CEOインタビュー：LITALICOの新たなSaaS事業で描く未来。事業開発フェーズで、これからの業界インフラを築く醍醐味とは。

株式会社LITALICO　代表取締役社長　山口文洋
2006年に株式会社リクルート入社後、2011年受験サプリ（現スタディサプリ）を立ち上げ。2015年株式会社リクルートマーケティングパートナーズ代表取締役社長を経て、2018年株式会社リクルート執行役員（プロダクト統括本部教育・学習担当）に就任。2022年4月、株式会社LITALICOに副社長執行役員として入社。同年6月、代表取締役副社長に就任。その後、2023年4月に代表取締役社長に就任。

自社で培ったノウハウを、業界内でも活用できる新たなサービスに

LITALICOは創業19年目を迎え、「障害のない社会をつくる」というビジョンの下、約4,500名のグループ社員が集う会社です。2009年から長年、児童福祉、就労分野、教育を中心とした事業を展開してきました。その後2015年頃からは、同じ福祉業界の施設や事業所の方々のための新たなサービス展開を開始しました。
つまり、自分たちの直営で運営する事業所を継続しながら、これまで培ってきた支援や施設経営に関するナレッジやノウハウを他事業所にもご提供し、お役立ていただきたいということになります。
全国の施設の運営状況がよりよくなることで、その先にいる何万人もの利用者の皆様が受けられるサービスの質も高まっていく。こうした業界全体の他事業所の皆様との連携により、僕たちだけでビジョンを実現する以上に力が発揮できると考えました。

信頼できる情報を提供し、サービスや支援の質向上につなげる

LITALICOのプラットフォーム事業では、当事者とご家族、その方々を支援する事業所、そしてその事業所の中で働く従事者という三者に対して、情報インフラや業務システムなどを含めたサービスを複数展開しています。具体的には、福祉事業者と従事者、そして当事者やご家族との間には一定の情報ギャップがあるといわれていますが、その非対称性を埋めるために、僕たちは医療機関や専門家と連携して信用性のある情報を提供しています。

例えば「LITALICO発達ナビ」https://h-navi.jp/　というメディアでは、発達に困りのあるお子様を持った保護者の方々の様々なご不安に対して、LITALICOが社内外の叡智を集めて信頼性の高い情報を提供する情報ポータルを運営しています。実際に「お子様を支援してくれる事業所を探したい」という、次のニーズが生まれたときにも事業所リサーチもできるような機能もあります。これにより福祉事業所にとっては、利用者の方を募集するマーケティングインフラにもなっているといえます。

同じように「LITALICO仕事ナビ」https://snabi.jp/　では、障害ある当事者の方が仕事をしたいという時にどんな選択肢があるのか、自分が住んでいるエリアにどんな福祉事業所や求人があって、どうアプローチすれば良いのかを情報発信しています。事業所にとっては情報発信・利用者募集のプラットフォームとして機能しています。また、福祉業界で働きたいという方に特化した求人サイト「LITALICOキャリア」https://litalico-c.jp/　もやっていて、事業所とのマッチングを生み出しています。

業務効率化、そして事業成長を支援する経営パートナーへ

福祉事業はロングテール市場であり人数が小規模の事業所もたくさんあります。ITシステムの専任担当者がいる施設は少なく、日々の色々な記録や請求などといった業務はアナログでやっているところが多く、それによって事務負担が高くなり、大切な支援に充てられる時間が削られるのが課題です。

LITALICOでは、自分たちでもITで業務を効率化して、生産性を高められる仕組みを直営の事業所の中で作っていたんですね。そこで、事業者様向けに特化した業務支援SaaSを複数のプロダクトで展開し、最近では障害福祉を飛び越えて介護の事業者様にも提供を始めたんです。僕たちは事業所様の経営パートナーにもなりたいと考えているので、売上を立てるうえで重要なマーケティング活動や求人の支援をポータルを通しておこないながら、社内で構築してきた人材育成や研修のメソッドを提供するサービスもあります。

さらには事業資金周りのコンサルティングをおこなう金融サービスも用意しています。施設の皆様が本質的な業務に時間をしっかりと割くことができるよう、それ以外の仕事はなるべくデジタル化して効率化していく。そういう支援ができる経営パートナーになれるようチャレンジしています。

福祉業界のこれからのインフラをつくる仕事

僕たちが今後5年、10年でまず取り組むのは、福祉業界全体で真に必要とされるプラットフォームづくりです。ただその道のりは、まだ1～2合目あたり。ここから5合目、10合目に向けてぐっと伸ばし、公共機関とも密に連携しながら社会インフラになる仕掛けづくりに一緒に挑戦してほしいと思っています。言い換えると、事業・サービス・プロダクトが発展する余地がまだまだあって、新たに入社される方々にとっても成長、進化できる打席、つまり挑戦のための機会がたくさんある職場だといえます。

今、日本は人口減で縮小均衡になっていて、色々な産業やドメインが成熟し、成長する余白がなかなか感じられない職場が多いかもしれません。しかし福祉領域はまだまだ新たなテクノロジーやインフラを生み出していける余地があります。その中で働くということは、自分の仕事がリアルに社会を変えていて、障害のない社会づくりに貢献していると実感できる、本当に稀有なマーケットじゃないかなと思います。

5年、10年先も楽しめる仕事を

LITALICOは来期20年目を迎えますが、LITALICOのプラットフォーム事業はまだ7、8年目。未上場のスタートアップ企業みたいなものだと言えます。ビジネスモデルも業務プロセスもそれぞれの職種における働き方の正解などもまだ見出せておらず、社長の僕にとってはすべてが事業開発のフェーズだと感じています。

これまで培ってきた事業所運営やDX推進のノウハウを、自分たちの中だけに留めるのではなくどうやって業界全体に横展開させていくか、ということを考えているので、お客様が会社の中にも外にもいることで最適なユーザーエクスペリエンスや機能、体験が作りこめる環境になっているのではないでしょうか。ただのプロダクトづくりではなく、「本当に使われるプロダクト」を作りたい人にとっては理想的な場がLITALICOにはあると思います。

僕たちは「直接支援×プラットフォーム」「人×テクノロジー」「エッセンシャルワーク×エンジニア」という、普通は別々に考えるものを組み合わせて成り立っている会社です。それが成り立っているからこそ、そこに集まる職種の幅広さ、仕事の奥行き、面白さが、一部しか携わることができない会社よりも多いのではないかと思いますね。入社した後も複数のプロダクトや職種にチャレンジできたり、キャリアチェンジも可能です。入社して3年で終わる会社じゃなくて、5年、10年楽しめちゃう幅の広さと奥行きがあるんじゃないかな。

先輩社員たちも非常に多様で、福祉にだけ興味があるというより社会課題を解決したい、という人たちが集まりお互いを認め合って事業を作っているので、他では作れないイノベーティブなプロダクトとか世界が作れると思います。自ら成功パターンを作っていけるような機会がたくさんあるユニークな会社だと思ってもらえると、より楽しみ甲斐があるんじゃないかなと思いますね。