「Career Interview」とは、The Chain Museum(以下 TCM)がこれまで手掛けた各プロジェクトの推進メンバーにフォーカスを当て、それがカタチになるまでにどの様に進められてきたのかを、特定の職種/ポジションの視点から発信していく企画です。
今回取り上げるのは、奥能登国際芸術祭実行委員会 様が主催する「奥能登国際芸術祭2023」(以下 「奥能登国際芸術祭」)で楽しめるArtStickerの「デジタルスタンプラリー付きチケット機能」の開発プロジェクト。
前編では、「デジタルスタンプラリー付きチケット機能」の着想の背景や、その提案を推し進めるにあたりクライアントとどの様なコミュニケーションの工夫を行ってきたかについて、案件ディレクター・平富、PM・阿久津、デザイナー・佐藤の3者のクロストーク形式でお届けしました。
後編では、本機能のリリースに向けて、どの様なこだわりを持ってArtSticker上での体験価値を設計・デザインしてきたかについてフォーカスをあてたクロストークをお届けします。特にTCMのUI/UXデザインならではの面白みを実感いただける記事です。応募をご検討されている方は、ぜひご覧いただき、本ページの「話を聞きたい」ボタンからご応募ください!
※「奥能登国際芸術祭2023」は、2023年9月23日(土)‐ 11月12日(日)の間で開催!ArtStickerの特設ページに詳しくご案内しておりますので詳細はこちらをご覧ください。
※前編の記事はこちらからご覧いただけます。
「アート関係者」と「一般ユーザー」。それぞれの課題解決に同時に取り組めるのがArtStickerのプロダクト開発の面白み
──前編にて「デジタルスタンプラリー付きチケット機能」の提案の経緯についてお聞きしました。個別の機能として捉えていた2つの機能を1つの機能として設計する上での課題・乗り越えたハードルは?
阿久津:まず、機能の要件として守るべきポイントは以下の2つでした。
・有効なチケットがないとスタンプラリーが使えないように制御すること
・チケットがもぎられていないとスタンプラリーが使えないように制御すること
その上で迎えた大きなハードルは「スタンプラリーにどうチケットを紐付けるのが体験価値として最適か」について、品質担保やリスク管理、更には様々なユーザー目線での利便性や感情なども考慮しながら設計する必要があった点です。
というのも、ArtStickerが他のサービスと大きく違う一つのポイントは、価値を提供する先に「アート関係者(イベント主催者やアーティスト)」と「画面の奥にいる一般ユーザー(アートラバーやコレクター)」の2種類のユーザーが常に存在するという点。
アート関係者にとって便利な機能でも、一般ユーザーにとってストレスを与える導線があったら快適には使っていただけない。逆も然り。両者の要望を同時に叶える落とし所をつくるには、課題解決への探究心や、それを備えた上でのセンスの良い発想・アイディアが欠かせません。
提供する先のユーザーが多い分、難易度の高い設計に直面することもありますが、それはtoBにもtoCにも使っていただけているプラットフォーマーとしての強みでもあるので、私は設計者としてこの観点を常に大事にしています。
「リアル(現場)」と「デジタル(ArtSticker)」を横断しながら来場者にイベントを最大限に楽しんでいただく。そのためのデザインに没頭できる
──「デジタルスタンプラリー付きチケット機能」のデザインにおいて、特に工夫したことは?
佐藤:ArtStickerを使ってくださるユーザーには、様々な立場の方がいらっしゃいますよね。アーティストやアート関係者向けのダッシュボード等も含めて、様々な機能を包括するサービス全体としては、それぞれに最適な体験を届けていきたいと、チーム全員が常に意識しているポイントでもあると思います。
アートラバーやコレクターに向けたアプリの画面では、「体験範囲の幅の広さ」もArtStickerならではの特徴かなと。
具体的には、イベントの入場前・中・後の一連の流れの中で、どうしたら「リアル(現場)」と「デジタル(ArtSticker)」を横断しながら来場者にイベントを最大限に楽しんでいただけるんだろうということを考えながらデザインをしました。
例えば、現地のスタンプラリー台紙に一つ一つスタンプラリーを押していくイメージを思い浮かべながら、「これがデジタル上で実現されるとしたらどういう状態が心地良いんだろう」など。
リアルにおける本来の価値に対し、デジタルの付加価値をどう+αで加えていくか。これを常に意識しながらデザインを形にしていきました。
とにかく導線をヒアリングし想像する。そして、できるだけ自然な流れでデザインをつくっていく
──デザインには他にも様々な細部のこだわりがあったと思いますが、特に来場者に知ってほしいことは?
