みなさん、はじめまして。RELATIONS唯一のデザイナー、ウエンツこと植田です。
マネジメントツール「Wistant」のUI/UXデザインから、営業資料・印刷物などのデザイン、時にはオフィスデザインや社内行事のディレクションまで、デザイン・クリエイティブ業務を幅広く担当しています。
先日、弊社の10周年記念イベントで行われた「アイデアソン」も、私が企画設計とファリシテーターを務めさせていただきました。(※パーティーの詳細は別ブログにて)
社内でアイデアソンを行うのは、今回が初めて。内心ドキドキでしたが、丸2ヶ月かけて綿密に設計・準備した結果、みんな大盛り上がりで無事に終えることができました。
▼アイデアソンの発表の様子
そこで今回は、成功するアイデアソンのTipsを、このブログで全てお伝えさせていただこうと思います。
今後、アイデアソンを企画される方々や、アイデアをどのように形作れば良いかのヒントを得たい方々の参考になれば嬉しく思いますので、関心のある方はぜひご覧ください。
※めちゃくちゃ長いので、目次の中で興味ある段落だけでもどうぞ 🦆🦆
<目次>
1:アイデアソンって?
2:「入口」と「出口」を決める
3:テーマ設定のコツ
4:メソッドの選定と組み立て方
5:チーム分けとファシリテーション
6:アイデアソンの実践
-ワーク① 頭の準備体操(30サークルズ、しりとらず)
-ワーク② アイデアの発散(マンダラート、スピードストーミング)
-ワーク③ アイデアの収束(アイデア・スケッチ、ハイライト法)
-ワーク④ アイデアのブラッシュアップ
-ワーク⑤ アウトプット(寸劇)
7:アイデアソンを終えてみて
1:アイデアソンって?
そもそも「アイデアソン」をご存知でない方もいらっしゃるかと思いますので、まずは定義から。
アイデアソンとは、1990年頃からアメリカのIT企業を中心に広まった「ハッカソン(hack + marathon)」を源流とした造語です。アウトプットがバトンになるという意味で「マラソン」をかけています。
そのハッカソンの導入部にあたる、「アイデア出し」を切り出してブラッシュアップしたものが、「アイデアソン(idea + marathon)」になります。アイデアを生むことに重きをおいたイベントです。
2:「入口」と「出口」を決める
はじめに、アイデアソンの企画で最も重要なのは、「入口(=開催の目的)」と「出口(=アウトプットや、出されたアイデアの取り扱い)」を明確にするということです。
特に、何を目的としたアイデアソンなのか? によって、用いる手法やアウトプットが異なってくるため、ここを最初に決める必要があります。
今回は、10周年記念のワークショップであることや、数ヶ月後に控えた新オフィスへの移転を踏まえて、以下の2つを目的に設定しました。
・RELATIONSとしての「理想的な働き方」を全員に考えてもらうこと
・新オフィスデザインのための、質の高い参考情報(=筋の良さそうなアイデア)を集めること
というのも、「新オフィスのデザインを決める」という差し迫った課題はあるのですが、前提として、オフィスによって働き方がつくられるのではなく、働き方に合わせたオフィスをつくるべきだと私は考えています。
そのため、メンバー全員で「理想の働き方」を考えることを通じて、その働き方を実現するための「理想のオフィス」のアイデアを収集する、ということをアイデアソンの目的にしました。
具体的には「理想の働き方」をテーマにして全体を設計しつつ、途中のワークで使用する「マンダラート(詳細は後述)」のシートを回収することで、新オフィスデザインのアイデア収集を行いました。
3:テーマ設定のコツ
入口と出口が決まったら、次に「テーマ」を設定します。
このテーマ設定で気をつけたいのが、ワーディングです。テーマは、アイデアを発想する羅針盤となるため、正しいアイデア(=目的に帰結するアイデア)が生み出されやすい表現を選ぶ必要があります。
