第66回読書感想文 / 無駄なこととは
無駄なこと
感動したから読んで欲しい。」そう言って兄が誕生日にプレゼントしてくれたことがこの本との出会いでした。 それは『夢を叶えるゾウ』などの有名な作品を残した水野敬也さんという人によって書かれた『運命の恋を叶えるスタンダール』という本です。この本は、SNSによるバッシング、メディアによる大げさな報道がきっかけでパニック障害になった、本好きの主人公が、スタンダールという昔の作家と共に、奮闘しながら恋を叶える、というストーリーになっています。 この本の最終場面に、「結晶作用を起こしたからこそ、自分が知らなかった自分と出会い、知らなかった世界を経験することができたのだ。そこには喜びだけじゃなく苦しみや悲しみもあるけれど、どれだけ妄想しても決してたどり着けない『本当の世界』だ。」と書かれていて、その言葉から、これまでしてきたことに、無駄なことなんて1つもないんだ、と気づくことが出来ました。結晶作用とは、人を好きになって、その人を実物以上に美化してしまう作用のことです。主人公の場合は、この作用によって、好きになった人のために、綺麗になったり、閉鎖的な性格を変えようとしたり、と様々な努力をしました。しかし、努力をしても、恋が実らなかった場合、その努力は全て無駄になるのでしょうか。いいえ、その行動は決して無駄ではなく、これまでの自分と違う、新しい良い方向へと変えてくれる、素晴らしいきっかけだったと言えるのです。 この本を読んだ時、私はちょうど嫌なことがあり、「これまでの時間は何だったんだろう。全て意味がなかったのだろうか。」と落ち込んでいました。しかし、この言葉に「これまで積み重ねた努力や時間は決して無駄なものじゃなかったんだよ。」と励まされたような気がしました。 また、この本の中での、スタンダールの一番の大切な教え、「絶望は幸福への伏線である」という言葉があります。これは、絶望のような出来事があったとしても、先に向かって、くじけずに進み続け、最後に幸福を掴めた時に、はじめて、あの絶望は幸福にたどり着くための、きっかけ「伏線」だったのだ、と気づくことを意味してます。 私はこの言葉から、嫌なことも、プラス思考に捉え、この辛さは伏線なんだ、と考えることで、気持ちを楽にすることができる、と思いました。確かに、嫌なことがあると、自分はダメだと思ってしまい、負の沼に飲み込まれてしまいそうになります。それでも、嫌な事に屈せず、前進し続ける大切さを学びました。これから先の人生で、想像もつかないような絶望が待ちかまえてるかもしれません。しかし、そんな時でも、絶望だと打ちひしがれて、落ち込むのではなく、今は未来への伏線を貼ってる、悔やむのではなく回収することを考えよう、とすることが大事だと思いました。漫画や映画のシナリオの伏線の貼り方は二種類あり、あらかじめ、後の話でこういう風に伏線回収しよう、と決めて書く方法と、過去のふとした描写を、後々で使う、という思いつきの伏線回収の仕方がある、と聞きました。それは、人生にもおきえられて、夢に向かう目的のある努力が前者で、将来役に立った時に、過去の行いは意味があったのだ、と気づく場合、つまり、思いがけない努力が後者だと考えると、「何のためにやってるのか」と思わずに、いつか伏線回収ができるように今は種を巻いているのだ、と考えるべきだ、と思いました。逆に受け止め方が悪く、自分はダメだ、と考えていると成長も止まり、悪方向へと導かれているようにみえます。昔からある、有名な四字熟語『因果応報』とは、こういう深い意味があるのかなと思いました。 この本を全て読み通して、もちろん、目標を達成することは、とても大切なことだけれど、目標を達成するまでの努力の過程で得たものは、目標達成よりも、価値があるものなんだ、と学びました。また、目標にたどり着くことができなかった時でも、これまでの過程で、得たことを生かせる、新たな目標をみつけ、つぎは、それを達成しようとすることによって、人生はより豊かになるものなんだ、とこの本が私に教えてくれたような気がしました。 この本は、『運命の恋を叶えるスタンダール』というタイトルですが、恋愛だけではなく、色んなことに対して、ネガティブ思考になってる人や、後悔ばかりして、なかなか前に進むことができてない人などにこそ、是非一度、読んで見てほしいな、と思えるような本でした。