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80歳までものづくりに携わり続けたい〜アーキテクト・木村彰宏〜|月イチ!カケハシさん

こんにちは、カケハシ公式note編集部の鈴木です。

2016年の創業以来、事業をつくる仲間を増やしてきたカケハシ。気がついてみると社員数は300名を超えており、プロダクト数もチーム数も昔とは比べ物にならないほどに拡大しました。そこで生まれる弊害としてあるのが、手の届きにくい社内の情報が存在してしまうこと。

そこでカケハシでは、社内Podcastとして「カケハシラジオ」を公開。ブランディングチームの上田恭平さん、鈴木啓祐さんの二名をラジオパーソナリティとして、日々さまざまな配信を行っています。

そのなかでのメインコンテンツの一つが、一人のメンバーをゲストに迎えてお送りする「月イチ!カケハシさん」。カケハシとの出会いや仕事を進めるうえで大切にしているスタンスなど、メンバーの人柄を紐解く時間をつくっています。

さて、そんなわけで、これまでは社内だけで公開していたカケハシラジオですが、今回から「月イチ!カケハシさん」をnoteでもおすそわけする運びとなりました。記念すべき第一回はどんな話が飛び出すのでしょうか。さっそくカケハシラジオの世界を覗き見していきましょう!


目次

  1. 音楽活動に文筆活動まで。多彩な木村さんの素性を深掘り!
  2. 「理想と現実」のバランスが取れたスタートアップを探し求めて
  3. 「変幻自在」な人材であるために必要なこと
  4. 80歳までなにかを作っている人間でありたい

音楽活動に文筆活動まで。多彩な木村さんの素性を深掘り!

上田恭平(以下、上田):カケハシのみなさん、こんばんは。「カケハシラジオ」MCを務めます上田恭平です。よろしくお願いします。

鈴木啓祐(以下、啓祐):こんにちは、鈴木啓祐です。よろしくお願いします。

上田:久しぶりにこのラジオを更新しております。気がついたら数ヶ月ぶりの収録になってしまったので……これからは少なくとも月に一度の更新を行っていきたいと思っているのでよろしくお願いします。

ということで、まずは改めて「カケハシラジオ」とはなにかを簡単に説明したいと思います。「カケハシラジオ」は、もっと気軽に“ながら”で浴びる、声の社内報。「情報対称性No.1企業」を目標に、カケハシのあれこれについてより深く知ることのできる機会を日常的に増やしていくための社内ラジオです。

今日は前回の全体会議でリレースピーチを担当してくれた木村彰宏さんをゲストにお迎えしています。木村さんは、プラットフォームドメインと、データ基盤チームでアーキテクトを務めていらっしゃいます。

先日の全体会議のリレースピーチでは「変幻自在」をテーマにお話いただきましたね。この間のお話、僕はめちゃくちゃ良かったなと思っているので、なぜ変幻自在をテーマに選んだのか、その背景や木村さんの人となりなんかをいろいろと掘り下げていけたらと思っております。木村さん、よろしくお願いします!

木村彰宏(以下、木村):はい、よろしくお願いします。

上田:まずは木村さんのこれまでのプロフィールを簡単にご紹介したいと思います。新卒では2012年にセプテーニに入社されたと。そこでソーシャルゲーム、SNS広告配信サービスの開発に携わった後、データ基盤事業立ち上げのアーキテクトとして活躍されています。

その後、2018年にマーケティングDXのエフ・コードに転職されて、そこではVPoEとして開発組織の再編とプロダクトのリニューアルを担当。合わせて、カスタマーデータプラットフォームの開発もリードされたということですね。

そういった経歴を引っ提げて、2021年にカケハシに参画。まずは新規事業の立ち上げに携わられて、現在は複数のプロダクトの共通基盤開発を担っているプラットフォームドメインのアーキテクトと、データ利活用のためのデータ基盤チームのアーキテクトを兼務されてますね。

ということで、これまではずっとデータに関する仕事に携わられているんですね。

木村:そうですね。toC向けのソーシャルゲームやSNSといったサービスから、toB向けの広告やマーケティングのプロダクト開発まで幅広い領域でソフトウェアの開発を経験しました。

広告やマーケティングの事業では特にデータを扱うことが多くあり、いわゆる、Data As a Serviceのようなものを立ち上げるなかでデータエンジニアとしてのキャリアが徐々に色濃くなっていきました。

上田:なるほど、なるほど。ちなみに、このラジオを収録するにあたって、社内で展開されている自己紹介のesaを拝見したんですが、もともと音楽で食べていきたかったという記載を見つけて……気になっちゃって。

啓祐:すごくいいですね。僕も昔は音楽をやっていたんですが、木村さんはどんな音楽をやられていたんですか?

