※こちらの記事はカミナシ公式noteからの転載です
こんにちは、カミナシ採用担当です!
唐突ですが、「デザインエンジニア」という職種を耳にしたことはありますか?
「デザイナーとエンジニアの仕事を一人でこなすこと」とイメージする方も多いかもしれませんが、それは誤解です。デザインエンジニアには、プロダクトをつくる上で重要な役割を担っています。
今回は、2020年11月に『デザインエンジニア』としてジョインした庄(以下、ショウ)の紹介とともに、カミナシにおける「デザインエンジニア」という職種が持つ役割について掘り下げていきます。
一人でプロダクトを作れるようになりたくて、デザインを学びに来日
ーーショウさんの出身は中国・上海ですよね?まずは学生時代をどのように過ごしてきたのか教えてください。
ショウ:地元の上海の大学ではコンピューターサイエンスを専攻し、その中でプログラミングを学んでいました。
学校で数ヶ月の時間をかけて課題作品を作った時に「エンジニアだけでもプロダクトは作れるけど、決して使い勝手のいいものではないな」と痛感して、そこからデザインに興味を持ち始めました。
その時は一人でプロダクトを作れるようになりたいと思っていたので、プログラミングとあわせてデザインも学ぶことにしたんです。
当時から中村勇吾さん(※)の作品をはじめとした日本のグラフィックデザインが好きだったので、日本でデザインを学ぼうと決めて来日。最初は渋谷の日本語学校で「あいうえお」から勉強して、専門学校に進学してグラフィックデザイン・Webデザインを学びました。
▲引用元:tha ltd.サイト
※中村勇吾 氏:ウェブデザイナー、インターフェースデザイナー、映像ディレクター。数多くのウェブサイトや映像のアートディレクション・デザイン・プログラミングの分野で活動している。
グッドパッチで、140カ国以上のユーザーに使われるサービスを立ち上げる
ーー専門学校を卒業してから、どのようなキャリアを歩んできたのでしょうか?
ショウ:2014年春に、「グッドパッチ」というデザイン会社で社会人としてのスタートを切りました。学生時代から代表・土屋(尚史)さんのSNSなどをフォローしていて、共感するところも多く、よく「いいね」をしていました。
学生時代の私からみたグッドパッチは、まさにUIデザインの少数精鋭プロフェッショナル集団でした。強い興味はあったものの、当時の私には気軽に応募できるものではありません。
応募するまで半年ほど悩みましたが、勇気を振り絞って応募した結果、面接が始まって10分程度で内定をいただくことができたんです(笑)。
ーー10分で!スピーディーな選考でしたね。
ショウ:そうですね。土屋さんは私がSNSでフォローしていたのを覚えていてくれたこともあり、すぐに採用が決まりました。
グッドパッチ入社時の肩書は「フロントエンドエンジニア」でしたが、当時からプロダクトのデザインをUIデザイナーと一緒に議論したり、描いたりしていました。
当時立ち上げに携わったプロトタイピングツール「Prott」は、これまでのキャリアで一番思い出に残っている仕事です。140カ国3000都市以上のユーザーに使われ、世界中からさまざまなフィードバックをもらえました。自分が作ったプロダクトが世界中で使われるなんて、これほど嬉しいことはありません。
そして、そのとき一番挑戦的な取り組みだったのが、3時間のデザインスプリント(※)です。
限られた時間の中で、課題定義、アイディエーション、デザイン、実装、検証、本番反映を含めて、自分とUIデザイナー2人でやり切る。
そうすることで、プロダクトロードマップに載せていなかった突発的な新機能の追加や、ユーザーからよく上げられた声に対する改善、期間限定のクリエイティブなどをスピード感を持って検証し、プロダクトに取り込むことができました。
▲Prottの初代アップルウォッチ対応は、3時間ほどのデザインスプリント内で作られました。
また、UIで特にこだわったのは「遊び心のあるインタラクション」です。中村勇吾さんの影響ですね。
チームにUIデザイナーはいたものの、一緒に細かい動きまでガッツリ議論しながらフロントの実装をしていました。それらのインタラクションは時々ユーザにGIF化されてTwitterに投稿されたりして、その反応がとても励みになっていましたね。
※デザインスプリント:新製品・サービス、または機能を市場に投入する際のリスクを減らすことを目的に、 デザイン思考をベースにした、時間制約のある5段階のプロセス。GV(旧Google Ventures)が2007年ごろに最初に考案したとされ、一般的には5日間をかけて行われる。
カミナシを選んだ理由は「社会的な意義が大きい事業」と「組織作りができるフェーズ」だから
ーーショウさんはその後、数社で経験を積んだのちにカミナシにジョインされました。なぜカミナシを選んだのでしょうか?
