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イベントレポート:理学療法士が登壇するPOST向けイベント。教室での授業づくり・先輩からのフィードバックを参加者がリアルに体験!


本記事は、LITALICOジュニアの指導員職に興味のあるセラピスト(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)の方々が中心にお集まりいただき、オンライン開催したワークショップイベントをもとに作成しています。

このイベントレポートでわかること:

  • LITALICOジュニアの大切にしている方針やビジョン
  • お子さまのどんな部分に着目して授業づくりをするのか?
  • 指導員が考えた授業に対し、先輩社員からどのようなフィードバックが受けられるのか?


当日は、理学療法士の資格をもち、関東圏で教室長やアシスタントマネージャーを務める後藤が講師として登壇。お子さまのモデル事例をもとに、授業で指導員がどんなプランを立てたらいいかをチームで考えていただきました。講師の後藤からは、LITALICOジュニアで指導員の研修・トレーニングを擬似的に体験いただくため、皆さまへ簡単なフィードバックも返させていただいています。

通所されているお子さまや保護者さまの授業内容まではなかなかイベントや動画でもお見せできないことも多いのですが、このレポートをお読みいただくことで、LITALICOジュニアの実際の授業や指導の様子がご理解いただければ幸いです。
※記載されている内容は、2023年11月当時の情報です

LITALICOジュニアが授業で大切にしていること

(後藤)LITALICOジュニアでアシスタントマネージャーを務めています、理学療法士の後藤です。よろしくお願いいたします。

まず、皆さんに授業計画を考えていただく前に、LITALICOジュニアの大切にしている方針についてお伝えします。
私たちは、お子さまや保護者さまへサービスを提供するにあたって全部で6つのアプローチを大切にしています。LITALICOジュニア事業部に配属された指導員は、最初の約半年間の研修期間の間、その考え方をしっかり身につけられるよう、ロールプレイングや現場での実践を通してさまざまなトレーニングをおこなっていきます。今回は、そのうちの3つのポイントにフォーカスして授業づくりについてお話をしていきます。

①「最適なプランニング」
お子さま個人と、それを取り巻く環境(学校、保護者さまなど)の状況をしっかりとアセスメントで見極めます。情報は表面的なものだけではなく、真に「困り」となっている部分や求められていることを突き詰めて考え、その先で実現可能な手立てとしてどんな授業が必要かを考えます。
②「心に火をつける」
指導員から一方的に授業を行うのではなく、お子さまが主体的に行動を起こすことを大切にし、その子が今どんなことに興味関心があるのかに着目し、さらに夢中になれることが増えるような学びの場を提供します。
「自信につなげる」
画一的な授業目標を立てるのではなく、一人ひとりのお子さまにとって個別最適な目標を立てることを重視しています。特性に合った多様な学び方を提示し、お子さまが「できた!」と自分自身でも成長を実感できることも大切にしています。




お子さまの「包括的なアセスメント」がポイント

(後藤)アセスメントとは、お子さまの様子をしっかりと観察し「情報収集」「分析」することです。事前のアンケートや体験授業の様子などから情報を集め、最終的には短期・長期の目標をつくっていくのですが、どこに困りがあるのかを見つけることが大切になってきます。アセスメントにおいては、直接保護者さまへヒアリングすることもあれば、行動を観察すること、お子さまに課題をやってみてもらい、その成果から確認すること、乳幼児健康診査・発達検査など、さまざまな観点があります。

LITALICOジュニアでは、年齢ごとのおおよその発達段階の基準に沿って、今のお子さまがどういう状態かをチェックしていきますが、LITALICOの研究所スタッフや作業療法士も作成に携わった、感覚・運動に関してチェックするための専用リストなども用意されています。

【ワークショップ】お子さまも先生も「楽しい」と思える支援を考えてみよう

(後藤)僕から、実在しないとあるお子さまのモデルケースをひとつあげてみます。このお子さまのために、皆さんも一緒に授業の内容を考えてみましょう。先ほどご紹介した、LITALICOジュニアが大切にしているアプローチ方法も念頭に置きながら、皆さんで支援を考えてみてください。グループごとに2分で発表をお願いします。

架空のモデルケース「Aさん」の事例と個別支援計画の内容は以下の通りです。


アセスメントの結果、お子さまは言葉でなかなか相手に思いや要求を伝えることができず、自宅でも一人遊びができずお母さんがつきっきりのことも多く大変なようです。

指導員が立てた6か月後の個別支援計画の目標としては、カードの選択肢から欲しいものを選んで渡す・伝えることができる、いやな物事や終わりにしたいことがあることを相手に伝えることができる、等を具体的なゴールとして設定している状況です。

このアセスメント結果をどう分析するか、のひとつの観点の例をお伝えすると、例えば感覚の特性、というものを考えてみます。感覚が鈍感な子だと、何度も繰り返してもっと強い刺激をもとめます。高いところに上るのが好きだったり、椅子をがたがたさせるなど。逆に敏感な子は、ちょっとした刺激に過度になる、怖がったり、疲れやすい、不安になりやすいなどの傾向があります。遊びを考える時の参考にしてみてください。

