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Design Director’s file 04

【プロフィール】
2007:岡山県立大学 ビジュアルデザイン学科卒業
2008:Web制作会社入社
2015:アプリ制作会社入社
2019:リクルートへ転職 現在に至る

デザインマネジメント部が立ち上がったのは2019年。同時期にリクルート住まいカンパニー(当時)に入社し、自らの課題感から社内でないがしろにされていたデザインの価値の底上げを図っていたのが、現在は住まい領域のデザインディレクターを務める髙橋です。

WebデザインやUI/UXデザインを経験してリクルートに転職した髙橋の目に、当時の社内のデザイン組織やプロセスはどう映ったのか。そして、デザインチームを率いて大規模なプロダクト、SUUMOのデザイン管理を引き受ける今、どんな人がこの組織のデザイナーに向いているのか、話してもらいました。

長いスパンでプロダクトに寄り添いたかった

―リクルートに転職する前、Web制作会社とアプリ制作会社の2社経験していますね。どんな業務を担当していたんですか?

Web制作会社はデザイナーの数も少なく、仕事が来ればWebでも紙でも何でもやっていました。社会人として、デザイナーとしての立ち回りを勉強させてもらって感謝しています。

アプリ制作会社に転職したのは、スキルの幅をもっと広げたかったから。アプリが盛り上がっている時期でしたし、Webよりもカスタマーに近く、プロダクトの価値を高めるために試せることも多いと思っていました。
介護施設の職員向けアプリなら、施設に出向いて日々の業務をリサーチし、クライアントとともに課題を抽出して、施策の立案、プロトタイプ、ユーザーテストを重ねるというふうに、使われるシーンに入りこんだ制作ができて、業務の幅も広がりましたね。

―UIデザイナーとして採用されたそうですが、現在で言うデザインディレクター的な立ち回りをしていたんですね。

役職があったわけではないんですけど、良いUIデザインのためにはUXもしっかり考えないとダメでしょと思って。最終的にはデザインチームのリーダーとして、メンバーの業務のQC含め、開発の上流から担当させてもらっていました。
ただ、リリースしてもその後の予算がつかなかったり、中長期的なプランをクライアントから共有してもらうことが難しかったりと、制作会社では長いスパンで寄り添えないケースが多く……。そのさみしさもあったし、もっと知らない世界に飛び込んで、新しい考え方を吸収したいという気持ちもあったので、事業会社への転職を決めました。

“協働する仲間”と思ってもらうことが大前提

―転職先としてリクルートを選んだ理由は?

転職サイトのスカウトメールがきっかけです。リクルートには“20代”のイメージがあって、30代の私が行くところではないと思っていたんですが、人事の方の話を聞いていると、想像以上にデザインチームが未完成で、プロセスも白地だらけだとわかって。それならば、私の介在価値もあるんじゃないか、と。

―実際に入社してみた印象は? 転職した頃(2019年)は、社内でデザインマネジメント部が立ち上がるかどうかのタイミングですよね。

住まいカンパニーの戸建て流通チームに配属されたんですが、当時はプランナーがデザインの判断もしているような状況で、プロダクトの価値を高めるためにデザインを活用しようという意識が組織内でもまだまだ薄かったと思います。
だから、とにかく時間をかけてコミュニケーションを取って、定量的な効果だけを追い求めず、デザインを活用する仕立てを考えましょうと伝えていく必要がありました。デザイナーは“一緒により良いプロダクトをつくっていく仲間”という意識を持ってもらうことが大前提で、はじめは「一緒にブレストさせてください」と食らいつくしかなかった。半年くらい経った頃ですかね。早い段階からデザイナーも入ることでプロダクトの品質を上げられると理解されて、関係性が変わってきたのは。

―デザインマネジメント部は、全社的にデザイン面の環境を底上げするために立ち上がったわけですが、言ってみれば髙橋さんも同時期に、独自にその価値の向上に取り組んでいたんですね。デザインマネジメント部の発足はどう映りましたか。

うれしかったです。住まいは住まいで、私より少し先に入社していたデザインリーダーがデザイナー同士の横のつながりをつくろうと動いてくれていたし、会社としてもデザインを価値あるものだと理解してくれた、そういう時代になったんだって。

