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仕事も、個人の活動も。CINRAディレクターの「挑戦」から生まれる好循環とは?

CINRAでは「パラレルキャリア」という言葉が一般化する以前から、多くの社員が副業に取り組んでいます。個人の活動で得たスキルや知識、好奇心は仕事にもフィードバックされ、さらなる成長につながると考えているからです。

ディレクターの石松豊も、仕事と個人の両面で精力的に活動し、充実の日々を過ごすひとり。CINRAでは街を舞台にしたプログラム企画を、個人では小さなプラネタリウムを舞台にしたライブを手がけるなど、「音楽」を軸にさまざまなイベントを仕掛けています。

石松にとってはどちらも大切な、仕事と個人のライフワーク。それらはどう影響し合い、どんな相乗効果をもたらしているのでしょうか?

取材・執筆:榎並紀行(やじろべえ) 編集:服部桃子(CINRA)


石松豊

2016年入社。ウェブ制作のディレクターとして大地の芸術祭、ポプラキミノベルなどを担当。その他ディレクション領域をメインにしつつ、チラシやグッズ制作のディレクション、イベント企画など、幅広い領域を担当。個人では、プラネタリウムやカフェで落ち着いた音楽を届けるライブイベントを企画している。

個人のイベントでつないだ縁が、新たな体験を創出した

―まず、石松さんのCINRAでの業務内容を教えてください。かなり幅広い領域を担当されているということですが。

石松:今年の3月まではウェブ制作のディレクターがメインで、そのほかに企業のプロモーション施策やクリエイティブ制作、イベントの企画にも携わっていました。4月からは、イベントの企画やディレクションに軸足を移す予定です。

石松豊

―これまで手がけたなかで、特に思い入れが強いイベントは何ですか?

石松:自社主催のイベント『NEWTOWN』と、多摩市がコロナ禍で開催したオンラインイベント『みんなでつくる多摩市ONLINE文化祭』です。NEWTOWNではプログラムの企画やウェブ制作のディレクションなどを、多摩市ONLINE文化祭ではCINRAが担当するほぼすべての領域を担当しました。クリエイティブ制作のディレクションから当日の進行台本の作成、プログラム企画、プレスリリースの作成まで、現場の仕事の9割は自分でやりましたね。

CINRAが主催する大人の文化祭『NEWTOWN』

オンラインで行われた、観客参加型のイベント『みんなでつくる多摩市ONLINE文化祭』

―それぞれの取り組みについて具体的にお話しをうかがいたいと思います。まず、NEWTOWNはどのようなイベントだったのでしょうか?

石松:「街にカルチャーを みんなでつくる文化祭」をテーマに多摩市・八王子市で開催した大人の文化祭イベントで、ぼくは「老若男女が音の楽しさに偶然触れるプログラム」をいくつか企画しました。

石松が手がけたプログラムのひとつである、学校の下駄箱に設置した誰でも弾けるヤマハの『LovePiano』。校舎に響くピアノの音に懐かしさが広がった

―特に印象に残っている企画はなんですか?

石松:地元の落合中学校・吹奏楽部と「ザ・なつやすみバンド」とのコラボレーション演奏です。そもそもは、駅前の大通りを移動しながら楽しめるプログラムがあってもいいんじゃないか[MOユ1] というアイデアが発端で、それならマーチングバンドで演奏しながら会場を練り歩くのはどうか、と。そこで多摩市内の学校をいくつかリサーチすするなかで出会ったのが、落合中学校の吹奏楽部でした。多摩市で開かれたイベントに出演した際、観客が盛り上がる曲を演奏するなど、純粋に音楽を楽しむというスタンスがうかがえたので、連絡をさせていただきました。

落合中学校吹奏楽部とザ・なつやすみバンドのコラボレーション演奏の様子

―「ザ・なつやすみバンド」へオファーした理由も教えてください。

石松:ザ・なつやすみバンドでピアノとボーカルを務めている中川理沙さんとは、もともと個人で主催したイベントに出演していただいたご縁があり、お声がけさせていただきました。ザ・なつやすみバンドは、「毎日が夏休みであれ!」というテーマを掲げて活動されています。学生時代のピュアな気持ちを思い出させてくれるような楽曲をつくるバンドなので、中学生とコラボしたら、きっと素敵な時間になるんじゃないかと考えました。

バンドのメンバーは、「音楽はみんなにとって平等なもの」という考えを持つ方々で、今回の取り組みについて深く共感してくれて。「とても意味があるもの」とも仰ってくれましたね。

―一言でコラボといっても、実現させるには苦労もあったと思います。大変だったことはありますか?

