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シンガポールの小さな国土からは想像もつかないほどの経済成長と技術革新が見られます。この進歩の象徴として、建築家モシェ・サフディ設計のマリーナベイサンズがあります。またジュエル・チャンギ空港もシンガポールを代表する建物です。これら施設は、その革新的なデザインで知られ、建築技術の新たな可能性を世界に示しています。
この記事でわかること
・マリーナベイサンズ
・ジュエル
・チャンギ空港
・モシェ・サフディ
マリーナベイサンズ
マリーナベイサンズは、2010年に開業したシンガポールのマリーナベイ地区に位置する壮大な複合施設です。この施設は総建設費が約80億シンガポールドルとされ、世界中の注目を集めるプロジェクトでした。マリーナベイサンズは、2,561室を有する豪華なホテル、世界クラスの大規模カジノ、160,000平方フィートに及ぶ広大なコンベンションセンター、さらには300以上の店舗が入るショッピングモール、アートサイエンスミュージアム、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイといった施設が集結しています。
■ホテル
マリーナベイサンズのホテル部分は、三つの独立した55階建ての高層タワーから成り立ちます。建築的に注目すべきは、これらのタワーが頂部で連結されているスカイパークです。このスカイパークは、強度と美学を考慮したカンチレバー構造を採用しており、長大なオーバーハングが可能となっています。この構造により、ユニークな屋上庭園とプールが特徴的な空中景観を創出し、建築物としての魅力を高めています。
■ショッピングモール
ザ・ショップス・アット・マリーナベイサンズは、その広大な敷地に様々な店舗が集まるショッピングモールです。建築的な特徴として、内部に模擬的な運河が設けられており、ベネチアのゴンドラを彷彿とさせるデザインが採用されています。この水路は、訪れる人々に独特の体験を提供すると同時に、空間の動線を生かした設計が施されています。また、自然光を最大限に利用するためのサンプラン設計が採用されており、自然と調和した明るく開放的なショッピング環境が実現されています。
■アートサイエンスミュージアム
アートサイエンスミュージアムは、その外観が蓮の花を模しています。この独特の形状は、自然界の形態を建築に取り入れたバイオミミクリー(自然界の仕組みから学んだことを技術開発に活かすこと)の一例として評価されています。内部空間は、展示のテーマに応じて多様なレイアウトを可能とするフレキシブルな設計が採用されており、訪れるすべての世代の人々が科学とアートの融合を体験できるよう配慮されています。また、この建物の形状は効率的な雨水収集システムを可能にしており、持続可能な建築技術を示しています。
■環境への配慮
マリーナベイサンズは持続可能性を重視した設計が特徴で、建物の環境への影響を最小限に抑える工夫が随所に施されています。屋上には太陽光パネルが設置されており、その生成するエネルギーは施設内の照明やその他の電力需要に供給されています。また、建物全体で自然換気と自然光を活用することにより、エネルギー消費を抑制します。さらに、最新の省エネ技術が導入され、水の再利用システムも設けられており、持続可能な運営を実現しています。(*1)
ジュエル・チャンギ空港
シンガポールにはモシェ・サフディの作品がもう一つあります。それがジュエル・チャンギ空港(Jewel Changi Airport)です。シンガポール・チャンギ国際空港内に2019年に開業した多機能複合施設で、空港ターミナル、ショッピングモール、エンターテインメント施設を兼ね備えており、チャンギ空港の国際的な魅力を一層引き立てています。
■設計と建築
ジュエルの設計は、建築家モシェ・サフディが率いるSafdie Architectsによって行われました。施設の最も注目すべき特徴は、世界最高の屋内滝「レイン・ボルテックス」であり、高さは40メートルにも達します。この滝は、空港の中心に位置し、再循環される雨水を使用しています。
ガラスと鋼で構成されたドーム型の屋根は、自然光を最大限に取り入れる設計となっており、内部の庭園や木々が豊かに育つ環境を提供します。この「森の谷」(Forest Valley)と呼ばれるエリアは、多様な植物が配置され、訪れる人々に癒しの空間を提供しています。
■ショッピングとエンターテイメント
ジュエルには300を超える店舗が入っており、世界中からのブランドが集結しています。ファッション、ガジェット、地元のお土産から高級レストランまで、幅広いニーズに応えるショッピングと飲食のオプションがあります。また、映画館、宿泊施設、イベントスペースも備わっており、トランジット中の旅行者だけでなく、地元住民にも親しまれています。
