金融、戦略コンサルティング、そしてWeb3━━━
制度、ビジネス、テクノロジーの核心を渡り歩いてきた渡邉亮が、2025年7月、NOT A HOTEL DAOのCEOに就任した。 異なる領域を経験してなお、彼が選んだのは、「暮らし」のあり方そのものを問い直す挑戦だった。
NOT A HOTELのDAOが掲げるのは、「すべての人にNOT A HOTELを」というミッション。常識にとらわれない「暮らし」の再定義と、その体験のアップデートに取り組んでいる。
なぜ彼はこの道を選んだのか。そして、DAOという仕組みを通じて、どんな未来をつくろうとしているのか。渡邉の思考と行動の背景にある軸を探りながら、これからの展望を尋ねた。
より覚悟が決まった、
CEO就任の打診
━━━まずは、このNOT A HOTEL DAOのCEO就任のオファーを受けた時の、率直な感想から聞かせてください。
渡邉:正直に言うと「嬉しい」という気持ちと「もう来たか」という気持ちが混ざり合った心境でした。この事業を成長させることに覚悟を持って入社したので、ゆくゆくはという思いはありました。ただ、まだそこまで任せられるほどの信頼は得ていないとも思っていましたし、「もう任せてくれるんだ」と驚きましたね。
━━━濵渦さん(NOT A HOTEL代表)からの打診だったのでしょうか。
渡邉:そうですね。DAOの新サービス「THE DOOR(ザ ドア)」のリリースイベントの少し前に、博士(社内では博士と呼ばれている上級執行役員 CTO 大久保 貴之)から「来週、濵渦さんと1on1してね」と連絡が急にあったんです。その時は「なんだろう」と、少し身構えていましたが、実際には「CEOを任せたい」という打診をいただきました。正直驚きましたね。
━━━自身では「まだ信頼を得られていない」と感じていたとのことですが、それでもCEO就任という打診を受けた背景には、どのような期待があったと感じますか。
渡邉:入社してからは、NOT A HOTEL DAOのいわば「経営企画」のようなロールで事業を前進させている感覚はありました。ただ、COO(最高執行責任者)のようなロールはできても、DAOのビジネスを伸ばしていくアイデアの部分や、スポークスパーソンになるという面では、自分でもまだ足りない部分があると思っていましたし、不安に思われているだろうな、と勝手に思っていて。だからこそ、濵渦さんや博士が、期待を込めて最終的にそう思ってくれたんだ、と嬉しく思いました。
打診をいただいた時は、自分が想定していたよりも早くバトンが渡ってきたと感じましたが、もともとその覚悟は持っていましたし、周囲のみなさんの支えも実感していたので、改めてこの事業を先頭に立って引っ張っていくという決意を新たにしました。
渡邉 亮:東京大学法学部および英国ウォーリック大学大学院(MBA)卒。日本銀行にて経済調査やIT中期計画策定に従事したのち、アクセンチュアにて金融・通信業界を中心に戦略コンサルティングを経験。大手通信会社におけるweb3新規事業推進を経て、2025年1月よりNOT A HOTEL参画。
超自律を求めて辿り着いた
Web3とNOT A HOTEL
━━━渡邉さんのキャリアは、金融(日本銀行)、戦略コンサルティング(アクセンチュア)、そしてWeb3と非常にユニークですよね。なぜNOT A HOTELに、そしてWeb3の世界に飛び込んだのでしょうか。
渡邉:日銀では約9年半にわたり、調査・分析を通じてファクトに向き合う力を鍛え、多様なステークホルダーと調整を図りながら物事を進めるバランス感覚を培うことができました。社会の根幹を支える公共的なミッションに携わるなかで、視野の広がる経験を重ねることができたと思います。 その後のアクセンチュアでは、プロジェクトを起点に、より多様な領域での実践的な知見を積むことができました。特に、大手通信会社のWeb3プロジェクトに関わったことが、NOT A HOTELとの出会いにつながります。
実は以前から、「人や組織の自由度が高まり、自律性が尊重される環境では、より大きなパフォーマンスが発揮される」という信念を持っていました。そうした想いは、官と民、中央集権と分散型といった異なる環境を経験するなかで、徐々に確信へと変わっていった気がします。
NOT A HOTELをより深く知るきっかけになったのは、濵渦さんと投資家のアンリさんの対談noteでした。この記事を読んだのをきっかけに、さまざまなnoteを読み漁り、ビジネスモデルの秀逸さに心奪われ、「ここは自分の価値観と地続きにある」と強く惹かれていって。ただ当時は、スタートアップで働くことに対して少し迷いもあり、まずは情報収集を続けるに留まりました。
━━━そのあと、何か転機が?
