KDDI株式会社 / 課長 → マネジャー → コアスタッフ
紀要:SBI大学院大学紀要第11号
【タイトル】 企業のインティグリティと順法意識醸成について-不確実性下の守りのフォーメーション- 【要約】 未来の事象を予測することが極めて難しい市場構造が存在することを我々は企業活動を営む中で感じている。ビジネスを行う際には、意識決定者は事象に関しての事前情報の入手が必須である。しかしながら、充分な情報が得られない場合も実際のビジネスシーンでは多い。そのような場合には、経験値(すでに起きた未来)をもとに近い将来を予測し、予測不可能なできごとが起こりうることを認識しつつ、より柔軟に対応することこそが、「不確実性」への対処ではないかと考えられる。 このような環境下では、成長分野への取り組み(攻めのフォーメーション)に注目されがちだが、不確実性が高いからこそ不祥事が発生した際の対応(守りのフォーメーション)に着目すべきではないか。企業不祥事による「レピテーションリスク」は企業の根幹を揺さぶりかねないからである。たとえば個人情報漏洩事故のような社会的にもインパクトが大きい事柄も、事前の予測が可能な領域にもかかわらず、実態と「あるべき姿」の乖離は大きい。コンプライアンス順守のプロセスは企業内に組み込まれているはずが、人的なミスに起因するものも少なからず存在するからである。これは従業員の怠慢ではなく、そもそもの法令順守の考え方(あり方)レベルでの企業側のアプローチ不足もあるのではないかと考える。新たに倫理的なアプローチ(インティグリティの考え)を取り入れることで、企業内での順法意識の醸成を探っていくことは、予測不可能な不確実性の時代では大切なのではないか。