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「ピッチは優勝しなくても価値がある」。TRUSTDOCKのCEO千葉が語る「サービス成長にその場で繋げる」ピッチ戦略とは

TRUSTDOCKは、先日行われた「Mastercard Start Path」日本地区大会にて、eKYC身分証アプリ&API群が評価され、Mastercard Awardを受賞し、ドバイで行われる最終選考会へ挑戦することが決まりました。

また、日経FinTech主催「Nikkei FinTech Conference 2019」のスタートアップアワードにおいても、改正犯収法に対応している点を「社会性が高い」と評価され、8社の中で優勝しました。

※「Mastercard Start Path」とは
次世代のコマースソリューションを開発し、革新的なスタートアップを支援するためのプログラムです。成長段階にあるスタートアップのビジネス拡大を加速させることを目的として、2014 年に開始。スタートアップ企業は、Mastercard の専門チームによるグローバルネットワークの活用、Mastercard のパートナー企業へのアクセス、また Mastercard のソリューシ ョンを基にしたイノベーシ ョンを享受することができます。

※「Nikkei FinTech Conference 2019」とは
日経FinTech読者である官公庁、金融機関、スタートアップ企業、さらには非金融業界の企業などが一堂に会し、金融サービスの現状と未来について議論を交わす場です。プログラムの中でも、「Nikkei FinTech Startups Awards 2019」は、スタートアップ企業による先端サービス、技術、製品のピッチバトルとして、注目されています。

TRUSTDOCKはこれまでにも歴史のあるピッチコンテストで数多くの受賞をしています。

<受賞歴>

「Nikkei FinTech Startups Awards 2019」において、優勝

「金融イノベーションビジネスカンファレンス(FIBC)2019」の「Fin Pitch」において、オーディエンス賞とQUICK賞をダブル受賞

「FIN/SUM x REG/SUM 2018 」のSTARTUP PITCH RUNにおいて、NTTデータ賞と野村ホールディングス賞をダブル受賞

「富士通アクセラレータプログラム第6期ピッチコンテスト」において、優秀賞受賞

今回は、どのような点が評価されているのか、経営者から見たピッチに出ることの意味や、事業を成長させるためにピッチを効果的に活用する方法について伺いました。

(以下は、「Nikkei FinTech Startups Awards 2019」優勝時にインタビューした内容です)

ピッチで受賞する事業の共通点。それは「高い社会性」である

――受賞おめでとうございます。「Nikkei FinTech Conference 2019」のピッチでは、どのような点が評価されたと思いますか?

千葉:TRUSTDOCKのサービスの特徴である「どの業界にも通じる社会課題を解決している」点を評価していただいたのだと思います。弊社は、日本で唯一の本人確認・KYCの専業会社です。これまでのリアルでアナログな手続きや取引がオンライン化していく現在において、TRUSTDOCKは、その手続きに必要なKYC・本人確認業務を、全てオンライン化していくことで、事業者と生活者の不便や不満を解消している点が評価されたのでしょう。

※KYC:「Know Your Customer(顧客確認)」の略で、マネーロンダリングなどを防止するために、口座開設時などに本人確認を行うことを指す

――TRUSTDOCKが評価されたポイントは、生活の中の不便や不満を解消している点だったんですね。

千葉:「ツール」だけでなく、「ツール+業務」というソリューションの形態も評価されたと考えています。TRUSTDOCKは様々な法律に準拠したKYCを、API経由で24時間365日、アウトソーシング可能にしました。しかも範囲は広くて、フィンテック等の犯罪収益移転防止法をはじめ、古物営業法、携帯電話不正防止利用法、出会系サイト規制法も対象範囲にしています。これからも利用シーンは広がっていきますよ。

