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代表の松下がオプティマインドのエンジニアの実態を明らかにする連載です。六回目は最適化アルゴリズムエンジニアの伊豆原さんが登場です。オプティマインドでの業務内容やプライベートのお話をしました。
(写真は「Mizzy」というオプティマインドが開発している最適化モジュールの頭文字のMです)
連載はこちら
#2 量子コンピュータの研究者がオプティマインドで目指す世界
#5 Watercooler chat with a Front End Engineer
#7 GPSデータを使うデータサイエンティストはどんなことしてるの?
普段の業務
松下:はじめに、普段の業務内容を詳しく教えていただけますか。
伊豆原:配送計画問題の最適化アルゴリズムの開発を担当しています。ユーザーが利用する車種や配達すべき荷物を考慮しながら、配送を最も効率良く行える計画を計算するモジュールの開発をしています。
松下:有難うございます。最適化では何をパラメーターとしているのですか。
伊豆原:基本的には配送に必要な車両数と走行時間の2つです。車両数が最も少ないことがベースの判断基準です。ただ、他にも出発地点に戻る回数など、様々な目的関数が存在します。どの目的関数に対して”最適”なプランを立てるのかによって結果が変わるのが難しいところですね。
松下:そのあたりのバランスは難しいですよね。パラメーターチューニングにおいて、今後やってみたいなと考えていることはありますか。
伊豆原:可視化が重要だと考えています。あくまで理想ですが、全てのパラメーターチューニングの結果をお客様に見ていただいて、ニーズにあったものを選んでいただけるといいですよね。
松下:元々組み合わせ最適化のようなことに携わりたいと考えていたんですか。加えて、これまでの伊豆原さんの経歴についてもお聞きしたいです。
伊豆原:いえ、大学では修士課程まで進んで代数幾何を専攻していて、研究者になるつもりでした。博士課程に進むか就職するか悩んだ末、研究者の道は諦め、新卒でCADオペレーターとして板金・塗装の会社に就職しました。主に板金展開や材取りの設計を担当していて、そのあとIT企業に転職しました。
松下:そうなんですね、前職のIT企業ではどんなことをしていたんですか。
伊豆原:評価チームとして、アプリケーションの性能やアルゴリズムの測定を行っていました。チームの中では数理的な知識を持っている人が少なく、自分が学んできたことが現場で重宝されるのだと知りました。
松下:そのあと弊社に入社されたんですよね。転職のきっかけは何だったのでしょうか。
伊豆原:自分の知識を自社プロダクトに生かしてみたいと感じたことですね。前職で他社様のプロダクトに関わる中で、携われる部分が大きい環境で開発がしたいと考えるようになりました。
松下:実際に入社してみて、難しいなと感じることはありましたか。
伊豆原:Loogiaが提供する機能の間で発生しうるコンフリクトをどう回避するか、ですね。ケースバイケースで分岐を増やしていくとコード量が膨大になり、新しい機能の追加やバグの発見が難しくなります。色んな機能を共通の枠組みで捉えて実装することでシンプルな構成を保っていきたいのですが、どうしても思わぬ相関関係が隠れていますので、なかなか理想通りに組み上げるのは難しいです。
松下:なるほど。別視点になりますが、現場から何か要望があったときには、最適化チームではどんなふうに取り組まれているんですか。
伊豆原:要望に沿うような論文を探して実装してみたり、詰まったときにはとりあえず動かしてみて計算結果や過程をよく観察したりします。メンバーそれぞれが担当した業務に取り組み、毎日定例会で欠かさず共有を行っています。雰囲気がとても良いので意見を交わしやすいですね。
松下:良さそうな環境ですね。
プライベートはどんなことをしていますか
松下:幼少期から数学が好きだったんですか。
伊豆原:そうですね。兄がいるので、兄が使っていた教科書を借りて読んだこともありました。新しい知識を仕入れて、それを使って問題を解くのがすごく楽しかった覚えがあります。
松下:すごいですね。(笑)数学の中でも面白いなと感じたテーマはありましたか。
伊豆原:高校時代の群論ですね。シンプルな定義からいろんな応用が生まれてくるのが面白いなと思いながら学んでいました。環上の加群の話も、ベクトル空間では隠れていた構造が表れたりしててすごく興味深かったです。
松下:環上の加群、初めて聞きました。伊豆原さんにとって憧れの数学者や目標としている人はいるんですか。
伊豆原:はい。Jacob Lurieという導来代数幾何を開拓した数学者です。その強靭な生産力に憧れます。
松下:ほぉ〜、全く私は知らない人でした。笑 ですが、高い目標いいですね!オプティマインドのアルゴリズムチームとしてはどんな風にコミットしていきたいですか。
伊豆原:いろんな分野の方と交流をしていきたいですね。異なる分野の融合からビジネスが発展すると考えているので、多角的な視点がミックスされたアイデアを生んでいきたいです。これまでの時代でいうと20世紀は数学と物理の交流だったと思うのですが、21世紀は数学とコンピュータ科学の交流から新たな価値が生まれていきそうなんですよね。知人談ですが。
松下:そんなことを話される知人がいらっしゃるんですか。交友関係が興味深いですね。(笑)伊豆原さんのプライベートもすごく気になります。何か趣味はありますか。
伊豆原:4コマ漫画が好きですね。冒険系より日常系を好んで読みます。最近面白かったのは葛飾北斎の娘、葛飾応為の生き様を描いた"北斎のむすめ。"ですね。
松下:4コマ漫画、珍しいですね。なぜ普通の漫画ではなく、4コマなんですか。
伊豆原:コマ割り漫画だと、作者がフレームを決められますよね。4コマ漫画だと映画みたいに、ずっと同じフレームの中で話が展開していきます。そうした制約、ルールに基づいたものの方がなじみやすいです。だから例えば音楽だとバッハが好きですね。
松下:ということは、社会構造としてもしっかりと最適に管理された、システマティックな状態が理想的だと考えておられますか。
伊豆原:私はそうしたディストピアにはわりと賛成派です。前提として、人間はどれだけ管理をされたとしてもはみ出してしまうものだと思うんです。例えばどんな規制があったとしても、漫画や音楽など、人間は必ず自分の好きなものを求めると思います。だからそうした自由な部分は任せて、管理できる部分は管理すれば良いと考えています。Loogiaにおいてもどこまでユーザーさんの行動を管理するかの調節が難しいんですが、極論としては、たばこ休憩だったり、荷物の配達先でコミュニケーションをとる時間もうまく組み込むと面白いかもしれませんね。(笑)
松下:すごく伊豆原色の濃い回答ですね。キャラが伝わるインタビューでした。
伊豆原:しっかり準備してきたので、そう言ってもらえてよかったです。(笑)
松下:準備流石です。(笑)今後もよろしくお願いします!