株式会社水星には、多様な業界でプロフェッショナルとしての腕を磨いてきた多彩な人材が集まっています。水星に新しく入社した社員にインタビューをする入社エントリー企画、今回ご紹介するのは、2025年7月にアシスタントマネージャーとして香林居にジョインした、福島和也。
10年に及ぶ俳優活動、芸能事務所におけるマネジメントと人材育成、そして海外ホテルでのホスピタリティ・オペレーション。一見すると非連続に見える彼のキャリアの底流には、「表現」という抽象的な概念をいかに社会に実装し、価値へと変換するかという、一貫した問いがあります。
彼がなぜ、次なる挑戦の舞台として「水星」を選んだのか。その戦略的な思考と、事業に対する熱量に迫ります。
未経験で飛び込んだ俳優業界。プレイヤーから育成者への転身
福島がビジネスキャリアを語る上で欠かせないのが、10年にわたる表現者としてのバックグラウンドである。高校卒業後、彼は国内屈指の実力派俳優を擁するトライストーン・エンタテイメントの養成所に入所。演技に対して極めてストイックなプロフェッショナルが揃う環境下で、彼は「表現」の本質を叩き込まれることとなる。
ー福島さんの経歴を拝見すると、まず目を引くのが10年近い俳優活動です。そもそも、なぜ表現の世界を志したのでしょうか?
福島:
実は、そんな大義名分があったわけではなくて、いわゆる「若気の至り」でした。高校時代はプロサッカー選手を目指して強豪校で練習に明け暮れる日々を送っていたのですが、引退後に進路を考えた際、当時放送されていた大河ドラマ『龍馬伝』を見て俳優という職業に惹かれたのが一つ。そしてもう一つは、当時ファンだった柴咲コウさんに「俳優になれば、共演して会えるかもしれない!」という、切実かつエゴな期待があったからです(笑)。
そういう無鉄砲な衝動から、高校卒業後、小栗旬さんや綾野剛さんといった多くの実力派俳優を輩出したトライストーン・エンタテイメントの養成所に飛び込みました。やるからにはアイドル的なものではなく、しっかりと演技に力を入れている事務所で学びたかったんです。俳優業の本質は、単にセリフを話すことではありません。自分という人間を客観視し、他者の感情を汲み取り、それを空間全体に波及させることの連続です。養成所での5年間では、単なる技術習得ではなく、そういった『表現者としてのメタ認知』を徹底的に叩き込まれる日々でした。
日テレドラマ『男水!』に水泳部員役で出演時(右端)
―未経験からのスタートで、戸惑いはありませんでしたか?
福島:
もちろんありました。最初のレッスンでは台本を渡されて「これを覚えてやってみて」と言われ、度胸だけはありましたが、当初はやはり人前で演じることが猛烈に恥ずかしかったです。そんな僕を救ってくれたのは、世界の大俳優・渡辺謙さんの「俳優は一生恥を晒す職業だ」という言葉でした。彼の、プロとしての矜持と覚悟を象徴するようなその言葉に、「緊張や恥ずかしさをなくす必要はないんだ」と気づいたんです。その時、俳優を志す者として、いかなるプレッシャー下でも自分をコントロールして成果を出すための覚悟が決まったように思います。
コロナ禍で、その覚悟が試された出来事がありました。ある舞台で主演を務めていた誰もが知る某俳優の方がコロナウイルスに感染して、僕が代役に近い形で舞台を支えることになったのです。人生最大級のプレッシャーの中、主演の療養という不測の事態でも舞台を止めるわけにはいかない、絶対にプロジェクトを成立させなければならない、というプロの現場の厳しさを身をもって体験しました。この経験を通して、表現者としての責任遂行能力とプロジェクト完遂への執着心が自分の中に生まれたと思います。
東京芸術劇場での舞台に出演時
こうして、福島が俳優人生で獲得した「非言語コミュニケーション能力」と「俯瞰的な状況把握能力」は、彼のその後のホスピタリティビジネスにおいても、強力な武器となった。
キャリアの後半、福島はプレイヤーからマネジメント・育成へとその領域を拡張する。演技講師およびマネージャーとして、若手俳優のキャリア形成を主導した。ここで彼が直面したのは、個人の「才能」をいかに「成果」として再現させるかという、人材開発の難題であった。
ーその後、プレイヤーから「育てる側」へと領域を広げられましたが、どのような転機があったのでしょうか。
