sync.devのメンバーを紹介するインタビュー第3弾。今回はプロデューサーの石ヶ谷宜昭さんにお話をお聞きしました。さまざまなポストプロダクションスタジオで経験を積んだ石ヶ谷さんが、sync.devに見出しているおもしろさとは一体何なのでしょうか?
新しい分野だからこそ、間を取り持つ人のエッセンスが活きる
―まずはじめに、石ヶ谷さんのこれまでの経歴について教えてください。
映像業界のキャリアはビデオテープなどを取り扱うメディア事業から始まり、その後ポストプロダクションスタジオ2社を経験しました。「ちょっと特殊でプロフェッショナルな世界で働いてみたい」と飛び込んだのですが、「もっと現場に近いところへ行こう」「新しいことを学ぼう」という思いを抱いたタイミングで転職して、さまざまなチームやプロジェクトを経験してきました。
職種は営業ですが、業務を通じて技術的な仕組みを学んだり、CMと番組との制作フローの違いに触れたりしながら、スムーズに作品を完成させるための技術面からのアプローチをいろいろと試みてきました。
その後プロジェクトを通じてsync.dev代表の岡田さんと知り合い、現在さまざまなプロジェクトで組んでいます。
sync.devとともに携わったあるプロジェクトの現場の様子
ー営業・プロデューサーとしてのご自身の役割をどのように捉えていますか?
僕は映像制作や演出について専門的に学んできたわけではないので、自分の役割は「アシストすること」だと思っています。VRに関わりはじめたのもVR撮影用のカメラに衝撃を受けたのがきっかけで、「きっと誰かがおもしろいことを考えてくれるはず」と周囲に教えたりしていました。「こういうことをやりたいんだけど、何かいいアイディアない?」と口火を切るのが僕の役割で、それを楽しんでいるんです。
最近は企画やコンサルティングの仕事も増えてきました。クライアントに「映像をつくりましょう」と提案すればつくることはできるかもしれないけど、本来は「映像をつくることで本当に課題を解決できるのか」を考えるべきですよね。そういった視点からの意見を求められることも多く、それは実際に自分でつくっているわけではないからこそできることなのかもしれません。
ーそもそもの部分を問い直したり、少し俯瞰してプロジェクトを見る役割もありそうですね。制作過程の中でその視点が活きることもあるのでしょうか?
例えば360度VR映像を制作するプロジェクトで、正面から見た様子を描いた絵コンテしかなかったため、後ろ側の世界がどうなっているのかわからない、ということがありました。そのときは監督に「頭の中をもうちょっと具現化してください!」と伝えて新たに後ろ側も描いてもらい、それらを使って制作フローをシンプルに整えていきました。
正直僕は説明が苦手なので、「みんなに伝わりやすい素材がほしい」という気持ちもありました(笑)。でも、そもそも言葉だけではきちんと相手に伝わらないと思うんです。経験上、特に技術に携わる方々は言葉だけで納得するということはあまりなく、「いい感じ」にするにもどんなトーンなのかを決めるにも、リファレンスが大切になるんです。
結局のところ、制作側の意図が技術側に伝わらないとうまくいかないし、技術側も問題を抱えているなら制作側に伝えないといけません。だから、僕がその間を取り持つ必要があるんです。間に立って敢えて「調整役」になることも、この役回りには必要だと思っています。
ー間を取り持つのはとても大変な仕事だと思いますが、なぜ長年続けてこれたのでしょう?
うまくいかないときこそ、自分が間に入ってエッセンスを出すことができるからかもしれません。ある程度つくり方が決まってしまった分野では安さで競い合うしかありませんが、xRやバーチャルプロダクションのような新しい分野ではまだつくり方が確立されていないため、間を取り持つ人次第でできるものが大きく変わります。決まっていないことが多ければ多いほど、調整役が間に入る必要性も高まるんです。
もちろんエラーが起きた時は落ち込みますが、それでも終わったときの景色はそれなりに良いもの。だから、プロジェクトを前に進めるために間違っていれば指摘するし、意見をきちんと伝えるようにしています。
そうやって考えて実行してきたことは、できあがった映像にも組み込まれて、表現に現れるものだと思います。誰かのやりたいことばかりやって、自分のエッセンスがまったく埋め込まれていないものをつくっていてもつまらないですよね。自分の目でチェックして、自分なりのアイディアも加えて、深く関わることで自分のエッセンスも出していく。それに、その方が自分が楽しいですからね(笑)。
挑戦するために必要なのは、現場を統括し「仲間」を束ねる力
ー石ヶ谷さんはなぜ、sync.devに参加しようと思ったのでしょうか?
