プリンシプルでは社員の知見アップデートのため、月に数回の社内勉強会を開催しています。
毎回講師として社員が登壇し、自分の専門知識を活かしながら、発表内容も自ら企画して行います。
先日は、広告チームの鈴木さんによる「広告 at 生成AIの近未来」というお題で勉強会が開かれました。
本記事ではその最新情報をもとに、2030年に訪れる「エージェンティック・コマース(AI代理型購買)」の時代を、マーケターがどう生き残るべきか、という内容で、レポートにまとめてみました。
目次
1. 忍び寄る「検索」の終焉とAIメンションの台頭
2. 購買行動の革命「エージェンティック・コマース」とは
3. 2030年までの3段階ロードマップ
4. AIが「得意な買い物」と「苦手な買い物」:「完全自動化」は一部商材に限定される
5. 勃発!「標準規格(プロトコル)戦争」
6. 広告コンサルタントに求められる「4つの転換」
まとめ:2030年に向けてマーケターがアップデートすべき「4つの役割」
1. 忍び寄る「検索」の終焉とAIメンションの台頭
マーケティングの現場では、すでに異変が起きています。主要なブランドの検索ボリュームを分析すると、この1年で業界全体の数字が右肩下がりに減少しているケースが目立ちます。一方で、AIによる「メンション(言及)ボリューム」を調査すると、特定のブランドが圧倒的なシェアを占めていることが分かります。
これは、ユーザーの行動が「ググる(検索)」から「AIに相談する」へと移行している証拠です。今後は、検索結果の1位を争うSEO(検索エンジン最適化)以上に、AIの回答エンジン内で自社ブランドがいかに引用・推奨されるかを目指す「GEO(Generative Engine Optimization)」が、ブランドの命運を握ることになります。
2. 購買行動の革命「エージェンティック・コマース」とは
今後数年で主流となる概念が「エージェンティック・コマース」です。これは、AIエージェントがユーザーに代わって商品の比較、意思決定、そして決済までをワンストップで完結させる仕組みを指します。
マッキンゼーの予測によれば、2030年までにこの市場はアメリカだけで1兆ドル規模に達するとされています。特筆すべきは若年層の意識変化です。18歳から34歳のデジタルネイティブ世代の約6割が「AIに買い物を委ねることに肯定的」というデータが出ています。
もはやマーケティングの対象は「人間」だけではありません。「アルゴリズム(機械)」という名の顧客をいかに説得するかが、戦略の中心へと移り変わるのです。
3. 2030年までの3段階ロードマップ
この変化は一足飛びに来るわけではなく、以下の3つのフェーズを経て浸透していくでしょう。
フェーズ1:AIアシスト期(2025年~2026年)
人間がプロセスに介在(Human-in-the-loop)
AIはあくまで「賢いアシスタント」です。
「4人家族で使える軽量なテントを提案して」といった複雑な条件に対し、AIが情報を整理し、購入サイトへのリンクをレコメンドします。
人間は提案された選択肢から自分でクリックして購入します。
フェーズ2:委任期(2027年〜2028年)
人間は監督役に(Human-on-the-loop)
AIへの信頼が深まり、配送変更、返品、保証の確認といった事務的なやり取りをAIに任せ始めます。
特に「いつもの洗剤」といったルーティンで購入する日用品については、AIに購入判断の権限を一部委譲する動きが加速します。
フェーズ3:完全自動化の時代(2029年~)
AIが在庫、価格、配送状況、クーポン適用までをリアルタイムで把握し、最適なタイミングで決済まで実行します。
IoTデバイスと連動し、「冷蔵庫の卵が切れそうだから、一番安くて新鮮なショップで注文しておいたよ」という会話が日常化します。
4. AIが「得意な買い物」と「苦手な買い物」:「完全自動化」は一部商材に限定される
AIによる購買代行(エージェンティック・コマース)が進むといっても、世の中のすべての買い物がAI任せになるわけではありません。AI化が真っ先に進む領域と、引き続き人間が主役であり続ける領域。この「二極化」を理解することが、これからの戦略を立てる上での大前提となります。
購買領域マトリックス
① AI化が先行する「スペック重視」の商材
スペックの数値化が可能で「絶対比較」ができる商材です。AIによる購買代行の主戦場になると予想されています。
- 対象: 家電、日用品、ガジェット類、消耗品、業務用パーツなど。
- 決定打: スペック、価格、配送スピード、互換性といった「数値化・言語化」ができる要素。
- 未来: これらは「いかにAIに発見させ、比較検討の土台に乗せるか」というデータ戦略が勝敗を分けます。ユーザーは「一番安くて早く届くものを選んでおいて」とAIに丸投げするようになるでしょう。
② 人間が主導権を握り続ける「情緒重視」の商材
一方で、数値だけでは測れない「感性」や「文脈」が重要な領域は、AI化が緩やか、あるいは人間が意思決定の主導権を持ち続けます。
- 対象: ファッション、ジュエリー、インテリア、ギフト、体験型サービスなど。
- 決定打: 個人のこだわり、自己表現、ブランドが持つストーリー、贈る相手への想いといった「感情」や「文脈」。
- 未来: コンサルタントは「いかに感性を刺激し、納得を生むか」という本質に集中すべきです。
5. 勃発!「標準規格(プロトコル)戦争」