福島:
養成所時代の仲間が芸能事務所を立ち上げることになり、俳優を育て、マネジメントする人間が必要だということで声をかけられました。最初は、自分に教える資格があるのだろうかと不安もありましたが、役に立てるならと引き受けたところ、自分の中に意外なほどの「熱」が湧いてくるのを感じたんです。一方で、個人の「才能」をいかに「成果」として再現させるかという、人材開発の難題にも直面しました。
そこで、指導において私が最も重視したのは『ラディカル・キャンダー(徹底的な本音)』です。夢を追う若者に対し、その資質と市場のニーズを冷徹に分析し、時には『そのアプローチでは戦えない』という不都合な真実を伝える必要がありました。例えば、イケメン路線で売りたいのに中途半端な意識でいる子には、「お前、この世界じゃそんなにかっこよくないぞ」とはっきり伝えます(笑)。相手のプライドを「いい意味で傷つける」くらいの芯を食った助言をすることが、彼らの限られたキャリア資源を無駄にさせないための、マネージャーとしての倫理観だと思っていました。
スカウトした高校生の未経験者に対し、進路面談から技術指導までを一貫して伴走しました。厳しい指導の甲斐もあって、教え子たちが後に地上波ドラマや映画で活躍するようになった姿を見たときは、自分のこと以上に嬉しかったです。自分を「恩師」として今でも慕ってくれる彼らとは、会うたびに演技に対する熱い話をする師弟関係が続いています。この経験を通じて、「人の成長をデザインする」ことの醍醐味を確信しました。
新国立劇場でのミュージカルに出演時
ディズニーとシドニーで磨いた世界基準のホスピタリティー。次なる舞台として水星を選んだ理由
― 福島さんのキャリアには、もう一つの柱として「現場オペレーション」があります。ディズニーシーや海外での経験について教えてください。
福島:
18歳から3年間、東京ディズニーシーでキャストとして働いていました。規格化された最高品質の体験をいかなる状況でも提供し続けるという、オペレーションの厳密さを体得する場となり、私の中での「サービス・スタンダード」の基礎となったように思います。その後、20代後半でさらなる視座を求め、オーストラリアへ。シドニー中心部に位置する5つ星ホテル「Amora Hotel Jamison Sydney」でポーター・コンシェルジュとして勤務しました。
多様な言語、文化、価値観が交錯するグローバルな現場では、マニュアル以上の『察する力』が求められます。ゲストが何を求め、今どのような感情にあるのか。俳優時代に培った観察眼とメタ認知能力をフル稼働させ、英語というツールを用いて価値を提供するプロセスは、私にとって『観光』というビジネスの奥深さを再認識させるものでした。
特に、コミュニケーションを、言葉(セリフ)だけでなく表情やテンション、空間演出まで含めたトータルパッケージとして捉える視点には、俳優の経験を大いに活かすことができたと思います。相手が何を求めているのか、言葉の裏側にある感情を汲み取る能力は、まさに俳優としての訓練そのものでしたね。
シドニーのホテルスタッフと
海外での実戦経験は、現在水星のホテルスタッフとしてインバウンド需要の最大化を狙う上で、大きな武器となっている。帰国後、福島が自らの次のフェーズとして定義したのは「自分の強みが最もレバレッジの効く領域」であった。その時、彼の目に留まったのが株式会社水星だった。
― 帰国後、多くの選択肢がある中で、なぜ水星を選ばれたのでしょうか。
福島:
転職活動中、自分の強みが最も活きる領域はどこかと考えたとき、ホテルの仕事を調べていてたまたま見つけた社員インタビュー動画が、水星を知ったきっかけでした。私がこれまでの人生で関わってきた『観光』と『エンターテインメント』が、ここでは一つの事業モデルとして高い純度で融合されていることに衝撃を受けましたね。その後、noteやSNSを片っ端から読み込み、水星についての解像度を非常に高めてから、応募しました。例えば、HOTEL SHE, 統括支配人・岸さんの「スケジュール公開note」などは、水星のホテルでの働き方を現実的にイメージする上でも非常に助けになりました。
ー水星への入社の決め手となったことはなんですか?
