営業はモノを売るだけの仕事だと思っていた私の、人生を変えた2人の営業マン～1人目～

営業という仕事に対するネガティブな既成概念

今でこそ、営業は楽しくてやりがいのある仕事だと思っていますが、ある営業マンと出会うまでは、営業とは、ノルマがきつくて、ただ泥臭くて大変な仕事で、自分には絶対に出来ない仕事だと思っていました。学生の頃、一日だけ住宅のポスティングのアルバイトをした際に、ギラギラした営業マン、壁中に貼られたノルマが書かれた模造紙、そんな営業のイメージが強く印象に残ったことも理由だと思います。

飛込み営業をしてきた新卒営業マンとの出会い

出会いは、音響会社に勤めていた頃。当時私は、アルバイトの採用や教育を担当していました。そこへ、新卒で入社したばかりの営業マンAさんが、アポなしで飛込み営業をしてきました。ちょうどアルバイト募集のための媒体を調べようとしていたときで、時間もあったため、事務所の片隅に座ってもらい、媒体の説明をしてもらいました。新人のAさんは、緊張して汗ダラダラで、正直、何を言っているのか、よくわからなかった記憶があります。

それからまたしばらくして、もう少し詳しく話をさせて欲しい、ということで、教育担当の方を同行して、再び事務所に来てくれました。話自体は、やはりよくわからなかった記憶があるのですが、同行してくださった教育担当のフォローもあり、私が知りたいことは一通り教えてくれました。

他にも何社か話を聴いて、最終的に、Aさんのところにお願いすることになりました。正直、そのときは、Aさんが良かったからお願いしたわけではなく、単純に媒体そのものや、金額を比較したときに、Aさんのところが良かったから、依頼をしたのでした。

初受注だった新人Aさんの喜びよう

ビックリしたのは、Aさんにお願いするとき。こちらからAさんの会社に電話をして、不在だったAさんに、発注したいことを伝言してもらいました。後ほどAさんからお電話があり、電話口で、なんだかAさんがいつになく騒がしく、お礼らしきことを言ってくれていたのを、今でも覚えています。あとから聴いた話ですが、新卒で入社して3ヶ月目、周りの同期はどんどん受注をしていたのに、彼はまだ受注したことがなく、私からの依頼が初受注だったらしく、とにかく嬉しかったそうです。

営業を経験している今なら、その時のAさんの気持ちは、もちろん凄くよくわかりますが、当時、営業をしたことのなかった私には、その喜びぶりは、そこまで理解できていませんでした。

新人営業マンが教えてくれた課題解決型の提案営業

そこから、Aさんが何度か事務所に通ってくれて、どんな人を採用したいのか、原稿を書くためのヒアリングをしてくれました。そのときに、彼は何度か、私が気付いていなかった、会社の課題をも気付かせてくれて、それを解消するためには、こんな人が応募してくれたらいいですよね、といった提案をしてくれました。ただモノを売るだけが営業だと思っていた私にとって、求人原稿を作るために、そんな気付きをもらえるとは思ってもみなく、Aさんが新人だったとはいえ、求人市場をある程度わかった上で話をしてくれて、色々と勉強になったと同時に、営業という仕事に対する私の見方が変わり始めたタイミングでした。

その後、実際に応募が始まると、Aさんは、応募があるたびに、電話口で喜んでくれました。そして面接をして採用が決まると、もっと喜んでくれました。それが私には衝撃的で、採用媒体のただの営業マンだと思っていた人が、こんなに気持ちを一緒にして伴走してくれることが、心強くも感じていました。

Aさんと出会ったことで変わった人生

おかげで私はそれから2年後、Aさんが所属していた広告代理店の大本の会社、リクルートに、期間限定契約で、勉強をするために入社することになります。提案型営業、課題解決型営業、クライアントと伴走する営業。それを自分自身で体験してみたいと思ったのです。Aさん以外にも、他社採用媒体の営業マンや、同じ会社でも一時期Aさんが担当から外れて別の方が担当になったこともあったのですが、Aさんの熱意を超えられる人はいませんでした。おそらく同じ会社の営業マンであっても、Aさんでなければ、こんな気付きをもらうことは出来なかったと思いますし、私が営業をしてみたいとは考えなかったと思います。

あれから8年。Aさんも私も、既に当時いた会社にはいませんし、仕事上の繋がりはありませんが、いまだに時々会って、近況報告をしています。私より年下ですが、私にとっては営業の大先輩であり、とても強力な営業の相談相手です。会うたびに、まだまだこの人には敵わないなと思います。汗ダラダラで、何を言っていたのかわからなかったAさんの姿はもうどこにもなく、今は部下を引き連れた立派な頼れる営業マンです。