木村:そうですね。わかりやすく言うために「どのアーティストっぽいか」みたいなことをあえて言いますと、フジファブリックやサカナクションみたいな。2010年頃が活動のピークだったんですが、その頃に流行っていた、シンセサイザーの打ち込み要素が強いような、J-ポップ/J-ロックみたいな音楽をやっていました。

上田:ライブハウスでも活動してたんですか?

木村:はい、月2〜3回ぐらいはライブしていましたよ。大学4年生ぐらいまではプロでいこうと思っていたんですけれど、なかなか固定ファンをつけることができなくて断念しちゃったんです。

啓祐:わ〜わかりみが強いですね。僕も同時期にライブ活動をやっていて……渋谷で月に3回ぐらいライブを開催していたので、もしかしたらニアミスがあったかもしれないです(笑)。

上田:ええ、どこかで対バンしてる、とかあるんじゃないですか……!?

木村:たしかにあり得るかもしれない。怖いですね(笑)。

上田:ちなみに、楽器はなにを?

木村:ドラムをやってました。

上田:へえ〜。啓祐さんはちなみに?

木村:僕はベースですね。

上田:お、両方ともリズム隊だ。

木村:たしかに。セッションとかしたいですね〜!

上田:あ、それから木村さん、前回のリレースピーチの際に「商業誌準備中」っていう話をしていたじゃないですか。あれってなんですか?

木村:実は、とある出版社の方から「技術書を出さないか」というオファーをいただいているんです。というか、もともとは同人誌を書こうかなと思っていたんですよ。特に誰かに話したわけではないんですけれど、テレパシーが届いたのか、出版社の方からTwitterのDMが届いて……。

上田:それ、すごいですね。ちなみにどんなテーマで書かれるんですか?

木村:カケハシでも使っている技術で「TypeScript」にまつわるテーマを書こうと思っています。具体的な内容については現在検討している段階です。

上田:おお、それはエンジニアさんを中心にいろいろな会社の方が参考にしたいテーマだったりするんじゃないですか?

木村:そうですね。初級者というよりは、中級者向けを想定しています。

上田:じゃあ今は出版社さんと企画書のやり取りをして、みたいなタイミングだったりするんですか?

木村:そうなんですよ。昨日もちょうど企画会議をしたばかりで、これからゴールデンウィークに向けて執筆活動が始まります(※収録は4月中旬)。

上田:へえ〜。いつぐらいの出版を目指しているんですか?

木村:そうですね、来年の夏くらいには出版できているといいなと思っています。

上田:めちゃくちゃ熱いじゃないですか……!

木村:まだ本企画は通っていないですけれどね。実現できるよう頑張ります。

上田:いやいや、すごいことですよ。出版されたらみんなで即買いしましょう……!

木村:これで企画ダメになりましたとかすごい恥ずかしいですよ(笑)。

上田:ん〜と、会社名義である程度は買い取るんでって言って企画を通してもらいましょう(笑)。

木村:そうですね(笑)。出版されたら何冊かは勝手にオフィスに置くので、手にとって見てもらえたら嬉しいです。とはいっても、まだ先の話ですが……。

上田:ぜひぜひ。無事出版されることを祈っていますね。


「理想と現実」のバランスが取れたスタートアップを探し求めて

上田:はい、そんなわけで本題に戻りましょうか。前回のリレースピーチについて、非常に良かったという反応や感想を自分の周りでもよく聞きまして。改めて、お話いただき本当にありがとうございました。

啓祐:僕もリレースピーチを聞いてめちゃくちゃ良いなと思ったことがありました。というのも、リレースピーチを実施したあと、Slackで木村さんの分報(社員一人ひとりが持っている情報共有用チャンネル)に1on1のオファーがたくさん届いていましたよね。あの流れ、すごく素敵だなって思ったんです。実際、1on1ではどういったお話をされたんですか?