私ではなくチームの力がすごい

―現在はSUUMOのどんな業務を担当しているんですか。

主に見ているのは、横断・賃貸・戸建て流通・マンションの4領域のスマホアプリです。SUUMOは賃貸から新築戸建て、マンション、注文住宅、リフォームと、さまざまなシーンで使われる巨大なメディアで、たくさんのチームが集まってひとつのデジタルプロダクトをつくっていますから、私がコミュニケーションを取る場所も一箇所ではありません。
また、これからリリースされるクライアントソリューションのデザイン責任者として、デザイン戦略や戦術の策定から実装まで担当しているので、かなり手広くデザインレビューをしたり、QCD管理をしています。

実は、私を含めた9人のデザイナーで“高橋チーム”として業務を担当していて、チームの力がすごいんですよね。私はあくまでチームをマネジメントする立場で。

―どんなチームなんですか。

方針として、メンタル的なこともすべて相談してほしい、自分の仕事だと思って抱え過ぎず、全員で達成する仕事だと捉えていこうとメンバーには話しています。すると、結束も強くなって、結果的に担当できる領域も増えていきました。
もともと私が入社して半年後くらいに生まれたもので、つらいときや迷ったときに話を聞いてもらえる、私自身の心の支えでした。こんなに大きく、多様性のあるチームになったのは年の功かもしれませんが(笑)、もともと上下関係が好きではないし、横のコミュニケーションのほうがアイデアが湧いたり、「もっとこうしたほうがいい」と意見も出しやすいと思っているんです。考えてみれば、チームマネジメントにおいても、自分なりのやり方を自由に試していけるのはリクルートという会社だからかもしれません。

―チームを率いる中で、どんな人がリクルート、そしてデザインディレクターに向いていると感じますか。

自分の言いたいことを言えない人はここにはいませんから、考えをしっかり持って、発信していける“粘り”が必要だと思います。

例えば、私はSUUMOアプリのデザインルールを設けて、ガイドラインを編纂するプロジェクトを行っているんですが、2年前に着手して、今、ようやく全領域でガイドラインの取り込みが始まってきました。プロダクトの規模も世の中への影響力も大きいから、ABテストを繰り返したり、各領域の調整にとても時間がかかるんです。だから、何事も焦らないで、数年単位で変えていくという目線を持ったほうがいいと思います。

入社当時は、自分の価値を発揮したいと思って焦るじゃないですか。私も初めは長期のスパンでしか物事が回らなくて不安だったけれど、チームもプロダクトも長い目で考えていけるのがインハウスデザイナーの醍醐味だって今は理解できますね。
それに、“自分の仕事はこれだ”と決め込まず、カスタマー、クライアント、事業にメリットがあることなら何でもやるというスタイルの人でなければ、活躍できないと思います。どんな道を通ってもいいから、時間をかけて目標達成のために試行錯誤できないと、自分の声が通らなくて辛い……と成りかねませんから。

―髙橋さん自身は、今度どんな目標が?

今季からは潜在的なデザイン課題にも着手していきたいと思っています。デザインのアップデートはすぐに効果が出るものではないし、アップデート直後はかえって数字が落ちるものなんですが、極端な話、現在のデザインを10年後も使い続けることはできませんよね。ですから、数年単位の課題と捉えて、いろんな人に相談しながら地道に活動することが、私に求められた役割だと感じています。

ようやく、数年単位で目指すべきことに焦点を当てられるようになったんですよね。そうやって個人が成長できる環境がリクルートにはあって、半年に一度、「Wii Can Mustシート」という、自分が実現したいこと(Will)、生かしたい強みや克服したい課題(Can)、能力開発につながるミッション(Must)の項目からなる目標管理シートを作成するんですよね。
私も1年目は何を書いたらいいのかわからなかったんですけど、会社には私たちの強みや課題をきちんと把握し、中長期的な視点でアシストしてくれる仕組みがある。だから、キャリア像が明確にない人でも、与えられた役割をこなしていくうちに選択肢が増えるんです。今はまだ自分の“Will”がなくてもやっていけるよ、ということも強調しておきたいですね。

―ありがとうございました。


★編集後記★
デザインマネジメント部の存在が「“真善美”のためにも必要」と話す髙橋は、デザインディレクターについて「プロダクトのUIがユーザーにとって本当に良い(正しい)ものなのかどうか、ガバナンスを効かせられるポジション」だとも語っていました。ユーザー目線に立った、直感的で使いやすいデザインに価値が置かれる時代に、正しさや美しさという観点も含めて、プロダクトのデザインを統括できるのがデザインディレクターです。興味を持った方は、ぜひ気軽に相談してください。

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