佐藤:実は「デジタルスタンプラリー付きチケット機能」をデザインする上で、ArtStickerの”外”にも検討すべき課題が見つかったんです。それは、以下の2つのオペレーション上の課題をどうデザインで解決するかということ。
・入場受付の場所が限られていること
・入場受付と作品鑑賞受付をする場所が別の場合があること
これらは体験価値を最大化する上で無視できない課題だと強く感じました。「様々な状況でも受付担当の方が対応しやすく、初めて利用されるお客様にも理解しやすいPOP」の制作にも工夫を施しました。
例えば、現場の入場までの導線をヒアリングし想像しながら、できるだけ自然な流れでArtStickerアプリのダウンロードや画面の表示ができるように考えました。
スタンプラリーは楽しい機能ですが、実際そこに訪れたお客様の一番の目的は、その特別な空間や場所で作品鑑賞を楽しむこと。その大事な体験の中で不快な思いや違和感を感じないようにするための配慮や、現場の案内をされるスタッフの方にも分かりやすい明瞭なPOPにするなどにもこだわりました。
本来は現場で運用される状況を直接観察しながら、最適解を探ることができたら一番良いのですが。会期前という状況では、ひとつずつ丁寧に想像することを大事にしています。
クライアントに直接デザインイメージの提案を行ったり、デザインデータを作成・提供する部分なども行い、リアルの現場におけるグラフィックデザインのプロジェクトにも積極的に関わりました。
阿久津:自分の求められている範囲を超えて積極的にプロジェクトに入り込んでいる姿勢、素晴らしいです。「Be in the groove」ですね!
阿久津:ArtStickerの中の話で言えば。スタンプラリー画面の「シェア機能」にもこだわっていましたよね。
佐藤:そうですね。「奥能登国際芸術祭」の作品の場所を地図で確認すると、作品間に距離のあるものが多く。その場所に行きそれぞれの作品と出会うことが、とても貴重で特別な体験であると思いました。スタンプを押す、その1つ1つもかけがえのないことだなと。
そこで、スタンプを一つ押すごとに、それをシェアするアクションを画面上で促すのはどうかと考えました。元々は数回に一回シェアを促すポップアップがでる仕組みで進行していましたが、QA段階でエンジニアメンバーに相談し変更をすることに。
現場でしか味わえない作品巡りの達成感や楽しさを共有したいと思うユーザーさんに、この機能を利用しやすく、作品鑑賞とスタンプラリーをより楽しんでもらいたいという目的で、表示上の工夫をしました。
ぜひ来場される方には、芸術際とともにスタンプラリーの体験も楽しんでいただきたいですし、ぜひ使ってみた感想などフィードバックいただけたら嬉しいです。
▼スタンプラリー画面の「シェア機能」イメージ画像
▼POPデザインの設置イメージ画像
私たちが提供する機能の価値は「半分が現在のユーザー向け、もう半分は「将来のユーザー向け」。
──設計・デザインをスムーズに実装フェーズに乗せていく上で、開発チーム全体ではどの様なカルチャーやマインドを日頃から共有しながらコミュニケーションをとっていますか?
阿久津:新しい機能を作る上でチーム内で大事にしている考え方の一つに「標準化」があります。それは、より多くのユーザーに機能を使っていただくために、特定のプロジェクトに依存しすぎず、今後も標準化できる機能であることを前提につくっているということです。
今回の機能は「奥能登国際芸術祭」のニーズから始まった機能。けれども、今後もそのニーズに共感してくれるアート関係者がいたら同じ様な喜びを感じていただきたいし、一般ユーザーにもスタンプラリーの様々な角度での楽しみ方を知っていただきたい。
そういった想いから、私たちが提供する機能の価値は「半分が現在のユーザー向け、もう半分は将来のユーザー向け」と言えるかもしれません。
佐藤:ArtStickerでは、様々な形態のアートイベントのPRのお手伝いをさせていただいています。そのため、それぞれのイベントの特色やコンセプトに寄り添いながら、最適な価値の在り方を常に0から模索しながら提案していけるというのは、特に面白いポイントかなと思います。
私がPOPデザインに携わった例に挙げられるように、どこまで踏み込んでいくかに制限があるわけではないので、行動した分だけ学びと成長機会が得られるのが魅力だと思います。
阿久津:開発チームは誰もが「Be professional」に紐づくアクションを実行しているなと感じます。日頃から高いプロ意識と謙虚なマインドを持ったメンバーが集まっているからこそ、全体として良いチームづくりができているなと。
リアル・デジタル上の的確な場所でいかに分かりやすく訴求するか。そのためのナビゲーション設計の強化
──このプロジェクトを踏まえて、今後はどういった課題にチャレンジしていきたいですか?