先ほども述べた通り、今回のテーマは「理想の働き方」ですが、ここからさらに表現をブラッシュアップしていきます。例えば、「劇的に」「10年後の」といったアイデアを遠くに飛ばすような表現を取り入れることで、思考の幅を広げることができます。
今回のテーマにおいても、今の自分たちが満足できる働き方ではなく、会社の未来を思考して、理想を超えていけるようなアイデアが生まれたらいいな、という思いがありました。
そこで今回は、「劇的に」「全世界の注目を集めた」「10年先の」といったアイデアを飛ばす表現をふんだんに取り入れる形で、以下のテーマを設定しました。
4:メソッドの選定と組み立て方
入口と出口、そしてテーマが決まりました。いよいよ、アイデアソンの中身について検討します。
アイデアソンの基本的なフレームワークは、「発散 → 収束 → ブラッシュアップ → アウトプット」です。このアイデア創出のメソッドとしては、すでに多くの確立した手法があります。
▼メソッドの一例
<発散> ブレインストーミング、マンダラート、親和図法、バリューグラフなど
<収束> ビジネスモデルキャンパス、カスタマージャーニーマップなど
<アウトプット> ペーパープロトタイピング、ストーリーテリング、スキット(寸劇)など
ここで大事なのは、これらのメソッドの中から何を選び、どういう構成にして組み立てるか? ということです。そのメソッド選定の視点としては、以下があると考えています。
1:時間的制約 = アイデアソンにどれだけの時間を使えるのか
2:ゴール = 最終的に収束させたいアウトプットと、そのレベル感
3:参加者の属性 = 参加者の職種や、経験の有無など
つまり、時間的な制約と参加者の属性を考慮した上で、本質に迫るアイデアをいかに生み出すことができるか、がメソッド選定の基準になります。
今回参加した弊社メンバーは、ほぼ全員がアイデアソン未経験者で、かつ1日しか時間がなかったため、最終のアウトプットには比較的に難易度の低い「スキット(寸劇)」を採用しました。
また、全体の時間配分を考えて、午前にアイデアの発散・収束まで行い、午後からブラッシュアップ・アウトプット準備をする流れで、1日のスケジュールを組みました。
<当日のスケジュール>
9:30 新オフィス集合・内見
10:15 アイデアソン開始
〜11:30 頭の準備運動(15分)・アイデアの発散(40分)
〜12:30 アイデアの収束(60分)
〜13:30 ・・・ランチ休憩・・・
〜14:50 アイデアのブラッシュアップ(60分)
〜16:50 アウトプットの準備
17:00〜 各チームの発表・表彰(10周年記念パーティーにて)
発散・収束・ブラッシュアップで行うワークは、最終的に収束させたいアウトプットに近づくためのマイルストーンとなるものです。そのため、各ワークにも「発想のテーマ」を設定し、ゴールまでの線をつないでいきます。
そして、一通りの設計ができたら、最後に「事前シミュレーション」をしておくことが大切です。
実際にワークを行ってみると、アイデアが浮かびづらかったり、意図していた方向からずれたりすることがあります。その場合は、メソッドの入れ替えや各ゴールのチューニングをしていきます。
5:チーム分けとファシリテーション
準備の最終段階として、ワークを円滑に進めるための「チーム分け」も重要です。人によって適性がバラバラなので、チーム全体で上手くバランスを取る必要があります。(ただし、社外のアイデアソンや大きな組織の場合は、限界がありそうです。)
今回は以下の視点から、5〜6人ずつ・8チームにわけました。(チーム分けに、1日くらい悩みましたw)
・属性(職種、性別、年齢、お子さんの有無など)
・パーソナリティ(リーダーシップがある、プロマネの経験がある、アイデア出しが得意など)
最後に、当日のファリシテーションも、アイデアソン成功のカギを握ります。ファシリテーターは、参加者がより良いアイデアを出しやすくなるように導き、ゴールに近づける役割を担います。
意識したポイントとしては、以下の2つです。
・既成概念やステレオタイプを壊す
・アイデアの方向性を正す
