こんにちは!KitchHikeマガジン編集部のMasatoです。
キッチハイクチームの代名詞、『まかないランチ』。私たちは、いつもお昼ごはんをつくって、みんなで一緒に食べています。
「もしここに『食』と暮らしの未来をつくる『あの人』が来たら……?」と、今回新たにインタビュー企画をスタートしました!
記念すべき第1回目のまかないゲストは、外食コンサルタントのサカキシンイチロウさんです!
サカキ シンイチロウ
1960年愛媛県松山市生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、店と客をつなぐコンサルタントとして1,000社にものぼる地域一番飲食店を育成。語学力と行動力と豊富な知識で戦略を展開する。飲食店の経営のみならず、食全般に関するプロデュース、アドバイスを主な業務として活躍中。
(ほぼ日刊イトイ新聞:おいしいお店とのつきあい方)
『食』は食べてもらうこと、食べさせてあげることだった
サカキさんは、そもそもなぜ『食』の道に進まれたのですか?
もともと両親が飲食店を経営していました。うちで『食』というのは、「ただ食べること」だけじゃなくって、食べてもらうこと、食べさせてあげること。それがずっと当たり前だと思っていました。でも、学校の友達と話がかみ合わない。食べるという認識について、「そうか、うちはおもしろいんだなあ」と思って。30代前半までは自分でも飲食店をやって、「お客様に食べて幸せになってもらう」ということを経験しました。
その後、コンサルタントになられたのですね。
自分が経営するより、どうすればいいか分からない人、自分のやっていることが不安で仕方ない人に僕の知恵を貸してあげれば役に立つことはできるのかな。そう思って今の仕事をしています。
つくり手と食べ手の立場はフラットであるべき
サカキさんにとって、理想の飲食店とはどんなお店でしょうか?
お客様も働いている人も同じステージにいて、お互いに尊敬し合える関係があること。
料理をつくるということに関しては、店の人が上。だからこそ「料理はこうあるべき!」というのをちょっと飲み込んで、降りなきゃいけない。一方、料理を食べることに関しては、お客さんがプロ。だから、こっちも降りなきゃいけない。目線をひとつ下げた同じ立場で語りながら、ちょっとずつ上がっていくことが大切なんです。
なるほど。今の外食産業を見て、どう思われますか?
今の飲食店って、特にSNSが普及してお店の人が匿名ではないんですね。そこに匿名のお客様がやってきて、匿名性をもって攻撃をする。働く人はもう困り果てますよね。これ以上いじめないでくださいっていう謝り方は、安くするか、品質を上げるかのどちらか。いずれにせよ儲からなくなる。だから今の飲食店はあまり好きじゃない。
つくり手と食べ手の立場がフラットでない、と。
ある意味、昔のような『みんながほんわかと幸せになれるような飲食店』の時代は終わったんだろうなと思います。でもやっぱり僕は外で食べたい(笑)。だから、今日のような会は、いちばんうれしいですね。
飲食店のフォーマットが変わる?
飲食店側にも何か問題はあるのでしょうか。
人がものを食べた時、「これはどういう風に誰がつくったんだろう?」とイマジネーションを働かせたくなるのが『料理』。逆に、一切考えることなくお腹を満たせばいいものは、料理じゃなくって『食品』なんですね。最近は、レストランではなく、『食品販売店』となってしまっている店はすごく多いと思います。
確かにそうですね!今後、飲食店にはどんなチャレンジがあるのでしょうか。
従来のレストランフォーマットをどうやって壊すか、または外へ出ていくか、ということしか飲食店にはないのかなと思います。ただ、飲食店を経営しないといけないと思うと、失敗できない。失敗できないとなると、前例のある料理しかつくることができない。おもしろくしようとしてもアレンジくらいしかできないんですよね。
サカキさんに何かお考えはあるのでしょうか。
経営から離れた所で料理を考えると、いくらでも冒険できると思います。料理が気取ってなくて、プロの料理でないもの。ふつうの人が普段からつくる料理を前にした時、食べ手はどう感じるのか。それは、まだ飲食店の未到達ゾーンです。
おいしさより、誰がつくってくれて誰と一緒に食べたか
これから先、私たちにとってどんな食事が重要になってくるのでしょうか?