――業界問わず対応しているので、TRUSTDOCKが広がると生活者への便益は大きそうです。

千葉:ありがとうございます。ピッチの主催者や審査員は、事前のブリーフィングや、当日の審査や質問をすることで、実は観客(世間)の理解がさらに進むように協力や応援してくれているわけですから、そのサービスが誰(WHO)のどんな課題(WHAT)をどう解決(HOW)しているかが、ピッチに参加するだけでブラッシュアップされていきます。私達TRUSTDOCKは、今この瞬間の課題を解決しながらも、「おサイフから身分証をなくす」未来の実現に向けて取り組んでいます。社会課題を解決していくという総論と、「どうやるか」という山の登り方の各論の両方に共感と支持を頂いたのではないでしょうか。色々なイベントで賞を頂き、大変光栄です。

目の前の課題に向き合い続け、面倒くさいと敬遠されがちなプロセスにも汗をかきながら着実に前に進むことを重視した結果の受賞ですね。儲かるからではなく、必要だけど、誰もやりたがらない、社会のこぼれ球を真摯に拾っている姿勢が評価されていると実感しています。

ピッチの目的は優勝することではなく、サービスを成長させる戦略だ

――これまでにも「FIN/SUM x REG/SUM 2018」や「金融イノベーションビジネスカンファレンス(FIBC)2019」などのピッチに多数出場しています。なぜ積極的にピッチに出場されているのでしょうか?

千葉:私たちの活動の全ては事業を推進させるためにあります。そのため、ピッチに出る主な目的も、いかに事業の成長に繋げるかという目線によるPR活動にあります。

金融機関やベンチャー企業が集まるピッチイベントは、私たちにとっては見込み顧客と接点が持てる機会です。ピッチに出場すると認知が獲得できるので、広告宣伝の意味も含んでいます。そういう点で、応募するイベントは「見込み顧客にリーチできるか」どうかを考慮しています。

――優勝を目指すだけでなく、その先の顧客獲得の目的もあるのですね。

千葉:顧客獲得の目線で話すと、ピッチへの出場は新規顧客の獲得に留まらない効果があります。具体的な例を上げると、既存の見込み顧客や契約済みの顧客との関係を強化するために、定期的にメール等で近況のアップデートやトピックを連絡や報告することがありますよね。でも連絡するトピックが無いと、「最近いかがですか?」と言った、内容の薄いメールを送るだけになってしまうかも知れないですよね。その点、ピッチ出場の告知や報告は、フォローメールのトピックとしても、有効活用できますし、幸運にも受賞できれば、興味・関心も膨らむことでしょう。

――ピッチ出場や受賞は、顧客へのフォローメールとして活用できるんですね。

千葉:ニュースとして取り上げていただくことで、Web上における認知の獲得にも繋がります。さらに、イベントに来ている方は、VC等の投資家や企業の新規事業担当や、コンサルや士業など、伝播力や影響力が大きい方が多いので、その方々の周りに自然と広まるでしょう。こうしてピッチ会場だけでなく、ピッチ後にどう展開していくかを考えると、ピッチ出場を事業の成長に繋げていくことができます。

――ピッチの後まで活用するというと、当日の時間の使い方も工夫ができるのでしょうか?

千葉:そうですね。例えばピッチ後の交流会なども時間が許す限りは参加するようにしています。

名刺とチラシをお渡しして、お集まりの企業の皆さんや審査員の方々とも話すことができる場です。交流会はピッチ時に、自社サービスのサマリーがインプットされている状態で、お話ができるので、正しく自社のサービスを伝えることができる絶好の機会なんですよ。

また、他のピッチ登壇企業とも話します。スタートアップ経営者は孤独なことも多いので、他の登壇企業とも連帯感が生まれるケースもあります。ピッチには同じ企業フェーズの出場者が多いので、近しい悩みや課題を持っていることが多いのです。その仲間たちとFacebookグループができることもあるんですよ。

ピッチはエンタメ。ファクトの積み重ねより驚きの創造が審査員を惹き付ける

――ピッチをする上で、意識されていることはありますか?

