プログラミングの「一緒に学ぶ楽しさ」を提供し続ける株式会社プログミーでは、フルコミットのコアメンバーとなるソフトウェアエンジニアとUI/UXデザイナーを募集します。代表取締役である石橋康大氏に、プログミー開発の経緯や求めるエンジニア像などをインタビューしました。
プログミー創業の経緯
ー まずは、どういったキャリアからスタートしたのか教えてください。
2009年に東京大学工学部都市工学科を卒業し、日本航空にパイロット訓練生として入社しました。すぐにリーマンショックが起こり、パイロットの訓練を続けられなくなったので退職。2012年には、東京大学大学院技術経営戦略学専攻に入りました。
ー 工学部卒にもかかわらず、大学院では経営学を専攻したのはなぜですか?
新卒で入った会社が破綻する経験から、経営というものに興味を持ったからです。大学院時代は、スタンフォード大学のd.schoolをモデルとした「i.school」という学内プログラムで、デザイン思考やプロダクトデザインなどを学び、もの作りにも興味を持つようになりました。企業から派遣された社会人と学生が一緒になって新サービスを発想したり、UXを設計したりしました。
ー 大学院卒業後のキャリアは?
製造業、特にメーカーやR&D系の企業に興味を持ち、株式会社日立製作所に入社しました。自分で思い描いたものを思ったように作れるクリエイティビティを実践したいと思い、ソフトウェアエンジニアとして再スタートしました。5年ほど勤めたのですが、その頃にプログミー開発の原体験となる経験をしたんです。
ー どんな原体験があったのでしょうか。
長男が3歳のときに、早めにプログラミングに親しんでもらおうと思い、Scratchを触らせたんです。長男を膝に乗せて自由にいじらせながら見ていたのですが、後ろから手伝おうとしたら「パパさわらないで!」と言われてしまって。そのときに、「2台のラップトップから同じプロジェクトにアクセスして同時にエディットできたら、より楽しいし便利なのでは」とひらめきました。いわば、「同時編集できるScratch」です。
ー 同時編集というと、Googleドキュメントのようなイメージですよね。
はい。もともと同時編集できるシステムが好きで、アンテナも張っていましたが、そういった「同時編集できるビジュアルプログラミング」はまだ世の中にありませんでした。「ないなら作ろう」ということで、当時周りにいた優秀なエンジニアに声をかけてプロトタイプを作り、教育機関で試してもらっていたのですが、本業の配置転換で拠点が変わってしまったこともあり実現しなかったんです。
ー それが日立製作所から転職したきっかけですか?
というよりは、大企業ならではの、現場や顧客との距離の遠さを感じていました。会議室の中で、話し合いと想像だけで仕様が決まっていくのは、i.schoolで学んだことと全然違うなと。もっと顧客のペインを感じたい、実際のお客さんに近いビジネスディベロップメントを経験したい、という思いが転職のきっかけです。世の中にまだない新しいビジネスやサービスが生まれる瞬間を支援したくて、スタートアップ支援の会社に転職しました。
ー 当時は、まだ自分で起業しようとは思っていなかったのでしょうか?
それが、スタートアップ支援はすごくエキサイティングで、転職してわりとすぐに自分でも起業したくなってしまって。「自分でやるなら早い方がいいな」と思い、5年ぐらいいるつもりが結局7ヶ月で辞めました。事業のテーマを考えるなかで、「前にやりかけていた、同時編集できるビジュアルプログラミングがいいのでは」と掘り返してきたのが、今のプログミーです。
同時編集できるビジュアルプログラミングツール「プログミー」の開発秘話
ー そもそも石橋さんは、「同時編集」のどこに魅力を感じていましたか?
相手のカーソルが動いて文字が勝手に入力されていくのを見ると、別の場所にいてもつながっているんだ、相手もどこかの空の下でがんばっているんだと感じます。その距離を超えた「つながっている感覚」は、孤独になりがちだったこれまでのプログラミングの体験を根本から変えると思うんです。「同時編集できるビジュアルプログラミング」は自分で思いついたものだし、僕がやらないとどこにも存在しないので、だからこそ自分でやると決めました。
ー プログラミング教育において、「同時編集ツールでなければできないこと」というのはありますか?