場の空気や状況を感じ取りながら、全体への共有や各テーブルでの呟きなど、臨機応変に対応します。(この具体例については、実践のパートでご紹介します。)
6:アイデアソンの実践
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。書くのも疲れてきました。ではここから、当日に実施したワークについて、ざっとご紹介していきます。
ワーク① 頭の準備体操(30サークルズ、しりとらず)
まずはじめに、頭の準備体操として「30サークルズ」と「しりとらず」という遊び感覚のワークを用意しました。
「30サークルズ」
その名の通り、「30個のサークルに描き足して、何らかの絵にする」というワークです。制限時間3分で、なるべく30個すべてを使い切るように作業してもらいます。
アイデアの柔軟性を高めるために、ファシリテーターは「少し変わった」サークルの使い方をしている人を例に取り上げて、全体に共有したりもします。例えば、上記の図の中では、複数のサークルを使って「ぶどう」を描いています。(中には、すべてを使って「大腸」を描いた人なんかもいました。笑)
「しりとらず」
その名の通り、しりとりとは違って「おしりを取らない」言葉遊びのワークです。
自由なお題について、持ち時間の2分間、できる限り話し続けます。何のお題が告げられるかわからないのですが、臨機応変に対応して話すことで、頭を柔らかくします。
ワーク② アイデアの発散(マンダラート、スピードストーミング)
準備体操ができたら、次にアイデアの「発散」を行います。今回の発散メソッドとしては、「マンダラート」と「スピードストーミング」を取り入れました。
「マンダラート」
マンダラートは、9 × 9の方眼紙を用いて、関連するアイデアを広げていくワークです。この発想のテーマは、「あなたのモチベーションが劇的に高まる理想の働き方」としました。
手順としては、中心から外側へと、できるだけ多くのアイデアを書いていきます。
1:中心(★印)に「テーマ」を書き、その周囲の8マスに、テーマに関するアイデアを書き込む
2:テーマに関するアイデアを、1〜8の数字に対応する形で、外側の3 × 3の中心に転記する
3:転記したマスの周囲の8マスに、その転記した内容に関するアイデアを書く
各人での作業を終えたあとは、シートをグループ内で共有し、気になったアイデアに印をつけ合いました。
「スピードストーミング」
スピードストーミングは、ブレインストーミングの手法のひとつで、大人数でのアイデア創出に向いていると言われています。
このワークでは「オフィスの来訪者が真似したくなる10年先の働き方」を発想のテーマにしました。
手順としては、まず2つのチームで1グループをつくり、二重の輪になります。そして、内と外でペアを組み、発想のテーマに従って、3分間のアイデア出しを行っていきます。
3分が経過したら、内か外のどちらかが時計回りにひとつずれ、新しいペアで同様のアイデア出しを行うというものです。すべてのペアで行い、アイデアをどんどん発散させます。
ワーク③ アイデアの収束(アイデア・スケッチ、ハイライト法)
発散した後は、アイデアを「収束」するフェーズに入ります。この手法としては、「アイデア・スケッチ」と「ハイライト法」を採用しました。
「アイデア・スケッチ」
発散のフェーズで得たアイデアを参考にして、今回の大テーマである「エンゲージメントが劇的に向上し 全世界の注目を集めた 10年先の働き方 」を考え、アイデア・スケッチのシートに書き込みます。
シートの記入項目は、アイデアのヘッドライン(アイデアを一言で表したもの)とその概要というシンプルなもの。1人3枚以上のスケッチを書いて、グループ内で発表を行いました。
「ハイライト法」
次に、無記名のアイデア・スケッチを壁一面に貼り出し、「ハイライト法」というメソッドで3色の印を各自で付けていきます。色は赤・青・緑の3つで、それぞれに以下の意味をもたせました。