この巨大な市場を支配するため、プラットフォーマーによる「標準規格(プロトコル)」争いが勃発しています。現在、以下の3つの陣営が注目されています。
- ACP (OpenAI × Stripe): 会話型決済プロトコル。ChatGPTとの対話中に、画面を遷移せず検索から決済までを完了できる「チャット完結型」を目指します。
- UCP (Google × Shopify): 発見型コマース。Google Merchant Centerの膨大な商品データを活用し、Geminiがリッチな商品棚を提示します。
- MCP (Anthropic × Shopify): データ連携基盤。AIが企業の在庫データや社内ツールを繋ぐ「USB端子」のような汎用規格としての役割を狙います。
情報の構造化が最重要課題:広告主の情報をAIが正しく解釈し、各プロトコル上で選ばれるようにする「フィード最適化」や「データクレンジング」の価値がこれまで以上に高まります。媒体の枠を売るだけでなく、AIに選ばれるためのデータ戦略の設計者となることが求められます。
6. 広告コンサルタントに求められる「4つの転換」
世界が変わる中、私たちマーケターも自身の役割を再定義しなければなりません。これからのコンサルタントに求められるのは、単なる広告枠の運用ではなく、「AIとの共生・交渉」の設計です。
① マシン・リーダブルな情報の整備
これまでは人間が読むためのFAQや商品紹介を作ってきました。これからは、AIが情報を正しく解釈できる「構造化データ(JSON-LD等)」やリアルタイムAPIの整備が最優先事項となります。
② クリエイティブの概念変更
「キャッチコピーで感情を揺さぶる」手法は、情緒的商材(ファッション等)には残りますが、機能的商材(家電・日用品等)では通用しなくなります。
AIが引用しやすい「一次情報(客観的なスペック、配送条件、比較データ)」を揃えること自体が、新しい時代のクリエイティブとなります。「枠に乗せる広告」から「AIの回答に組み込まれる情報」を考えることが重要になってきます。
③ 新KPI:クリック後ではなく「会話→購入」のファネル
CTR(クリック率)やCPC(クリック単価)といったクリックベースの指標は、ゼロクリック検索の増加により形骸化します。今後は以下の指標が重要視されるでしょう。
- SoM(Share of Model):AI推奨シェア(モデル内シェア)。特定のカテゴリーでAIが自社を推奨する頻度。
- 会話率:広告や推奨に対し、ユーザーがさらに深掘りの質問を行った割合。インプレッションよりも深い興味を示すエンゲージメント指標。
- インテントマッチスコア:「ユーザーの意図」と「広告内容」の合致度。
- ゼロクリックインプレッションバリュー:クリックされなくても、AI回答内でブランド露出されたことによる価値指数。
④ SEOからGEO、そしてACOへ
検索エンジン最適化(SEO)の次は、AI回答最適化(GEO)。そして最終的には、AIエージェントによる決済までを最適化する「ACO(Agentic Commerce Optimization)」へと、サービスの提供範囲を拡張する必要があります。
最適化の推移
まとめ:2030年に向けてマーケターがアップデートすべき「4つの役割」
ここまで、AIが購買行動を劇的に変える未来についてお話ししてきました。では、私たち広告コンサルタントやマーケターは、具体的にどの領域に注力すべきなのでしょうか。2030年に向けて、私たちがアップデートすべき「4つの役割」を整理します。
①データ基盤の再構築:マシンリーダブル(機械が読みやすい)な構造化データの整備をクライアントに提案するスキルが、何よりも重要になります。これまでの「人間向けのコピーライティング」から、「AI向けのデータ設計」へのシフトです。
②GEO/ACOへの移行:SEO(検索順位)だけでなく、AIの推奨度を測るGEOやACOをKPIに据える必要があります。クリック数や短期的な刈り取りではなく、ビジネス全体の成長を成果として証明する高度な視点が求められます。
③運用モデルの転換:枠を買い付けて広告を出すという従来のモデルから、APIやフィード、接客情報の高度化へとサービスを拡張しなければなりません。
④増分評価への転換:ラストクリック評価を捨て、ビジネス全体の成長で成果を証明する必要があります。
2030年、私たちは「運用のプロ」から、AIとの「共創・交渉」を支えるコンサルタントへと進化しなければなりません。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
プリンシプルでは一緒に働いてくれる仲間を募集しています!
カジュアル面談も歓迎です!ご興味のある方はお気軽にご連絡ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
採用情報はこちら → プリンシプル採用サイト
求人情報はこちら → 株式会社プリンシプル の全ての求人一覧
Xアカウントはこちら → 株式会社プリンシプル|採用担当 (@principle_job) on X
Instagramアカウントはこちら → https://www.instagram.com/principle_c/
/assets/images/118539/original/8ff97515-f938-4ec3-8976-91114107cdea.png?1429449384)