こんにちは、aciass技術責任者の東です。
私たちエンジニアは、ITシステムを構築する際「負荷分散(Load Balancing)」と「可用性(Availability)」という2つの概念と向き合っています。
一見、技術的なキーワードのように思えますが、これは経営にもそのまま応用できる考え方です。
今回は、スタートアップである私たちの経営体制において、どのように「負荷分散」や「可用性」という考え方を取り入れているのかをご紹介したいと思います。
スタートアップの意思決定は「速度」と「精度」のトレードオフ
スタートアップでは、迅速な意思決定が命です。ですが、スピードを重視するあまり、意思決定の質が犠牲になることもあります。
たとえば、代表者ひとりがすべてを決めてしまう体制は、スピーディですが、判断ミスのリスクが高くなります。加えて、代表が倒れたり、見誤ったときに、組織全体がそのダメージを受けてしまう——これは、システムで言えば「単一障害点(Single Point of Failure)」と同じ構造です。
私たちはこの問題を、ITの原則にならい「負荷分散」と「可用性」という観点から解決しています。
「負荷分散」:すべてを代表が背負わない組織づくり
aciassは、代表1人と役員2人の計3名体制で運営されています。一般的には、経営者=最終意思決定者という印象がありますが、私たちは意識的に「代表でも1人で決めない仕組み」を採用しています。
その理由は明快で、人間は誰しも間違えるからです。
意思決定において重要なのは、「判断の正しさ」であって、「誰が決めたか」ではありません。したがって、私たちは以下のような体制を敷いています:
- すべての重要な意思決定は、原則3人で協議の上、合意形成する
- 一人の主観や都合ではなく、複数人の視点でバランスを取る
- 分野によって得意な人がリードを取るが、最終的にはチームで確認し合う
これはシステムにおける「負荷分散」に似ています。1台のサーバに全トラフィックを流すのではなく、複数のサーバで処理を分担することで、性能と安定性を両立させるのと同じです。
「可用性」:誰かが不在でも止まらない会社を
もうひとつのキーワードである「可用性」も、私たちの経営において重要な要素です。
もし代表が数日不在になったときに、すべてが止まってしまうようでは組織として未成熟です。
実際に体調を崩したり、家族の都合があったりと、個人が継続的に稼働し続けられる保証はありません。
そのため、私たちは以下のような運営ポリシーを持っています:
- 常に業務の文脈を共有し、属人化を避ける
- SlackやNotionなどを活用し、誰がどの判断をしたのか記録として残す
- あらゆる意思決定が再現可能であることを優先する
つまり、「誰がいなくても代替可能な状態を保つ」ことが、可用性の高い経営と言えるのです。
「人は常に万全ではない」ことを前提にした設計思想
ITシステムは「いつか必ず不具合が起きる」ことを前提に設計されます。
同様に、私たちも「人は判断を誤ることがある」「体調や状況によっては稼働できない日もある」ことを前提に、組織づくりを行っています。
そうした前提に立つことで、自分たちの限界を冷静に受け入れ、属人化を避けたり、精神的な負担を分散したりと、より持続可能な運営体制を築くことができます。
このような考え方は、技術分野出身の私たちにとってごく自然なアプローチであり、むしろ安心して挑戦できる土台になっています。
小さな会社だからこそ、設計がものを言う
私たちのようなスタートアップにおいて、「人が足りないから」「時間がないから」という理由で組織設計を疎かにすると、後々大きなひずみが生まれます。
システムと同様、最初に「どう設計するか」がすべての土台になります。
- 誰が何を担当するか
- 意思決定をどうやって行うか
- どこまでを許容し、どこからをレビューするか
こうした設計を、起業当初から丁寧に作っておくことで、想定外の事態にも柔軟に対応できる組織になります。
最後に:チームはシステムである
ITの世界では、「優れた設計とは、障害が起きたときにどれだけ早く復旧できるか」で評価されます。
それは組織にもまったく同じことが言えます。
私たちは「経営=人の判断と仕組みの組み合わせ」だと考えています。
そしてその判断も、仕組みも、可用性と分散性を持たせることで、より持続可能なチームを作ることができます。
小さなスタートアップだからこそ、今後もこうした「技術的な視点を経営に活かす」ことを追求していきたいと思います。