僕の根底には「良い人がより一層活躍できるように何かしたい」という思いがあるのですが、sync.devと関わり続けているのはまさに「良いメンバーがいるから」です。これまで関わってきた会社にも素晴らしい技術を持った方々がたくさんいましたが、sync.dev代表の岡田さんはもう変態級で(笑)。
初めて出会ったプロジェクトで岡田さんがCGの話も、プリビズの話も、撮影の話もしているのを見て、「この人は一体何者なんだ!?」と思いましたね。岡田さんは技術的にもしっかりしているし、制作面からディレクションができて、最初に想像以上のものを出す力を持っている。機材にも詳しくてプログラミングやCGのこともわかっているのは、本当に変態級だと思います。
▼sync.dev代表 岡田太一さんインタビュー
岡田さんがそれだけ広い領域に対して知見を持っているからこそ、プロジェクトにおけるsync.devの担当領域も広がっています。もともとCG周りの担当だったとあるライブ配信のプロジェクトでは、技術統括として岡田さんに入ってもらうことで撮影周りも見れるような形をつくりました。バーチャルプロダクションの撮影ではシステムでカメラとCGの連動が非常に多くなるため、撮影部とより密に連携するためにこの形が必要だったんです。
技術メンバーにとっても、現場を統括できる人がいることはとても重要だと思います。新しいことに挑戦する現場ではトライアンドエラーが当たり前なので、「仲間」としてみんなを束ねてすべてを連携させることが大切なんです。
営業・プロデューサーとしても、後ろ盾としてsync.devがいるのはとても心強いです。「仕事をください」ではなく「おもしろいものをつくれますよ」と提案できるし、自分としてもチャレンジができますからね。
ー石ヶ谷さんから見て、sync.devの強みやおもしろさは何でしょうか?
やはり「R&Dを積極的にやっているところ」ですね。技術にしろ営業・プロデューサーにしろ、常に「自分で考える力」は磨かなければいけません。「こういう技術で表現したらいいんじゃないか」と技術メンバーが常に研究開発をしている横で、企画や研究などどんな形でもいいので、営業・プロデューサーもR&Dをやったほうがいいと思います。
僕自身、自分の好きなサッカーをテーマにしたARを企画したり、原宿の街でARを使ったMVビデオをつくったりしてきました。そういったことを通して掴んだ「できると言ったことが本当にできるのか」「思っていた通りにならないのはなぜか」などの知見が、本番でも活きるんです。
サッカーをテーマに、ARコンテンツのR&Dプロジェクトを企画
▼sync.devのR&Dの文化については、こちらの記事で詳しく紹介しています
ーありがとうございました。最後に、どんな方がsync.devに合うと思うか、一緒に働いてみたい方のイメージを教えてください。
仲間を大切にできる方、そして自分を律しながら取り組むことができる方でしょうか。技術の方々から信頼を得るのはとても難しいことです。何をもって信頼なのか、どういう場面で得られるものなのか、それは目に見えないし僕にもわかりません。だからこそ、細かな気配りができるかどうか、人が必ず見ているということを意識できるかどうかが大切です。
やはり、日々しっかりやっていなければ信頼は得られません。嘘をついてその場はうまくしのいだとしても、結局は自分に返ってくるものです。ちゃんとやったことしか結果には現れないし、それ以上のものを求めたって出てきません。信頼もそういうところから生まれてくるんだと思います。僕もちゃんとできているかわからないですけどね(笑)。
バーチャルプロダクションやxRは新しい分野だからこそみんな等しく「わからない」ので、僕のように専門的な勉強をしていない人でも活躍できる可能性があると感じています。ぜひいろいろな人に会って話を聞いて、多くのことに触れて、可能性を広げてみてください。