健康管理アプリの中でも異彩を放つ「ウンログ」。今回は、ウンログ代表の田口にウンログを創業するまでのストーリーを”まじめ”に聞いてみました。
ウンログが誕生する背景には、創業者の血と涙と下痢の毎日が詰まっていました。
代表プロフィール
田口たかし
ウンログ株式会社 代表取締役
1983年東京都出身。2006年日本大学理工学部航空宇宙工学科卒業後、3社で営業を経験し、2011年WEBメディア企業へ入社。在職中に0からプログラミングを勉強し、2012年7月にうんち記録アプリ「ウンログ」をリリース。1年間で10万DLを達成し、2013年8月にウンログ株式会社の前身であるじぶんラボ株式会社を設立。代表取締役として現在に至る。
貯金ゼロに婚約破棄!どん底人生の中で掴んだアイデア
ーまず経歴についてうかがいたいのですが、その前に、田口さんのお父さんは経営者だったんですよね。会社経営をしているのは、お父さんの影響があったんでしょうか。
僕の実家は、祖父の代から洋服の会社を経営していて、父が会社を継ぎました。当時はバブルに差し掛かり住宅がたくさん作られるようになってきた時期だったので、需要を見越してカーテンの販売に事業を切り替えたんです。バブルの影響で売り上げも従業員数も伸びて軌道に乗っていたのですが、バブル崩壊と共にどんどん業績が下がり、低価格で高品質な商品を販売する量販店が登場した結果、立ち行かなくなって潰してしまいました。
当時、20歳の僕はそんな父親を「ダメな人間だ」って思っていたんです。だけど、そんな父親でも会社経営ができるなら自分にもできるのではないかとも思いました。それが会社経営に興味をもつきっかけでしたね。
ーそうなんですね。興味を持ちはじめてから、どんなことをしたんですか?
学生時代に読んだ「ユダヤ人大富豪の教え(本田健 著)に、社長になるためには営業力が必要だ!と書かれていたんです。それを信じて、学生時代から営業のアルバイトもしましたし、新卒では商品を販売する営業会社に就職しました。しかも、営業力を磨くためにあえて成果主義で厳しい企業を選びました。
学生時代のアルバイト経験のおかげで、新卒でも早い段階からそれなりに成果を出せたんです。最初の3ヶ月は必死で頑張って、既存社員の1.5~2倍売り上げをあげてました。成果を出していると、いい案件をもらえるようになるので、ずっと成果が出せていましたね。
その実績を認めてもらって、社長直下で将来の経営陣を育てる勉強会に入れてもらったんですが、調子に乗っていろいろ言っていても一向に変化はありませんでした。気持ちが萎えてしまっていたタイミングでスカウトをいただいて2社目に転職しました。
ー2社目ではどんなお仕事をしていたんですか。
2社目はサービスを販売する会社で、法人データを扱っていました。お客様の課題をヒアリングして、自分たちのアセットを使って解決を提案していくコンサルティング営業です。当時の営業スタイルが今のウンログには1番近いですね。2社目でも幸運なことにいい案件をたくさん任せてもらって、成果を出し続けられました。
ただ、当時リーマンショックが起きて、リストラや給料カットなど会社の経営も傾きました。僕自身も、FXでハイリスクハイリターンな為替取引をしていたので貯金がなくなってしまったんです。それとは別に、婚約破棄もこの時期に経験しました。
ーそ、それは大変ですね。
これがきっかけで、営業力があっても全然儲けられないし、成功する社長にはなれないと気づいたんです。よくよく現代の成功している社長をみてみると、Facebookのマーク・ザッカーバーグも、テスラのイーロン・マスクも、livedoorの堀江さんもGreeの田中さんもみんなプログラマー。現代の成功者はみんなプログラマーだ!貯金も恋人もない自分には失うものは何もない!よし!プログラマーになろう!と一念発起してプログラミングを勉強しはじめました。スマホアプリなら小資本でサービスを作って自分も起業できるかもしれないと思ったんです。
ーそんな経緯があったんですね。仕事はやめてしまったんですか?
勉強をする時間を割くために、9〜18時で働ける安定した不動産管理会社に転職しました。できた時間で、本やネットの情報を頼りにトランプゲームを作ったりしていたのですが、難しすぎてすぐに挫折してしまって(笑)。なので、プログラミングスクールに通いはじめたんです。貯金がないからローンを組んで通っていたんですが、3ヶ月後に夜逃げされて1円も返ってきませんでした。残ったのはウンログのアイデアだけ。
だけど、少しでもプログラミングができるようになると実践で活かしたくなってきて、自分が事業開発、サービス作り、営業から納品まで一貫してやれる環境のWebベンチャーに転職たんです。そこで働きながらウンログを作りました。
自分の悩みから生まれた”うんちで健康管理”
ーウンログを作ったきっかけを教えてください。
プログラミングスクールに通っていたときに、先生に実際に自分の好きなテーマでアプリを作りながら勉強しようと提案してもらって、うんちかおっぱいのアプリを作ろうと決めました。
ちょうどiPhoneが登場した時期で僕自身もライフログをたくさん使っていたし、ライフログアプリなら継続して使ってもらえるだろうというのと、使っていくうちに健康になるアプリがいいなと思って、観便したうんちを記録するうんち記録アプリにしたんです。僕は男なのでおっぱいで健康管理はイメージつかなかったというのもありますが(笑)。
ーうんち記録アプリにしてくれてよかったです(笑)。観便は、田口さんが実際にやっていたんですか?
僕自身が腸にすごく悩まされていたんです。1社目は上司のパワハラでずっと下痢、2社目も圧倒的な睡眠時間の足りなさと仕事のプレッシャーでずっと下痢でした。健康意識は皆無だったので食事も生活も乱れていましたね。
そんな生活をしていたら、ある日突然、運動すると顔中に蕁麻疹が出るようになったんです。原因はアレルギーで、書籍などを調べていたらアレルギーは腸内環境を改善すれば改善するというのがわかり、腸活を勉強するようになりました。
当時はインターネットに情報がなかったので、書籍を読んで実践していましたね。その中に、うんちを観察する「観便」をすると腸内環境の状態がわかる、という話があったんです。レコーディングダイエットも効果があるというのが当時の研究でわかっていたので、毎日うんちを見ると改善効果があるかもと思って、自分でも観便をして色々な腸活を試しました。
ー当時はどんな腸活をしていたんですか?
最初はスムージーを作って飲むということからでしたね。内容をちょっとずつアレンジして、フルーツやオリゴ糖を変えてみたりしました。簡単なものしか続けられない僕でも、毎朝の習慣になっています。今ではアレルギーも花粉症も症状がほとんどなくなりました。
ー当時からウンログでビジネス展開しようと考えていたのでしょうか。
世の中にないデータを集めるとビジネスになるというのは、2社目の経験でわかっていました。データビジネスといえば、GoogleやAppleにはどこにも勝てないように見えますが、うんちのデータは誰も持っていないんです。いつかこれでビジネス展開できるかもしれない、とは思っていましたね。
どんなに辛い境遇に立たされても、経営者になりたい!という夢を持ち続け、ウンログアプリを生み出した気迫と執念がとても良くわかるお話でした。
後編では、実際にウンログを起業してから今まで、そしてこれからのウンログについて聞いてみましょう!