木村:リレースピーチのあとは3人の方とお話しました。よく知っている方もいましたが、たまに話すくらいの距離感の方もいて。具体的には、開発ロードマップを立てるうえでの見積もり手法や、ステークホルダーとの期待値調整といった相談がありました。

上田:いいですね。そういう垣根を越えた情報交換って、今までにも結構あったんですか?

木村:そうですね。あるにはありましたが、今回変幻自在をテーマに話をさせてもらったことで、幅広い相談をもらえるようになった感覚がありました。先程の例のほかには、外部委託先のソフトウェアの品質管理の相談ごとも受けましたが、今までにはなかったトピックの話もありましたし。

上田:なるほどなあ。顔を合わせる機会が少ないと、ちょっとした相談や意見交換とかの腰が重かったりしがちですもんね。リレースピーチをきっかけに話してみようと思ってもらえる機会が増えるといいですよね。

木村:たしかに、きっかけ作りにはすごくいいですよ。自分の身の回りの話って、普段は積極的にしないですしね。

上田:そうですよね。リレースピーチを通して社内の人も木村さんのことを知る機会になったのではないかと思うし、全体会議を主催している側としてはとても良い流れだなと思ってみていました。今後もこういった動きが増えていくといいですよね。

木村:いや〜ありがとうございます、よかったです。

上田:ここからはせっかくなのでリレースピーチでお話してもらったことを紐解きつつ、木村さんのお話を掘り下げていけたらと思っています。そもそも、木村さんはどうしてカケハシに入社されたんですがというところから話を伺っていきたいのですが、いかがでしょうか?

木村:これまでを振り返ると、インターネット広告とかインターネットマーケティングなど、ホリゾンタルSaaS的な領域に携わっていました。最初から医療には関心があったわけではないですが、バーティカルな領域でドメインに深く関わりたいと考えていたので、最終的には事業の話を聞いて魅力を感じたカケハシを選びました。

カケハシは3社目になるんですけれど、前職や前々職でもいろいろな経験をさせてもらいました。1社目は新卒入社した会社でプロダクトの立ち上げをいくつか経験しました。2社目は開発組織や事業を軸に大きな裁量で関わらせていただきました。

経験したことのない難しい問題がたくさんあって、それらをどうにか解くためにがむしゃらに働いていました。問題を解いているときの高揚感と、うまくいったときの達成感はありましたね。

ただ、そのときの私は「事業を成功させるゲーム」として仕事をしていたんですよね。事業そのものに対する姿勢がどことなく他人ごとだったなと。開発責任者として深く事業に関わるなかで、もう少し自分ごと化できるような事業に一貫して携わってみたいと思うようになり、徐々に次の道を考え始めていました。要するに、プロダクトミッションが強いところで働きたいと考えていたんです。

上田:事業軸といっても、単純に「どんな事業を行っているか」ではなく、創業以来の大きな使命感やミッションを持っていて、それが事業に表れている、一貫しているという点を重要視していたんですね。

エフ・コードさんといえば、僕もマーケティングのテクノロジー開発に強い会社としてよく名前を聞いていましたし、界隈でも知られている会社じゃないかなと思います。そのなかで開発責任者として活躍されていたのですから、他社さんからのオファーも多かったんじゃないですか?

木村:そうですね。ありがたいことに、結構な数のオファーがありました。VC経由で探そうと思ってCoral Capitalの「Coral Careers」に登録していたんですが、そこの経由でオファーをいただいて。CEOと直接話す機会を設けてもらっていました。

上田:FounderとかCEOと話すことで、ビジョナリーであるかどうかを判断しようとしていたんですね。

木村:そういうことです。でもね、カケハシに入る予定はそのときまったくなかったんですよね。

上田:それ、結構いろいろな人が言いますよね。かくいう僕もそうでしたし。

木村:カケハシを知るタイミングが遅かったんですよね。すでに4社の内定をもらっていて、オファー額も決まっていて、どこに転職しようかと考えていたときだったので。「そういえば、カケハシの面談キャンセルするの忘れてたわ……」と気づいて、たまたま話を聞いた感じだったんです。

上田:キャンセルしていなくて良かった〜!(笑)

木村:本当ですよね。せっかくだし話を聞いてみようと思って、面談の1時間前くらいにカケハシのコンテンツの下調べをしたんです。そしたら、意外と私のやりたいことはカケハシで実現できるかもしれないなと感じて。

上田:へえ〜。

木村:でも、一日面談が遅れていたらたぶん別の会社の内定を受けていたと思うので、偶然ってすごいですよね。

上田:もともと内定が出ていた数社よりも、カケハシが魅力的だと感じたのって、どういった部分だったんですか?