ショウ:社会人としてキャリアを積み上げ、次のチャレンジの場として選んだのがカミナシです。
前職では、携わっていたプロジェクトが中止となったのをきっかけに転職を決意しました。その時に出会ったエージェントさんが紹介してくれたのが、カミナシにも投資をしているVC、Coral Capitalの「CORAL COMMUNITY」だったんです。
CORAL COMMUNITYにキャリアを登録すると、CoralCapitalの投資先であるスタートアップからスカウトが送られてきます。
2日ほどかけてCoral Capitalのポートフォリオをもとに、投資先の会社情報を徹底的に調べましたね。会社のブログや記事もたくさん読み漁りましたし、SNSもチェックしました。
今回の転職では「社会的な意義が大きい事業」と「これから組織作りをしていくフェーズ」の2つを大きな軸として企業を探していて、カミナシはどちらの条件にもマッチしていたんです。
ーーたしかに、どちらの軸にもカミナシはフィットしますね。
ショウ:ただ、カミナシCEO・諸岡さんのnoteを読んだところ、「待望のデザイナーがジョインしてくれた」とあったので、その当時は内心諦めていました。
でも、CORAL COMMUNITYに登録した翌朝にスカウトメールが届いたので、驚きましたね(笑)。コミュニケーションデザイナーは採用できたものの、プロダクトデザイナーはいなかったようです。
カミナシジョイン後の最初の仕事は「CI(corporate identity)のリニューアル」でした。
実は、面接後に経営陣と食事に行ったことがきっかけでCIのリニューアルに携わることになったんです。お酒を飲みながら「カミナシはまずロゴを変えたほうがいいですよ」と理由を添えて提案したところ、経営陣が納得してすぐ取りかかることを決めてくれました。
CIは企業が社内外とコミュニケーションをとるときのベースとなるもの。
ベースさえ整っていれば、その後のコミュニケーションもスムーズになります。逆に言えば、CIのリニューアルによって会社のほぼすべてのデザインに影響が出る可能性が大きいため、まず最初に取り掛かりたかったのもあります。
CIリニューアルに関する詳細は別記事にまとめているので、興味のある方はこちらをぜひご覧ください。
デザインエンジニアの3つ役割
ーーショウさんは入社以前は「フロントエンジニア兼デザイナー」という肩書きだったということですが、カミナシでは「デザインエンジニア」という肩書きで仕事をされています。
一般的にまだ馴染みのない「デザインエンジニア」の役割について教えてください。
ショウ:聞き慣れない「デザインエンジニア」という職種ですが、実はサイクロン掃除機で知られるダイソンの創業者、ジェームズ・ダイソンの肩書きもそうなんです。彼はCEOでありながら、デザインエンジニアとしてプロダクトの開発にも携わっていました。
ダイソンはテクノロジーとデザインの融合が秀逸です。
経済番組の「カンブリア宮殿」でジェームズ・ダイソンが取り上げられた時、デザインエンジニアについて話しているのを聞いて、改めて私もその役割について考えました。
それまでは私も、デザインエンジニアとは「デザイナーとフロントエンジニアの仕事を1人でこなすこと」と思っていましたが、重要な役割があることに気付いたんです。
もちろんデザインエンジニアは、エンジニアとしてもデザイナーとしても、きちんとアウトプットができる人のことではあるのですが、私が考えるデザインエンジニアには大きな役割が3つあると思っています。
①デザイナーとエンジニアのコミュニケーションの架け橋
②さまざまな観点を取り入れたデザインシステムの構築
③スピーディーで高精度なプロトタイピング
ーーなるほど。デザインエンジニアの3つの役割について詳しく聞かせてください。
ショウ:はい。説明していきますね。
①デザイナーとエンジニアのコミュニケーションの架け橋
デザイナーとエンジニアのコミュニケーションで、ギャップが生まれるのは珍しいことではありません。デザイナーが技術のことについて把握できなかったり、エンジニアがデザインを実装した後にデザイナーの意図とズレが生じるのも、コミュニケーションにギャップがあるからです。
