えていくような使い方もできますね。
東:なるほど。ありがとうございます。ネクスウェイさんはいかがですか。
覚前:私からは本部ー店舗間のコミュニケーションのデータ活用で申し上げますと、業務連絡の数がどうか、忙しい週末にたくさん届いていないか、店舗における作業や報告期限の遵守状況はどうか、などを可視化・検証することによって適切な情報共有にしていくことができると考えます。
東:ありがとうございます。弊社では業績向上のためのデータ活用を支援していますが、店舗ごとの数字(目標と実績のギャップなど)を提⽰し、他店⽐の優劣も可視化して、エリアマネージャーや店舗責任者の対策検討と実⾏をフォローする仕組みを提供しています。何ができていなくてどこのバラツキを改善すると売り上げに繋がるのかというのはなかなかわからないものですが、改善施策までたどり着けるように見える化することを重視しています。
土井:弊社では特に採用や人材関連支援を行っていますが、既存社員の定着率を上げたり、採用力を上げるというのが多くの企業の課題になっていると思います。多様性に対応しながら新しい人材を活用しようとすると、たとえば最近ならリモートワークに対応できるツールなど、何かしらのITを導入することが必要になると思いますが、そのための意思決定プロセスの中で各種データが必要になってくるはずです。
人事データについては、十分に集まっていない、抜けている年がある、紙の状態になっているなど、分析するためのデータを準備して加工するところから始まるお客様が多くなっています。
こういう状況で何からやればいいかと言うと、まずは人事にまつわる情報が集まるデータベースがあって、そこを見れば分析ができる状態にしていくことが重要だと思っています。
ただ、結局はシステムを選ぶことは目的ではなく、未来の在りたい会社の姿を描いて、逆算していくことが大切です。足元の業務がひっ迫していると中長期のことは考えづらいので、まずはオペレーション改善して、将来的に分析ができるようにデータを溜めていくことから始めると良いですね。
未来の在りたい姿から逆算して計画する
東:まさにみんなの言いたいことがこのスライドに集約されていますね(笑)。最適なプロダクトを選んだうえで、必要な人にデータが共有され、必要な形で活用できる状態にするのが理想だと思います。課題には色々なパターンがあれど、そもそも何のためのデータ活用なのかを見定めて、新しいことをする場合はきちんと段階を踏むとか、どんな方向性するのかとか、そういったところは共通して考えていかなければいけない大前提の基本事項だと改めて認識しました。
今日はありがとうございました。
一同:ありがとうございました。
終了後も多拠点ビジネスの課題とソリューションについて話続ける一同
最後までお読みいただきありがとうございました。