木村:最終的に転職先を決めるにあたっては、二つの軸を持っていました。一つは、経営者自身がワクワクしながら事業に取り組んでいるかどうか。

人をワクワクさせるのはスキルだと思うんですけれど、自分自身がワクワクできる経営者は、事業に対しての想いが本物でないとならないからです。未来に対してワクワクしている経営者についていきたいと思っていたので、まずはそこを見ていました。

もう一つは、組織開発に対して資本を投下できているかどうか。純粋さだけでは事業が回っていかないので、現実的に考えて事業を継続できるだけの土壌があるかを重視していました。そして、この二つの観点を両立できる会社って、私が見てきた限りはなかなか存在しなかったんです。

上田:カケハシ以外だと、どういった会社を検討されていたんですか?

木村:シリーズA〜Bのスタートアップを中心に見ており、特にSaaSが主要な事業の会社が多かったです。

上田:幅広く会社を検討されていたと思うのですが、二つの軸を両立している会社があまりなかったんですね。それは、経営者のワクワクは感じるが組織がついてきていないのか、あるいは逆なのか……どういった印象を抱いていたのでしょう?

木村:組織が整っていないことが大半でしたね。私はエンジニアとして開発に携わるだけではなく、組織や事業をゼロから成長にもコミットした経験もあるので、その話をすると、だいたい「開発組織の地ならしをしてほしい」というオファーが多くありました。シリーズAくらいの規模だと、やっぱりそういった依頼が多くて。

ただ、私としては事業そのものに集中したいという思いで転職先を探していたので、また同じような仕事だと気が進まないなと思ってしまって。その点、カケハシはバランスが良いなと感じました。

上田:へえ〜。カケハシのバランスの良さは、面談前に見たとおっしゃっていたコンテンツなどから感じられたんですかね?

木村:そうですね。「Musubi」の動画コンテンツを観て、中尾さんの目がキラキラしていていいなっていう第一印象がありました。

動画ギャラリー|Musubi(ムスビ)-電子薬歴の先をいく薬局体験アシスタントMusubi薬局ドキュメンタリー第2弾は、愛知県岡崎市の「パナプラス薬局」。スタッフの皆さんの生き生きとした表情、若手の活musubi.kakehashi.life

上田:中尾さんが、いろいろな薬局経営者と話すインタビュー動画ですよね。中尾さん、このラジオ聞いてますか……!?

木村:ぜひ聞いていてほしいですね(笑)。ほかにも、職種に限らず多くのメンバーが薬局に訪問するような文化づくりができている点もすごく良いなと感じました。私の感覚だと、自分たちがつくるプロダクトのドメインに向き合うために、知識を身につけるための充分な投資を行えている開発組織は世の中には多くないんです。

その点、カケハシはプロダクト開発における価値提供への重要性を、経営者間でもしっかり握れているんだなという印象を受けたんですよね。そういったところが魅力的でした。

上田:なるほど。先日の全体会議でも、プロダクト活用の理解を深めるための「US短期留学プログラム」という取り組みをスタートすることになりましたしね。ユーザー薬局さんと接することで、プロダクトやドメイン理解を深めることが目的ですが、こういう取り組みはかなりカケハシらしいのかな。

木村:まさに、ですね。できれば私も留学させてもらいたいなって思っています(笑)。

上田:ですね、僕も気になっています。


「変幻自在」な人材であるために必要なこと

啓祐:今、全体会議の話が出たので、先日のリレースピーチの話題を掘り下げてもいいですか? 先日、木村さんはリレースピーチで「変幻自在」というバリューをもとに話をしてくださいましたよね。あれ、僕にもですし、メンバーにもすごく響いたんじゃないかと思うんです。

どうしてあのとき変幻自在をテーマに話をしようと思ったのか、なにか課題意識があったのか、そういうことを聞いてみたいんですがいいですか?

