私の会社ではコロナ前から全社員テレワークを導入しています。
働いている社員の8割が子育て中のママさんです。子育てしているため、フルタイムで働いていません。大体1日4~6時間稼働する方が多いです。

なぜママ社員が多いのか？

なぜ子育てしているママ社員が多いのかというと、求人を出すたびに子育てをしているママさんからたくさん応募があったからです。もちろんママさん以外からの応募もありましたが、ママさんの切実な想いに心を打たれ採用するようになりました。彼女たちは今まで採用した誰よりも一生懸命仕事をしてくれました。

出産後の孤立感

出産後、多くの女性が体験するのは社会からの孤立感です。
自分だけが社会から取り残されていく感覚があるそうです。
私の会社で働いているママさんたちは、まず最初に社会とつながっている感覚に喜びを感じます。

以前システムエンジニアとして活躍されていた女性の話です。出産により産休、育休を取り、その後職場に復帰したが、システムエンジニアとして働くことはとても大変で、子育てしながら働くことはできないと諦め、会社を辞めたママさんがいます。もっと酷い職場のママさんの話では、妊娠が分かり上司に報告すると「ではいつ辞めるのか？」と会社を辞めることを前提に話をされたそうです。
会社を辞めた後、数年経って再度パートアルバイトでもいいからシステムエンジニアとして働こうとしても、今度はブランクが壁になり採用してもらえないそうです。

誰でもできる簡単な仕事をやらない理由

コロナ前はテレワークで仕事をしている会社はとても珍しいことでした。私の会社でもオフィスに来て仕事をしている頃がありました。コロナ前でもテレワークで働く方たちもいましたが、あまり難しい仕事をテレワークをしている方に与える会社は少なかったと思います。データ入力や、テスト業務など誰でもできそうな簡単な業務が中心です。

私の会社では、「子育てしている方のキャリアをつなぐ」ことをミッションの１つにしています。
子育て中で働きたくても働けない人たちの中には、データ入力など誰でもできる簡単な仕事でもいいから仕事をしたいと考えている方がある程度いらっしゃいます。
私の会社でも誰でもできる簡単な仕事があり、その仕事を増やしていき働くママをたくさん採用していくことも考えましたが、それは実行しませんでした。
それは働いてくださる方たちにとって本当に役に立つことではないと考えたからです。

ライン生産方式が離職者を増やした

自動車メーカーのフォード社が、1914年にベルトコンベアで車を製造するライン生産方式を世界で初めて導入しました。それまで技術を持った人しか製造できなかった車が、タイヤを付ける人、ハンドルを付ける人など作業を分担し生産ラインを作ることで、技術を持たない人でも簡単に仕事ができるようになりました。それにより作業はルーチン化、簡素化しました。採用できる人も増えましたが、一方で離職率も増えたのです。

キャリアを積むことの重要性

最初はお金を貰えることに喜びを感じることでしょう。しかし、人は簡単な仕事やルーチンワークを続けることは大きな苦痛になります。
それ以外にも私が簡単な仕事を増やしてママさんの採用を増やそうと思わなかった理由があります。
それは仕事を通して「その方の大切な時間を奪ってしまうこと」です。人の時間は有限です。その時間は大切にしてほしいと思います。
また、貧困な方は、貧困のスパイラルに入ってしまい抜け出せなくなるといいます。
たとえばシングルマザーの方が手に職もないのでスーパーのレジで仕事をしているとします。
スーパーのレジではキャリアを積むことはできません。ずっと不安定な非正規の仕事をするだけでなく、不景気などの影響で職を失うと、なかなか再度仕事を見つけることができません。（不景気にならなくても、レジの無人化も進み、職を失う可能性もあります）
安い給与で長時間働き、最後は使い捨てのようになる人生から脱却するには、お金を稼ぐことだけに囚われず、キャリアを積むという視点も重要です。

子育てや家族を優先できる職場

弊社では全員が全員、高いレベルのシステム開発を行っているわけではありません。テスト仕様書を書いたり、要件定義をしたりして、プログラムのコードを書かない人もいます。
できるだけ厳しい納期のある仕事は、クライアントから振らないようにして頂いてます。

私はキャリアを積むことは大切なことだと考える一方で、社員ひとりひとりの人生を大切にしたいと考えています。人生には仕事より大切なことがたくさんあります。
そういったことを犠牲にして仕事をして欲しくはありません。

子育てしやすい社会を目指して、弊社の取り組みは今後も続きます。