店舗統括部のSV(スーパーバイザー)として活躍する、礒部(写真左)、高柳(写真右)。
彼らが所属する店舗統括部は、近年大きなうねりがあり、土屋鞄に大きな変化をもたらしてくれました。外資系ラグジュアリーブランドや国内大手アパレル企業で経験を積んだ2人がなぜ土屋鞄を選んだのか、経験値のある彼らならではの着眼点をインタビューしました。
ブランドの魅力とものづくりへの原点回帰
ー2人の経歴と土屋鞄に入るきっかけを教えてください。
高柳:僕は店舗経験が長く、店長の次に店舗課のマネージャーを半年、その後1年半、ディレクターとして、商品開発や仕入れ管理、店舗やEC運営等に携わっていました。自身がディレクターになってからは店舗スタッフと少し距離のあった本社とお店を近づけることにかなり拘ったんです。その結果、互いの距離が縮められたのは成功体験としてありました。
転機となるきっかけは、海外の有名アパレルブランドの別注企画に携わり、ローンチを迎えた最中にコロナ禍になったんです。
(イギリス出張時、グラスゴーの風景)
その際、別注モデルをご購入いただいたお客さまからの言葉にハッとさせられた一言がありました。
「こんなご時世だからこそ、安心して長く使える『良いもの』に惹かれるよね」
何気ない言葉ですが、世の中がコロナ禍でどうあるべきか答えが出ない中、すごく刺さりました。と同時に店舗経験の長かった僕は、ブランドのオリジナル商品をゼロから生み出す難しさを痛感したんです。
視野を広げるチャレンジ意欲はかき立てられましたが、部下も抱えていた中で「店舗で培ってきた現場力を用いて、チームを牽引する事ができるのか」と、疑問を持ち始めました。
しかし、前職のブランドが大好きだったので、それを越える何かがないと移る原動力にならないと思った中、エージェントから土屋鞄を紹介されました。WebもSNSも全部見たのですが、まさにどこを切り取っても「土屋鞄」でブランディングはこうあるべきだよ、と教えられた気がしたんです(笑)。ブランドメッセージのインパクトが大きいからこそ、店舗の役割も相当大きいはずだと思い、入社を決めました。
礒部:僕は海外のファッションブランドを中心に店舗の運営に携わっておりました。現在ではストリートラグジュアリーと呼ばれるジャンルのような、トレンドの最先端となるブランドを多く取り扱っていました。
その後は、外資系のブランド3社でリテール部門のマネージャーとして、ストアマネジメント・店舗開発を担当しておりました。
礒部:前職の在籍時に母が病に倒れ、介護のために職を離れて地元である岐阜県に帰省しなければならなったんです。そのままUターン就職も考えたのですが、残念ながら就職先が見つかりませんでした。当時は需要がなく、寂しかったです(笑)
しかし、新たな発見もありました。
(職人が美濃和紙をつくっている場面)
帰郷して岐阜のものづくりの場に触れる機会が多かったので、日本の伝統工芸品の素晴らしさに改めて気付かされたんです。和綿のオーガニックコットンや美濃和紙等、岐阜には古来からあるものづくりの文化がいっぱいあり、どれも技術やつくり手の思いなど、素晴らしいなと思う一方で、日本の良さが埋もれてるな、と感じたんです。
今までは長く海外のブランドを日本で広める仕事に携わってきたのですが、日本のものづくりの価値を国内外に広めていく仕事に魅力を感じ、マッチしたのが土屋鞄でした。
ブランドの過去と変革期
ー入社前、土屋鞄はどんな印象でしたか?また入社後はどうでしたか?