デザインエンジニアは「デザイン」と「エンジニア」のバイリンガルであるため、高度に専門化されたデザイナーとエンジニアの間のコラボレーションの質を劇的に高めることができます。
例えば、デザイナーがプロダクト上の課題に対して新しい技術的な解決策を提示することや、仕上がってきたデザインに対してエンジニアがより理解した上で実際のプロダクトに落とし込むことなどです。
このようにデザインエンジニアが翻訳することで、コラボレーションを介してそれぞれの可能性を広げることもできるようになります。
②さまざまな観点を取り入れたデザインシステムの構築
デザインシステムとは、デザインの原則と、UIパターンやコンポーネントなどからそれらの実装コード、運用まですべて備えたもので、プロダクトチームでエンジニアとデザイナーの“共通言語”となるものです。
これを構築するためには、プロダクト、デザイン、エンジニアリングからの観点をそれぞれ配慮した上で俯瞰的な設計にする必要があります。
いずれかに偏ったものにしてしまうと、その後の運用にさまざまな問題を招いてしまいます。三者それぞれの考え方や定義をデザインシステム内に落とし込んでつなぎ合わせてデザインし、さらにコーディングと運用までの一貫性を担保するには、デザインとエンジニアリング両方のことをよく知っている人が必要なのです。
現在、カミナシで構築し始めている、昨年のCI刷新をベースとした新デザインシステムは、三者の観点をきっちり取り入れているものです。タイポグラフィの部分から簡単な一例で説明します。
プロダクト要件的に、まず管理者が使うWeb画面と、現場のスタッフが使うiOS端末があり、将来的にはAndroidとWindowsタブレット端末の対応が視野に入っています。
デザインの観点では、利用端末ごとに最適なフォントサイズを選択して、肝心な記録の数字部分は特に読みやすさを追求したい。
エンジニアリング観点だと、複数のフォントやタイプスケールを、いかに一つの実装の中に綺麗に落とせるかを設計段階でクリアする必要があります。
この三者の観点を前提条件としてしっかり設計することによって、デザインシステムの文字部分は、構築後に各所で使い回す時の可用性や信頼性、安定性が格段に上がります。
▲デザインシステムのコンポーネント(試作案)の一部
③スピーディーで高精度なプロトタイピング
これはまさに今、カミナシで私が注力して取り組んでいることです。
現在、新しく開発しているプロダクトは、まだ世の中に前例がないもの。
前例のないものづくりでは、ベンチマークになる競合サービスはもちろんなく、そもそも根本的に何をどう解決するのかすら決まっているわけではありません。
そこで何か問題にぶつかった時、デザインとエンジニアリングの専門性をまたいだり、つなぎ合わせたりして問題の本質を見極めることで、ピントのあった精度の高い議論をした上にスピーディーにプロトタイプに落とせるんです。
さらに、プロトタイプのフィードバックをユーザーや各ステークホルダーからもらったうえで、仮説検証を繰り返していくのがデザインエンジニアの大事な役割です。
カミナシが現在開発している新しいプロダクトは、このアプローチを取っています。日本各地にいる製造工場のお客様を訪問して、現場のリサーチをした上で、まずはプロトタイプを作成します。これをチーム内の共通認識の軸として、プロトタイプを高速にブラッシュアップしてこの段階の理想形が完成します。
でも、これで終わりではありません。さらに実際のユーザーから直接、繰り返し意見を聞いて練り上げて、ユーザーに無限フィットするプロダクトを作っていくのです。
スタートアップにとって、新しいプロダクトを生み出す時のスピード感と精度の高さは、いずれも死活問題です。
デザインエンジニアが複雑な課題の解決に取り組むとき、スピーディーで高精度なプロトタイプを連続的に検証をすることによって、プロダクトの成功確度を一気にあげることができます。
カミナシが「現場ドリブン」にこだわる理由
ーー新しいプロダクトの話も出たので、カミナシのプロダクトづくりで大事にしていることや開発環境についても教えてもらえますか?
