はじめに
こんにちは、関谷です。
弊社では試験的に「グループワーク」という取り組みを行っています。普段は別々のプロジェクトに参画しているエンジニア同士がチームを組み、業務の空き時間を使って何かに取り組むというものです。最終的にブログで成果を報告できればテーマは自由で、輪読会をしているチームもあります。
目的はプロジェクト横断のコミュニケーション促進で、私のグループではエンジニア4人が集まり、約3ヶ月間取り組みました。
私たちが選んだテーマは、Slack上で動くAI秘書Botの開発です。「AIがキテるし、せっかくならAIを使ったプロダクトを実装してキャッチアップしよう」という話になり、最初はOpenClawが候補にあがりましたが、データ流出リスクなどのセキュリティ面の懸念を払拭することができませんでした。そこで社内で安全にサンドボックス化して運用できるGoogle CloudのVertex AI (Gemini) を使った構成に落ち着きました。
何を作ろうとしたか
目指したのは、Slack上でメッセージを送るとAIが意図を読み取って自動で処理してくれるBotです。リマインダー設定、タスク管理、スレッド要約、日報生成、FAQ応答……便利機能をいろいろ詰め込む予定でした。
技術構成
裏側の仕組みを簡単に紹介します。使っているGoogle Cloudの各サービスと、それぞれの役割はこんな感じです。
メッセージを送ってから返信が届くまでの流れはこうです。
- ユーザーがSlackでメッセージを送る
- AI秘書が過去の関連会話をVertex AI Searchから検索する
- 検索結果と一緒にメッセージをGeminiに渡し、「これは何をしたいのか」を分類してもらう
- 分類結果に応じたスキル(リマインダー、タスク管理など)が実行される
- スキルがGeminiに返信文の生成を依頼し、必要なデータをCloud SQLに保存する
- 生成された返信がSlackに投稿される
CI/CDはGitHub ActionsでPR作成時にlint・型チェック・テストが自動で走り、mainブランチにマージするとCloud Runへ自動デプロイされます。
……と、インフラ周りは整いました。しかし問題は中身です。
現実
全員が別プロジェクトと並行しているため、まとまった時間の確保が想像以上に難しく、計画通りには進みませんでした。結果、AI秘書としての便利機能は思ったほど形にできませんでした。
そこで方針転換です。
「真面目な秘書が無理なら、面白い秘書を作ろう」
ディストピアモード
市民番号制度
Slackに初めてメッセージを送った順番で、全ユーザーに市民番号が自動で振られます。以降、AI秘書はユーザーを名前ではなく市民番号で呼びます。
社会信用スコア
すべての発言をAIが「生産性・忠誠心・協調性」の3軸で採点します。合計100点満点。「しんどい」と書けばスコアが下がります。「無理」も下がります。「やる気ない」も当然下がります。日本の会社員が月曜日に普通に打つような言葉が、ほぼ全部マイナス対象です。
毎週金曜18時に、チャンネルで「週次社会信用スコア 党中央委員会発表」としてランキングが公開されます。
思想矯正
ネガティブなキーワードを含む発言を検知すると、チャンネルにこんな警告が投稿されます。
「同志、その発言は党の精神に反します。建設的な言葉で言い直してください。🚩」
さらにAIが発言を「党承認表現」に書き換えてDMで送ってきます。親切ですね。
発言前検閲
メッセージを送った直後、スレッドに「🔍 党審査局が精査中...」と表示されます。採点結果が70点以上なら静かに消えますが、40点未満だと「❌ 要審査」がそのまま残ります。
密告システム
メッセージに👁️リアクションを押すと、**密告として処理**されます。上部機関チャンネルに報告書が転送され、押した本人には確認DMが届きます。
「✅ 密告を受理しました。上部機関が調査を開始します。」
Big Brother DM
1時間おきにランダムなタイミングで、こんなDMが届きます。
「大兄弟はあなたを見ています。👁️」
9時〜22時の間だけ送信されます。深夜は見逃してくれます。優しいですね。
粛清
毎週月曜朝9時に社会信用スコアに基づくランクが更新されます。2週連続で最下位ランク(反革命分子)になると、粛清が執行されます。なお、最初に粛清されたのは役員でした。
以上がディストピアモードの全貌です。真面目な秘書を作るはずが、気づいたら全体主義国家をSlack上に建設していました。
グループワークを振り返って
正直に言うと、開発の進め方には多くの課題が残りました。
…
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