渡邉:大きかったのは、アクセンチュアを退職して、一時期ですが個人事業主として働き始めたことです。
上司も部下もいないフラットな環境で、自分の強みをどう活かすか、自分自身で意思決定しながら動くことの重要性を実感しました。ある意味で“自律”を身体で覚えるような感覚でしたね。 そんな時に出会ったのが、「超自律的な組織」を掲げるNOT A HOTEL DAOの求人でした。
━━━またすごいタイミングですね。
渡邉:まさに。これまで大切にしてきた価値観や自分が培ってきた経験と重なり、「このロールは自分に合う」と直感したのを覚えています。キャリアのなかで自信を失いかけた時期もありましたが、個人事業主の経験が再び自分自身を信じる力を取り戻すきっかけにもなりました。
また、NOT A HOTELがWeb3を「目的」ではなく「手段」として、きちんと現実の体験に落とし込んでいる点にも強く共感しましたね。実現したい世界観があり、そのストーリーを伝える延長線上に、テクノロジーが自然に選ばれ、馴染んでいる。このあり方が、私が大切にしてきた「自由と自己決定がパフォーマンスを最大化する」という思想と、非常に親和性があったんです。
そんな自分自身の価値観とNOT A HOTELの事業のあり方。その両方がフィットしたのが、転職を決めた要因ですね。
DAOと歩んだ半年、
NOT A HOTEL Web3事業の今
━━━入社して約半年ですが、特に印象的だった出来事はありますか。
渡邉:特にポジティブに感じたのは、一度方針が固まると、部署の垣根を越えて多くの人が自然と自律的に動き出すことです。
たとえば、先日リリースされた「THE DOOR」では、明確なキックオフがあったというよりも、「じゃあやってみようか」という空気がふっと流れた瞬間から、建築チーム、クリエイティブチーム、スマートホームチームなどが即座に連携し、ものすごいスピードでプロジェクトが進んでいきました。
建築チームはすぐにドアの素材をリサーチしはじめていて、スマートホームチームは「どうやってディスプレイと連動させるか?」を模索しはじめていました。クリエイティブチームは気づいたら家電量販店にいて、ディスプレイの現物を選んでいたんですよ(笑)。
誰かが指示を出したというより、「こうなったら面白いよね」という共通認識が自然と共有されて、みんなが自律的に動いていく。そうした瞬発力や連携のなめらかさに、この組織のカルチャーの本質を感じました。これはまさに、DAO的な文化の真骨頂だなと。
私はSlack上でその進捗をただただ見守っていただけでした(笑)。もちろん、DAOのサービス設計の責任は最後自分が取る、という思いは持ちつつ、ですが。
DAOの新サービス「THE DOOR(ザ ドア)」の開発に関わったメンバー(一部)
━━━NOT A HOTELのバリューの一つである「超自律」が体現されているエピソードですね。Web3事業について、外から見た印象と入社してからのギャップはありましたか。
渡邉:入社前の面接で「Web3はまだまだこれから」と聞いてはいたのですが、外から見ると「とはいえ、ある程度はかたちになっているのでは…」と想像していた部分もあって。でも実際にジョインしてみると、本当にゼロから整えていくフェーズにあるんだなと実感しました。
たとえば、宿泊レンディングサービス(NOT A HOTEL COINの保有者が、自らが保有する宿泊権をDAOが一時的に預かり、必要とする他者に提供・貸与する仕組み)に関しても、月によって枠に余裕が出るなど、まだ需要と供給のバランスに課題がある状態です。もちろん、サービスとしての理想は明確に描かれていて、それをどうやって実現に近づけていくかという段階。だからこそ、伸びしろも大きいと感じています。
渡邉:また、ユニークな取り組みである「THE DOOR」のような企画も、アイデアや世界観には大きな可能性がある一方で、現時点ではマネタイズとのバランスを見極めながら進めていく必要がある。やればやるほど面白くなるけれど、その面白さをどう持続可能なかたちにしていくか。そこが今後の大きなチャレンジだと思っています。
