社会的排除研究会
現代社会では、人々がさまざまな領域で排除されています。失業、貧困、ホームレスなど枚挙にいとまがありません。そして重要なことは、これらの排除が累積していくということです。たとえば、失業したために貧困に陥り、家賃が払えないためにホームレスになる、という累積過程を想定できます。この累積過程を捉える概念が社会的排除です。 多くの研究者が社会的排除の研究を行っています。本研究会ではそれらの研究を踏まえつつ、2つの視点から研究を推進しています。第1は、エージェント・ベースト・モデルを用いた分析社会学の視点から、社会的排除の動的分析をします。現実の排除の累積過程を厳密に分析するには、パネル調査が適しています。しかしこの調査方法には膨大な時間と費用がかかります。そこで本研究会では発想を逆転させて、コンピュータ上に社会を構築しその中で排除が累積していく過程を分析します。従来の研究の知見をモデルに組み入れる分析社会学の手法を用いることで、現実で起こっていることと乖離しないモデルを構築することができます。 第2の視点は、制度の影響に着目することです。排除の累積過程はどの社会でも同じように生じるわけではなく、その社会の制度の影響を受けます。たとえば、失業保険が充実している社会ならば、失業したとしてもすぐに貧困に陥るわけではありません。本研究会には日本とスウェーデンの研究者が参加しているので,両国の制度の違いが排除の累積過程の違いを生み出すメカニズムを解明するとともに、その知見をエージェント・ベースト・モデルに生かして、より優れたモデルの構築を目指します。 このように、本研究会は分析社会学と制度分析の視点から社会的排除の研究を推進します。そしてその研究成果を社会に還元することで、排除されている人々を社会の中に再び迎え入れる社会的包摂を実現するための方策を探っていきます。