福島:
大きく2つあります。1つは、水星が掲げる「自らの仕事を自ら面白くする」というカルチャーに強く惹かれたこと。観光業界には、定められたルーチンをこなす受動的な働き方が少なくありません。しかし、水星のメンバーは一人ひとりが『この場をどう面白くし、価値を最大化するか』というオーナーシップを持って働いている。その熱量と、挑戦を称賛する文化こそが、私が身を投じるべき戦場だと確信しました。
もう1つは、圧倒的な「人」の魅力です。出会う社員の皆さんが、仕事に対してリスペクトと熱意、そして深い愛を持って取り組んでいることがひしひしと伝わってきました。この環境なら自分自身がさらに成長できるし、シンプルに「面白そう!」と思えたのが決め手となり、入社を決意しました。
「自ら火を灯し続ける人の集まり」水星で挑戦したいこと
アシスタントマネージャーとして金沢「香林居」配属された彼の現在のミッションは、現場オペレーションの最適化とスタッフのプロフェッショナリズムの底上げである。
―現在の「香林居」では具体的にどのような仕事に従事されているのでしょうか。
福島:
主に3つの重要施策を推進しています。
1つ目は、アルバイトスタッフへの「英語教育」。これまでの海外経験と講師としての知見を活かし、単なる語学習得ではなく、ゲストの心に届き期待を超えるための、「表現力としての英語」を指導しています。かつての演技講師時代の経験と 非常に密接に繋がっていることを実感する日々です。なぜなら、英語を教えることも、俳優に演技を教えることも、本質的には「相手にどう伝えるか」というコミュニケーションの調整だから。やってみて気づいたのは、やはり自分は「人を育てる」ことが好きだということですね。
2つ目は、エクスペリエンス・セールスの最大化。サウナやアイソレーションタンクといったオプションの「体験価値」の販促戦略の立案を行っています。マーケティングの視点を取り入れ、宿泊体験の付加価値をどう高めるかを試行錯誤するこの業務には、未経験ながら非常に刺激を感じています。
3つ目は、組織コンディションの調整。チームのエンゲージメントを高められるよう、支配人・副支配人と連携し、マネジメント経験も活かしながら、スタッフ一人ひとりが主体的に動ける環境作りに務めています。
―福島さんが入社されて半年が経ちましたが、その後にも香林居には新しいメンバーが続々と入社していますね。
福島:
そうですね、香林居のチーム全体も非常に活気があり、私もようやく仕事や環境にも慣れてきました。ただ、実は、入社当初からずっと、圧倒的なスキルを持つ同僚と比較し、焦燥感を抱く瞬間も、少なくなかったんです。水星のメンバーは、一人ひとりが非常に尖った個性と高いスキルを持っていて、その中で自分は、まだ英語教育やパーソナリティの部分でしか貢献できていないのではないか。みんなが自分の仕事を自ら面白くしようとしている姿に感銘を受ける一方で、自分はどうなのか、と。しかし、日々香林居で働き様々なゲストや、水星のメンバーと交流する中で、自分の持ち場である『教育』と『オペレーション』において着実に成果を出すことこそが、水星という組織への最大貢献であると再定義できました。今は、香林居が持つポテンシャルを自らの手で解き放つことに没頭できています。
―最後に、水星でのこれからの抱負を教えてください。
福島:
水星は、『自ら火を灯し続ける人の集まり』だと感じます。誰かに与えられるのを待つのではなく、自らの手で仕事を面白くし、周囲に火を灯していく。他人の芝生を眺めるのではなく、自分の足元をいかに耕し、面白い実を結ばせるか。そこにこだわり抜くことが、結果として顧客への価値に繋がるはずです。その挑戦の先に、観光・ホテルの新たなスタンダードがあると信じています。
余談ですが、私自身が理想とするプロフェッショナル像は、同世代の俳優である池松壮亮さん。彼の俳優業にかける異常なまでの覚悟や考え方、そういう「極端に生きている」ところに強く惹かれ、一番の憧れの存在です。例えば、彼は20代の頃、俳優としての集中力を削がないためにLINEもやらなかったというエピソードがあって。私もそのくらいの覚悟で、余計なものを削ぎ落として「おのれの道」を突き詰めていきたいと思っています。
〜編集後記〜
福島への取材を通じて感じたのは、彼が持つ「観察の細かさ」と「意志の太さ」の共存だ。一見すると特異に映るかもしれない彼のキャリアの根底には、「選んだ道を正解にする」というプロフェッショナルとしての強靭な意志がある。それは、憧れの俳優・池松壮亮氏の我が道に対する確固たる覚悟に引けを取らないだろう。
自ら選んだ水星というキャリアで、彼の視線の先には、既存のという概念を覆すような面白い世界が広がっているに違いない。 (西岡)
株式会社水星が運営するホテル HOTEL SHE,OSAKA/KYOTO、香林居、ホテル雲井では、事業拡大にともない、未来のホテル運営やブランドづくりを支えるホテリエを募集しています。ご応募はこちらから。(まずは、話を聞きてみたいという方には、オンラインのカジュアル面談を受け付けております!)