「自分が本当にやりたいこと」を形にする手段として、個人開発や新たな事業立ち上げに挑むエンジニアは少なくありません。しかし、いかにパッションを持って取り組んだとしても、個人のリソースだけでそのプロダクトを「事業」へと昇華させ、継続的な価値を生み出し続けるには、あまりにも高い壁が存在します。
事業共創カンパニーであるRelicは、社員が個人で開発したプロダクトを会社が買い取り、組織のアセットやリソースを投下して「共創」することで事業へと昇華させる独自の制度を創設しました。
Relicは2026年より、CEO北嶋とCTO大庭による共同代表制へ体制変更し、「両輪経営(Dual Leadership)」を強化しています。この「ビジネスとテクノロジー」「戦略と実行」を高い次元で統合する思想を、社員一人ひとりの挑戦にも適用したのが本制度です。
本制度の立案に関わり、自らも社内新規事業プログラムを通じて『b-discovery』(ブレイキンプラットフォーム)を推進する責任者でもある黒木裕貴に、制度の真意とRelicが目指す共創のかたちを訊きました。
目次
- 個人の熱意だけでは、プロダクトのスケールは難しい
- なぜ「支援」ではなく「買い取り」なのか。制度が解消する3つの壁
- 制度の仕組み:申請から出口戦略まで、5つのステップ
- 個人開発からコナミスポーツとの連携へ。『b-discovery』が示した可能性
- Relicが本制度を通じて出会いたい人
- 事業家への第一歩を。採用募集のお知らせ
個人の熱意だけでは、プロダクトのスケールは難しい
副業解禁が進み、社員の個人開発や新規事業立ち上げに対する企業の姿勢は、確かに以前より柔軟になりました。しかし、その実態に目を向けると、依然として高い壁が立ちはだかっています。
「時代や技術の進化に伴い、私たちは『新しく始めるチャンス』が増えたと思います。エンジニアやクリエイターが個人で何かを生み出すこと自体は、以前よりずっと身近になりました。
ただ、そこから先——個人で生まれた筋の良いプロダクトを『事業』として大きく育てていく、となると話は別です。社内副業のような制度を用意している会社もありますが、いずれも個人の活動と会社の事業はあくまで切り離されて扱われる。個人の取り組みを会社が事業として引き受け、一緒に育てていく仕組みは、ほとんど存在しないのが実態だと思います」
個人開発が「事業」にスケールしない最大の理由が、「会社のアセットを使えない」ことにあります。たとえ活動自体は容認されたとしても、所属企業の営業ネットワーク、ブランド信用、マーケティング予算、法務・経理機能といったアセットを個人が活用することは、大半のケースで難しい。結果として、エンジニアやクリエイターが個人で生み出した筋の良いアイデアは、検証フェーズで頭打ちとなり、なかなか大きな事業へとスケールしていきません。
「自分が本気で熱量を注ぎたいプロダクトであれば、寝ても覚めてもそのことばかり考えてしまうものではないでしょうか。そこまでの熱量を持って動いている人がいるなら、会社がアセットを差し出して一緒に事業へと育てていく方が、本人にとっても会社にとってもずっと大きな価値が生まれると思うんです」(黒木)
本制度は、こうした業界共通の構造課題に正面から向き合い、「埋もれてしまう筋の良いアイデア」を救い出し、Relicが持つ営業網やマーケティング予算、経営アセットをフル活用して市場へのインパクトを最大化させるための仕組みです。
なぜ「支援」ではなく「買い取り」なのか。制度が解消する3つの壁
本制度の最大の特徴は、単なる「活動の許可」ではなく、会社がプロダクトを買い取るステップを挟むことにあります。なぜ「個人の所有」を「組織の資産」へと統合するのでしょうか。背景には、Relicがこれまで5,000社以上の新規事業開発を共創してきた中で見出した、個人開発が突き当たる3つの壁があります。
1つ目は「信用の壁」。 個人名義のプロダクトでは、特に法人向けの営業や大手企業との連携において、相手から見た信頼性や交渉力に大きな差が生まれます。
2つ目は「資金・リソースの壁」。 開発費、マーケティング費、検証コスト——これらをすべて個人が負担する構造では、一定規模を超えた挑戦は成り立ちません。
3つ目は「実行体制の壁」。 開発・クリエイティブ・営業・マーケティングまで、事業化に必要な全機能を個人で揃えることは事実上不可能です。
「個人が抱えていた赤字リスクや検証コストを会社が引き受けることで、心理的・経済的なハードルを下げる。同時に、Relicのブランドと組織知を背負った戦略的な検証が可能になります。さらに、Relicには各領域の専門家が揃っていて、分からないことがあればすぐに聞ける。挑戦をリスペクトし、互いに学び合う文化がある——これは個人ではなかなか得られない環境です」(黒木)
加えて、事業の成長・貢献度に応じたインセンティブを付与する設計により、開発者の情熱を正当に評価します。単に「好きなことをやっていい」と放任するのではなく、会社がリスクを取り、責任を分担して「事業」へと引き上げる。これがRelicの考える共創のスタンスです。本制度は、Relicが推進する「すべてのメンバーが事業家であり、かつ専門家」を目指す「1人1冊・1事業」構想を具現化する新たな施策でもあります。
制度の仕組み:申請から出口戦略まで、5つのステップ
本制度は、個人のクリエイティビティを最大限に尊重しつつ、新規事業開発の成功確率を高めるために以下のステップで運用されます。
(1) 申請・審査
プロダクトの完成度や収益性、市場性をもとに、事業部長が柔軟に審査します。一律のフォーマットや形式的な稟議に縛られず、事業の性質に応じた評価を行います。
(2) 会社による買い取り