木村:もちろん。「変幻自在」は、今カケハシとして求められていることだなと感じていたり、私としても重要視しているスタンスだったので、私の経験をもとに話せることがあればと選んだようなイメージです。

というのも、私はカケハシで新規事業の立ち上げに携わっていた時期があったんですが、その事業は専用のプロダクトをつくるだけではなく、他の事業とのバランスがとても重視されるものでした。カケハシの他プロダクトの機能使用率とか、顧客シェアとか、そういったデータを見ながら開発を進める必要があったんです。

新規事業のKSFを分析したところ、外的な依存関係や障壁などを解決しなければなりませんでした。最終的にはプラットフォーム基盤にフォーカスをしたほうがいいという仮説が立ちました。そこで、私の役割や既存のチーム体制の見直す提案をして、現在プラットフォームドメインチームに所属をしています。

なににフォーカスするかが常に変動するような不確実な状況下で役割や振る舞いを柔軟に切り替えた経験を語ることで、誰かが同じような状況になったときに、なにか考えるきっかけになればいいなと思ったんです。ただ、実際に、変幻自在に動ける人ってそう多くないと思うんですよね。

上田:それは、社内だけではなく世の中的にもですか?

木村:そうです。やっぱり新しい環境にいくのが怖いとか、自分が持っているケイパビリティで価値貢献ができるか不安とかって考えるじゃないですか。でもそれって、個人の問題ではなく、構造的な問題が大きいとも思うんですよね。

特に、エンジニアにおいてはそれを実感する場面があります。たとえば、だいたいのWeb系のエンジニアは、3〜5年くらいで現場を流動的に変えていくっていうのが一般的です。その際、転職市場でなにを武器にするのかっていうと、基本的には技術力になりますよね。でも、それは特定の問題領域にとことんフォーカスするからこそ養われるものだったりする。

自分の持っている技術と携わろうとしている事業とのフォーカスポイントが一致していれば事なきを得ますが、常に一致させることは難しいですよね。つまり、自分の持っている知識や得たい利益と、組織が求める利益が完全一致しないと変幻自在には動けない。構造的な問題だなと思うんです。

上田:その場合、どうフィットするような選択肢を見つけていくんでしょう。そういうものだと割り切っていくのか、対処法があるのか……。

木村:本来は、もう少し抽象度の高いレイヤーで繋がっていてほしいっていう話はありますよね。組織理念と個人理念において、成し遂げたい未来に共感できているかどうか、みたいな。採用の際にそこのコミュニケーションをきちんと取っていれば、多少の利害の違いも受け入れられると思うんですけれどね。あとは、エンジニアでいうと技術の部分をもうちょっと抽象化するとか。

上田:抽象化する?

木村:複雑な問題を解決するためのエンジニアリングとしての技術みたいな捉え方っていうんでしょうか。

上田:課題解決を行うための、手段としての技術ということですかね?

木村:そうです。そう捉えることができれば、採用市場にとっても売れるものになるし、会社に歩み寄っていることにもなると思うので。たとえば、普遍的な設計思想などを軸にして問題に向き合っていればコンフリクトせず働くことができますよね。

上田:なるほど。一方的になにかを求めるのではなく、お互いの歩み寄りやアプローチがすごく大切なんですね。

木村:そうですね。エフ・コードで開発責任者をやっていたときは、メンバーのこと仲間だと思う反面、顧客であるとも思っていたんです。メンバーそれぞれの利益をキャリアのなかでどう生み出せるのかを聞いて、メンバーサクセスできるような状態を作れるように動いていました。それが叶えば、長く一緒に働けるようになるので。

上田:そのメンバーサクセスっていう考え方を実践するうえでは、一つの軸を持ってアプローチしているんですか?

