キリンでは2019年2月に発表した長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」の策定に伴い、キリンの価値観である「熱意」「誠意」に「多様性(Diversity)」を追加。
キャリア採用においても多様性を重視しており、様々なバックグラウンドを持った方の採用を積極的に行っています。
「個々人の経験や特性を会社や社会に役立てられたと実感するとき、人は幸せに感じる」と語るのは、キリンビバレッジ人事総務部の星野風子さん。今回、課外活動としてNPOの活動にも積極的に取り組む彼女に、キリンで働き続ける理由やキリンの多様性のあり方について、お話を伺いました。
「新卒入社で選んだから」は会社に残る理由にはならない。私がキリンで働き続ける理由を語れるようになりたかった
―― あらためて、これまでのキャリア遍歴を教えて下さい。
2008年にキリンビバレッジに入社し、はじめは法人への自販機導入の営業を担当していました。そして2011年に人事部に異動となり、採用から人材育成まで幅広く担当。現在は人事企画も担当しています。
振り返ると、組織の大きな変わり目に関わることが多く、また半年間、育休を取っていた時期もあったりと、常にがむしゃらでしたね。
たとえば各社ごとではなく、ホールディングスで一括採用をする方針となったときは、わずか数名で仕組みを整えていきましたし、キリンビバレッジの人事担当になったときは実務担当は実質わたし一人という状況でスタートし、人事チームづくりということもやってきました。
―― 星野さんは社外でのNPO活動にも取り組まれていると伺いましたが、具体的にはどういったことをされているのでしょうか?
そのNPO自体はソーシャルベンチャーに対する経営支援を行っておりまして、その中で私はある団体の新規事業開発と組織基盤強化に携わっています。
NPO活動に充てる時間としては、月に数回の対面での打ち合わせの他、電話会議であったり、チャットツールを使ったコミュニケーションというのがほぼ毎日ある状態です。今朝も通勤電車では、NPO活動のほうの連絡事項をチャットしていました。
キリンはコアタイムなしのフレックスタイム制なので、成果さえ出せば時間の使い方は自由なんですね。ガチガチの労働環境というわけではないため、私のように課外活動を行おうと思えばできる環境で、ビジネススクールに通っている社員もいたりと、勉強熱心な社員も多いなという印象です。
―― NPO活動に参画しようと思った理由は何だったのでしょうか?
一番の理由は、「外の世界を見てみたい」と思ったから。私は新卒入社でキリンに入社しましたが、今の時代は転職が一般的となり、 “新卒入社で選んだから” という理由だけで会社に居続ける時代ではありません。
私はキリンが大好きですし、これからもキリンで働き続けたいと思っていますが、ふと「それは私がキリンしか知らないからでは?」と思ったんです。
そこで社外の活動を通じてキリンという会社を客観的に見る機会をつくることで、「なぜ自分はキリンに居続けるのか」というのをフラットな視点で考えてみたかったですし、その上でキリンで働き続ける理由をちゃんと語れるようになりたいと思い、NPOの活動に参画しました。
実際、自分という存在をあらためて振り返る良い機会になりましたし、キリンの社員はどういった人材なのかを客観的に見ることができたのは良かったなと感じています。
多様性は属性だけではない。経験、趣味嗜好含め、個人の特性をかけ合わせ、イノベーションに変えていく
―― 外に出たことで、あらためて感じた “キリンの良さ” はどういったところにありましたか?
まずあらためて感じたのは、キリンの多様性です。食領域を中心としたリサーチや研究開発を行っていたり、お客様相談や営業などさまざまな機能やエキスパートを内包していたりと、研究成果や人的資産が非常に多く、バラエティに富んだ組織だなということ。
そのため、何か新しいことにチャレンジしようとしたときに、そういったキリンの資産を使ってできることがたくさんあることに気づきました。しかも、社員は誠実で熱意がある方が多く、他の社員の挑戦を応援し、協力してくれる文化があるんですね。
その根底には社会的価値と経済的価値を創出しようとするキリンのCSV経営(Creating Shared Value)があり、私はそういったキリンのCSVに取り組むビジョンが好きだなとあらためて感じましたし、「誰とやるか」を大事にしたいと思っているからこそ、キリンで働き続けたいんだなと再認識できました。
―― 長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」(2019年2月発表)が策定されたタイミングにて、キリンの価値観に「ダイバーシティ(多様性)」が追加されましたね。
はい、もともとキリンでは多様性を受け入れるアプローチはいろいろ行っていたんですね。たとえば、2018年には「なりキリンママ・パパ」という、実際には子どもがいない社員がママ・パパになりきっては働くという取り組みを全社展開で実施しました。
「架空の子どもが熱を出してしまいまして……」と実際に得意先に連絡してアポの再調整をするなど、社内に留まらないカタチで行い、子どもがいるママ・パパが働きやすい社会を目指すことはもちろん、誰でも働きやすい、チームでマネジメントする働き方の実現を図る取り組みでした。
ただ、多様性と言っても、女性の活躍推進、障がい者雇用の推進など、これまでは「様々な属性の人がイキイキと働ける場所をつくりましょう」という “属性の多様性” が中心だったんです。しかし属性以外にも、もっとパーソナリティの部分、たとえば経験や趣味嗜好など、様々な多様性があります。
そのため、キリンでは「多様性を受け入れる土壌」はできているため、次はそういった様々な多様性を「力に変えていく」フェーズ。一人ひとりが何かしらの特性を持っているからこそ、それらの多様性をかけ合わせ、社会的価値の創造、経済的価値の創造を実現するイノベーションを起こすこと。
そうした動きを加速すべく、人事としても「多様性」を重視した採用を積極的に行っています。
現場レベルでも大小様々なイノベーションを起こすために。キリンに染まる必要はまったくない
―― 採用においても多様性を重視されているということですが、具体的にはどのような点を大事にされていますか?
キャリア採用においては、不足を補う、空いているポストを埋めるようなスキルベースの採用ではなく、イノベーションを起こすための採用を積極的に行っています。そのため、キリンではできない経験をしていて、その経験をキリンにPlus+したいと思ってもらえる方に入っていただきたいなと考えています。
また、ご自身では当たり前のことだと思っていても、他人からすると当たり前でないことはたくさんあります。そういったこれまでの経験を会社や社会に役立てられたとき、人は自分の価値を再認識できますし、多様性を力に変えていく組織は、会社の成長のためだけでなく、個々人にとっても幸せを感じられる組織なんですね。
そしてキリンには傾聴の姿勢がある社員が集まっており、多様性を受け入れる土壌ができたからこそ、いまは現場レベルで大小様々なイノベーションが生まれていくと思っていますし、現場から変革を起こしてほしいと考えています。
そのためにも、“キリンらしさ” に染まる必要はなく、むしろこれまでの経験を活かし、「自分らしさ」を思う存分発揮してほしいなと。
―― 最後に、星野さんご自身の展望を教えて下さい。
「キリングループ・ビジョン2027」でも掲げている通り、「世界のCSV先進企業となる」ことをキリンは目指しています。私はそのキリンが目指す方向がとても好きですし、そこに向かって、仲間と進めていきたいというのが大きなモチベーションになっています。
CSV経営という高くて抽象的な目標ではありますが、その目標達成のために前進させられる仕事をやりたいと思っていますし、「自分が前進させている」と実感しながら仕事がしたい。
自分の特性が成果に結びついていることを感じながら仕事ができるというのは、とても幸せなことだと思うからこそ、人事としても多様性を力に変える組織づくりに貢献できたらなと考えています。