函館工業高等専門学校 専攻科 / 生産システム工学専攻
TLS 患者に対応した脳波識別による意思伝達支援システムの開発
意思伝達が困難な難病の一つに,筋萎縮性側索硬化症(ALS: amyotrophic lateral sclerosis)があるが,この症状が進行すると随意運動のほかに眼球運動や瞬きの機能が消失した完全閉じ込め状態( TLS: Totally Locked-in State)に陥り,意思伝達が全くできない状態になることがある. 現在,ALS患者が使用できる意思伝達機器として,脳波変化から項目を選択し 詳細な意思伝達を可能とした「ニューロコミュニケータ」 や脳血流変化から Yes / No を出力する「新心語り」などが開発されている.しかし,ニューロコミュニケータは眼球運動ができず認識可能な視野が限られている TLS 患者には対応していない.また,「新心語り」は TLS患者でも使用できるが脳血流変化を解析するため,出力までに時間がかかり,連続した使用では疲れやすいという問題がある. そこで本研究では,TLS患者を対象に,視線を移動させずに2項目以上の意思伝達項目の認識を保証し,選択項目を識別することでその内容を伝えるための支援システムの開発を目指し、①視線を向けずに項目の認識を保証する方法,②項目に視線を向けずに意識的な注意による項目識別方法を検討して実験を行った. 健常者を用いた実験結果から, ① 認知・ 脳波から推定した有効視野の境界の2群の母平均を 「対応のある t 検定」にかけた結果,母平均には差がないことを確認. ② 定常状態視覚誘発電位 (Steady State Visual Evoked Potential: SSVEP)と呼ばれる 点滅刺激と同じ周期で誘発される誘発電位からを用いて項目を 選択する場合,点滅刺激を表示する位置など を変えた際の 基礎実験を行い,SSVEP の特性について詳しく調べる必要がある. が分かった.