千葉:私のピッチがそれを出来てるかはともかく、ピッチは基本的にエンタメだと思っています。そして、エンタメの最小の型は「クイズ」なので、クイズのように、「なんだろう?」と人を惹きつけて、答えを提示して相手に驚いてもらう。この繰り返しでピッチプレゼンを構成すると、観客が飽きないプレゼンができるでしょう。例えば、スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションでも、まず数字だけ出して、その後に数字の意味を提示するじゃないですか。これも、クエスチョンとアンサーを繰り返し与えるエンタメなピッチスタイルとも言えます。

たまに、会議室での会議時に説明する企画書や提案資料の体裁で、壇上でプレゼンするピッチスライドをつくる人がいますが、完全に間違いですね。

ピッチのプレゼンは、「ファクトの積み重ねで納得させる説明」ではないのです。むしろ、最初に疑問を持たせた方が良くて、最初のクエスチョンを、その後のアンサーで回収することで、腹落ちさせて耳目を集めると、その後のプレゼンも最後まで聞いてもらいやすいと考えています。あらゆる映画の冒頭で、よくアクションシーンから入ってるのは、観客にクエスチョンを与えるためですから。

――審査員や観客の立場に立って、「次を聞きたい」という気持ちを喚起しているんですね。

千葉:興味を引くことと概念を理解してもらう施策の一環として、スライドには図解を多く入れています。私たちのサービスはAPIソリューションが多いため、可視化しづらいです。eKYC身分証アプリはデモ等を披露することができますが、APIは難しいです。だからこそ、図解によって事業内容を理解してもらえるように工夫しています。そして、出場するイベントの趣旨ごとに、事業やサービスのどこを強調するべきかはアレンジが必要だとは思います。私達の場合だと、「KYC」という言葉を聞いて、何の略だか分かる客層かがリトマス試験紙です。それによって、同じスライドでもトークが変わります。

――サービスの特徴とイベントの趣旨によって、ピッチのプレゼンも変わるのですね。

千葉:はい、そして最も重要なのは、ピッチはエンタメなので、観客の注目を集めるためにすることは、「喜怒哀楽」の表現です。

――感情豊かなピッチに人は惹きつけられるということでしょうか?

千葉:そうですね。喜怒哀楽をしっかりと表現して、ステージ上を動き回る。これが、私が普段ピッチに出る際に必ず意識していることなんですよ。人は人に興味があって、喜怒哀楽のどれかの感情が表れている姿に惹きつけられるものです。例えば、顔の作りに関係なく、真剣な表情は誰しもカッコイイです。また、動くものに無意識的に反応するという動物の特性もあります。人間なら誰しもが持っているこれらの習性を利用します。こうすることで、ピッチの最初から終わりまで観客の集中力を途切れさせることなく、彼らの注意を引くことができるのです。

――ピッチを成功させる確率は、科学的に上げられそうですね。

千葉:最後に、伝え方を科学するとしたら、「自分の言葉で伝えること」を心がけています。 誰かの言葉を借りてきて話をしても、観客は「ニュース」を聞いているような感覚になってしまい、頭に内容が残りづらいです。自分自身が咀嚼して、腹落ちした後に出てくる自分の言葉で伝えることで、身体性を帯び、「ニュース」ではなく「物語」として、観客の心に伝わるプレゼンになるのではないでしょうか。

以上、なんだか、偉そうな事を言っていますが、私もまだまだ未熟なので、これからもたくさん場数を踏んで、誰にでも伝わるプレゼンができるように精進していきたいです。

――経営者視点でのピッチの意味や活用方法について、お話を伺いました。ありがとうございました。

【千葉のこれまでのインタビュー】

「身分証のいらない未来」をテクノロジーの力で実現する~株式会社TRUSTDOCK・CEO千葉が描く未来~(前編/事業領域編)

「おサイフに身分証がいらない、デジタルアイデンティティの世界」をテクノロジーの力で実現する~株式会社TRUSTDOCK・CEO千葉が描く未来~(後編/人・組織・採用編)

TRUSTDOCKはプロダクトファーストな考えが根付く少数精鋭チーム~女性エンジニアから見た社内は「プロダクトの成長」に時間を割いていた~

チームで決めて、納得のあるプロダクトをつくる~TRUSTDOCKのチーム文化~

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