石松:最初は、中学生にバンドの楽曲を耳コピで覚えてもらおうと思ったのですが、それは難しいと学校側から言われて。実現するためにはどうすればいいか、バンド側に何度も相談しました。当初2曲演奏する予定だったのを1曲にしぼったり、全員が別々のメロディーを弾くのではなく、3つくらいのパートに分けて弾くかたちにしたり。バンド側が手書きの楽譜を送ってくれたこともありましたね。本番まで1か月もないなかで、お互い気持ちよく演奏できる方法を探っていました。

ただ、一緒に演奏するタイミングがなくて、結局顔を合わせて練習できたのは本番当日。朝9時から練習して、なんとかかたちにすることができました。

―当日ですか!?  それはドキドキしますね。結果はいかがでしたか?

石松:一緒に演奏したことで、バンドと中学生の仲が深まりました。バンド側が積極的に、緊張している子に声をかけたり、音楽を楽しむ姿勢を見せてくれたりしたことで、学生たちも徐々に心を開いていくのがわかって。結果、とても素晴らしい演奏になりました。SNSでも、「すごく感動した」といった投稿があって。やりたかったことを実現でき、しっかりと届けられた実感もありましたね。

―中学生とザ・なつやすみバンドのコラボは、昨年の『多摩市ONLINE文化祭』でも再演したそうですね。

石松:そうなんです。多摩市ONLINE文化祭は、多摩市さんからコロナ禍でも多摩市民の文化発表を応援したいからオンラインで何かできないかと相談をいただき、CINRAでもオンライン配信の実績があったことから実現しました。

ぼくは、音楽を軸にした企画や演劇などをいくつか提案しました。そのなかのひとつが中学生とザ・なつやすみバンドのコラボの再演。当時は新型コロナウイルスの感染拡大により、中学生は文化祭での発表が制限されてしまい、ザ・なつやすみバンドもライブ活動されていない状態でした。NEWTOWNに引き続き、コラボ演奏をしてもらうことで、発表の機会になればと考えたんです。

多摩市オンライン文化祭での、落合中学校吹奏楽部とザ・なつやすみバンドのコラボ演奏

―2回目のコラボをバンド側に依頼したとき、どのような返事がありましたか?

石松:とても好意的に受け止めてくれました。実際、吹奏楽用にアレンジした楽譜を早い段階で送ってくれたりと、1回目の経験を踏まえてとても丁寧に準備してくださいました。

事前に、直接会って練習する機会も設けられました。バンド側が中学生をすごく楽しませてくれるんですよ。卒業証書授与みたいに一人ひとりの名前を呼んで楽譜を手渡ししていた様子は思い出深い記憶のひとつです。

―学生側に変化はあったのでしょうか。

石松:より自分たちから音楽を楽しむようになっていったと感じました。例えばバンドメンバーでトランペット担当のMC.sirafuさんが中学生に弾き方を教えたとき。管楽器を担当する男の子が、「アレンジ、こうしたらどうですか?」と提案したんです。実際にやってみたらお互い「最高じゃん!」と(笑)。バンド側が考えややり方を押しつけることなく、中学生の意見を尊重して、「音楽を楽しむこと」を共有しようとしてくれたからこその変化かなと思います。

個人でも、「動いたらできるんだ」という手応えを感じた

―では、個人でイベントを手がけるようになったきっかけを教えてください。

石松:昔から「好きな音楽を広げたい!」という思いを抱いていて、大学時代から学内フェスの企画や、サークルの所属バンドの楽曲をウェブでPRしていました。ただ、ウェブ広告会社に就職してからは、デジタルへの興味が強くなって、イベントを個人で企画することはありませんでした。

もう一度やってみようと思ったきっかけは、CINRAに入って初年度に携わったNEWTOWNです。ぼくはウェブディレクターのチームに所属していましたが、「面白そうだから企画をやりたいです!」とリーダーにお願いしたんです。

そのときは、アーティストへのオファーのやり方から何からあまりわかっていませんでしたが、教えてもらいながら一つひとつクリアし、イベントがかたちになっていくのが本当に楽しくて。このとき得たやりがいから、仕事以外でも、自分が思い描く場づくりにチャレンジしたいと思うようになりました。その後、実際に手がけてみたことで、個人でもやれる手応えを感じましたね。動いたらできるんだなって。

原美術館で開催した収録ライブ『ひかりの感触』も、石松が個人で手がけたイベントのひとつ。2021年1月をもって閉館した品川の原美術館を舞台に、館内映像を挟みながら美術館に所縁のある2組のアーティストのライブ演奏とミニインタビューを収録したもの

―最初に個人で企画したイベントは何でしたか?

石松:『星空ごこち』というプラネタリウムライブです。2018年から毎年、計4回開催しています。新宿の小さなプラネタリウムで、アコースティックギターやエレクトロニカの優しい音楽を聴きながら星空を眺めてもらうというもので、地元のおじいちゃんから癒しを求める若者まで幅広い年代が足を運んでくださっています。


プラネタリウムを見ながら音楽も楽しめる『星空ごこち』

―なぜ、プラネタリウムという場を選んだのですか?