一人でやるツールだと、グループワークは確実にできないですね。たとえば、小学校などで経験するようなみんなで調べて模造紙にまとめる「調べ学習」って楽しかったと思うんです。グループワークは成果物の質も上がりますし、教え合うことで知識も定着するので、教育効果は高いです。また、やっている本人たちも楽しいというのが最大のメリットです。
ー たしかに、プログミーはお子さん同士で楽しむのがメインの使い方ですよね。
はい、お子さん同士・初学者同士で使ってもらえるといいなと思っています。ただ、最近はオンライン授業で先生と生徒がコラボレーションするケースも多いですね。一人用のプログラミングツールとZoomの組み合わせだと、先生が説明するときや生徒の手元の状況を確認するときに面倒なやりとりが発生するし、どこにバグがあるのかを調べるのも難しいです。プログミーなら、同じプロジェクトをお互い手元で見ることができますし、バグも実際に動かして確かめながら見つけられるので、かなりスムーズです。
ー となると、そもそもなぜ現状のツールには共同編集機能がないのか気になります。
一つは、ポリシーの問題です。あるツールの場合ですと、子どもが危険に晒されるリスクをゼロにすべきだというポリシーに基づいて、共同編集機能は作らないようにしているそうです。共同編集機能をチャット代わりにして悪用する、いわゆるプライベートメッセージング(PM)問題を危惧しているんですね。あとは、そもそも共同編集を可能にするアーキテクチャにしていないという技術的なケースもあります。
ー そういったリスクもある共同編集機能を、プログミーがあえて実装しているのはなぜですか?
子どもたちはすでに、様々なオンラインゲームを楽しんでいます。危険を排除して安全なものだけを提供するより、それなりのリスクに晒されつつインターネットリテラシーを身に付けていく方が健全だと考えています。同時編集は求められている機能でもあるし、そもそも友達と一緒にプログラムを学ぶのは楽しいよね、というのがプログミーの考えです。
ー 続いて技術的な部分にも踏み込んでいきたいのですが、プログミーはScratchをベースとしているんですよね?
はい、mBlockなどの様々なプログラミング教育サービスで活用されているOSSのScratchを利用しています。Scratchをフォークして拡張開発しており、今後もベースとして利用し続けるつもりです。デファクトスタンダードとして広く使われているScratchと同じような使い勝手であれば、新しく始める人にとっても使いやすいですしね。Scratchからシームレスに移行してもらうためにも、意図的に元のUXを損なわないようにしています。
ー 今後どういう風に開発を進めていくのか、描いているロードマップを教えてください。
共同の開発体験をより洗練させることがプログミーの存在意義でもあるので、子ども向け・初学者向けの機能であるリアルタイムコラボをさらにスムーズにしていきます。ただ、初学者向けのものだけだとユーザが卒業してしまうので、今後はユーザの成長に合わせたサービス拡充もしていきたいです。
ー 具体的にはどういった機能の開発を考えていますか?
今は、ビジュアルプログラミングで組み立てたプログラムをプログラミング言語に変換する機能を作っています。それがあれば、ユーザがテキストプログラミングに移行するときの橋渡しになります。基本的には初学者向けのサービスであり続けますが、スキルアップしていく利用者にマッチするサービスも用意していきたいですね。すでに社員研修に活用いただいている実績もあります。
ー どういった研修で使われているのでしょうか?
開発チームのスクラム研修やアジャイル研修などです。従来であればチームメンバーがJavaやPythonといったプログラミング言語の共通認識を持っている必要があり、あらかじめその言語の研修を一段階はさんでいました。プログミーはブロックによるビジュアルプログラミングなので、言語研修をある程度省いて直接アジャイル研修やスクラム研修に入れます。しかもチームで共同編集できるので、開発スタイルの研修にも向いているんです。主に新卒者や非エンジニア出身のマネジメント層への研修で活用されています。
CEOとディスカッションができるフルコミットのコアメンバーを募集
ー 今回募集するコアメンバーには、どんな役割を求めますか?
エンジニア、デザイナーというロールの募集ではありますが、どちらかというとコアメンバーとしてCEOである私の良きディスカッション相手になってくれる方を求めています。具体的にはスタートアップ経験者、特にシードからシリーズAくらいのグロースを経験した方が適任かなと考えています。教育系ドメインの知識がある方だと、なおありがたいですね。
ー 立ち上げ初期のわちゃわちゃ感や、ゼロイチの大変さと楽しさを知っている方ですね。そういう方に対して、プログミーという会社の何を一番プッシュしますか?