このハイライトの意図としては、アイデアに「意味付け」を行うことで、「なんとなく良さそう」といった収束を避けることです。中には、2色以上のマークがついているアイデアもありました。
全員がひとり1色ずつ(合計3票)でマーキングを行った後は、ファシリテーター(私)が得票の多かったアイデアを取り上げ、全体に共有します。
ワーク④ アイデアのブラッシュアップ
続いて、最終のアウトプットに向けて、収束させたアイデアをさらに「洗練」させていきます。
ここでは「アイデア・ブラッシュアップシート」を活用して、アイデアのコンセプトや、そのアイデアが起こすポジティブな変化などを考え、具体化していきました。
「アイデア・ブラッシュアップシート」
この時、固定概念に捉われがちであったり、テーマと逸れた方向に進んでしまっているような場合には、ファシリテーター側から「こういうのもいいですよね」といった声掛けを行ったりもしました。
ワーク⑤ アウトプット(寸劇)
ここまで来たら、後は各チームでのアウトプット(寸劇)に向けた準備と、その発表です。
今回のアイデアソンでは、4つの賞を用意しました。当初はアイデアソン大賞のような形で、賞を1つだけにすることも考えたのですが、その場合どうしても目立ったものが当選しがちです。
ですが今回の目的として、次の10年に向かって一致団結し、理想の働き方をみんなで考えたいという意図があったので、アイデアを尖らせるための動機づけとして4つの賞を設定しました。もちろん、賞金つき(受賞グループ内での食事に使える祝い金)。
「スキット(寸劇)」
アウトプットのスキットに関しては、各チームの発表時間を4分として、ドラマや紙芝居(スライド)、お笑いなど、発表の形式は自由にしました。正直、どんなアウトプットになるかわからなかったので、博打みたいなものです(笑)
全体へのガイドラインとしては、以下を伝えました。
準備時間は、約2時間しかありませんでしたが、どのチームも想定以上にクオリティが高く、それぞれの創作アイデアが詰まった楽しい発表ばかりで、感動しました。
▼最もテーマにフィットしているアイデアである「テーマ賞」を受賞したチーム
▼スライドを使って発表したチーム
▼謎の寸劇を披露してくれたチーム
7:アイデアソンを終えてみて
今回の発表を通じて、本当にやってよかったなと思いました。すごく未来を感じるアイデアもあれば、働き方の多様性を広げるためのユニークなアイデアもあり、どのチームも充実した楽しい寸劇に仕上がっていました。唯一の心残りは、自分がチームに参加してワークできなかったことです。w
アイデアソンをやった後も、「ええ会社をつくることってどういうことなのかを議論できたと思う」とか「自分自身の働き方とか目標を見直すいいきっかけになった」とか「自分の人生の目的を整理したいからマンダラートのシートがほしいです!」などの反響があって、それぞれの働き方を見つめるいいきっかけになったかなと思います。
今回は比較的所要時間が少ないワークを中心に設計しましたが、もっと時間があればアイデア同士をコラボレーションさせたり、もしかしたらそのままビジネスにできるようなアイデアももっと生まれたのかなとも思ったので、次回につなげたいです。
ちなみに、裏ゴールであった全員分の「マンダラート」の回収は、無事ミッションコンプリートしました。翌日にスキャンし、すべてのデータをコツコツとExcelに移行して、新オフィスデザインの参考にしています。
▼最も得票を集めたアイデアは、「昼寝(仮眠スペース)」と「言いたいことが言える」でした。
また今回、初めてアイデアソンを開催するにあたり、こちらの文献をかなり参考にしました。
『アイデアソン! アイデアを実現する最強の方法』(徳間書店、著者:須藤 順 / 原 亮)
もちろん企業や団体ごとに内容をカスタマイズする必要はありますが、基本的な思考法は同じなので、実践の際にぜひ参考にしてみてください。お勧めです。
以上、長編ブログ、失礼いたしました。ここまでお付き合いくださった方、本当にありがとうございます。オフィスデザインが完成したら、またご報告させていただきます。(たぶん)