ナンバーナインでは、これから会社としてのnote発信を改めて増やしていく方針を固めました。今週から再開した弊社の役員noteもその一貫です。
もう一度、漫画のど真ん中へ。ナンバーナインのリスタートと創業社長の想い
経験ゼロで起業したエンタメベンチャーの副社長が10年考え続けている事業計画の立て方
会社のニュースだけではなく、私たちが何を考え、どんな取り組みをして、どこで失敗し、どう改善したのか。そういったことをもう少し外に開いていきたいと思っています。
しかしながら、「企業が情報発信を積極的に行う」という行為は、いまは少し取りづらくなってきているような気がします。それは、エンタメや出版の仕事をしていると、企業とクリエイター、作家さんと編集者の間で起きた問題が、SNS上で大きな議論になる場面を目にする機会が増えているからです。
契約、権利、ガバナンス、ハラスメント、コミュニケーション。問題をそれぞれ読み解いていくと、どれも簡単な話ではありません。同じ業界にいる身として、ついつい「あぁ、これはこうなんじゃないか」と決めつけてしまいそうになることもありますが、SNSで見えているものがすべてとは限りませんし、当事者間にはそれぞれの事情があるはず。だから、僕自身は個別の事象を外から言及したり、限られた情報だけでどちらかを批判したりしないよう気をつけるようにしています。
とはいっても、「SNSで発信する」ということはやはりリスクが高い。
何かを言えば、誤解されるかもしれない。批判されるかもしれない。それなら、何も言わずにいたほうが安全ではないか。
その気持ちはよく分かります。それでも、ナンバーナインは引き続き情報発信を続けていこうと考えています。
今回のnoteを通して、ナンバーナインが発信を続ける理由や意義に触れていただくことで、企業の採用や広報・PRに関わる方々でSNS発信するかどうか悩む方の背中をちょっとでも押せたら嬉しいです。
変化を続ける会社の「いま」を残す
ナンバーナインのようなベンチャー企業は、数カ月単位で大小さまざまな新しい取り組みを始めます。事業が変われば、組織も変わる。制度も、働いている人も、仕事の進め方も変わっていきます。10年間で、体感5回くらいは脱皮している感覚があります。
半年前の記事が間違いというわけではありませんが、その記事だけを読んだ人が思い浮かべる会社と、実際の会社が、少しずつズレていく可能性はゼロではありません。1年も経てば、外から見ると同じ会社でも、中にいる僕たちにとっては別の会社のように感じることすらあります。
だから、最新の情報を伝え続ける必要があります。
これは、都合の良いニュースを増やすという話ではありません。何を始めたのか。なぜ始めたのか。うまくいっていることは何か。まだうまくいっていないことは何か。公開できる範囲で、会社の現在地を残していくということです。
では、伝え続けることで何が起こるのでしょうか。
未来の会うべき人と、会う前に会話を始める
会社の考えや仕事の進め方を発信しておくと、社外のパートナーとの会話が変わります。
はじめて会ったはずなのに、「あの記事を読みました」と言ってもらえることがあります。ナンバーナインでは2022年ごろに一度、経営陣が毎月2本noteを公開するというルールで情報発信を強化していた時期がありました。
これが効果絶大で、こちらが会社の説明をゼロから始める前に、相手はすでに僕たちの考えを知ってくれているという状況が数多くありました。いまでも「note読んでました」と声をかけてくださる方がいるくらいです。もちろん記事を読んだだけですべてが伝わるわけではありませんが、最初から少し深い話に入れるのはメリットが大きいです。
これは、漫画家さんや取引先との協業だけではなく、採用でも同じです。
会社の情報が少なければ、面接はお互いの自己紹介から始まります。一方で、仕事の実例や判断の背景、会社の言葉が積み上がっていれば、「どこに共感してくれましたか」から始められる。
採用のやり取りが速くなるだけではありません。入社してから「思っていた会社と違った」となる可能性も減らせると思います。
発信は、たくさんの人に知ってもらうためだけにやるものではない。ましてや、バズらせたり注目を集めるためにやるものでもありません。未来の会うべき人と、会う前から会話を始めておくためのものでもあります。
発信のリスクとの向き合い方
とはいっても、冒頭でも申し上げたとおり情報発信と炎上は切っても切り離せない関係にあります。では、この炎上リスクとどう向き合うべきでしょうか。
ナンバーナインには、企業アカウントを含むSNS利用のガイドラインがあります。
・法令や第三者の権利を守ること。
