秋田県・東成瀬村で生まれた日本酒「鳴神(NARUKAMI)」。
実はこれを手がけたのは、なるテック(東成瀬テックソリューションズ株式会社)です。クラウドファンディング(Makuake)では、期間中に目標100万円に対して315万円(達成率315%)・支援者136名という結果に。
単なる「お酒づくり」ではなく、地域の価値を事業にする挑戦として、多くの共感が集まりました。
今回は、鳴神プロジェクト担当者にインタビュー。
「なぜIT会社が日本酒を?」「どうやって形にしたの?」「315%達成の裏側は?」そして「次のフェーズで、どんな仲間が必要なのか」まで——プロジェクトのストーリーを聞きました。
「鳴神」とはどんなお酒ですか?
担当者:
鳴神は、特別な人へ、感謝やお祝いの気持ちを届けるための日本酒です。いわば「祝福の証」。贈り物として渡すことそのものの体験も含めて、記憶に残る一杯を目指しました。
入学・卒業、入社、昇進、引退、結婚、出産、マイホーム購入……人生の節目って、言葉にしきれない重みがありますよね。鳴神は、その重みごと、相手に届けられる存在でありたいと思っています。
——贈り物としての体験、素敵ですね。
担当者:
はい。鳴神は飲んで終わりではなく、飲み交わしながら語り合う時間、そして飲み終えた後も思い出を振り返れるような体験を大事にしています。
——商品としての概要も教えてください。
担当者:
鳴神は贈答・祝杯に特化した純米大吟醸です。容量は720ml、精米歩合40%、アルコール度数16%。味の特徴は「酸麗甘口」としています。
詳しくは以下URLよりなるテックのHPをご覧ください。
https://www.narutech.co.jp/news/854/
贈答・祝杯に特化させた理由
——あえて「贈答・祝杯」に絞った理由は?
担当者:
東成瀬村には、これまで培ってきた歴史や伝統があります。その背景がこもった一杯は、お祝いや贈答のシーンにこそふさわしいと思ったんです。
それに、秋田県内には味わいや技術に特化した素晴らしいお酒がすでにたくさんあります。美味しいお酒が当たり前にある場所だからこそ、私たちは「特別な機会にふるまえる」設計に振り切りました。
そもそも、なぜなるテックが日本酒を?
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担当者:
背景にあったのは、東成瀬村が抱える課題のひとつである「地域を代表する特産品が少ない」という状況です。そこで、村で生産される「あきたこまち(酒米ではなく飯米)」を活用して、日本酒という形で“村の新しい魅力”をつくるプロジェクトを立ち上げました。
なるテックは、テクノロジーで社会課題の解決に挑む会社です。経営理念としても、社会課題をテクノロジーで解決し、東成瀬村から変化を広げていくことを掲げています。
鳴神は、その思想を「地域の特産品」というど真ん中で形にした挑戦でした。
——東成瀬村はどんな場所ですか?
担当者:
村として公教育や子育て支援に力を入れていて、豪雪地帯でもあり、自然資源が豊かです。なるテックは、そうした地域の皆さんと一緒に、持続可能な地域づくりに向けた事業を進めています。
このプロジェクトをやろうと思ったきっかけは
担当者:
私たちは移住者メンバーも多く、地域になじむことに小さな難しさを感じる場面もありました。そんなとき、壁をとっぱらってくれたのがお酒だったんです。
お酒の席で空気がやわらぎ、思いを通わせられる。そういう経験を重ねるなかで、「私たちも、地域と人をつなぐお酒をつくりたい」と思いました。
なぜ日本酒で、なぜあきたこまちだったのか?
担当者:
お米の加工品はいくつか検討しました。その中で、高単価な商品化が実現できるのが日本酒でした。さらに日本酒を起点に、将来的には甘酒やスパークリングなど他の展開も考えられます。
——なぜ「酒米」ではなく「飯米(あきたこまち)」?
担当者:
東成瀬村のあきたこまちは非常に品質が高い一方で、生産者数の減少や販売価格の低迷といった課題があります。飯米でお酒をつくる挑戦を通じて、将来的には村の農家さんから継続的にお米を仕入れられるような“出口”をつくりたいと思っています。
どうやって形にした?
——酒造りは専門外ですよね。どう進めたんですか?