これから先感動する食事って、『誰がつくってくれて、誰と一緒に食べたか』が一番だと思います。そもそも、おいしくない料理なんてないと思っていて。
おいしくない料理はない、ですか……!
学校に行って自分の友達がお弁当を開けたとき、中身がまったく同じだとしても「食べてみたい」って思いますよね。絶対に自分のと違うから。それを食べた時には「こっちの卵焼きもうまいなぁ」と思う。自分のと比較をしない。飲食店において人は必ず比較をするんだけど。
自分のお弁当が何物とも比較できないものであると同じく、この人のお弁当も比較の対象にならないと受け入れることができる。そのときはじめて『食』の世界って広がる。
それこそ、『食』は楽しいと思うところです。
だからこそ、「誰がつくってくれて、誰と一緒に食べるか」が大事だと。
キッチハイクのPop-Upには、そこがありますよね。誰も比較しない。別にパスタが上手なCOOKをプロの洋食屋と比べないですもんね。
これからの『食の未来』は。
本日はまかないランチのご参加ありがとうございました。
最後に、『食の未来』や『みん食』のご感想など伺っていきたいと思います。
サカキさんにとって「こうなってほしい」という食の未来はありますか?
それは難しいですね。かつて、10年お店が続く仕組みがあれば、オーナーが結婚をして、育児をして、子供を成人させるための『ライフプラン』ができました。つまり、『飲食店を作り、成功させ続けること』と『人が幸せになること』が直結していたんですね。
そのサポートをされていたのですね。
飲食店をやっている人は将来が不安。なにより厳しい現場ですからね。さらに、結婚して子供ができた時に育てていけるか、という不安が大きい。そういう方々に対して、僕達の会社は10年間お店が繁盛し続ける仕組みを作ってきました。
今はいかがでしょうか。
でも、今はかなり状況が変わってしまった。人が感じる幸せが多様化し、働き方が多様化し、何よりも飲食店が増えすぎてしまいました。飲食店を新たにやりたい人には、「なるべく考え直した方がいいですよ」と勧めるかもしれません。
外食に精通するサカキさんがそう仰るとは……
これからは外食とは違った『食』の形が必要になってきそうです。
みんなで食べることは、家族になること。
キッチハイクでは『みん食』という食のシーンが鍵だと考えています。
本日『みん食』をご一緒しましたが、いかがでしたか?
今、どんな家族を見ても、家族で食事をする機会が減っています。
今日の最高のキーワードは、「ごはんできたよ。」の一言。
子供の頃、夕方はたいてい部屋にいて。それまでそれぞれ『思い思いの時間』だったのが、ごはんを食べるときは『家族の時間』になる。「ごはんできたよ、降りてらっしゃい。」というのは、自分が家族に組み込まれる合図なんですね。家族になるきっかけの言葉です。
「ごはんできたよ」なんて、最近みんな聞いていないはず。一人暮らしだとそんなこと言わないですよ。聞かないですよね?だから、誰かから「ごはんできたよ」の一声があってテーブルを囲んだ瞬間、子供だった頃に家族と一緒においしくごはんを食べていたことが蘇るんです。それが、その場で満たされる『みんなで食事をする価値』。ごはんを一緒に食べるとき、みんなは『家族』になる。
互いにいろんな事を聞いてもらって、いろんな事を聞いて。何を食べたか覚えてないかもしれないけど、今日も一日たのしかったな、という時間。「ごはんできたよ」から始まる、『家族の時間』です。
『みん食』が家族になることだったとは……!本日はありがとうございました!
「業界の中の人でもあり、外の人でもある」という立場で語ってくださったサカキさん。『食』や飲食店の未来を鋭く見据えておられました。『食』への愛情は深く、「ぼくはただ、食べることが大好きだから」と知見を惜しみなく教えてくださいました。
食でつながる暮らしをつくるキッチハイクだからこそ、私たちは日々まかないランチをみんなで食べます。家族のような時間を大切にしています。
『みん食』はおいしくて、とっても楽しい。
次回はどんなゲストがまかないランチに来てくれるのでしょうか。どうぞ、お楽しみに!
文・編集:福田 将人 (株式会社キッチハイク)
写真:Yansu Kim
転載元: 民食の未来を切り拓く| KitchHikeマガジン
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