・機密情報を出さないこと。
・出どころの曖昧な情報を発信しないこと。
・誰かを不用意に傷つける発言をしないこと。
・炎上している話題に個人の判断で反応しないこと。
こうしたことが記されており、社長であってもこのガイドラインに抵触することは許されません。
トラブルが起きたときも、その場の勢いでSNSに反応するのではなく、まず事実関係を整理し、上長、法務、広報などの関係者と対応を決める。会社として発信するなら、個人の感情だけで動かないための仕組みが必要です。このバランスが伴わない発信は、リスクを増大させる可能性が高まるため危険です。
僕が大切だと思っているのは、他者を下げて自分を上げるような発信をしないことです。自社に非があるなら、まず向き合うべきはSNS上の不特定多数ではなく、迷惑をかけた当事者です。必要な謝罪と対応をしたうえで、社会に対して説明すべきことがあれば説明する。
発信する以上、リスクをゼロにはできません。どれだけ確認しても、言葉が意図とは違う形で受け取られることはあります。
ゼロにはできない。だから、仕組みで減らす努力と万が一に備えた危機管理広報は怠ってはいけません。
発信の積み重ねが信頼につながる。
企業が情報発信をすることで怖いのは、炎上することではありません。
炎上よりも怖いのは、事実(一次情報)を確認せずに決めつけること、都合の良い部分だけを切り取ること、誰かを傷つけてまで自分を大きく見せようとすることではないでしょうか。意外とやってしまうこともありますが、そんな時はちゃんと間違いを認めたうえで訂正すればよいと思います。
発信を止めれば、炎上する可能性は下がるかもしれません。一方で、自分たちが何を考え、何をしているのかは伝わらなくなります。過去の情報だけが残り、会社や活動の現在地と、外から見える姿のズレも大きくなります。
僕たちは、秘密主義になりたいわけではありません。
自分たちの考えや取り組みを、責任を持って外に開いていく。検索すれば、いまの姿が分かる。過去の記事も含めて読めば、何を大切にしてきたのかが分かる。間違えたときには、訂正した記録も残っている。
この積み重ねが、企業に対する信頼につながっていくと思っています。
漫画・エンタメの発展のためにも発信する
漫画業界は、この10年で相当な量の情報がオープンになってきました。
漫画家さんが自身の働き方や収益、創作活動について発信する。編集者や出版社、電子書籍ストア、サービス事業者が、それぞれの立場から仕事の仕組みや課題を伝える。以前なら業界の中にいる人しか知り得なかったことも、いまは検索すればある程度見つけられるようになってきています。
こうした変化は、誰かがリスクを引き受けて発信してくれた結果です。SNSでの情報発信がなければ、漫画業界はここまで成長していないのではないか、とすら思います。ナンバーナインもここまでこれていたか怪しいです。
自分の名前や会社名を出し、経験や失敗、問題意識を言葉にしてくれた業界関係者の皆さんがいる。当然、まだまだ改善の余地もありますし、開いたからと言って過去のトラブルや問題がゼロになることもありません。しかしながら、その発信をきっかけに議論が始まり、仕事の進め方や契約、クリエイターとの向き合い方が改善されてきた例は、決して少なくないと思っています。
僕の個人的な考えですが、衰退する産業は内に閉じ、発展する産業は外に開かれていると思っています。
外に開くということは、情報を何でも公開することでも、良い側面だけを公開することでもありません。自分たちの経験や考えを、責任を持って共有することです。誰かが得た知識を次の人が使い、そこからまた新しい挑戦が生まれる。その循環が止まれば、業界が学び、変わっていく速度も遅くなります。
「微力を尽くす、それ以外ないと」
かつて少年マガジン(講談社)で連載していた『DAYS』という安田剛士さんの高校サッカー漫画があります。主人公が所属する聖蹟高校サッカー部の中澤勝利監督が、インターハイの絶対王者・梁山高校戦で「微力を尽くす、それ以外ないと」という言葉を残しています。
自分の力が小さくても今自分にできる精一杯を重ねる重要性を伝える名言として作中28巻に登場するのですが、この言葉にとても勇気づけられたのをいまでも覚えています。
ナンバーナインの発信だけで、漫画業界が大きく変わるとは思っていません。それでも、僕たちが経験してきたことや、いま考えていることを外に開くことで、その循環に微力ながら寄与することはできるはずです。
だから僕たちは、リスクから目を背けず、リスクを仕組みで減らしながら、これからも情報発信を続けていきます。最近採用も再開しましたので、少しでも興味をお持ちいただけたらお気軽にご連絡ください。