1月13日に行われたコウダプロの朝礼では、前半に社長の幸田八州雄さんから「心を開く」というテーマについて、具体的なエピソードを交えた話がありました。
幸田さん自身の大学院進学という大きな意思決定から、社内で起きたある管理職の行動の変化まで。幸田さんが語る「心を開く」という在り方は、精神論ではなく、日々の選択や行動として立ち現れる、非常に実践的なものでした。
後半では岩永大和さん(ニックネーム:大和)が講話を担当。「その道のスペシャリストを目指す」という、一見前向きにも映る若手の宣言に対して覚えた違和感を起点に、コウダプロが会社として大切にしている「成長」や「冒険」の意味について、率直な問題提起がなされました。結果として議論は広がり、深まり、濃密なひとときとなりました。
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こんにちは、プレスラボ(@presslabo)の池田園子です。月1回「コウダプロ朝礼レポート」を担当させていただいています。
前回(2025年12月)の朝礼noteはこちらから。
「信じて任せる」は、話し合いから始まった。——決裁フロー見直しで見えたコウダプロの現在地
信じたのは自分の指向性ではなく、流れ。「心を開く」を体現した社長の選択
幸田さんは、とある会食の席で「幸田さんは大学院に行くといいと思う」と勧められた瞬間、ほとんど間を置かずに「行きます(=まずは受験に挑戦します)」と答えたそうです。この即断は、突発的なものではなく、実は前日から続く“流れ”の中で起きたものでした。
前日、ある分野のレジェンドからメッセージが届いた幸田さん。「実は今、自分は大学院に通っている」と聞いたのだとか。中小企業の出口戦略などを、実務だけでなくアカデミックな観点から学んでいるという話に、幸田さんは心を動かされました。
そして、その翌日、別の人物から「大学院に行った方がいい」と勧められたのです。このふたつの出来事が立て続けに起きたことを、幸田さんは「これはもう、宇宙様が大学院に行けと言っているとしか思えない」と表現しました。「流れの前には必ずサインがある」。そうした自身の感覚を信じ、その場で進学を決めたと語ります。
決断から宣言までのスピードにも驚きます。前夜に助言を受け、その場で進学を決め、約12時間後に行われたこの朝礼で、メンバー全員に「(受験にパスしたら)大学院(京都にある大学院を想定)に行きます」と意思表明をしています。
幸田さん自身の本音を聞くと、この選択は決して「ラクなもの」ではありません。座学が大の苦手で、学生時代のように長時間座って話を聞く授業は、本来もっとも向いていないタイプだと自覚している幸田さん。ADHD気質もあり、じっとしているのを「しんどい」と感じやすい方。それでもなお、「自分の好き嫌いや指向性とは関係なく、これが今の自分なりの“心の開き方”」と語りました。
さらに幸田さんは、もし大学院生となり京都と福岡を行き来することになったら、移動時に思いもよらない出会いが生まれるかもしれない、と話します。たとえば、新幹線で隣に座った大学生に「就職活動中なんですか?」と声をかけたことをきっかけに会話が弾み、結果的にその人がコウダプロに入社し、会社にとって決定的な仕事を担う存在になる可能性だってある。
大学院に行って、何が起きるかは分からない。けれど、心を開いて動き続けることで、そうした予想外の縁や出来事が初めて手に入るものなのだ——。幸田さんにとって大学院進学は、まさに「流れに乗る」こと、「心を開く」実践そのものなのだと感じさせるエピソードでした。
違和感を放置しない。心が開いている40代管理職の選択
幸田さんは、自身の大学院進学とは別に、「心を開く」という考え方を象徴する社内エピソードとして、アスガール事業部 事業部長・松尾充展さんの話を紹介しました。
今月からコウダプロでは、交渉力や対話力を鍛えるためのオリジナルプログラム「口喧嘩勉強会」をスタートさせています。全社員必須ではないものの、組織を動かす立場にあるマネージャー以上には「できれば参加してほしい」という思いがありました。
松尾さんは当初、不参加を表明していたそうです。ところが、その意思表示後、本人の中に「なんだか気持ち悪い」「何かが違う」という強い違和感が生まれたといいます。
幸田さんは、この感覚こそが人の心の一番根っこにある「心の玉(※)」からのサインだと説明しました。
※心の玉(人間性の底にある玉)とは良心のようなもので、「磨く」と「鍛える」で進化していきます。心の玉は磨くにつれて透明度を増し、鍛えるにつれて強くなっていく、と幸田さんは捉えています。
松尾さんは、その違和感を見なかったことにせず、「やっぱり参加する」という選択をしました。幸田さんはこれを、「40代半ばという経験豊富な年齢になっても、なお心を開いている状態」「違和感に目を向けて、その感覚が消える方向へ行動を変えられること」こそが、本当の意味で心が開いている姿だと評価します。
心を開くとは、自分の中に生じた「おかしい」「ズレている」といった、どこか落ち着かない感覚に正直になり、その違和感がなくなる方向へ一歩踏み出すこと。その定義が具体的なエピソードとして共有された時間でした。
「器を大きくしていける土壌があるのに、なぜ留まるのか」“粒感”をめぐって生まれた違和感
コウダプロでは日常的に「アタマとココロの中」という社内コンテンツを通じて、各メンバーが自分の考えや違和感を全社に向けて発信しています。大和さんは、そこで綴った自身の違和感を、朝礼の場であらためて言葉にして共有しました。
違和感の対象となったのは、ふたりの若手社員が「マネージャーグレードではなく、職人星を目指す方向で頑張っていく」と宣言したことでした。大和さんは率直に、「正直、違和感を覚えた」と語ります。補足すると、大和さんは職人を目指すこと自体を否定してはいません。