お子さまの今の状態を見極め、保護者さまの悩みにも着目してみよう

(後藤)さて、皆さんいかがでしょうか。それでは2つのグループに分かれて代表者の方から考えた支援について発表をお願いします。

(グループ①:発表者の方)
Aちゃんは、自分の感覚的な欲求を満たす様子が見受けられ、かつその行動は人目をひいたり大人の注目をひくことが目的なのかも?と推測しました。また、「カードのやりとり」という支援計画にも着目し、遊びを2つ考えました。
1つ目は、ジャングルジム、シーツブランコなど、一人遊びの中でものぼる、ゆれる、などの感覚を満たす遊びを中心にカード化し、選んでくれたほうで支援者と遊びます。
2つ目は、くるくるとボールが落ちていくおもちゃが好きということでしたので、ボールの絵カードをつくり、これを渡したらボールのおもちゃがもらえる、逆にそれがないとボールが貰えない、というやりとりも取り入れることを考えました。

(後藤)発表ありがとうございました。Aちゃんが何を要求しているのかを相手に伝える練習を好きなことと絡めてやってもらうという遊びですね。とても良いと思います。好きなことをやりたい、という欲求だけではなく、困ってることを他者に伝える場面もつくれていますね。

僕からのフィードバックとしては、子どもって突発的に要求がでてくることが多いですよね。要求しようとしているから、カードの用意のために指導員が戸惑っている間に「もういいや」とどこかいっちゃうこともあります。やりたい!と思ったときにカードをすぐ出せるように準備(環境設定)する点も考慮したらさらによさそうです。

また、保護者さまから「お子さまが一人で遊べない」というお話も記載がありました。お子さま個人だけではなく、周囲の環境、つまりご家族の困りにも着目することも大切と考えてみるのも大切かなと。一人遊びの中でもAちゃんが好きな「感覚」がなにかを考えて、より一人遊びの時間が延ばせる手法や遊びにフォーカスしてもよいかもしれません。

それでは、続いてグループ②からの発表をおねがいします。

(グループ②:発表者の方)私たちは、Aちゃんの事例から、食べることが好きなこと、また、「カードで相手に要求をつたえる」という目標設定に着目した支援を考えました。
支援者と1対1での支援を想定しています。動物のぬいぐるみと、食べ物カードを用意します。うさぎであれば、にんじん、など動物が好きなカードを自分で選び、支援者にわたす、という遊びを考えました。最初は写真等で見本となるものを置いておき、徐々にそれを無くしたり、選ぶカードの枚数を増やす等でステップアップしていくイメージです。
その先で、一緒に読んだ絵本のなかにでてきた登場人物の好きな食べ物、などのクイズをしたり、支援者だけではなく渡す先をお友達にしたりなど、関わる人をひろげていく工夫もできます。

(後藤)ありがとうございます。遊びの中でぬいぐるみを用いた意図は何かありますか?

(グループ①)料理につかう材料を選ぶ、という遊びも考えてみたのですが、そこまで細かい内容だと5歳だと難しいのでは?と考え、難易度を考えて料理はやめて動物のぬいぐるみ×好きなたべもの、にしました。

(後藤)なるほど。ありがとうございます。対人間ではなく、ぬいぐるみを用いれば親しみやすさも出て良いですよね。お子さまのコミュニケーションを増やしていくうえで、カードの渡す先を広げていく、という先々のプランも良いですね。

僕からのフィードバックとしては、今回、Aちゃんは現段階では「食べ物が好き」、つまり「自分の感覚を満たしていくことに集中」している状態だと考えられます(口で何かを噛む、高所に上る、ゆれるなどの様子から)。
だとすると、「ぬいぐるみ(自分以外の第三者)の好きなものをあげてお腹を満たしてあげたい」、という気持ちが、どこまでこの時点のAさんから引き出せそうか?に着目するのもよいかもしれません。アセスメントから、まだ自分の感覚を満たすことがより優先されていると捉えると、まずは「自分の好きな食べ物」などをテーマにし、自分の欲求を満たすことを目的にしたほうが、より行動を起こしてくれる可能性が高まるかもしれません。

お子さまが現時点ではどこまでならできそうかを見立て、最終的にはどこを目指すか、という長期的な視点も大事だということですね。言葉は結構でるけど、他者との関係性やコミュニケーションの課題を解決したいようなケースだとより効果を発揮するプランかなと感じました。

どちらのグループも短時間にもかかわらず、さまざまな着眼点で支援を考えてくださいました。授業の内容には、間違いも、正解もないです。普段の僕たちもこのようにお子さまへのプランニングを指導員同士で話し合いながら決めていきますし、僕自身も次の日から参考にできそうだな、と思える素敵なアイディアをいただくことができました。発表いただきありがとうございました!

怒ってその子の行動を減らしていく、ではなく、お子さまの好きなものを見つけ、良い行動を増やす、というのが重要な観点になってきます。ぜひ今後のご自身の支援現場でも考え方の参考にしていただけると嬉しいなと思います。


ワークショップの内容は以上です。この後、後藤からはLITALICOジュニアの事業について説明をさせていただき、質疑の時間としました。ご感想アンケートでは、以下のようなコメントも頂戴しています。

  • 感覚の特性に関する視点も含めて支援をされていると感じた。児童発達支援や放課後デイサービス等で実際にはたらくリハビリ職種(セラピスト)の方から話を聞ける機会は少ないため、今日は大変勉強になりました
  • グループワークで他の方のさまざまな意見を聞くことができ、フィードバックも参考になった
  • LITALICOジュニアの多面的なアセスメントやアプローチの方法を詳しく知ることができてよかったです。私自身も子どもたちの言動に対して私ももっと多面的で段階的な視点を持って対応していきたいと思いました

参加いただいた皆さん、ありがとうございました!

LITALICOジュニアの考え方・指導方針については こちら
https://junior.litalico.jp/school/

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