佐藤:スタンプラリーって、ArtStickerの機能の中でも特に「エモーショナル」な機能だと私は思っています。実際に現場に行くことで獲得できるスタンプなので、その時に出会った作品の記憶や、一緒に行った人、そこへの旅路の思い出などがアプリの中に蓄積していくので。
その意味では、その時のコメントを残せたり、自分が撮影した写真を投稿できたりすることも良いかもしれないですし、スタンプを押したエリアごとに「達成率」を表示することなども、来場者の喜びとモチベーションが更に加速しそうですね。他にも開発メンバーと話したアイデアはたくさんあります。
今はリリース直後ですが、今後ユーザーや関係者からの反応や感想を頂戴しながら改善していきたいですし、私自身も現地で体験しプロダクト開発に還元できたらなと考えています。他にも様々な芸術祭やアートイベントでもスタンプラリーの機能は活用いただきたいですし、枠にとらわれない面白い使い方ができたらなという期待やもくろみもあります。ArtStickerの他機能との連動性もあげていきたいです。
平富:ArtStickerは機能にバリエーションがある分、一つ一つの機能の最適な導線づくりはまだまだ成長途中だと感じています。
機能活用を促す案内をリアル・デジタル上の的確な場所でいかに分かりやすく訴求するのか、は常に課題です。この辺りを踏まえた本質的な提案ができるよう、日頃から現場にもっと足を運んで自分の目で確認をしたり、クライアントの声から積極的に学んでいきたいです。
阿久津:今回の様に複数の機能を1つに組み合わせた全く新しい価値提供を行った中で改めて感じた課題は、ナビゲーション設計の難しさです。
例えば、現在のArtStickerでは、スタンプラリーや音声ガイドを使っていくには、一つ一つのQRコードをあれもこれも読み込まなければいけないので、来場者を迷わせてしまうこともあると思うんです。
そこで、全ての情報が一つにまとまった”親のQRコード”を置き、まずそこに飛んでもらい、その上で”子のQRコード”を並べて各機能を使ってもらうという設計があったら、より快適なアート鑑賞が提供できるのではと思いました。今後検討していきたいです。
「組織全体におけるアートの専門性」が高まった環境の中で、ユーザーにポジティブな変化をもたらすデザインを実現することに一生懸命になれる
──最後に、UI/UXデザイナーのポジションに興味のある方に向けてメッセージをお願いします。
佐藤:私は設立間もない頃からTCMにジョインしているメンバーなのですが、年々アートに詳しいメンバーが増えていく中で、「組織全体におけるアートの専門性」が高まってると感じています。
その影響もあって、ここ1-2年は特に、ArtStickerというプロダクトにソリューションを落とし込む上での課題の解像度が急激に上がっており。組織としての一体感やArtStickerというプラットフォームの価値を改めて感じる場面が増えています。
当初はアートが純粋に好きという気持ちでTCMにジョインしましたが、様々なプロジェクトに携わる毎に、アートにまつわる新しい学びがとても多く、デザイナーとして、いちアートファンとしても刺激を受ける日々です。
アートの専門性の高いメンバーや、信頼できる開発メンバー、信念のあるビジネスメンバーともに、チームで課題解決に取り組むことができるTCMは、他にそう無い環境だと思います。そして、それがアートのサービスを作るUIUXデザイナーが体験できる大きな面白みの一つでもあると思います。
汎用的なスキルを向上させたい方や、いろんなプロダクトをデザインしたい方であれば、もっと規模の大きい組織が良い場合もありますが、まだ表面化しきっていない課題を一つ一つ言語化しながら体験価値をデザインしていくスタートアップにやりがいを期待する方には、現在のTCMの環境は向いていると思います。
アートへの強い興味とUIUXデザイナーとしての高い情熱を持った方と、ぜひ一緒に働きたいです。ご応募お待ちしています!
インタビュー内容はいかがでしたか?
The Chain Museumの「UI/UXデザイナー」の働き方や仕事の醍醐味について、少しでもイメージをお伝えできていましたら幸いです。
「このポジションに応募したい!」と思ってくださった方は、ぜひ本ページの「話を聞きたい」ボタンからご応募をお待ちしております。
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