礒部:入社前に製品をたくさん見に行ったんですが、世界で戦っていけそうな素晴らしいものづくりだな、という印象がありました。ブランディングを含めたクリエイティブへのこだわりもすごい。
高柳:最初入った時は自社ブランドへの愛が強く、それ故に少し保守的な印象でした。しかし、その分伸びしろがたくさんありました。お店の皆は土屋鞄を守ってきたんだと感じたんです。そのいい部分は踏襲しつつ、新しい取り組みをスポンジのように吸収していってくれているので、心強かったです。
礒部:僕の印象は極めてコンサバで、数字を取りに行くというよりは店舗でトラブルが起きないように守るというスタンスに見えました。それでも売上がしっかり立っているのはそれだけブランドの力がある、ということなんですよね。
一方で店舗としては大きな伸びしろも感じたんです。まずは売上の仕組みを理解してもらい、戦略的に販売力を向上させていくことができれば、更にお客さま満足度が向上し売上の成長がみこめるだろう、と。そこで、KPIを用いた戦略マネジメントとPDCAを導入しました。一般的に新しい取り組みに対してネガティブな反応が少なからず見られるものですが、柔軟で変化を楽しめる人が多く、とても吸収スピードが早かったことに驚きました。
トレーニングに1年かけて教えるつもりだったのが、半年位で終わっちゃったんですよね。これは素晴らしい企業文化でした。
高柳:僕が入社した時は、礒部を中心に新しいメンバーが、新しい制度を推進している最中だったので、すごくロジカルで老舗だけどベンチャー気質、次々と新しいことにトライしてくスピード感はすごいなと思う一方で、店舗と本社間の距離が結構あるな、と率直に感じました。
礒部:1年後には当たり前のようにKPIを共通言語として話せるようになっていて、目標を攻略するためには自分たちが何をやるべきなのかを戦略的に組めるようになっていました。1つのフェーズが終わったんだな、と実感できたんです。
サービスではなくホスピタリティを
(書道師範の資格を持つスタッフの中島)
礒部:今後はさらなるリテールビジネスの価値向上をしていきたいと思っています。ものを売るだけでなく、購入体験の付加価値を創出していかないと、ビジネスが存続していくことは難しい。
僕はサービスは主従関係、ホスピタリティは対等関係と考えています。自分の個性や強みを正しく理解して、お客さまと対等に向き合ってほしい。対等な関係性でないと、お客さまに付加価値を提供することは難しいと思うんです。個性や強みを武器に自分自身をブランド化して、店舗スタッフとのコミュニケーションを含めた体験自体に、付加価値を創出していきたい。そのステップの1つとして店舗スタッフのヘアースタイルやカラー、ネイルの規制を緩め、「自分自身の表現を大事に」というレギュレーションに変えました。
尚、書道師範の資格を持っているスタッフがいたので、本人と相談し「講座を開いて全スタッフの字を綺麗にする」という目標設定を掲げてもらったんです。お客さまに渡す手紙の字が綺麗ならブランドとしての価値も上がるし、彼女自身の個性を際立たせることにもなる。
このように個のチカラを強くすることで、「あなたに会いにきたよ」というお客さまが増えればすごくいいなと思います。
高柳:新しい発見や体験を生み出せる場所が、店舗であるべきだと思っています。お客さまと寄り添っていくスタイルが土屋鞄の強みでしたが、今後はブランドストーリーを伝えつつ、新しい価値を届けることにも同時に取り組んでいきたいですね。
そんなブランド価値、お店の価値を店舗の皆と考えていく内に、「もっとこうしたらどうか?」というディスカッションが(僕の)入社当時よりも格段に増えたと実感しました。
あとは、鞄の開発メンバーと店長以外の販売スタッフのミーティングを設けました。店頭に立っているからこその、気付きやアイディアを開発メンバーにアウトプットするのってすごく大切で、現場の声が本部に届きやすくなったんじゃないですかね。
店舗スタッフはただ本部から下りてきたものを売るだけにはなって欲しくないんです。
ーどんな人にチャレンジしてもらいたいですか?
礒部:今はコロナ禍も追い風になって「対面じゃなくても、コミュニケーションって取れるね」という風潮になっているけど、恐らく向こう数年の内にダイレクトコミュニケーションの価値の見直しが来ると予測しています。
トレンドは必ず循環するので、オンライン化がスタンダードになってきたら、人とのコミュニケーションは直接じゃないと寂しいよね、という時代がきっと来る。そのタイミングを見越して、個性をチカラにして価値を創出できるような人に来て欲しいと思っています。あとは面白い方に来て欲しいですね。あくまでも仕事なので、やるなら楽しい方がいい。
高柳:お店は気付きの宝庫です。その気付きを仮説に変換する事を楽しみながら、積極的にアクションに移せば、更に店舗価値向上に繋がっていくはず。一緒に盛り上げていきましょう!
[Text&photo by ogihara saya]