担当者:
なるテック単独ではなく、創業100年以上の老舗酒造・浅舞酒造さんと連携して共同開発しました。
プロジェクトとしては、主体はなるテック、販売元はむらテックホールディングスという体制です。
進め方は、なるテックが普段から大切にしている「仕事の型」に落とし込みました。
- 課題整理(誰の、どんな課題か)
- コンセプト設計(価値の定義)
- 役割分担(強みで分ける)
- スケジュール/品質設計(劣化防止や温湿度なども含む)
- リリース準備(広報導線・体験設計)
——意思決定で難しかった点は?
担当者:
「まず作ってみる」から始めたので、醸造後の瓶詰め・販売工程が最初は固まり切っていませんでした。関係者とコンセプトから合意をつくり、役割を決めていったのが大きかったです。
また、酒販免許まわりが難航し、複数の作業を同時並行で進める必要があったのも難易度が高かったですね。
クラウドファンディングで315%達成。要因を3つ挙げるなら?
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担当者:
要因は大きく3つです。
- ターゲットの明確化
日本酒好き全般ではなく、記念日・贈答など“理由のある消費”をする人に絞った。 - 価値の再定義
味や原料の良さだけでなく、限定性、地域ストーリー、開封体験まで含めた“特別な時間そのもの”として設計した。 - 伝達設計
言葉・写真・リターン内容を一体で設計し、伝わり方を作り込んだ。
実績としても、2025年9月30日〜11月27日の掲載期間で、目標100万円に対して315万円(達成率315%)、支援者136名、一部プランは売り切れという結果でした。
——反応が良かった「言葉」や「見せ方」は?
担当者:
商品の説明そのものより、開発までのストーリーへの反応が大きかったです。
スペックは信頼の裏付けとして重要ですが、「なぜIT会社が日本酒の開発に取り組むのか」という部分に共感が集まったと感じています。
つくって終わりじゃない。「届け切る」までがプロジェクト
——最後に、届ける段階で大変だったことは?
担当者:
一番大変だったのは、期待を裏切らない形で、体験として最後まで届け切ることでした。
鳴神は、贈答や記念日など特別な瞬間に使われる前提の商品です。だからこそ、味やストーリーだけでなく、梱包、同梱物、配送時の状態まで含めて体験価値を設計する必要がありました。
高単価・限定本数という性質上、一本の配送トラブルが信頼を大きく損ねてしまいますから。
——「やってよかった」と感じた瞬間は?
担当者:
支援者や購入者から感想をいただけた瞬間です。年末年始の帰省で大切な人にプレゼントした、という話も聞けて、体験として価値を届けられたと実感しました。
今後の展望を教えてください
担当者:
鳴神は単発の取り組みではなく、地域の価値を継続的に育てていくことを目指しています。
今後は、ECでの一般販売、海外ショッピングモールへの輸出、高級飲食店・ホテル等への卸、ふるさと納税への出品などを予定しています。
そして目指すのは、「鳴神」というブランド価値を高めると同時に、鳴神を通じて企業や個人の想い・課題に寄り添う提案力を磨いていくこと。鳴神を日本酒にとどめず、さまざまな価値創出へ展開できるブランドへ進化させたいと思っています。
次のフェーズで必要な力、そして「一緒に働きたい人」
——次のフェーズで必要になる力は?
担当者:
必要なのは、「仮説を持って前に進みながら、現場で修正できる力」です。
データや顧客の反応をもとに仮説を立てて実行し、ズレがあればすぐ修正する。完璧な計画を待つのではなく、走りながら学ぶ姿勢が重要になります。
——どんな人がチームにいると強いですか?
担当者:
役割に閉じず、「これは自分の仕事か?」を超えて考えられる人です。
指示待ちではなく、違和感を言語化し、改善案を出せる人がいると、品質が大きく引き上げられます。スキルや経験も大切ですが、それ以上にOwnership(当事者意識)を持てるかどうかが大切だと感じます。
なるテックは、Purposeに「人生をかがやかせる」を掲げ、東成瀬村に根ざした事業や地域活動を通じて、顧客満足度と地域幸福度の両立を目指しています。
鳴神は、その思想をプロダクトという形に落とし込み、事業として伸ばしていく挑戦です。
同じ志で、「地域の価値を事業にする」ことを本気でやりたい方と、ぜひ一緒に走りたいと思っています。