石松:ぼくは個人で活動されているアーティストがつくる歌詞がない音楽が好きなのですが、それらに目を向けてもらえる場をつくりたいと考えたときに、プラネタリウムならその音楽のよさを一層感じられるんじゃないかと思ったんです。また、出演者を初めて知った人が、実際にイベントへ行きたいと思ってもらうには、どんな体験を得られるかが重要になる。そこで、プラネタリウムなら、自分からは行かなくても誘われたら行きたくなるような特別な場所だし、星空の演出と穏やかな音楽の相性も最高だと思いました。

―それは、石松さんが直接プラネタリウムに企画を持ち込んだんですか?

石松:そうですね。メールを送り、担当者に直接会いに行って交渉しました。ほかにもいくつかの施設を回ったのですが、特に興味を示してくれたのがお借りしたプラネタリウムの方で、親身に対応してくれたんです。「なんか、面白いやつがきたぞ」という感じで。

―企画を進めていくなかで、楽しかったことは何ですか?

石松:いろいろあるのですが、曲と星を組み合わせてどんなストーリーを届けようか、などを考えるのは楽しかったですね。自然を思わせる楽曲には季節に合わせた星座や風景を投影したり、曲の展開に合わせて流れ星が降るタイミングを決めたり。プラネタリウムのスタッフさんが敏腕で、少しずつ照明の色をグラデーションさせるなど、回を追うごとに細かい演出を提案していただけたのもありがたかったです。

―出演者や、お客さんからの反応はいかがでしたか。

石松:普段はプラネタリウムでライブをしたことがないというアーティストも、星空と自分の音楽をどう融合させて表現するかを深く考えてくださいました。そのうち星により興味が湧いてが湧いて、星の曲をいくつかつくったという方もいましたね。

2021年の冬にもこの企画を開催したのですが、お客さんから「このご時世にいろいろ大変だったと思うけれど、開催してくれてありがとう」といった感想をいただけて。このときは、続けてきてよかったなと思いました。

CINRAは自分の好きな領域でずっと挑戦し続けられる

―個人の活動とCINRAの仕事として手がけるイベント。両者に違いはありますか?

石松:個人で主催するイベントは仕事というよりも、例えて言うなら作品をつくる気持ちが強いです。自分が実現したい場や景色をどう生み出すか、そのためには誰にお願いさせていただくか。企画やコンセプトをこだわり抜けるのが個人でやる良さだと思います。最近は、「小さくてもあたたかい場」をつくることを以前より意識するようになりました。

一方で、会社の仕事として手がけるイベントにも、別の楽しさがあります。大きな予算でメジャーなアーティストにオファーできたり、テレビ局に取材されることで広く伝わっていく社会的影響力の大きさなどは刺激的ですし、チャレンジしがいがありますね。

―個人の活動が仕事に生かされる、あるいは逆もあるかもしれませんが、相乗効果はあると思いますか?

石松:個人の活動の場合、何から何まで自分がやる必要があります。それこそプレスリリースの作成なども、最初は手探りでやっていました。でも、そこで得たことは会社の仕事にも生かされていると感じますね。それこそ、いまでは会社で担当するイベントのプレスリリースもつくったりしていますから。ただ、そのおかげで自分のタスクが増え過ぎてしまって……多摩市ONLINE文化祭のときは本当に大変でした(笑)。

―チームという意味では、個人の活動で出会った仲間が、CINRAでのプロジェクトに関わるケースもありそうですね。

石松:はい。それこそNEWTOWNのときの中川さんのように、もともとは個人の活動でつながったアーティストにCINRAの企画を相談させていただくこともあります。

ただ、最初からそうした相乗効果を期待しているわけではなくて、個々のイベントで実現したいことや条件に応じて最適な進め方を考えていたら、自然とそうなったという感じです。それが結果的に、仕事と個人の活動の両方に役立っていますね。

―CINRAでは副業が認められていますが、何か縛りや禁止事項のようなものはあるのでしょうか?

石松:もちろん何でもOKというわけではありません。当たり前ですが、倫理に反するものや、CINRAのクライアントを奪うような活動はNGです。ただ、それ以外は特に縛りはないですし、自由にやらせてもらえます。会社が副業に寛容なのは、個人の活動で得たものがCINRAの仕事にフィードバックされることを期待しているからだと思います。

―最後に、仕事と個人の活動を両立させることの意義を教えていただけますか?

石松:公私ともに好きなこと、やりたいことに時間を費やしている実感を得られるので、心の健康はすごく感じますね。

個人の活動だけじゃなく、会社の仕事でも自分のやりたいことや課題がいつも目の前にあって、どうすれば実現できるかをつねに考えています。それができるのは、カルチャーというフィールドでビジネスと社会価値に向き合い続けるCINRAという会社の特徴かなと思いますね。自分の好きな領域でずっと挑戦し続けられるし、矛盾や壁があっても挑戦し続けることを諦めさせてくれない、とも言えるかも(笑)。その環境は、ぼくにとってはとても魅力的だと感じます。

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