競技のためだけではなく、セカンドキャリアのためのデュアルキャリアを|福岡デュアルキャリアアスリートフォーラムレポート
「デュアルキャリア」を広く周知するとともに、福岡県内の企業にアスリートの雇用について検討してもらうことを目指し開催された「福岡デュアルキャリアアスリートフォーラム」。2022年2月1日、2月2日の2日間に渡り開催された当イベントに、バリュエンスでデュアルキャリアアスリートとして働いている三船さんが登壇されました。イベント当日の様子や登壇された感想など詳しく伺いました。
三船 陸
2022年4月にデュアルキャリアアスリートとしてバリュエンスへ入社。東日本営業部第6課で、接客業務に従事している。日本武術太極拳連盟指定強化選手。
「デュアルキャリアだから」という特別視はされず、普通の会社員として働いている。
――まずデュアルキャリアアスリートフォーラムの概要から伺いたいです。
福岡県におけるスポーツの推進、またスポーツを通じた地域の活性化に寄与することを目的に活動している、公益財団法人福岡県スポーツ推進基金が主催したイベントです。デュアルキャリアを推進している企業5社の担当者やアスリートが登壇し、トークセッションやプレゼンテーションなどを行いました。
バリュエンスからは私と人事部の佐伯さんが2日間のうち1日目にオンラインで登壇させていただきました。今回お声がけいただいたのは、私が福岡県の出身で、福岡県武術太極拳連盟に所属するアスリートだったことがきっかけです。
――トークセッションやプレゼンテーションではどのようなお話があったのでしょうか?
トークセッションでは、「アスリートを雇用する企業のリアル」といったテーマで、企業担当者からデュアルキャリアの採用を行ってよかったことや苦労したこと、導入している制度についてなどの話がありました。プレゼンテーションではデュアルキャリアのアスリートから、デュアルキャリアをしてみてよかったことや苦労したこと、仕事と競技を両立する上で工夫していることなどの話が主でしたね。
――三船さんはどのようなプレゼンを?
普通の会社員として働いていることを話しました。「私は営業部に所属していて、他の社員と同じように数値目標を課されていますし、就業時間や休日日数もほとんど変わりません。デュアルキャリアだからといって特別視されるようなことはなく、他の社員と同様に働いています」といった内容です。
――他の社員さんとほとんど同じように働かれていらっしゃるんですね。会場からはどのような反応がありましたか?
かなり驚かれました。というのも他の登壇者のアスリートは、どちらかというと競技メインで、仕事は少しの時間だけというようなデュアルキャリアの方が多かったためです。学校や他企業での講演といった業務を請け負っていて、週2、3日勤務、あとは競技の練習を行っているような様子でした。
過密なスケジュールでもデュアルキャリアを選んだのは、セカンドキャリアの幅を広げるため
――三船さんはどのようなスケジュールで働いたり、競技の練習をされたりしているのでしょうか?
週5日9時から18時まで働いていて、終業後は19時から21時まで競技の練習をしています。帰宅時間はいつもだいたい22時を超えていますね。休日は基本的に1日競技の練習です。平日の1日だけは競技練習を休みにしていますが、仕事はあるので、1日丸々休みになることは年間通してほとんどありません。
――かなりストイックですね。
フォーラムの会場からは「しんどくないですか?」という質問があって、「しんどいです」と正直に答えました。プライベートの時間がほとんど取れていないので。
ただ将来のことを見据えると、いまのようなデュアルキャリアをしていたほうがいいと私は思っています。武術太極拳のアスリートの引退平均年齢は30代前半で、引退後は指導者の道に進むことがほとんどです。その道に進む以外の選択肢がないからです。
私はセカンドキャリアをもっと幅広い選択肢の中から選びたいと思っています。そのため、このようなデュアルキャリアを実践することに決めました。アスリートを引退してからの方が人生は長いですから。
――将来を見据えた上で、デュアルキャリアを選んで実践されていると。
また「しんどい分、仕事も競技もより充実している」という話もさせていただきました。仕事でこれだけ頑張ったから競技も頑張ろうと思えていますし、その逆もしかりで。どちらもいい成績が残せたときの達成感は、競技だけ、仕事だけの人たちの倍ぐらい得られていると感じています。
――仕事と競技で相乗効果が生まれているんですね。
限られた時間だからこそ練習の質を高めようという意識が強くなりましたし、仕事でも限られた時間で成果を出すために何が必要かを真剣に考えるようになりました。
そのように仕事をすることで、競技に活かせることもたくさんあります。デュアルキャリアを実践するアスリートの中には仕事をすることを生活資金確保くらいのネガティブに捉えている方もいらっしゃいますが、私はとても楽しいものだと捉えています。
フォーラムでは時間がなく伝えきれませんでしたが、アスリートの方には強くデュアルキャリアをお薦めしたいですね。ストイックに厳しい練習に打ち込めるアスリートであれば、競技だけでなく仕事でも努力して成果を出すことは十分にできると思っています。
目的・目標を持ち、本当の意味でのデュアルキャリアを。
――とはいえ、仕事と競技の両立は難しいと感じているアスリートもたくさんいるように感じます。
チームスポーツで、かつシフトの融通がききづらい職場だと難しいかもしれません。練習時間はチームに合わせないといけなくなってしまうので。
武術太極拳は個人スポーツですし、特性上、練習時間が長ければいいというものでもないので、このようなデュアルキャリアができていると思います。またバリュエンスでは、同僚がシフトの面で柔軟に対応してくださったり、大会があると社内外に向けて広報の方が周知してくださったりと、いつも応援してくださるので、とても働きやすいです。
――会社全体で応援してくださっていると。
そうですね。今回のデュアルキャリアアスリートフォーラムへの参加についても、人事部に相談した際には快諾してくれました。
私はこのような機会をいただけた際には、今後も積極的に参加していきたいと考えています。自分にとっては貴重な経験を積めるチャンスですし、バリュエンスのようにセカンドキャリアを視野に入れた、本当の意味でのデュアルキャリアを広めていきたいので。
――本当の意味でのデュアルキャリア?
現役を引退してからでいいだろうと考えているアスリートの方もいるかもしれませんが、やはりそれでは遅いのではないかなと。コロナの影響で、そもそもアスリートとして活動できる機会が減ってしまった方もいると思います。今後もそのような不測の事態がいつ起こるかは誰にもわかりませんので、競技を続けながらも仕事という別軸の選択肢を持っておくことが重要になってくると考えています。
また仕事をするのであれば嫌々やるのではなく、自分の中で目的・目標をしっかりと持って働いてほしいなと。そちらのほうが充実しますし、競技にもより打ち込めると思います。
――最後に三船さんがいま掲げている仕事の目標とアスリートとしての目標、それぞれ教えてください。
まず仕事の目標としては、営業部でしっかりと成績を残し、管理職のポジションに就きたいと思っています。マネジメントの経験を早いうちから積めれば、それこそキャリアの選択肢は広がっていくはずなので。
またアスリートの目標としては、2026年に名古屋で開催される第20回アジア競技大会に日本代表として出場し、メダルを獲得することです。両方の目標をしっかりと達成できるように、今後も頑張っていきます。