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ミニ連載A第1回:なぜデジタルアーカイブの会社が「まちづくり」人材の育成? 〜問題提起〜

こんにちは。社長室室長・上級デジタルアーキビストの寳德真大(ほうとく まさひろ)です。

私たち株式会社誠勝は、この度まちづくりの誠勝という地域活性化人材を育成する新しいサービスをスタートさせました。またこれに先立ち、2023年6月12日(月)に奈良大学にてビッグデータを活用した地域活性化人材育成のための課題解決型の特別講義「国文学科で知っておきたい、デジタルアーキビストが行う地域課題の探究 〜“文化” を仕事にする人に求められること〜」を開催しました。有難いことに当講義のイベントレポートは多くの方にお読みいただいております。

しかし、中には『なぜ誠勝が「まちづくり」に取り組むの?』と思った方もいるのではないでしょうか?

そんな疑問にお答えすべく、7月3日から毎週月曜日に、全4回にわたってデジタルアーカイブの会社である株式会社誠勝が「まちづくり」に取り組むことになった理由について発信していきます。

1:問題提起 ←← 今回はココ!
2:博物館法改正
3:サステナビリティ"という経営課題をどう考えるか
4:まちづくりの誠勝"が目指す未来

これからの時代、貴重書や文化財に関わる人も地域課題へのコミットが必要となってくることについてもお伝えしますので、少しでも多くの方に興味を持っていただけるよう書いていきたいと思います。
1回あたりの文章量もそれほど多くないようにしますので、是非最後までご覧いただければ幸いです。


【目次】
・なぜ誠勝が「まちづくり」に取り組むのか?
・そもそも貴重書や文化財は精神的・文化的に受け継ぐもので、実利に結びつけるのはおかしいのでは?
・貴重な資料を保存する大切さはとてもわかる。でもそれは何の役に立つの?


--なぜ誠勝が「まちづくり」に取り組むのか?

結論:このままだとデジタルアーカイブが、どんどん世の中から消えてしまうから

一言で言えば、上記の結論が、私たちが「まちづくり」に取り組む理由です。

貴重な史資料(文化財や貴重書含む)をデジタル媒体にする代表的な理由は、
・遠方から史資料を見に行けない人が閲覧できる環境を作るため
・別の災害が起きた時に「万一現物がなくなったら完全に見られなくなる」状態を防ぐため
などが挙げられます。

しかし、私たち誠勝はデジタル媒体にすることの本質は、「後世にわたって” 利活用 ”できるようにするため」だと考えています。

「利活用」をすることで、デジタルアーカイブとして保存された貴重な史資料の新たな価値が見出され、それを原資にしてデジタルアーカイブの後世への伝承が可能となるからです。

しかし、どうでしょう?「デジタルアーカイブの利活用方法」って、皆さんどんなものが思い浮かびますか?

これまでVR・AR、観光・学校教育への利活用…確かにこれまで様々な利活用方法が実践されました。それらの利活用の中には地域への愛着などに繋がった例もあるかもしれません。しかし、「明確に何かの課題解決に繋がった」という確固たる利活用のロールモデルが、社会全体には不足しているのではないでしょうか?

こうした利活用事例がない限り、「保存→利活用→保存→…」という価値の循環によって貴重な史資料を後世に伝承するのは難しいーーそんな問題に直面しているのが現状です。

-- そもそも貴重書や文化財は精神的・文化的に受け継ぐもので、実利に結びつけるのはおかしいのでは?

こんなご意見をお持ちの方もいるのではないでしょうか?
誠勝は貴重な史資料を後世に受け継ぐにあたって、当たり前の話ではありますが下記のような形であってはいけないと考えています。
・特定の誰かだけが利益を得るための利活用
・誰かのプライバシーや権利が侵害されるような利活用
・(極端ではないにしても)実利を得るための利活用

「利活用」の本来の目的は貴重な史資料を後世への伝承し続けることであり、「実利を得るための利活用」では目的が本末転倒になってしまいます。

しかし、貴重な史資料を保存・デジタル化・デジタルアーカイブ構築しても「何も実利がない」では後世に伝えられない時代が到来しています。

貴重な史資料を現実的に後世にわたって運用するためには、維持管理のためにはアナログであってもデジタルであってもお金が必要です。もちろん保存される貴重な史資料が増えれば増えるほど、お金はかかります。そこで「利活用」により新しい価値を生み出す必要があり、その環境を作るために「デジタルアーカイブ」として保存するという意義があることは、先述した通りです。

その時に、「利活用の結果、何も実利がない」状態が続いたらどうなるでしょう?やがて維持管理のための費用を賄えなくなり、デジタルアーカイブが消失してしまう結果につながってしまいます。

実際、最近では震災アーカイブの閉鎖が相次いでいます。震災の記憶を後世に伝える意義は誰もが理解していると思いますが、こうしたデジタルアーカイブでさえ閉鎖に追い込まれる状況が、既に起こってしまっています。

確かに「実利を得るための利活用」ではいけません。しかし「利活用の結果、実利を作る」ことは貴重な史資料を後世に伝えるためには、欠かせないことなんです。

-- 貴重な資料を保存する大切さはとてもわかる。でもそれは何の役に立つの?

これは実際にお客様からいただいた率直な意見です。そして残念ながらこのお客様のご意見は、デジタルアーカイブを取り巻く現状を正しく反映していて、「ごもっとも」なご意見でもあります。

しかし私たち誠勝は、貴重な史資料をデジタルアーカイブ化して利活用しやすい環境を作り、「利活用の結果、実利を作り、そして新たな価値を生み出して、後世につなげていく試み」を絶対に諦めてはいけないと思っています。

そして今年2023年、この試みが社会全体に広がるための、大きな「うねり」が起きようとしています。私たちが「まちづくり」人材の育成を始めるきっかけにもなった、社会的な動きです。

その社会的な動きについては連載2記事目にて解説していきます。どうぞお楽しみに!


1:問題提起 ←← 今回はココ!
2:博物館法改正
3:サステナビリティ"という経営課題をどう考えるか
4:まちづくりの誠勝"が目指す未来
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