審査通過後、申請者との合意の上、プロダクトを適正な評価額で買い取り、Relicの資産として管理します。これにより、個人が抱えていた赤字リスクや検証コストを会社が引き受けます。
(3) 事業成長のブースト
フェーズに応じた最低限の広告・マーケティング予算を会社が拠出し、Relicのブランドとネットワークを活用して検証・拡大を加速させます。
(4) インセンティブ還元
投下コスト回収後、利益の一部を開発者へ報奨金として還元し、挑戦の成果をダイレクトに評価します。
(5) 柔軟な出口戦略
事業の成熟度に応じ、社内事業としての継続だけでなく、ジョイントベンチャー(JV)化やカーブアウト(分社化)による起業など、多様な出口を選択できる設計です。
さらに、Relicが展開する全方位型スタートアップスタジオ「ZERO1000 Ventures」等の既存制度とも連携させることで、日本全国から多種多様な新規事業が継続的に生まれるプラットフォームとしての機能を強化していきます。
注目すべきは、本制度が一般メンバーだけでなく、事業部長クラスの幹部にも開かれているという点です。Relicでは、組織をマネジメントする立場の人間が、自ら事業家として現場に立ち続けることを推奨しています。マネジメント(組織)とプレイヤー(事業)という二つの車輪を、同じ方向に揃えて回す。それを許容するどころか、推奨する組織構造こそが本制度の前提です。
「マネジメントしながら自分自身も一プレイヤーとして事業に向き合える組織は、他にはなかなかないと思います」(黒木)
個人開発からコナミスポーツとの連携へ。『b-discovery』が示した可能性
この制度思想の有効性を証明しているのが、黒木が推進する『b-discovery』です。
たまプラーザ・中央林間校で講師を務めるBBOY NICOLAS(ビーボーイ ニコラス)。Red Bull BC One 日本代表経験を持つなど国内外で活躍。
『b-discovery』は、2024年のパリ五輪で正式種目として採用されたブレイキンに特化したプラットフォーム事業。当初は動画共有プラットフォームとして立ち上がり、その後、子ども向けのブレイキンレッスン事業へと展開を広げています。
世界大会で活躍するトッププロダンサー陣が直接指導する、本格的かつ未経験の子どもでも安心して通えるプログラムが特徴です。
個人開発の段階では解決が難しかった「会場の確保」「法人との契約交渉」「全国規模の集客」といったハードルも、Relicの社内新規事業創出プログラム「RIP(Relic Incubation Program)」に採択され、正式な事業として動き出したことで一気に突破口が開けました。
その成果が、コナミスポーツ株式会社との共創です。全国規模でフィットネスクラブ・スポーツクラブを展開するコナミスポーツとの連携により、現在『b-discovery』はコナミスポーツクラブの自由が丘駅前・恵比寿・二子玉川・中央林間の4店舗でレッスンを展開。子どもたちが、五輪種目にもなったブレイキンに気軽に触れられる環境を、全国の主要エリアで実現しています。
二子玉川校・自由が丘校で講師を務めるBBOY SHOSEI(ビーボーイ ショウセイ)。2026年4月開催の「マイナビDANCEALIVE 2026」でファイナリストに選出。
「Relicというブランドとアセットがあるからこそ、かつては想像もできなかった規模での挑戦が可能になりました。個人ではアプローチすら難しかった大企業との連携が、Relicの一事業として動き出した瞬間に、まったく異なるスピードと深さで進んでいくのを実感しました」(黒木)
個人開発の限界を組織のアセットが突破するという、本制度が想定する成功パターンを、まさに体現している事例だと言えるでしょう。
Relicが本制度を通じて出会いたい人
本制度は、特定の職種や年次を対象としたものではありません。エンジニアはもちろん、ビジネス職、デザイナー、コーポレート部門まで、職種を問わず門戸を開いています。Relicが本制度を通じて出会いたいのは、次のような人です。
第一に、「自分のアイデアやプロダクトを、本気で事業として育てたい」という意志を持つ人。趣味や副業の延長ではなく、社会に価値を届ける事業へと昇華させたいという覚悟こそが、本制度のスタートラインです。
第二に、これまでのキャリアで培った専門性や経験を、自分のやりたいことと掛け合わせられる人。職務で磨いた技術、業界知識、マネジメント経験——それらを自身の構想と結びつけることで、個人では生み出せなかった事業の輪郭が見えてきます。
第三に、不確実な状況でも、泥臭く事業を前に進められる人。新規事業に「計画通り」はありません。試行錯誤を厭わず、自ら手を動かして検証を重ねられる実行力を、Relicは何よりも重視します。
この制度を通じてRelicが目指すのは、単に「起業して独立する人」を増やすことではありません。自律的に、かつ泥臭く「事業を前に進められる真の事業家」を育てることです。たとえそのプロジェクトが最終的に撤退という形になっても、そこで得た「事業家としての手触り感」と「前例」は、Relicの次なるプロジェクトを支える貴重な知的資本となります。
自らのパッションを、組織の力で市場へ放つ。Relicは、職種や年齢を問わず、そんな大志ある挑戦を共に創り上げていきます。
事業家への第一歩を。採用募集のお知らせ
Relicは、日本から数多くの新規事業とイノベーションを共創するため、エンジニア・PdM、事業プロデューサーなど、あらゆる職種において「事業家」としての志を持つ人材を募集しています。今回創設した制度をはじめ、社員一人ひとりの挑戦を組織として最大化する環境と仕組みを整えています。自らのアイデアを形にし、社会にインパクトを与えたい挑戦者をお待ちしています。