「それ自体が悪いとは、まったく思っていない」「マネージャーグレードと職人星は“方向性の違い”として捉えている」と前置きしたうえで、それでも拭えない引っかかりがあったのだといいます。
(コウダプロ用語解説)
※マネージャーグレード
単に人を管理する立場になるという意味ではありません。フロントに立って事業を全力で伸ばし、メンバーを巻き込みながら、やがては経営に近い領域まで踏み込んでいく道を指します。組織の未来に責任を持つポジションへと進んでいくキャリアの在り方です。
※職人星
職人星とは、マネジメントの道ではなく、自らの専門領域を深く掘り下げ、その道のプロフェッショナルとして価値を発揮していくキャリアの選択を意味します。ひとつの分野を徹底的に極め、技能や知見で組織を支える存在になるという、もう一つの成長ルートです。
その違和感を皆に分かる言葉で表現するために、大和さんの用いた言葉が「粒感」でした。コウダプロにおいて粒感とは、人としての器の大きさや、影響範囲、視座の広さを表します。若いうちから職人星を目指すという選択が、「粒感を大きくしていく」のではなく、「粒感をこの段階で留めてしまう」選択に見えた。それが、大和さんの率直な受け止めでした。
大和さんの中には、これまでコウダプロの先輩たちが見せてきた姿があります。心を開き、自分で自分にかけていたリミッターを外し、よりチャレンジングな方向へ踏み出していく。そうやって“冒険”を選び続けてきた先輩たちの姿を間近で見てきたからこそ、「若手こそ、リミッターカットして冒険するべきではないか」という思いが自然と湧いてきたのだと語りました。
さらにその背景には、社長の幸田さん自身が繰り返し語ってきた言葉があります。「コウダプロは、心が開いている人と仲間になり、冒険する会社」。ここには、若手がフロントに立ち、経営に近い場所で挑戦し、人としての粒感を一気に大きくできる土壌がすでに整っています。
だからこそ大和さんの中に生まれたのが、「この環境があるにもかかわらず、なぜこの段階で留まる道を選ぶのか」という問いでした。若手が自ら成長の幅を狭めてしまっているように見えたこと。その一点が、大和さんの違和感の核心でした。
専門領域を極めるのは素晴らしい。でも、まだ“プロ論”を語るレイヤーにない
議論が深まっていく中で、幸田さんはまず、「大和の言い分もわかるし、若手の言い分もわかる」と、双方の立場を丁寧にすくい上げました。続いて幸田さんが言及したのが、「ECの領域を極めたい」と語った若手社員の姿勢でした。「自分は何を深めたいのか」を自らの言葉で語るあなたの誠実さや真摯さは、十分に伝わっていると評価します。
一方で幸田さんは、「このままだと議論が平行線になる」と感じたとも語りました。そこで提示されたのが、「議論のレイヤーを一段引き上げよう」という提案です。
例として挙げられたのは、野球選手のキャリアでした。生涯キャッチャーとして、キャッチャーの道を極め続ける。それは本当にすごいことであり、ポジティブな在り方に他なりません。それでもなお、幸田さんの中には「消せない違和感」が残っていました。その違和感の正体として示されたのが、「視点の不足」という指摘でした。
プロになるために必要な要素が1から10まであると仮定したとき、若手は「1」にあたる部分を、ひたすら深く掘ろうとしている。一方で、「2から10」に該当する要素については、ほとんど手を伸ばそうとしていないのではないか。幸田さんはそう問いかけます。
たとえば、レジェンド級のアスリートが「プロとしての心構え」を語る講演会があったとき。「自分の専門はECだから関係ない」と行かない選択をするのか。それとも、「直接関係はなくても、思わぬキラー情報が得られるかもしれない」と考えて足を運ぶのか。その違いが、将来の成長に大きな差を生むのではないか、という問いでした。
その話は、必ずしも「1」に直結しないかもしれません。しかし、「2から10」のどこかに深く関係し、仕事や人生に思いがけない影響を与える可能性は十分にある。今はまだ、その視点が抜け落ちているのではないか——。幸田さんはそう指摘しました。
さらに幸田さんは、若手が入社数年目というタイミングを踏まえ、「今の段階で職人星宣言をするのは早い」「まだプロ論を語るレイヤーにはない」と、率直な言葉で伝えました。それは、まずは幅広く学び、経験を重ね、意図しない情報や出会いにも心を開いてほしいという、教育的配慮からのメッセージでもありました。
(編集後記)
まず、後半の議論の白熱ぶりに、年始早々大きな衝撃を受けました。「本物の本音をぶつけ合うとは、こういうことなのだ」と、強く実感できる時間だったからです。
あるメンバーの宣言や選択に対して、これだけの時間をかけて向き合う。違和感があれば見過ごさず、介入し、とことん話し合う。個人のキャリアの話でありながら、組織として、仲間として、本気で関わろうとする姿勢に、感動と同時に驚きを覚えました。果たして、他の会社でここまで真摯に、個人の意思決定と向き合う時間を確保している組織がどれほどあるでしょうか。
その土台にあるのが、幸田さんが繰り返し語ってきた「心を開く」という姿勢。今回あらためて印象に残ったのは、「心の玉」という考え方でした。人の心の奥底には、誰もが良心の原点となる小さな玉を持っている。答えは外にあるのではなく、すべて自分の中にある。しかし、生きていく中で積み重ねてきた経験や役割、価値観が、その玉を少しずつ見えにくくしてしまう。
だからこそ、自分の中にふと生まれる「ちょっとした違和感」を大切にしたい。その小さな疼きこそが、原点からのサインであり、進むべき方向を教えてくれているのではないか。今回の朝礼を通して、そんなことを考えさせられました。
Text/池田園子