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月商5万円から始まった学生起業の紆余曲折ストーリー〜「組合せ最適化」をビジネスに活かすまで

こんにちは、オプティマインドで代表を務めます松下です。

今回、創業期から今に至るまでの経緯をお話させていただきます。

ワクワクするデカいことを自分の手でやりたい

岐阜高校を卒業後、名古屋大学情報文化学部の自然情報学科に進学しました。大学1年生の時に「数理情報学1」という講義があり、そこで柳浦先生(現弊社技術顧問)が「組合せ最適化の研究をしてます」と言いながら紹介をはじめました。

木のパズルを見せながら、「最も箱の高さが低くなるように積めるには?」と問いかけたり、「一枚の鉄板にどう自動車部品を配置すると、切り出すときの鉄板の無駄が最小になるか」などを話していました。それまで受験勉強しかしてこなかった私は「現実社会に活かせる学問があるんだ、スゲー!」とひたすら感動し、胸の高鳴りを覚えました。その瞬間から「組合せ最適化の研究室に行く!」と決め、4年生の頃に柳浦研究室に配属されました。


自分の下した判断が正しいと言える努力をし続けること

研究会で先輩の発表を聞くと、「現実問題の〜〜に適応できる最適化研究」という題目の後に、「本研究では〇〇と仮定する」という部分が通常でした。しかし、現実社会に活かせる学問を求めてきた私にはどうしても違和感が大きく、「これって実際に社会の現場で使えるのか?」と疑問が膨らんできました。

どうしても確かめなくては居ても経ってもいられなくなり、学生の立場を利用して複数の会社の社長に訪問し、「御社の事業を聞かせてください。その中で最適化で出来る部分があれば解決します。」と、今考えると何とも生意気な社長訪問を行いました。当時、学部4年生で技術も知識も無かったため、当時博士課程の学生だった呉さんという方を誘い、一緒にヒアリングに回りました。


(左)呉さん (右)松下


結果はもちろん散々で、門前払いの会社もあれば、「学問で解決できるほどビジネスは甘くない」「人の頭で考えたほうが断然良い」など厳しい声を頂くこともありました。

ある物流会社の社長に「俺の頭のほうが最適だ」と言われましたが、その際にもう1つ、今でも大切にしている言葉を頂きました。「自分の下した判断が正しいと言える努力をし続けること」。その社長の言葉には2つの意味が込められていたと思います。1つ目が「最適化の素晴らしさを信じているなら徹底的に諦めずにやりきれ」、そして2つ目が、「やるなら覚悟決めてこい。学生しながら中途半端にできるほど社会は甘くない」ということです。悔しかった私は「よし、まずは法人化して、対等に取引してもらえるようになろう。」と思い、合同会社を設立しました。


理論的な最適化のみではなく、現場の人々の気持ちを大切にしたい

”最適化”のoptimizationと”心”のmindを合わせてoptimind。呉さんと一緒に考えましたが、そこには「最適化技術による理論的な最適化のみではなく、現場の人々の気持ちを大切にしたい」という思いを込めています。この思いは今も変わりません。

ということで、特に”起業”を意識したわけではなく、「最適化を社会に活かし、対等に取引するには法人化が必要」ということで、合同会社を立てたのがoptimindの始まりです。


                 オプティマインド創業時のロゴ

売上0の最適化コンサルティング

さて、法人化してからは業種を問わず、製造業から物流、農業など様々な会社を訪問し最適化の提案をして回りました。しかし、実績もなければ学生が行う最適化コンサルティングにお願いする会社があるはずもなく、売上は0のままでした。「最適化...使えないんじゃないか」どこか自分の中でそんな思いが芽生え始め、自分自身が最適化に失望してしまいました。

がむしゃらに迷走して消えていった様々なサービス

とはいえ、何かしよう!と呉さんと意気込み、色々なサービスを考えました。その中で”Re:act”というサービスを作りました。今で言う”sli.do”と同様のサービスで、「授業中や講演会で分からない時にスマホでボタンを押すと、スピーカーのPCに分からない人の人数が出たり、質問を匿名で送ったり出来る」というものです。幸運にも周りの反応がよく、名古屋大学の講義で実証導入していただいたりしました。


Re:actの発表風景

更にはキャンパスベンチャーグランプリという学生アイデアコンテストの中部ブロックで準優勝し、全国大会まで進むことができました。今まで見たことのない世界、会えるとは想像すらしないすごい方々との出会いに大興奮したのを覚えています。


キャンパスベンチャーグランプリ表彰式(前列最右がCOO斉東、右から3番目が代表松下)

COO斉東との出会い

その時、3位として表彰式で私の横に座っていた斉東が、今のオプティマインドの副社長兼COOです。彼は「行ったことのない場所をドローンの映像を通して観光できる」というサービスを作っていました。彼のweb開発力に驚き、一緒にやろう!と誘いました。

それから3人で進めましたが、Re:actで得られた収益は5万円のみ。それでも会社の口座に5万円が振り込まれた時、自分たちのサービスで売上が上がったことが凄く嬉しかったです。

