競馬場で決断力を磨く。
競馬場といえば馬が走る場所であり馬券を買う人々が集う場所。 そんな漠然としたイメージを抱いていた学生時代から一転、いざ自分が大人になり、一プレイヤーの立場で競馬に参加してみると、 ・情報収集力 ・問題解決力 ・決断力 などなど、社会で生き抜く為の「資質」に近い要素が数多く含まれていることに気付かされます。 馬券を購入する目的は人それぞれ異なりますが、券種により一定の控除率が設けられている以上、馬券で勝ち続けるというのは容易な事ではありません。 そうしたある種チャレンジングな環境に身を置き、競馬ファンの多くは毎週末、地方競馬も含めると連日にわたり、どのレースを買うか、どの馬が勝つのか、はたまた幾ら投じるべきかという「決断」を下していることになります。 かくいうわたし自身、馬券で生計を立てているわけではありませんが、これまでの競馬キャリアを通じて、幾度となくこうした「決断」を下してきたことは間違いありません。 実際、馬券を買うとなれば、レースの距離や芝、ダートといった種別はもちろん、出走馬の血統、馬体重、調教内容、はたまた調教師や騎手の実績など、限られた時間内に膨大な情報を頭に叩き込み、最善の答えを導き出さす必要があります。 もちろん選択肢の一つとして「先送り」するという手もなくはないですが、もし仮にビジネスの場面で自分自身が決断を下す立場となれば話は変わってきます。 相手や周囲は、やるかやらないか、買うか買わないかのジャッジを必要としています。 サッカーで例えるならば、チームメイトの見事なパスにより、あとはシュートするだけ。そんな素晴らしいシチュエーションを迎えたと仮定します。 それにも関わらず、ちょっと待った!とボールを止め、シュートするか否かの決断を先送りしてしまう・・・。 そんなサッカー選手はまずいないと思いますが、決断力が問われる場面で、然るべき決断を下さなければ、自分一人ではなくチームメイトや監督、スタッフ、そしてファンの方々など多くの人間に影響が及ぶという事を自覚しておかなければいけません。 そう考えると、本人の取り組み方次第とはいえ、馬券を購入する行為は、自身の「決断力」を磨く環境として、よく出来たモデルだなと思うわけです。 周知のとおり、レースの発走時間を決めるのは主催者です。 その時刻から逆算し、馬券の販売時間は定められていますので、プレイヤーとなる我々は、所定の時刻までにマークシートの必要項目を埋めるか、このレースは手をださないという「決断」を下す必要があります。 一方ビジネスの場面ではどうでしょうか。 こうした「時間的制約」を意味するものとして「納期」という言葉が存在しますが、納期そのものは、時と場合、またクライアントを含む利害関係者との交渉によって、時間軸を延ばしたり狭めたりすることが可能なケースもあります。 普段馬券を購入する上で、時間を強く意識することはないかもしれませんが、決断を下すまでの「タイムリミット」を自身の裁量で一切動かすことはできない。という時間的制約は「決断力」を磨く上で非常に重要な要素だとわたしは考えています。 また、余談ではありますが、馬券あるあるネタとして、よく耳にするのが「あと寸前のタイミングで発売時間が締め切られ、実際そういうレースに限って予想が当たる。」というホロ苦エピソード。 馬券が買えなかっただけでもそれなりに悔しいのに、そういう時に限って夢の万馬券が獲れていたりします(苦笑)。 これはもうどうこうしようのない話ですが、一度でもそういった経験をすれば、時間に対する意識は大なり小なり変わるはずです。 また、時間と同様に、決断力を後押しする概念となるのが「基準」というモノサシです。 予め収集した情報に対して、優劣を判別するモノサシがなければ、待てど暮らせど自身の結論は導けません。 AよりBが強い。しかしBよりCが1着になる可能性が高いという優劣は、個々が持つモノサシによって導かれるもので、そのモノサシの品質がパフォーマンスを左右する決定打といっても過言ではありません。 ビジネスの場面でいえば、会社で最も多くの決断を迫られるのは社長ですから、社長のモノサシが業績を左右すると解釈すれば、モノサシの重要性も容易に想像できるはずです。 仕事も競馬も取り組み方は人それぞれですが、一定以上のパフォーマンスを求めるとなれば、「決断力を磨く」という意識を常日頃から働かせておく必要があると感じます。 競馬はギャンブルという側面ばかりがクローズアップされがちですが、優勝劣敗の世界を通じ、人間としての資質を養うことも可能ですし、大衆とは違う視点で考える発想、思考力など、新しい発見や学びの機会が溢れています。 「競馬場は決断力に磨きをかける場所。」 そうした心構えで予想に取り組むだけで、レース結果に関わらず、これまでとは一味違う感覚や気付きが得られるはずです。きっと。