木村:そうですね。メンバーそれぞれに合わせて個別最適ってことはできないので、会社と個人の利益について抽象化して、対話して……っていうことを続けていました。もちろん、その結果技術に特化してキャリアを形成することにしてもいいし、企業の進む道とは少しずれるかたちでキャリアをつくることになってもいい。

完全一致させるためのコミュニケーションではなく、違いを可視化して、接点を見つけるコミュニケーションを取るよう意識していました。

上田:なるほど、対話で整理していくような感じのアプローチなんですね。

木村:そうですね。1on1もやっていましたが、多くの場合は「飲み」でしたしね。今だとアルハラと言われてしまうかもしれないですが……。それか、会社の近くにあったルノアール(笑)。

上田:対話をするっていうスタンスは、エンジニアに限らず、あらゆる職種において必要な考え方なのかもしれないですね。

それと、カケハシを選んだ理由として「経営者がワクワクしていた」っていう話をしてくださいましたけれど、社員にとっても「未来に対するワクワク」ってすごく必要な要素ですよね。それが大前提にあるからこそ、同じ方向を向いて会社を成長させられるんだなと。

木村:お金稼ぎの手段として会社を運営する経営者ってすごく多いと思うんです。それ自体を否定するつもりはないですし、資本主義経済だったらむしろ自然です。でも、自分自身においては、ワクワクできる純粋さを持って働きたいし、仲間にもワクワクしてもらうためにはそういう対話が欠かせないなと思うんです。

上田:この先の未来になにか面白いことが待っているかもしれないっていう余白感ってすごく大事ですしね。これまでの経験を経て思う課題感、すごくしっくりきました。啓祐さん、どうですか?

啓祐:いやあ〜ここまで深掘りできるのってラジオならではですよね。リレースピーチだけだとここまで深い話はできないですし。

木村:ラジオっていうコンテンツの性質があるから、これだけいろいろと話せているような気もします。みんなの前で発表しなければと思うと、どうしても伝え方とか順番とかいろいろ細かく考えてしまうので。


80歳までなにかを作っている人間でありたい

上田:実は今回、ラジオの収録前に「木村さんをゲストにお呼びするので、聞きたいことを教えてね」っていう質問募集をしていたんです。今回、そのなかから一つ選んで質問をさせていただこうと思います。では、啓祐さん、お願いできますか?

啓祐:はい、おハガキ読みですね。では、ラジオネーム「おとに」さんからのご質問です。「木村さんにとって、成功とはどのようなものですか」とのことです。哲学じゃないですか……(笑)。

木村:めちゃくちゃ難しいですね。言葉の意味通りでいうと、目標が達成されることが成功かなとは思うんですが。「カケハシの私」にとってなのか、人生レベルの話なのか、二軸あるような気もしますし……。

上田:じゃあ「カケハシの木村さん」だったらどうでしょう?

木村:カケハシで残したい成果は、一言でいうと「構造変革」だと思っています。今、患者さん一人ひとりのカスタマーデータプラットフォームを作ろうとしており、その先の未来では現在の医療システムそのものを変える動きができたらなと。

エンジニアをやっている以上は、そういった、ボトムから構造を変えるっていうのが気持ちいいことなんですよね。

上田:この場合の「構造」っていうのは、システムの構造とかっていう話ではなく、社会の構造を指しているんですね。ゲームチェンジするというような。

木村:そうなんです。私は構造変革に取り組みたくてインターネット業界にずっといたので、もしもそれが達成できたら「カケハシの私」においての成功と思えるのかなと感じます。

上田:なるほど。言い換えると、それができるんじゃないかなと思えたから、木村さんはカケハシを選んだっていうことなんですかね。

木村:そうですね。前の会社だと、いろいろな業界のマーケティングを支援するみたいな業務だったんですけれど、もうちょっとディープダイブとして世の中を変える仕事がしたかった。カケハシにはそういったチャレンジをできる環境があるから魅力的だなと感じていました。

上田:医療行為と患者さんのQOLが結びつくような取り組みは、国内でまだ実現できていないことですしね。

木村:国もこれからしっかりと取り組むという表明をしていますもんね。国の施策を待つだけでなく、民間からも様々な提案ができるように振る舞っていくことがすごく重要だと思っています。

さきほどの成功の話に戻りますが、私個人としては、達成しそうな目標に対してはすごく冷めてしまう傾向があるんです。「あれ、なにがしたかったんだっけ……」って気持ちになっちゃう。だから、生涯なにかに没入し続けることが目標なのかなって思うんです。80歳くらいまでは、なんかしらのプロダクトとか作品に関わっていたいなって。