世界で今後使われていくプロダクトの初期メンバーとして、エンジニアなら技術の選定やアーキテクチャの検討など、デザイナーならユーザー理解を通したサービスデザインなど、立ち上げ期ならではの重要事項の検討はもちろん、世界のどういう地域・ターゲットに絞るかといった戦略の意思決定にも携われます。プログミーはグローバルtoCのプロダクトとして、デファクトスタンダードを取りにいく意気込みです。今はまだtoBのサービスですが、この採用を機にtoCに舵を切りたいと思っています。
ー toCとなると、どういった課金方式を想定しているのでしょうか?
フリーミアムというキーワードが一番近いですね。あとは、課金したらプログラミング中で使えるアセットが解放されるとか、新しいコスチュームが使えるとか、そういった形を想定しています。
ー 他には、どういったスキルや経験を求めますか?
ユーザ視点で見ることができて、かつデータに基づく判断ができる方ですね。グロース的な視点を持てる人は大歓迎です。子ども向けのtoCをグローバル展開させた人……とまで言うと、針の穴を通すような採用条件になってしまいますが。あとは、学習意欲が高く、新しい要件にもキャッチアップできることも大事ですね。
「思いやりを持って誰かのペインを解決できる人が増える未来」をかなえたい
ー 今回の採用を経て、プログミーという会社を今後どのように展開したいですか?
まずはシリーズAに向けて、PMFの達成が必要になってきます。チャーンレートも抑えたいですが、現時点で重要視したいのはバイラル係数ですね。友達を誘って一緒に遊ぶというプログミーのコアの価値を、意図通りに発揮できているかを追っていきたいです。
ー さらにその先の未来では、「プログミー」というツールはどんな存在になっているでしょうか。
初学者がプログラミングを楽しく学べる、入口のデファクトスタンダードになりたいです。そして入口を押さえたからには、プログラミング学習の様々な局面で使ってもらえるサービスにするつもりです。いずれはテキストプログラミングの学習にも使ってもらいたいですし、チームでの開発において重要となるGitについても、易しい雰囲気で学べるものを考えていきたいですね。
ー ビジュアルからテキストへ、さらにチーム開発を見越した展開も考えていると。他には?
コミュニティ機能を強化していきたいです。プログミー上で作った作品を公開できるのは当然として、販売できるようにするのもいいですね。Web3(ウェブスリー)系の機能も慎重に検討したいです。教材をクリアしたらNFTがもらえるなど、プログミー内のトークンを発行したり、誰が作ったプログラムか分かるようトレーサビリティを付与したり、二次流通・三次流通したコードのオリジナルを作った人には何か恩恵があるようにしたり……他にも、学習履歴をオンチェーンで管理する機能なども考えていきたいです。
ー 今お話しているだけでも、アイデアはたくさん出てきますね。
そうなんですよ。でも、どれも慎重に検討していきたいです。プログミーが掲げる「一緒だと、もっと楽しい、もっと身に付く」というビジョンを実現するためのプロダクトにしていきたいと思っています。いろんなことができてしまうので、ビジョンがブレないよう気を付けつつ、新機能を検討するつもりです。
ー プログミーがますます広がることで、プログラミングに親しめる人が世の中に増えていくと思います。そうすると、世の中はどんな風に変わるでしょうか?
以前、子どもたちを集めて「身近な人の役に立つアプリを作ろう」というテーマのワークショップを開きました。身近な人が困っている様子を観察し、プログラミングでできるソリューションとして面白いアプリを作ってくれたんです。たとえば、まだ生徒たちの名前の読み方をすべて把握できていない先生のために、教室の名簿を出力して、クリックすると名前を読み上げるというアプリもありました。テクノロジーの力で身近な人のペインを解決した、すばらしいクリエイティビティだと思うんです。
みんながプログラミングできるようになった暁には、そういう「世のため人のために何かを作れる人」がたくさん増えます。ソリューションの大小は関係なくて、ただ思いやりの気持ちを持って誰かのペインを解決してあげられる人が増える。それって、すばらしい世界なんじゃないかと思います。