将来的にDAOがさらに成熟し、単体で資金調達の一手段になれれば、NOT A HOTEL全体としても資金の流れが多様化していくはず。さらに、DAOホルダーがインテリアやアートの選定など、体験の設計に参加していく未来が訪れたら、まさに“共創”によるNOT A HOTELが実現できる。
その可能性に今、すごくワクワクしています。
DAOが拓く、
NOT A HOTELの進化
━━━最後に、これからNOT A HOTEL DAOとして描いている構想について聞かせください。
渡邉:まずは、NOT A HOTELのコア体験である「宿泊体験の素晴らしさ」を、より多くの方に届けることが目先のテーマです。具体的には、レンディングサービスの価値をさらに磨き上げると同時に、宿泊権を取引できるウォレットやマーケットプレイスの構築を進めています。
加えて、オンライン・オフライン両面で人と人をつなぐコミュニティ機能の拡張にも力を入れて取り組んでいきたいと考えています。 そして、次のステップとして見据えているのが、「みんなで保有・利用する」だけでなく、「みんなでつくる」体験の実現です。
━━━NOT A HOTELを、ですか?
渡邉:そうです。先ほども少し触れましたが、たとえば、土地だけ先に決めて、その場所にどんな建物を建てるか、どんなコンセプトにするかを暗号資産である「NOT A HOTEL COIN」のホルダーが一部選べるようなプロジェクトです。そのプロセスに地域も巻き込むことで、単に建物を建てるだけでなく、その土地の価値そのものを高めていくことにつながると信じています。
さらにその先には、Web3の特性を活かしてグローバルに展開していく構想もあります。将来的には、NOT A HOTEL COINを介して世界中の人たちがつながり、たとえばコロンビアの人とドイツの人が宿泊権を取引している──そんな世界が当たり前になる未来を目指しています。
━━━NOT A HOTELが越境して取引される世界はワクワクしますね。他方、チームや組織についてはいかがでしょうか。
渡邉:実は今、フルタイムは私ともう1名という体制です。それでも、社内のさまざまなチームに日々関与してもらいながら、なんとかプロジェクトを前に進めることができています。
IEO(Initial Exchange Offering)の基盤を築いてくれたのもリーガルのなべさん(渡辺 徹志)やコミュニティマネージャーのもんちゃん(岡本 伊津美)を始め、本当に多くの方の知恵とサポートがあってこそ。感謝してもしきれませんし、支えてくださるみなさんと一緒に共創している、という感覚が強いです。
渡邉:今後は、単純にメンバーを増やすだけではなく、DAOらしい“関わり代”のある体制を模索していきたいんですね。たとえば、イベントをサポートしてくれた方にNOT A HOTEL COINで感謝を還元するような仕組みなど、DAOらしい多様なかたちでの参画をデザインしていけたらと考えています。
何よりも、自律的に動いてくれる仲間が増えていくことがDAOにとってもっとも大切な考え方。将来的にNOT A HOTEL COINのホルダーが数万人規模になれば、NOT A HOTELの関係人口も大きく広がります。
“みんなでつくる”文化が社内外に根付き、その体制が日本全国に広がると、「日本の価値を上げる」というNOT A HOTELのミッションにも必ずつながるはず。これこそが、DAOの目指す姿です。
採用情報
「NOT A HOTEL DAOについて、もっと詳しく話を聞いてみたい」「自分がどう関われるか、相談してみたい」。そんな方に向けて、カジュアルな面談の機会をご用意しています。ご興味のある方は、ぜひ以下のリンクから日程をご確認のうえ、お申し込みください。なお。たくさんのご希望をいただいた場合、すべての方にご対応できない可能性があることを、あらかじめご了承ください。
https://herp.careers/v1/notahotelinc/kq65spK881Rc