■環境への配慮
ジュエルは持続可能性を強く意識して設計されています。施設の屋根には太陽光パネルが設置され、この施設がエネルギーの一部を自給自足できるようにしています。また、最新の環境技術が導入されており、エネルギー効率の向上と温室効果ガスの排出削減を目指しています。これにより、ジュエルは環境負荷の低減に貢献しつつ、訪れる人々に快適な空間を提供しています。(*2)
モシェ・サフディの建築哲学
モシェ・サフディはカナダとアメリカを拠点に活動する国際的な建築家で、機能性と環境への配慮がデザインの特徴です。サフディは、使用する材料やその土地の文化、気候に根ざした建築を心掛けています。マリーナベイサンズにおいても、サフディのこの哲学が色濃く反映されています。
■モシェ・サフディのバックグラウンド
モシェ・サフディは、1938年イスラエルで生まれ、その後カナダに移住し、マサチューセッツ工科大学(MIT)で学んだ国際的に著名な建築家です。マリーナベイサンズのほかにジュエル・チャンギ空港やアビタ67(カナダ、モントリオール)、クリスタルブリッジズ・アメリカンアート美術館(アメリカ、アーカンソー州)などがあります。彼のキャリアは、社会的な責任感と技術的な革新を組み合わせた建築を創出することに重点を置いています。サフディは、都市計画、教育施設、文化施設など、多岐にわたるプロジェクトに関わってきました。
■サフディの建築哲学の核心
サフディの建築哲学の中心は、「人間の尊厳」と「生態系との調和」です。彼は建築を通じて社会的な交流を促進し、持続可能な環境を創造することを目指しています。この哲学は、彼のプロジェクトの各面に明確に表れており、使用する材料、構造の形状、そしてその機能が自然と調和し、人間が快適に利用できるデザインが反映されています。(*3)
■サフディの建築作品の特徴
- 革新的なデザイン
サフディのデザインは、しばしば複雑な幾何学的形状と大胆な構造で知られています。マリーナベイサンズのようなプロジェクトでは、三つの高層タワーが一つの巨大な屋上スカイパークで結ばれているなど、非常に独創的なアプローチが見られます。
- 環境への配慮
サフディは環境持続可能性を非常に重視しており、建築哲学が色濃く反映されています。自然光の利用、自然換気システム、地域の気候に適応した材料の使用など、環境に優しい設計を取り入れることで、エネルギー効率を高めると同時に人間と自然が共生する空間を創出しています。
- 人間中心の設計
サフディの作品は、ユーザーの経験を最優先に考えたデザインが特徴です。内部空間は非常に機能的でありながらも、訪れる人々が快適に過ごせるように細部にわたって気配りがされています。例えば、ジュエル・チャンギ空港では、多種多様な植物と自然の要素が訪問者にリラックスした体験を提供します。
- 多機能性
サフディの建築はしばしば複数の機能を統合することで知られています。商業施設、レクリエーションエリア、文化施設が一体となった複合施設を設計することで、一つの場所で多様な活動が可能になります。
まとめ
この記事では、シンガポールの象徴的な建築物であるマリーナベイサンズとジュエル・チャンギ空港に焦点を当て、モシェ・サフディの巧みな設計と建築哲学に触れることで、これらの施設がいかに建築技術の新たな可能性を世界に示しているかを探りました。これらの建築はただの建物を超え、革新的なデザインと環境への深い配慮を組み合わせていることがわかります。
シンガポールのような革新的な国で学び、経験することは、私たちにとって大きな価値があります。技術の進歩と共に、これからも新しい挑戦が待っていることでしょう。
最後までご覧いただきありがとうございました!
参考資料:
*1 Singapore Guidebook「マリーナベイサンズの建築について」
https://sing-navi.net/%E8%A6%B3%E5%85%89/%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%82%A2/%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%8A/919
*2 JTB「巨大な屋内「滝」が話題!ジュエル・チャンギ空港徹底解剖」
https://www.jtb.co.jp/kaigai_guide/report/SG/2019/08/400_233385_1566867734.html
*3 architecturephoto「アビタ67を設計したモシェ・サフディのTEDでの講演「アパート建築を改革する」の動画(日本語字幕付)」https://architecturephoto.net/38322/