しかしながら、Re:actの事業はそれ以降も売上は立たず、ニーズも無いように感じたため、その後はピボットを重ねました。今でいうUber eatsの名古屋大学周辺版の”.eat(ドットイート)”サービス、運転中にスマホを見なかったらポイントが貯まる”D-safty”、学生が授業中にスマホを触らなかった時間にポイントが溜まってビールなどが飲める”Rabbit”などなど。構想を練っては、「これは世界を変えるぞ!」と興奮し、大学内でインタビューをしたりしていました。サービス構想・実装を繰り返していくものの、どれも正式にリリースすることもなく消えていきました。

この頃、名大の教授からの紹介でトロント大学からインターンとしてオプティマインドで一緒に開発してくれていたのが、今の弊社のデータサイエンティストの松原です。


当時インターンシップとして参加していた松原


1000万円の受託開発での苦しみ、高田の参画

そんな中、あるシステム会社から「某メーカー企業のシステム開発案件がある。3ヶ月300万円でやらないか」との依頼を頂きました。実際は相当過酷な受託開発であり、大学にはとても行けないくらいの仕事量でした。元旦にはインフルエンザと寝不足が重なって倒れ、救急車で運ばれたのはいい思い出です。

結果、受託開発は一年ほど取り組むこととなり、開発費も1,000万円を超えました。大金を手にして嬉しかった反面、「大変な仕事で、自分がずっと追い求めたい事業ではない」と感じ、切り上げることになりました。

自分がやりたいことは何か、強みは何か、自分自身を見つめ直している時に「やっぱり最適化で世界を変えられるでっかいことをしたい」という思いが再燃しました。

本当にラッキーだったと思います。そのタイミングで現在CTOを務めている高田が、システム会社をやめて博士になるために大学に戻ってくるという話を聞きました。彼は柳浦研究室の先輩で、本当に頭が良く、配送計画の研究成果も優れていました。高田に学会で再開するやいなや、やりたいことを伝えて手伝ってもらうこととなりました。

一方で、呉さんは教員の道を選ぶことになり、別れがきました。彼へは本当に感謝しかありません。


覚悟を決めた初めての資金調達

斉東、高田、私の三人が揃い、「さぁ,最適化の事業を再スタートだ!」と意気込んだ頃、世間では「宅配クライシス」や「物流の破綻」が取りだたされるようになりました。最適化、特に配送計画が強い高田と、物流の最適化を求められている世の中、その間のギャップを繋ぎ合わせ解決するのが我々の存在ではないか!と思った私は「配送現場におけるルート最適化」に特化することに決めました。

それから半年後、博士課程の学生である郭(現在弊社VPofEngineer)が参画に至りました。また、当時大学院での友人であった坂が、偶然にも地図関連の研究をしており、誘ってすぐに参画することになりました。「ルート最適化事業」を進めるにはかなり特殊なスキルを持った人材(システム全体、最適化アルゴリズム、データ解析、地図)が見事に全員揃ったのは本当に奇跡と言えます。人のご縁に感謝です。


(左から)松下、斉東、高田、郭


それから、日本郵便とサムライインキュベートによるアクセレレーションプログラムで最優秀賞、その後、2018年6月の資金調達に至ります。それまで学生ベンチャーとして進めてきた私達にとって、資金調達をして従業員を採用し加速すること、外部投資家が参画し、本格的に人生を賭けることを意味しており、覚悟の上で実行しました。故に、この時が自分の気持ちとしては、ある意味本当の”起業”、”経営”の始まりでした。


今後はモノからヒト、さらに街の最適化に

連連と創業から最初の資金調達に至るまでを記載しましたが、最後に今後について記載したいと思います。私はもともと「組合せ最適化」に惚れ、実社会に活かすことを目指して合同会社オプティマインドを立ち上げました。”自分の下した判断が正しいと言える努力をし続けること”は常に心にあります。まだまだオプティマインドの本来の事業はスタートしたばかり、これから”本当に実社会での課題解決ができたのか”が数字として、現場の声として、判明してくる段階だと感じています。

「世界のラストワンマイルを最適化する」のミッションのもとに、我々は業種や会社の枠組みを超えた社会全体、そして世界を目指しさらなる躍進をしていきます。今、課題である人手不足や残業代の増加、ベテラン依存を”配送ルートの最適化”によって解決していきます。まだまだ市場に対してやれていることは0.0001%くらいです。愚直に顧客の声に耳を傾け、現場百遍、謙虚に開発と導入を進めていきます。

さらに、物を配送する事業者様のみならず、ラストワンマイルを移動するモビリティの一つである”人”の輸送にも展開していきます。MaaSの浸透が進む中、「乗車リクエストが多数ある中で、どの順に、どの顧客を乗車し、どう回って送迎するか」が非常に重要になってきます。弊社はアルゴリズムの開発スピード、そしてデータ解析力を強みに、人を運ぶモビリティにおいても弊社のコア技術の展開を進めています。

最終的に私達が目指す世界は、持続可能な事業を実現するために、人々の生活における移動と配送を”街”全体として最適化していくことです。最適化は効率化ではありません。安全性や走行のしやすさ、顧客の状況、道路状況を事業者間を超えてシェアすることによる、街の最適化を目指します。

ルート最適化は可能性が無限に広がっています。表には見えずとも、アルゴリズムのインフラ企業として人々の生活を支え、人々の世界を広げる。世界の人々が気づかぬうちに私達のアルゴリズムの力で、生活を豊かにする。それが私達の目指す世界です。

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