ショウ:カミナシがプロダクトをつくる上で最も大事にしているのが「現場ドリブン」です。何度も現場に足を運び、ユーザーの声を直接聞いてプロダクトに反映していきます。
ユーザーからフィードバックをもらうこと自体は、私もこれまでの会社でやってきましたし、特別珍しいことではありません。しかし、カミナシがこれまでの会社と違うのは、工場や店舗などノンデスクワーカーの現場に足を運ぶこと。
多くのBtoBサービスがターゲットにしているのは「デスクワーカー」です。そのため顧客は都内に本社を構える企業がほとんどで、1日で複数のお客様先に行くことも可能でしょう。加えて、プロダクトを作るチームメンバーもデスクワーカーですから、なんとなくサービスを使う様子や働き方もイメージできるはずです。
しかし、カミナシが足を運ぶ現場は、その多くが全国各地にある工場や店舗などです。そこでのサービスの使い方は、デスクワーカーの私たちにはまったく想像がつきません。
工場などの現場では手袋をしている人もいれば、手が汚れている人、常に何かを持っている人だっています。そんな複雑なシチュエーションを想定しながらプロダクトを作るのは、オフィスにこもっていてはできません。
デザイナーはもちろん、エンジニアも何度も現場に足を運んで実際に使っている様子を観察しながら改善を積み重ねています。
▲お客様の現場に訪問中の様子
一口に「ノンデスクワーカー」といってもさまざまな現場があり、それぞれの業界の商習慣があり、ツールを使う人も多種多様。どんな環境、どんな人でも使いやすいように最適解を見つけるのは難しく、それがやりがいであり楽しさでもあります。
「トリオ飲み」でメンバーとの距離が一気に縮まる
ーー最後に、ショウさんが感じるカミナシの強み・魅力について聞かせてください。
ショウ:先ほどもお話ししたように、カミナシが手掛けているサービスは、一般的な「BtoBサービス」とは事情が異なり、かなり難しい挑戦をしています。その挑戦に立ち向かうカミナシのチームは優秀なメンバーばかりです。
加えてメンバー同士で助け合う文化が強いため、足し算ではなく掛け算で力を発揮しています。いざという時に全社で取り組めることこそ、カミナシの強さですね。
仕事だけでなく、人としても魅力的なメンバーが集っています。
カミナシには新メンバーが加わったら、既存社員の全員と1on1をする文化があるのですが、さすがに一人ひとりに同じ話をしても面白くありません。
そこで、私が入社したときに企画したのが「トリオ飲み」です。
その名の通り、3人で飲みにいきます。人数が多いと話せない人もいますし、初対面の人と2人きりでは話が続くか心配です。3人なら全員がバランスよく話せて、場が冷める心配もありません。また、メンバーの組み合わせももあえて違うチームや個性を考えてアレンジをしてみました。
コロナの影響もあって、オンライン飲みで開催するなど時期によってやり方を変えながら、ようやく先日、メンバー全員とのトリオ飲みも終わり、一気にチームに馴染めた気がしました。
デザインチームには、私を含めてまだ2名しかいないため、これから組織を作っていく段階です。
これまでにない複雑な課題に挑戦したいデザイナーさんはぜひ一緒に働きましょう。ノンデスクワーカーの仕事をデジタル化して効率化するために粘り強く改善ができる方をお待ちしています。