今回は、コンタクトセンターのオペレーターからキャリアをスタートし、現在はコンタクトセンターに特化したコンサルタントとして起業されている大松祐子さんにインタビューしました。
コンタクトセンター現場のリアルを知り尽くす大松さんだからこそ語れる「ツール導入の罠」や、次世代リーダーに向けたキャリア構築のヒントについて、本音で語っていただきました。
<プロフィール>
株式会社COCOコンサルティング 代表取締役 大松 祐子(おおまつ ゆうこ)さん コンタクトセンター業界にて十数年以上のキャリアを築き、オペレーター、品質管理者、PMなどを歴任。その後、コンタクトセンターのDX化やCX向上を推進するため起業。現在は、企業のコンタクトセンターに対するアセスメント(健康診断)やコンサルティングを中心にCX向上、業務改善、研修講師など幅広く活躍中。
決められたルールに違和感。「本当に満足するもの」を追求した原体験
── 大松さんのコンタクトセンターにおけるキャリアの原点について教えてください。
あるPCメーカーのコールセンター立ち上げ後、品質管理を任された時の出来事が大きな転機になりました。 当時の品質基準は「敬語が正しく使えていたか」「名乗ったか」など、「言ったか・言わないか」という決まりばかりでした。
そのため、お客様対応が上手で感謝されているオペレーターの点数が悪くなるという矛盾が起きており、明らかに実際の満足度とは乖離していました。 そこで、「お客様が何に満足するのか」を分析し、それを評価基準に組み込むように根本からルールを変えました。
結果的に、品質が向上しただけでなく、そのメーカーは2年ほどでお客様満足度ナンバーワンを獲得しました。それが他社との差別化要因の一つとなり売上が向上。結果としてオペレーターの給与還元にも繋がりました。「自分のやれることは色々とあるし、結果が数字で見えるコンタクトセンターって面白いな」と感じたのが最初の原体験です。
会社と現場のギャップ。迷った時は「お客様とオペレーター」を主語にする
── センター長として拠点を管理される中で、会社が求める数値目標と、本来のお客様満足度にギャップを感じることはありませんでしたか?
社内でどうしようもないことや、板挟みになることはたくさんあります。ただ、そういう時に必ず主語にするのは「お客様」と「実際に働くオペレーター」です。
お客様が困っている、オペレーターが困っているということは絶対的な事実です。ギャップが生じた時は間違いなくこの2つを優先し、「根本から変えてしまう」という改善のパワーにしていました。諦めたらそこで終わりなので、そこを絶対だと信じてブレずに取り組んでいましたね。
── その後、起業されていますが、どのような経緯があったのでしょうか?
一番のきっかけは、世の中でDX化が進んだことです。 お客様のITリテラシーが上がる中では、「いかに上手く回すか」よりも、「そもそも電話をしなくても自己解決できる仕組みを作ること」の方が、最終的な満足度が高くなります。
「運営ばかりやっていてもダメだ、もっと前後の導線もしっかり設計しなければ」と感じた時、当時の会社ではその新しい挑戦ができそうにありませんでした。「自分のやりたいことをやるには、新しく出るしかない」と、特別な顧客がいたわけでもないのに飛び出してみました。変化を楽しむ性分なんだと思います。
ツール導入の罠。「なぜ必要なのか」を自社で検討し尽くすことがDXの第一歩
── コンサルタントの視点から見て、企業が陥りがちなテクノロジーやツール導入の「失敗点」はどこにあると感じますか?
「ツール導入自体が目的になってしまっていること」ですね。 なぜこのツールが必要なのか、導入前に本来は社内でしっかり議論しなければいけません。しかし、自社での深い課題分析を行わないまま、「まずはベンダーに相談して解決策を提示してもらおう」と外部へ依存してしまうケースが非常に多いのが実情です。
ベンダーからの提案をただ待つのではなく、自社が目指すゴールを明確にした上で、「パートナーとして共に最適な仕組みを創り上げる」という主体的な姿勢で臨むことが不可欠です。
── 逆に、ツール導入が上手くいく企業にはどんな特徴がありますか?
常に定点観測をしていて、自社の弱点が客観的に見えている企業です。 例えば定期的に「お客様はどうやって申し込むのか」「HPは分かりやすいか」など、カスタマージャーニー全体を通してお客様体験を総点検しています。
ペインポイント(顧客の悩みの種)がどこにあるのかを理解していれば、やるべきことは自然と決まります。導入前後の比較や、目標に届かなかった時の改善アクション(PDCA)を回す文化が根付いていますね。
キャリアは「待つ」ものではない。自ら設計し、上司を巻き込む
── 最後に、日々現場で実務を頑張っている20代・30代の次世代リーダーへ向けてメッセージをお願いします。
今はAIの登場により、これまで「人では無理だ」と思われていたことができるようになってきています。ぜひAIを活用して、新しいことに挑戦してほしいです。
そしてキャリアについてですが、キャリアは「待っているもの」ではありません。 自分が次にどういうキャリアを目指したいのか、自分でしっかり設計して、上司に相談してほしいです。私自身、会社員時代は決められた面談を待つのではなく自ら上司に時間をいただき、「自分が目指すポジションに到達するには、今何に注力すべきか」を能動的にすり合わせていました。ただ評価を待つのではなく、自身のキャリアビジョンと会社が求める期待値をしっかりと握り合い、自らの手で道を切り拓くよう意識していました。
もし少しでも「自身の可能性を広げたい」という思いがあるのなら、自分の出来ているところ・出来ていないところを含めて、自ら上司と対話する時間を持つことが、キャリアを切り拓く第一歩になるはずです。