上田:いや、めちゃくちゃわかります。海賊王になりたいっていうよりも、誰よりも強くありたい孫悟空タイプのような感覚というか。

木村:なるほど。アニメ制作とか映画制作のドキュメンタリーとか漫画とか結構読んで心を動かされることがあって。NHKとかジブリのドキュメンタリーとか。宮崎駿みたいな生き様というか。あと、庵野秀明の『さようなら全てのエヴァンゲリオン ~庵野秀明の1214日』とか。好きなんですよね。「俺も開発ちゃんとやろう」って思わされる。

上田:わかります、わかります。ものづくりってこういうことだよなって思いますよね。『プロフェッショナル 仕事の流儀』とか、つい観ちゃうもんなあ。哲学的な問いに対してこれだけ答えていただけるなんて、結構びっくりしました。

木村:ありがとうございます。そういうことを飲みながら毎日考えてるんですよ(笑)。

啓祐:今度は1on1だけではなく、飲みの誘いもくるといいですよね。

上田:さて、そんなわけであっという間に時間が過ぎてしまっているんですが、もう一つ、みんなにとっての触れやすい話題ということで「おすすめの本」をご紹介してもらえたらと思っているんですけれども。

エンジニア向けだといろいろあるかとは思うんですが、たとえばエンジニアじゃない人が読んでもぐっとくる、カケハシメンバーにもぜひ読んでもらいたい本があればおすすめしてほしいです。

木村:私が前職でとある人からおすすめされた本を紹介しようかなと思います。山田ズーニーさんの『伝わる揺さぶる文章を書く』です。

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この本に記されているのは文章の書き方についての話なんですけれど、自分がなにを成し遂げたくて、相手にそれを伝えることで、相手はどういう状態になるのかとかを発見するプロセスについて書いている本でもあるんです。

たとえば、なにかチームで情報を連携する場合、相手が知らない文脈の話だと伝わり方が変わってきますよね。そういう際に、どう伝えればいいのかを言語化したり、整理するために有意義な内容だなと思うんです。思考プロセスについて書いてあるので、ぜひ読んでみてもらえるとうれしいです。

上田:めちゃくちゃいいですね。山田ズーニーさんは「ほぼ日刊イトイ新聞」で小論文の添削をされていたりしますよね。『あなたの話はなぜ「通じない」のか』の著者でもありますし。

木村:一見すると文章の話ですが、実は口頭のコミュニケーションでも使える考え方なんですよね。

上田:わかりみが深いです……。僕はコピーライターとして文章に携わる仕事をしているんですが、やっぱり僕もすごくおすすめされてきましたもん。文章の考え方って、相手を知るとか、どう伝えるかとか、そういう要素を含むので、究極は人とのコミュニケーションの話に立ち戻ってくるんですよね。

木村:そうなんですよ。私もまだまだ得意ではないですけれど、体系化した言葉としてまとまっているので、いいなと思いご紹介しました。これから私は執筆作業もあるので、そういった意味でも大切にしたい本だなと思っています。

上田:木村さんの書かれる文章にもご注目、ということですね。

木村:いや〜文章苦手なんですよね。ChatGPTに頼りながら頑張りたいと思います(笑)。

上田:はい! そんなわけで、そろそろお時間になりますが、木村さん今日はありがとうございました。すごく楽しかったです。木村さんはいかがでしたか?

木村:楽しかったですね〜。私も、ラジオを昔ちょっとだけやっていたんですよ。

上田:え、ご自身でですか?

木村:はい、stand.fmで。といっても、もっとクズっぽい話をしていましたけどね。

啓祐:なんですかその話。聞きたい……!

木村:匿名で配信していたのでちょっと……(笑)。

上田:(笑)。そんなわけで、今回のラジオは以上で終わりにしたいと思います。

啓祐:今後も、全体会議のリレースピーチで話してくれた方をお呼びして、ラジオで話を深く掘り下げる企画を行っていこうと思っています。次回以降のラインナップをぜひぜひお楽しみに。

上田:これからも盛り上げていきましょう! 木村さん、今日は本当に長時間ありがとうございました。めちゃくちゃ楽しかったです!

啓祐:木村さんありがとうございました!

木村:こちらこそありがとうございました!

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